9 / 41
グリーンこと緑川くんの疑問
しおりを挟む◆
ある日、謎の光線が地球に降り注いだ。
その光線により、超人となった五人の戦士。
彼らこそ、選ばれし勇者。人は彼らをファイバーズと呼ぶ!!
◆
オレが選ばれた戦士だと聞かされたときには嬉しかった。
昔から強い事に憧れていた。
強いってのは男のあこがれだ。理由なんていらない。
強いのに憧れるのが男ってもんじゃないか。
だからオレは小さい頃から柔道を習った。
親父が柔道をやってて、進めてくれたってこともあるけど、投げ技ってのがかっこよく見えたんだ。派手だったから。
オレは多分、素質ってやつがあった。体が大きかったんだ。
そんなオレだったからヒーローになれると言われて有頂天になった。選ばれた戦士って響きが胸にきた。
思ったね。オレはこの為に体を鍛えてきたんだって。
ああ、思った。思ってたんだ。
でもさ。
「じゃあ、行くからね」
青島さんがそう言って手元のハンドルを握る。
ドォンと轟音がして、オレの目の前をワゴン車が転がるようにしてぶっ飛んでいく。
車は鉄がひしゃげる音を出しながら、地面を三回転してようやく止まる。
オレの横で黄野さんが能天気に拍手をして、それに釣られるように桃も拍手をする。
二人の間に挟まれていたオレは呆然とするしかない。
そんな事は気にした様子も無く、青島さんはぶっ飛んだ車に関して説明をし始めた。
「C4はそれ単体だと有効範囲はさほど広くはないけど、応用でこんな事も出来る。車、岩、電信柱を武器にすることも出来る。その後は障害物としても使えるね」
青島さんはそう言って足下に置いてあったクリップボードを拾い上げる。
「例えば、このようにT字路で使うと敵を直線に薙ぎ払える」
青島さんの手に持っているクリップボードにはT字路が書かれていて、車の絵の書かれた磁石と敵と書かれた丸い磁石が張り付いていて車の動きをシミュレーションしてくれる。
青島さんはなるべく分かりやすいようにと教えてくれる。
「でも実際はまっすぐに転すのは難しい。桃山ちゃん。なんでだと思う?」
指差された桃はちょっと考えてから言った。
「え、ええっと……爆弾の場所が悪い?」
「そうだね。そういう事もある。そもそも車っていうのは重心が前後に偏っているんだ。ハイ、黄野さんなんでだ?」
「ええっ? 車の事なんて知らないし」
「知っておくと男の子は喜ぶかもしれないよ。今の子はあんまり興味がないかもしれないけど」
「青島さーん。覚える気を削がないでよぉ」
「はははは。ごめんごめん。エンジンの位置は車種によって違うんだよ」
「えっ? そうなの?」
黄野さんがそう驚いた声を上げた。
「前にあったり、後ろにあったりね。だから重心が真ん中に無い。だからまっすぐ飛んだら良いな位の気持ちでやる事。じゃあ、緑川君。実際にやってみようか」
青島さんは笑顔でオレにそう言った。今日は火曜日。ファイバーズの特訓の日だ。
最近、オレは特訓の日を迎えるたびに、強さというのがなんだか良くわからなくなるのだ。
これで青島さんが目に見えて強そうなら、オレは何も思わなかったのかもしれない。
ファイバーズで唯一の大人。ずっと傭兵をしていたらしい。
傭兵って言うと戦いを食べ物にしている人で、漫画とかでしか見た事が無い。
どうして日本人で傭兵なのか、よくは聞いてない。
でも兵器の取り扱い方の知識や、技術は本物だ……と思う。
なんと言うか、説明に澱みが無く、どんな武器の質問をしてもすらすらと使用法や、爆弾の使い方などを教えてくれる。さっきみたいに図入りでわかりやすいし、普通の人の良さそうな先生のような雰囲気がある。
だけど正直強そうに見えない。ロッカー室でちらりと見えた体の筋肉はすごかったけど。
それがオレにとっては不思議で、同時に不気味でもある。
オレの回りに居る強そうな人は自信にあふれているようなオーラがあった。
威張っているって言っても良かったかもしれない。強い人っていうのはそういうのが当たり前で、なんと言うか……自分に自信を持っている感じがあるものだと思ってた。
柔道の師範も、親父も、学校の不良達もそんな感じだ。
でも青島さんはそうじゃない。
腰が低い。青島さんの上司の大林さんの前ではへこへこしている。
『青島さん、腰が低すぎるんじゃない?』
そんな黄野さんの言葉に、青島さんは笑って答えた。
『そりゃそうだよ、大人だからね』
そう言った青島さんの言葉をオレはあんまり好きじゃない。
大人になるってへこへこするってことじゃないと思う。でも青島さんはオレの知っているどんな大人よりもすごい力を持っている。親父がどれだけ努力したって、ワゴン車を回転させて転がしたりは出来ない。それは何でも無い事ではないはずだ。
でも青島さんは威張ったりしない、普通なんだ。それがオレにはとてつもなく不思議だった。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる