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安請け合い
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ルナの凄まじい距離の詰め方と勢いにはかなり面食らったのだが、どうやら彼女の必死さには深い事情があるようだった。
ルナの一族グレイプドール家は、代々、強い呪いを受けていることは前にも述べた通りだ。そもそもルナがこの学園に来た目的は、自分の呪いを解くこともそうだが、グレイプドール家の呪いを解くことだった。
先日、俺は闇魔法により、ルナの中から呪いを消すことには成功した。しかしそれはあくまでルナの中にある呪いであり、グレイプドール家にかかった呪いは解けないままだったのだ。ルナは俺にグレイプドール家の呪い自体も解いて欲しいと思っていたらしい。
しかし尻の中に呪いが吸い込まれて悶絶している俺の様子を見ているだけに、気を遣って言い出し辛かったようだ。一族の呪いを解くためには先ずルナの故郷まで行かねばならないし、何よりルナ一人の呪いを解いた時とは比べものにならない程の苦痛を強いることになる。
そこでルナは自分の与えられる見返りを考えた。男の好きなものと言えば金! 酒! 女!
その中でルナが与えられるのは自分の身体。つまり結婚しよ? となったらしい。いや発想と実行力がぶっ飛んでるな。
「それ、何か理由をつけて、あんた……ルナがクラウスと結婚したかっただけなんじゃないの?」
ジャンヌのルナに対する口調はどうも刺々しい。しかしルナは笑顔のままかぶりを振る。
「いいえ、私と結婚出来る男性は世界一幸せな方だと思います」
彼女の目には力が漲っている。冗談でもこんな台詞を吐けるものではない。どれほど自分に自信があるんだろうか。彼女の容姿は見る者を虜にする美しさがあるし、付き従うような態度を好ましく思う男もたくさんいるだろうし、エッチなことにも積極的で、夜も、これ以上は止めておこう。
とにかく彼女の圧倒的な自信が、その態度や行動に繋がっているのだろう。
「何その自信……」
これには嫌味を言った側のジャンヌも面食らってしまった。ルナは視線を俺に切り替えた。胸に手を当て、不安げな表情だ。
「最近、私の中の呪いもぶり返して来たのを感じます」
風邪かな?
「お願いします、クラウス様。一族の呪いを解くために、私の故郷まで来てくださいませんでしょうか? もちろん旅費も、宿泊費もこちらで負担します。まとまった報酬も出すことが出来ます」
そう言ってルナは頭を下げた。俺は返答に困った。そう簡単に決めて良いようなことではない気がしたのだ。沈黙が流れる中、ジャンヌが俺に耳打ちした。
「よく考えなよ。ルナ一人の呪いを解くだけでも死にかけたんでしょう? 一族の呪いを解くってなったら、あんたの身体もどうなるか分からないわよ。」
確かにあの時、俺がしっかり尻を鍛えていなければ、事態はどうなっていたか分からない。深刻な切れ痔を負っていたかもしれない。
「それに、私はルナがあんまり信用出来ない。クラウスに対して積極的過ぎるし、何か、異様な執着心みたいなものを感じるわ」
ジャンヌの意見もよく分かる。ルナの言葉の裏に、何か別の意図が無いとは限らない。だが一族の呪いを解こうと必死なルナの姿には、少なくとも嘘がないように俺は思った。普通は出会って間もない異国の男に対して結婚を申し込むなんて出来ないだろう。
恐らく彼女の抱えている悩みはかなり深刻であり、急を要するに違いない。だから半ば強引で捨て身の頼み方をして来たのだと俺は思った。ルナの呪いを解いた時点で乗り掛かった船だ。最後までやるのが筋なのかもしれない。
「よかろう。貴様らの呪い、このクラウス・K・レイヴンフィールドが引き受けた」
俺は右目を左手で隠し、マントを右手ではためかせた。顔を上げたルナの表情がどんどん明るくなっていく。
それとは対照的に、ジャンヌは呆れ顔で俺を見ていた。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
ルナは俺の手を取り、何度も頭を下げた。
俺もこの学園に入ってから順調に強くなってきた。自警団を倒した一件もかなり自信になっていたし、その自信を裏打ちする程度の鍛錬も毎日積んできたつもりだ。まあ流石に一筋縄ではいかないだろうが、何とかなるだろうと思っていた。
この時まではーー。
ルナの故郷でこれから巻き起こる数々の惨事を鑑みるに、この時の俺の考えは死ぬほど甘かったと言わざるをえない。
そう、とんでもない事件の数々が、俺を待ち受けているのだった。
ルナの一族グレイプドール家は、代々、強い呪いを受けていることは前にも述べた通りだ。そもそもルナがこの学園に来た目的は、自分の呪いを解くこともそうだが、グレイプドール家の呪いを解くことだった。
先日、俺は闇魔法により、ルナの中から呪いを消すことには成功した。しかしそれはあくまでルナの中にある呪いであり、グレイプドール家にかかった呪いは解けないままだったのだ。ルナは俺にグレイプドール家の呪い自体も解いて欲しいと思っていたらしい。
しかし尻の中に呪いが吸い込まれて悶絶している俺の様子を見ているだけに、気を遣って言い出し辛かったようだ。一族の呪いを解くためには先ずルナの故郷まで行かねばならないし、何よりルナ一人の呪いを解いた時とは比べものにならない程の苦痛を強いることになる。
そこでルナは自分の与えられる見返りを考えた。男の好きなものと言えば金! 酒! 女!
