冤罪で魔法学園を追放された少年はいかにして世界最強の闇魔道士になったか

忍者の佐藤

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ニックの提案

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「ざっけんな!! 危うくパ●パンになるところだったじゃねえか!!」



 大分炎が静まって来た頃、殆ど裸になったニックが仕切りの外に飛び出してきた。いやこいつ本当に頑丈だな。あとパイ……。聞かなかったことにしよう。



 横になったニックにはルナが治癒魔法をかけており、その横では水の精霊こと小便小僧に水をかけられていた。非常にシュールな光景である。



「ルナ、その、大丈夫か?」

「はい、大丈夫とは?」

「いや、ニックは今半裸でその、あまり男子の裸は見たくないかと思ってな」

「ええ。男の方の局部に関してはクラウス様のおちんちんで見慣れておりますので」

「ああなるほど、っていつ見た!?」

「いつもです」

「いつも!?」

「今もです」

「心眼か!!」



「ニックー、ごめんヨー」



 少し遅れて紅花が来て、ニックのそばに膝をついた。いつもの元気な様子とは打って変わって、かなりしょんぼりしている。流石に友達を丸焼きにしてしまったのは応えたらしい。

 そんな紅花の落ち込みを知ってか知らずか、ニックは以外にもケロッとした顔をして起き上がった。



「まあ失敗しちまったもんは仕方無え。仕切り直そうぜ」



 凄いな。あそこまでこんがり焼かれておいて直ぐに切り替えられるなんて。半裸だけど。



「紅花よ、準決勝までは炎魔法を封印しておいた方が良いのではないか?」

「そうだネー。そうするヨー」



 大魔法料理対決の規定では、一回戦で一つ以上、準決勝では三つ以上、料理中に魔法を取り入れなければならない。ただ、それは自分が直接使う必要はない。

 具体的に言えば、精霊を召喚し、その精霊に魔法を使わせるのもカウントされるのだ。紅花で言うところの小べ、いや、水をかけるアキュラたんとか、鶏肉を解凍するただのオークとか……。

 つまり幾ら紅花が魔法の扱いが下手でも、うまく精霊を使いこなせれば、準決勝まではどうにかなるのである。まあ実際そう簡単にはいかないだろうけども。



 ちなみに決勝戦では五種類以上の魔法を使う必要があるが、予選突破も怪しい今は決勝を考える必要は無いだろう。



「アイヨー、炎魔法の調節は私一人の時に練習するヨー。絶対本番までには間に合わせるヨ!」

「よぉし! じゃ改めて予選の練習をしようぜえ! おいオメエら! 一個提案があるんだけどよお!」

「何だ?」



「参加者が千人居る中でよお、普通に料理作るだけじゃ埋もれちまうんじゃねえか?」

「まあ、確かに」

「だからよお! 普通に料理して勝てねえんなら、トリッキーな物作って審査員の度肝を抜いてやろうぜ!」

「なるほド!」



 紅花はまるで天啓を受けたかのように首を激しく縦に振る。

 いや、それはなるほどなのか……? 特に予選では料理の味を重点的に審査される。つまりは基礎がしっかりしているかどうかを見られるのだ。

 スタンダードな料理が並ぶ中にトリッキーな料理を作ろうと言うのは、長距離走でみんなが普通に走っている中、一人だけ逆立ちでゴールに向かうようなものだ。

 何だかモヤモヤする。



「我は反対だ。あくまで審査員に受ける味の料理を研究するべきだろう」

「そうだな! 審査員に受けるトリッキーな料理を作ろう!」



 あくまでトリッキーさにこだわるらしい。



「審査員に受けるトリッキーな料理とは」

「それは超! 健康食だ!」

「健康食?」

「審査員の連中は年寄りが多い! だから健康食品には絶対ピラニアのように食い付くぜ!」

「うんうん!!」



 紅花の目はこれ以上無いくらい輝いている。こいつはピュア過ぎてフライパンとか騙されて買っちゃうタイプの人間だ。

 にしてもお年寄りに対して健康食というのも安直過ぎる気がするのだが。



「ってわけでよお! 超健康カレー作って行こうぜえ!」

「いいネ!」



 あんまり美味しくなさそうなネーミングだ。



「しかしニック。健康食の作り方は知っているのか?」

「そんなもん適当で良いだろ!」

「いいわけがあるか」

「栄養食ってことはよお! 栄養の入ってる食い物ってことだろ!」



 何なんだその頭痛が痛いみたいな文章。



「つまり栄養のあるモンをぶち込めば良いんだよ!」

「なるほド!」

「いや成る程じゃない。それ絶対闇鍋みたいになる奴だろ。」

「まあまあ、まな板とか入れないから」

「当たり前だろう! 貴様は審査員を毒殺する気か!」

「ってわけで今から食材を揃えてくるぜ!」
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