職場は超ブルー

森山 銀杏

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グリーンこと緑川くんの疑問

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 ◆
ある日、謎の光線が地球に降り注いだ。

その光線により、超人となった五人の戦士。

彼らこそ、選ばれし勇者。人は彼らをファイバーズと呼ぶ!!

 ◆


オレが選ばれた戦士だと聞かされたときには嬉しかった。

昔から強い事に憧れていた。

強いってのは男のあこがれだ。理由なんていらない。

強いのに憧れるのが男ってもんじゃないか。

だからオレは小さい頃から柔道を習った。

親父が柔道をやってて、進めてくれたってこともあるけど、投げ技ってのがかっこよく見えたんだ。派手だったから。

オレは多分、素質ってやつがあった。体が大きかったんだ。

そんなオレだったからヒーローになれると言われて有頂天になった。選ばれた戦士って響きが胸にきた。

思ったね。オレはこの為に体を鍛えてきたんだって。

ああ、思った。思ってたんだ。

でもさ。

「じゃあ、行くからね」

青島さんがそう言って手元のハンドルを握る。

ドォンと轟音がして、オレの目の前をワゴン車が転がるようにしてぶっ飛んでいく。

車は鉄がひしゃげる音を出しながら、地面を三回転してようやく止まる。

オレの横で黄野さんが能天気に拍手をして、それに釣られるように桃も拍手をする。

二人の間に挟まれていたオレは呆然とするしかない。

そんな事は気にした様子も無く、青島さんはぶっ飛んだ車に関して説明をし始めた。

「C4はそれ単体だと有効範囲はさほど広くはないけど、応用でこんな事も出来る。車、岩、電信柱を武器にすることも出来る。その後は障害物としても使えるね」

青島さんはそう言って足下に置いてあったクリップボードを拾い上げる。

「例えば、このようにT字路で使うと敵を直線に薙ぎ払える」

青島さんの手に持っているクリップボードにはT字路が書かれていて、車の絵の書かれた磁石と敵と書かれた丸い磁石が張り付いていて車の動きをシミュレーションしてくれる。

青島さんはなるべく分かりやすいようにと教えてくれる。

「でも実際はまっすぐに転すのは難しい。桃山ちゃん。なんでだと思う?」

指差された桃はちょっと考えてから言った。

「え、ええっと……爆弾の場所が悪い?」

「そうだね。そういう事もある。そもそも車っていうのは重心が前後に偏っているんだ。ハイ、黄野さんなんでだ?」

「ええっ? 車の事なんて知らないし」

「知っておくと男の子は喜ぶかもしれないよ。今の子はあんまり興味がないかもしれないけど」

「青島さーん。覚える気を削がないでよぉ」

「はははは。ごめんごめん。エンジンの位置は車種によって違うんだよ」

「えっ? そうなの?」

黄野さんがそう驚いた声を上げた。

「前にあったり、後ろにあったりね。だから重心が真ん中に無い。だからまっすぐ飛んだら良いな位の気持ちでやる事。じゃあ、緑川君。実際にやってみようか」

青島さんは笑顔でオレにそう言った。今日は火曜日。ファイバーズの特訓の日だ。

最近、オレは特訓の日を迎えるたびに、強さというのがなんだか良くわからなくなるのだ。

これで青島さんが目に見えて強そうなら、オレは何も思わなかったのかもしれない。

ファイバーズで唯一の大人。ずっと傭兵をしていたらしい。

傭兵って言うと戦いを食べ物にしている人で、漫画とかでしか見た事が無い。

どうして日本人で傭兵なのか、よくは聞いてない。

でも兵器の取り扱い方の知識や、技術は本物だ……と思う。

なんと言うか、説明に澱みが無く、どんな武器の質問をしてもすらすらと使用法や、爆弾の使い方などを教えてくれる。さっきみたいに図入りでわかりやすいし、普通の人の良さそうな先生のような雰囲気がある。

だけど正直強そうに見えない。ロッカー室でちらりと見えた体の筋肉はすごかったけど。

それがオレにとっては不思議で、同時に不気味でもある。

オレの回りに居る強そうな人は自信にあふれているようなオーラがあった。

威張っているって言っても良かったかもしれない。強い人っていうのはそういうのが当たり前で、なんと言うか……自分に自信を持っている感じがあるものだと思ってた。

柔道の師範も、親父も、学校の不良達もそんな感じだ。

でも青島さんはそうじゃない。

腰が低い。青島さんの上司の大林さんの前ではへこへこしている。

『青島さん、腰が低すぎるんじゃない?』

そんな黄野さんの言葉に、青島さんは笑って答えた。

『そりゃそうだよ、大人だからね』

そう言った青島さんの言葉をオレはあんまり好きじゃない。

大人になるってへこへこするってことじゃないと思う。でも青島さんはオレの知っているどんな大人よりもすごい力を持っている。親父がどれだけ努力したって、ワゴン車を回転させて転がしたりは出来ない。それは何でも無い事ではないはずだ。

でも青島さんは威張ったりしない、普通なんだ。それがオレにはとてつもなく不思議だった。

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