その中でルナが与えられるのは自分の身体。つまり結婚しよ? となったらしい。いや発想と実行力がぶっ飛んでるな。
「それ、何か理由をつけて、あんた……ルナがクラウスと結婚したかっただけなんじゃないの?」
ジャンヌのルナに対する口調はどうも刺々しい。しかしルナは笑顔のままかぶりを振る。
「いいえ、私と結婚出来る男性は世界一幸せな方だと思います」
彼女の目には力が漲っている。冗談でもこんな台詞を吐けるものではない。どれほど自分に自信があるんだろうか。彼女の容姿は見る者を虜にする美しさがあるし、付き従うような態度を好ましく思う男もたくさんいるだろうし、エッチなことにも積極的で、夜も、これ以上は止めておこう。
とにかく彼女の圧倒的な自信が、その態度や行動に繋がっているのだろう。
「何その自信……」
これには嫌味を言った側のジャンヌも面食らってしまった。ルナは視線を俺に切り替えた。胸に手を当て、不安げな表情だ。
「最近、私の中の呪いもぶり返して来たのを感じます」
風邪かな?
「お願いします、クラウス様。一族の呪いを解くために、私の故郷まで来てくださいませんでしょうか? もちろん旅費も、宿泊費もこちらで負担します。まとまった報酬も出すことが出来ます」
そう言ってルナは頭を下げた。俺は返答に困った。そう簡単に決めて良いようなことではない気がしたのだ。沈黙が流れる中、ジャンヌが俺に耳打ちした。
「よく考えなよ。ルナ一人の呪いを解くだけでも死にかけたんでしょう? 一族の呪いを解くってなったら、あんたの身体もどうなるか分からないわよ。」
確かにあの時、俺がしっかり尻を鍛えていなければ、事態はどうなっていたか分からない。深刻な切れ痔を負っていたかもしれない。
「それに、私はルナがあんまり信用出来ない。クラウスに対して積極的過ぎるし、何か、異様な執着心みたいなものを感じるわ」
ジャンヌの意見もよく分かる。ルナの言葉の裏に、何か別の意図が無いとは限らない。だが一族の呪いを解こうと必死なルナの姿には、少なくとも嘘がないように俺は思った。普通は出会って間もない異国の男に対して結婚を申し込むなんて出来ないだろう。
恐らく彼女の抱えている悩みはかなり深刻であり、急を要するに違いない。だから半ば強引で捨て身の頼み方をして来たのだと俺は思った。ルナの呪いを解いた時点で乗り掛かった船だ。最後までやるのが筋なのかもしれない。
「よかろう。貴様らの呪い、このクラウス・K・レイヴンフィールドが引き受けた」
俺は右目を左手で隠し、マントを右手ではためかせた。顔を上げたルナの表情がどんどん明るくなっていく。
それとは対照的に、ジャンヌは呆れ顔で俺を見ていた。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
ルナは俺の手を取り、何度も頭を下げた。
俺もこの学園に入ってから順調に強くなってきた。自警団を倒した一件もかなり自信になっていたし、その自信を裏打ちする程度の鍛錬も毎日積んできたつもりだ。まあ流石に一筋縄ではいかないだろうが、何とかなるだろうと思っていた。
この時まではーー。
ルナの故郷でこれから巻き起こる数々の惨事を鑑みるに、この時の俺の考えは死ぬほど甘かったと言わざるをえない。
そう、とんでもない事件の数々が、俺を待ち受けているのだった。
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