冤罪で魔法学園を追放された少年はいかにして世界最強の闇魔道士になったか

忍者の佐藤

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子供を作ろう

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 ルナは一枚一枚、着ている衣服を脱ぎ始めた。コルセットを取り、ブラウスのボタンを外し、スカートがストン、と滑り落ちた。まるで練習していたかのようにスムーズだ。たちまちルナの肉付きの良い体が露わとなる。

 蝋燭の明かりに照らされた彼女の裸体はまるで何かの芸術作品のように美しく、そして一秒も堪えられないくらいに艶やかだった。



 この状況は危険だ。今すぐこの部屋から離脱しなければ、俺はルナに食われる(・・・・)ことになる。

 それは分かっているはずなのに、あまりに美しい彼女の裸体に見惚れてしまっていた。いや格好つけた言い方をしたが性欲に負けただけである。



「ど、どうして脱いでいる!」



 俺の声はかすれていた。



「子供を作るためです」



 これ以上ないくらいド直球な答えが返ってきた。



「ルナ、待て! 貴様は強引な村人達のやり方が嫌で、我を屋敷から逃してくれたのではないのか! こんなやり方では彼らと同じになってしまうんじゃないのか!?」



 ルナは答えず、じっと俺の顔を見返してくる。じっくり、まるで俺の反応を楽しんでいるかのようだ。

 その顔を見て俺は全てを悟った。最初から、そう。村長の屋敷に招かれた時から、俺を起こし、村人から逃げ、この部屋に逃げ込むまで。ずっとルナと村人達はグルだったのだ。



 こんな周りくどいやり方をした理由は恐らく、俺のルナに対しての警戒心を解かせ、信頼を得させることと、怖い思いをさせて二人の吊り橋効果を狙い、ルナへの依存度を高めることが目的だったのだろう。今更ながら凄まじい執念だ。



「さあクラウス様。私に触れて下さい」



 ルナはゆっくりと近づいてくる。



「どんな触り方でも良いのです。赤ちゃんのようにむしゃぶりついても、強引に揉みしだいても」



 彼女の目は鉤爪のように俺を捉え、一方近づくごとに双丘がゆさゆさ揺れる。



「さあ、その手で私を無茶苦茶にして下さい」



 吐息のような声が囁く。



「く、来るんじゃない!」



 どうにか強がってみせたが、床に転がっていたおもちゃに足を取られ、スッテンコロリンしてしまった。俺はとんでもない運動音痴なのだ。



「ふふっ。クラウス様、可愛いです」

「寄るな!」

「いや、です」



 尻餅をついた俺に合わせてルナは両膝、両手を床に付け、まるで獣のような姿勢で向かってくる。

 彼女の両手の間からは豊満な胸が垂れており、彼女が動くたび瑞々しく揺れる。もう自分の理性がどうにかなってしまいそうだ。

「乳じゃない。あれは葡萄。あれは葡萄」と自分に暗示をかけようとしても、やっぱりおっぱいである。どう見てもおっぱいです。



「ま、待てルナ! 我はこのようなことあんまり望んでおらぬぞ! 貴様は我に望まれていなければ幸せな結婚生活を送ることは出来ないと言っていたではないか! あの言葉は嘘だったのか!」

「嘘ではありません。これはクラウス様のためなのです」



 ルナは口に手を当ててくすくすと笑った。



「だって私と結婚出来る男性は世界で一番幸福な方ですもの」



 ルナは眉一つ動かさず、以前と同じ言葉を言い切った。何なんだ、こいつのこの自信は! ちょっと可愛くてエロくて尽くしてくれてスタイルが良くておっぱいが大きいからって調子に乗りすぎだぞ! 

 ルナの裸体はさらに近づいてくる。おっぱいが近づいてくる。ルナの吐息を顔に感じる。 最早俺に覆いかぶさる勢いだ。



「さあ、力を抜いて」

「ちょ、ちょっと待……!」



 ドン、と瓦礫の崩れるような轟音が静寂を破った。瓦礫の埃が部屋に充満する。埃が気道につまる感覚に襲われた俺は思わずむせ返る。

 今度は何だ! 何が起こった? 何かが壁を壊したのか?



 薄目を開けて見回す俺の目は赤い二つの目を捉えた。まるで地獄の底から来たかのように冷たく、獲物を捕捉した獣のようにギラついた双眸。それはルナに向けられている。



「こんなところで何をしているんですか? ジャンヌさん。朝まで眠っていらしたら良かったのに」



 立ち上がったルナは二つの目に向かって問いかけた。言うまでもなく彼女は裸のままだが、全く隠す仕草を見せない。

 部屋を覆っていた埃が少しづつ晴れてきて、赤い目の姿が少しづつはっきりしてきた。桃色の髪と大きな胸。その記号的な特徴だけでジャンヌだと分かった。その目はいつもと違い、猛禽類のように鋭くルナを睨んでいる。



「それはこっちの台詞。素っ裸で何してるの? 猿なの? 人の言葉分かる?」



 ジャンヌの言葉はこれまでにないくらい辛辣だ。彼女の言葉は威圧的で、大の男でもちびりそうな覇気に満ちているが、ルナは全く動じる様子がない。



「ふふっ。酷い言葉遣い。そんな乱暴な口をきく人はやはりクラウス様に相応しくありませんね」

「一番相応しくないあんたが何を言ってるの? 馬鹿なの? 痴女なの?」



 状況証拠的に痴女ではある。



「私はただクラウス様と添い遂げようとしただけです」

「だけって何? 男と寝るのってあんたにとってそんな軽いの? とんだアバズレね」

「ご期待に添えず残念ですが、私はまだ他の男の方に身体を許した事がありません」



 処女だと!? 俺の耳は今までの人生で最も鋭い反応を見せた。



「落ち着いて下さいジャンヌさん。嫉妬は見苦しいと思いますよ」

「嫉妬?」



 ジャンヌの姿勢は既にルナの喉笛を噛み切る勢いだ。もう何が起きてもおかしくない。



「クラウス様は拒絶されませんでした。つまり私のことを受け入れて下さったのです。果たして同じ状況でジャンヌさんはクラウス様に受け入れてもらえるかしら」



 とんでもない希望的観測にも感じるが、まあ確かに俺が抵抗しなかったのは事実だ。あのままジャンヌが現れなかったら俺は今頃童貞ではなかったのかもしれない。



「……何が言いたいの?」

「私の方が魅力的でクラウス様に相応しいと、そう言いたかったのです」



 もう一度言っておくが、ルナはずっと裸のままである。裸のまま言い切ったのだ。うーん、この自信。

 ルナのこの宣言には先ほどまで敵意剥き出しだったジャンヌも戦意を削がれたらしい。



「……もう呆れた。クラウス、帰るよ」



 ジャンヌは俺が肯く暇も与えさせず、胸ぐらを掴んで立たせた。釣った魚に対するのと変わらない扱いじゃないのかこれは。



「ちょ、ジャンヌ! ちょっと待ってくれ」

「は?」

「あ、ごめんなさい。さあ早く帰りましょう」



 怖いぃ! ルナに食われても地獄! でもこのままジャンヌにお持ち帰りされても地獄!



「覚えておいて下さい」



 俺たちがジャンヌの開けた穴から出る時、後ろからルナが言った



「最後に勝つのは私です」



 その声はどこまでも落ち着き払っていた。

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