職場は超ブルー

森山 銀杏

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上司こと大林と悲しい神託

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「えっ?」

三十七階と三十六階の隙間、秘密のその空間で大林は驚きの声を上げた。

何と言うべきか悩み、考え……結局は最初に思いついた言葉を口にする。

「正気ですか?」

考えてみれば、これほどバカらしい質問も無いように思う。正気であれば正気であると答えるし、正気を失っていても正気であると答えるからだ。

だが返ってきた返事は予想とは違っていた。

『正気じゃねえよ。ハマンディ局長は、もう年だ。新しいものの作り方ってのを全く理解してねぇ』

大林が話しているのはシナリオ班の一人、カブトムシだった。

「局長からの指示なのですか?」

『おうよ……全話見直して、問題点を上げたんだとさ。視聴者には映像以外の事はわからないだとご高説まで垂れたそうだぜ』

その言葉に込められた陰々滅々とした気持ちはさておき、大林は何とも複雑な気分になった。

自分は調整に必要だからと作られて、あれこれ調整している。

地球の価値観の一つに人間は神様が作ったものであるらしい。

作ったものが神なのだとすれば、自分に取ってはこの番組スタッフ達が神なのかもしれない……だがそんな彼等とて、それでもどうにもならない事がある。

世知辛いことだと思うべきか、それで納得するべきなのか、おそらくは自分と同じ境遇のものしか理解してもらえない複雑な気分だった。

『異世界TVってのは、局長のさ。書き割りと段本でテレビを作ってた世代とは全然違うんだ。こっちの演出が本気でぶつかって、異世界の奴がそれに全力で答える。本気と本気の殴り合いなんだ。その本気が視聴者も伝わるんだ』

「ええ……ファイバーズに所属しているものはいつも真剣です」

そう……いつも本気だ。理不尽に選ばれて、戦いを強要されていても、それで誰かを守れるならと頑張っている。

自分が逃げれば、その分他の仲間に負担をかけるから、あるいは既に掛かっている負担を軽減する為に。

『わかってないんだよな。ロートルの意見なんか要らないってのに』

気に食わない事を隠そうともせず、カブトムシは吐き捨てるようにそう言った。

「……変更は無いんですね?」

確認する大林に、カブトムシは答える。

『ああ、本気らしい。局長から言われて、先日正式にキリマンさんから話を聞いた』

彼の表情は読みにくいが、それでも暗いのがわかる。口調も元気が無い。

『ひでえこというよ。シナリオもどう変化するか……メインのライターも頭抱えてるし』

まあ、それはいい気味だけど、とカブトムシがこぼした言葉を大林は聞く。

『正直、この後どうなるかは……わかんねぇんだ。新しい人員をファイバーズに入れるのか。5人の勇者ってんだから入れるのかもしれないし。入れないまんまかもしれない。でも適当な人間の当たりは付けといてくれ』

その言葉に感情無く返事を返しながら、大林は青島の事を考えていた。

子供達を気遣い、鍛えながら戦いに挑み、今日の今日まで戦ってきた。

彼は自分が正しいと信じた事を大人の責任として行ってきた。

武器を日常で渡す事を反対した彼を過保護だとあのとき私は言った。

武器くらいいいじゃないか、と私は思っていた。

青島君はそれを許さなかった……そう言う所が彼の寿命を縮めたのだろうか?

正しいのはどちらなのだろうか?

責任を果たそうとせずに生き残ること。

それとも責任を果たそうとして死んでしまうこと。

作られた生命である自分には、そのどちらが良いのかわからない。

ただそう……立派であろうとする、大人の矜持を守ろうとしている彼が良い人間なのだろうとは思う。

そんな立派な人間であろうとする人が、理不尽に死ぬのは悲しいことだ。

子供達はきっと悲しむ。そして立ち直るのだろうか?

青島の死を糧にしてより強く、団結して、あいた穴を埋める為に頑張るのだろうか?

そんな姿を見て、視聴者は勇気づけられ、自分も頑張ろうと思うのかもしれない。

そう大林は思いながら、自分の神に逆らう事はせず、今後の段取りに関する話を聞いていた。
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