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押し問答
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俺の思考は一瞬止まってしまっていた。
いやいやいや、距離縮めるの早過ぎるだろ! チーターか!
「は、早まるな!」
俺は両手を前に出して拒否するような態勢を取った。
「お願いします! クラウス様でなくてはならないのです!」
ルナは一歩二歩と歩み寄ってくる。突き出した俺の手におっぱいが当たりそうになったので、慌てて手を引っ込めようとしたのだが、その手を掴まれた。それはもうガッチリと、骨が折れそうなほど強い力で。
「わ、我にも選択の自由というものが……」
俺は目を逸らし、力無く言った。しかしその言葉は逆効果だったようである。ルナは不意に捕まえた俺の手を自分の胸に押し当てた。布の上からでも、柔らかく、温かい感触がリアルに手を伝ってくる。
「私ではご不満ですか?」
ルナは目を潤ませながら言うのだが、俺はそれどころじゃない。おっぱいにほとんど全ての神経を持っていかれてるので脳の処理能力が追い付かない。おっぱい柔らかい。
「いや、その、不満というわけではなくて」
俺の声は掠れていた。俺はどうにか離れようと身をよじったがルナはびくともしない。おっぱい柔らかい。この状況から理性を保ち続ける方法があるのなら、誰か教えおっぱい柔らかい。
「ただで結婚してもらおうとら思っておりません。クラウス様の願いになら何でも応えます」
「では先ず我をこの束縛から解き放つのだ!」
「出来ません」
何でもするって言ったじゃん!
「お金が必要なら用意します。労働力が必要であれば私がどんな奉仕でも致します。それとも」
引っ張られ、俺の身体は一気にルナと密着した。酩酊しそうなほど強い葡萄の香りに包まれる。
ルナの目が暗闇の中で、一際明るく光った。
「それとも、必要なのは身体ですか……?」
はい。
いやはいじゃない! 性欲に押し切られそうになったが、ルナの行動は明らかにおかしい。幾ら俺が命の恩人だからといえ、こんな強引でビッチな迫り方をするものだろうか、いやルナならあり得るな。うん。
「身体ですね!」
足を掛けられ、綺麗に押し倒された。どうやら沈黙を肯定と取られたらしい。さっきから女のパワーじゃないんだが。出身は聞いていないが、彼女には「戦士型」の血が混じっているか、もしくは人間ではないのだろう。
などと分析をしている場合ではない。ルナの顔は既に俺の面前にあり、少しでも動けば唇が触れそうだ。彼女が呼吸をするたび、温かい吐息が顔にかかる。その至近距離からもルナの目は怖いほどに俺を凝視している。その狂気的なまでに直情的な彼女の態度こそ、一種の「呪い」なのではないかと感じさせる。
「クラウス様。お覚悟」
それ殺すときに使う言葉だよね。
「何か言い残すことはありませんか」
それも殺す前に言う言葉ァ! あれ? 貞操を失うだけかと思ったら命取られる感じですか? せめて優しくしてね?
「あんた達、何してんの」
すぐ近くから女子の声がした。俺にはそれが救いの声に聞こえた。
「ジャンヌ! どうしてここに」
「忘れ物届けようと思って」
そう言ってジャンヌは俺の筆入れを右手に摘んで見せた。いかにも汚い物を持つような掴み方である。
「で、質問してるのはこっちなんだけど」
暗くてよく見えないが、心なしか嫌悪感を持った目で睨まれているようだ。気のせいだよね?
その時はっとした。人気の無い放課後。薄暗い廊下。身体を合わせて寝そべる男女。何も起きないわけがなく……。
「ち、違うぞジャンヌ! 我は押し倒されたのだ! 信じてくれ!」
ジャンヌはしばらく俺の表情を観察していたが
「ま、そうでしょうね」
とため息を吐きながら、俺の上に密着しているルナを引き剥がしにかかった。しかしルナは俺にしがみつき、抵抗を試みている。
「離してください! 私はクラウス様と結婚するのです!」
「何を言ってるの? それ、クラウスが納得してないでしょ」
「その通りだ」
「確かに一度は拒否されました。でも、私が身体を捧げると言ったら『我もルナの身体が欲しい』と仰ったのです!」
「その通りだって違あああああああう!!!!!!」
こいつ完全に台詞を捏造してやがる!
「……クラウス?」
「違う! 我はそんなこと言わない!」
「さっきも私の胸を触って嬉しそうにしていました!」
「クラウスー?」
「違う! 触ったのではなくて触らされたのだ!」
「触ったのか触ってないのか」
「触りましたぁ!」
ジャンヌの背後から殺気を纏ったオーラが立ち上り始めた。やばいやばいやばい殺される! やっぱ下ネタ通じねえわこの人! ジャンヌは汚物を見るような険しい顔から一転、笑顔になり、言った。
「最後に言い残すことはある?」
だからそれ人を殺すときに使う言葉ァ!
