職場は超ブルー

森山 銀杏

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決戦前 上司こと大林

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んっ……ゴクッ。

真っ暗な空間、三十七階と三十六階の秘密空間で大林は一人、パイプ椅子に座っていた。

目の前には昨日まで無かった24インチのテレビと、見やすい高さに置く台が増えている。

いや……それ以外にも増えているものが二つあった。

一つはパイプ椅子の横に置かれた日本酒の一升瓶。

もう一つは大林が持っている安っぽい使い捨ての紙コップ。そこには既に日本酒が入っている。

それをつまみも無く、チビチビとやりながら……大林は時間になるのを待っていた。

午前中から酒盛りとはお気楽だなと自虐しながら、大林の顔は楽しそうでは無い。

これから彼は目の前のテレビで殺人をみるのだ。殺されるのは自分の部下の青島だ。

自分を作った人間に頼んで、青島の———ブルーの戦いをリアルタイムで見れるようにしてもらった。

知り合いと言うには親しいが、友人と呼ぶには遠い。

上司と部下と言う関係であったが、それに関わったものとして……見届けるべきだと大林は思ったのだ。

自分以外はこれが殺人だとも思わないだろう。酒が少し回った頭でそう思う。回ってなければこんなに露骨には考えられなかったかもしれない。

だがこれは殺人だ。異世界の向こうのやつが意図的に青島を殺すのだ。これを殺人と言わずなんとする。

今日、青島は異世界の都合で死ぬのだ。

それに関わったものとして、そして大きな流れに抗えなかったものとしてそれを見届けておく義務があると大林は思った。

彼は異世界から送り込まれた人工生命だが、高度な判断が可能なように自意識も持っている。

青島は結局一人で戦うと言う。子供達は居ない。

この世界で……誰かの為に戦うその姿を一人も見てないと言うのはあんまりだと大林は思っていた。

怒りなのか、悲しみなのか、それとも哀れみなのか。

いまいち判断は出来ないが、しらふで見る事も出来ず、酒の力を借りていると言う訳だ。

大林が青島と喋ったのは金曜日が最期になる。つまらない会話だった。

つまらない……いつもの会話をした。土曜日に電話しようかと思ったくらいだ。

だがしなかった。

できれば……生き残ってほしい。だが出来る訳も無い。

大林に取って、自分を作ったTV局は神に等しい。それが青島を殺すと断言したのだ。

絶対に殺される。いや、今まではむしろ生かされてきたのだ。

主役の登場人物が勝手に死んではお話にならない。物語にならない。

侵略と言うのは嘘なのだ。

青島を始めとしたファイバーズのメンバーは努力に寄って勝利していると思わされているだけだ。

実際は勝たされている。

悪魔のようなマッチポンプで、戦わされて、勝たされている。

そんな加護が無くなって、どうして生きていられようか。

大林に出来るのはその無駄なあがきを止めないでいる事だけだった。

青島が何か……いろいろ準備しているのは知っていたが、それを見ないふりをした。

大林にしてやれるのはそんな事だけだった。

つまらない事だ。結局は、走りたいように走らせてやる事しか出来ない。

邪魔をしないだけ……ただそれだけだ。

一升瓶で足りるかなと思う。大林にはそれが心配と言えば心配だった。
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