いやいやいや、距離縮めるの早過ぎるだろ! チーターか!
「は、早まるな!」
俺は両手を前に出して拒否するような態勢を取った。
「お願いします! クラウス様でなくてはならないのです!」
ルナは一歩二歩と歩み寄ってくる。突き出した俺の手におっぱいが当たりそうになったので、慌てて手を引っ込めようとしたのだが、その手を掴まれた。それはもうガッチリと、骨が折れそうなほど強い力で。
「わ、我にも選択の自由というものが……」
俺は目を逸らし、力無く言った。しかしその言葉は逆効果だったようである。ルナは不意に捕まえた俺の手を自分の胸に押し当てた。布の上からでも、柔らかく、温かい感触がリアルに手を伝ってくる。
「私ではご不満ですか?」
ルナは目を潤ませながら言うのだが、俺はそれどころじゃない。おっぱいにほとんど全ての神経を持っていかれてるので脳の処理能力が追い付かない。おっぱい柔らかい。
「いや、その、不満というわけではなくて」
俺の声は掠れていた。俺はどうにか離れようと身をよじったがルナはびくともしない。おっぱい柔らかい。この状況から理性を保ち続ける方法があるのなら、誰か教えおっぱい柔らかい。
「ただで結婚してもらおうとら思っておりません。クラウス様の願いになら何でも応えます」
「では先ず我をこの束縛から解き放つのだ!」
「出来ません」
何でもするって言ったじゃん!
「お金が必要なら用意します。労働力が必要であれば私がどんな奉仕でも致します。それとも」
引っ張られ、俺の身体は一気にルナと密着した。酩酊しそうなほど強い葡萄の香りに包まれる。
ルナの目が暗闇の中で、一際明るく光った。
「それとも、必要なのは身体ですか……?」
はい。
いやはいじゃない! 性欲に押し切られそうになったが、ルナの行動は明らかにおかしい。幾ら俺が命の恩人だからといえ、こんな強引でビッチな迫り方をするものだろうか、いやルナならあり得るな。うん。
「身体ですね!」
足を掛けられ、綺麗に押し倒された。どうやら沈黙を肯定と取られたらしい。さっきから女のパワーじゃないんだが。出身は聞いていないが、彼女には「戦士型」の血が混じっているか、もしくは人間ではないのだろう。
などと分析をしている場合ではない。ルナの顔は既に俺の面前にあり、少しでも動けば唇が触れそうだ。彼女が呼吸をするたび、温かい吐息が顔にかかる。その至近距離からもルナの目は怖いほどに俺を凝視している。その狂気的なまでに直情的な彼女の態度こそ、一種の「呪い」なのではないかと感じさせる。
「クラウス様。お覚悟」
それ殺すときに使う言葉だよね。
「何か言い残すことはありませんか」
それも殺す前に言う言葉ァ! あれ? 貞操を失うだけかと思ったら命取られる感じですか? せめて優しくしてね?
「あんた達、何してんの」
すぐ近くから女子の声がした。俺にはそれが救いの声に聞こえた。
「ジャンヌ! どうしてここに」
「忘れ物届けようと思って」
そう言ってジャンヌは俺の筆入れを右手に摘んで見せた。いかにも汚い物を持つような掴み方である。
「で、質問してるのはこっちなんだけど」
暗くてよく見えないが、心なしか嫌悪感を持った目で睨まれているようだ。気のせいだよね?
その時はっとした。人気の無い放課後。薄暗い廊下。身体を合わせて寝そべる男女。何も起きないわけがなく……。
「ち、違うぞジャンヌ! 我は押し倒されたのだ! 信じてくれ!」
ジャンヌはしばらく俺の表情を観察していたが
「ま、そうでしょうね」
とため息を吐きながら、俺の上に密着しているルナを引き剥がしにかかった。しかしルナは俺にしがみつき、抵抗を試みている。
「離してください! 私はクラウス様と結婚するのです!」
「何を言ってるの? それ、クラウスが納得してないでしょ」
「その通りだ」
「確かに一度は拒否されました。でも、私が身体を捧げると言ったら『我もルナの身体が欲しい』と仰ったのです!」
「その通りだって違あああああああう!!!!!!」
こいつ完全に台詞を捏造してやがる!
「……クラウス?」
「違う! 我はそんなこと言わない!」
「さっきも私の胸を触って嬉しそうにしていました!」
「クラウスー?」
「違う! 触ったのではなくて触らされたのだ!」
「触ったのか触ってないのか」
「触りましたぁ!」
ジャンヌの背後から殺気を纏ったオーラが立ち上り始めた。やばいやばいやばい殺される! やっぱ下ネタ通じねえわこの人! ジャンヌは汚物を見るような険しい顔から一転、笑顔になり、言った。
「最後に言い残すことはある?」
だからそれ人を殺すときに使う言葉ァ!
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