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前編
21.犯罪者ギルド『白い教会』に捕まってしまった!(2)
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「レナード・リー・フィンドレイと言えば女王の『お気に入り』の一人…だったよね?まだ若いのに、死んでしまうなんて……。」
茶髪に青い瞳の女の子が悲しそうに俯いた。ノドム程ではないが耳が尖っていて、優しそうな顔つきだ。一見子供に見えるが、4頭身のホビットでおそらく見た目程若くないだろう。エラはこの女性だけはまだ話が通じるように感じた。
「ただの『お気に入り』じゃない。フィンドレイ家の次男と言えば、あのマクファーレン校主席で、しかも金髪美青年という女王の好みドンピシャの男だ。おまけに年齢の割に人格者だったらしく、不安定な女王にとって精神的な拠り所になっていたそうだ。それを昨日女王自らの手で殺してしまった!これほど愉快な事があるか!」
針鼠はケラケラ笑っている。ここにいる大半の人間が針鼠と同様に笑った。一方で数人はホビットの女性と同じように微妙な表情でいた。この組織も一枚岩ではないようだ。
「しかも時期が良い! 嫌な事は立て続けに起きた方がダメージが大きいだろ? ここで俺たち『白い教会』が計画を実行すれば、奴は立場だけでなく精神的にも追い込まれるはずだ。それに、あの腰抜けのフィンドレイ公爵も息子が殺されたとあってはさすがに黙ってないだろ。接触を図る価値は十二分にあるはずだ。」
エラは息をのんだ。
_俺たち『白い教会』
針鼠はそう言った。
やはり、エラを拉致した彼らは『白い教会』___つまり、国を揺るがす犯罪者集団だったのだ!
「あ、あなた達『白い教会』なのね?あの、犯罪者ギルドの……」
エラは頭が混乱して咄嗟に思った事を口にしてしまった。
「……『犯罪者ギルド』……?」
さっきまで様々な反応を見せていた全員が一斉にエラを凝視した。
エラは口を抑えて顔を真っ青にした。
「『白い教会』は犯罪者ギルドなんかじゃ……!……ううん……他の人たちから見ればそんなもの、だよね……。」
ホビットの女性が悲しそうに顔を曇らせた。ホビットの女性の肩にもう一人の女性が手を乗せた。
その女性は黒髪黒目の___エラと同じイシ族だった。イシの女性は髪を短く切っていて男の服を着ていた。エラよりも随分背が高く一瞬男かとも思ったが、豊満な胸が彼女の性別を主張していた。
「『白い教会』は正義のギルドだ。犯罪者ギルドなんかじゃないさ。」
(……?)
エラはあれ、と思った。イシの女性の声に聞き覚えがあった。しかし、どこで聞いた声だったかが思い出せない。
「私達は女王の_今の王政府の蛮行を止めたい。」
「……蛮行?」
イシの女性は頷いた。
「6年前女王が王位について以来、増税に増税を重ねて、多くの平民が苦しんできた。特にここロウサでは慢性的に食糧が不足している。とりわけパンの急騰には多くの人々が苦しめられた。しかし2年前の歴史的な小麦の不作に見舞われた時、王政府は構わず民から金を巻き上げた。」
「……」
「どれだけ多くの人間が餓死したか、パン一欠片を手に入れるのにどれだけ苦労したか、お前達貴族は知らないだろう!私は2年前母さんを失った!たった一人の家族だったのに!」
イシの女性は怒りで目をカッと開いてエラを睨んだ。エラは絶句した。周囲の人間も憎々しげにエラを睨んでいる。
エラは平民の暮らしがそんな状況になっている事を知らなかった。気にもしなかった。毎日、如何に貴族の娘として立派に振る舞うか、そればかりを考えて生きてきた。
エラはイシの女性や他の人々の視線が耐えられなかった。
「そして、今、女王は南の国ヒートンと大きな戦争をしようとしている。今までにない、とても大きな戦争を、だ。とんでもない事だ。民はいまだに困窮した生活を強いられている。それもお構いなしに、王政府は自由なギルドを廃し、兵力増強のためにまた新たな税を課した。これ以上は限界だ。私たちは女王を止めなければならない。」
「そ、それって……!」
エラは緊張で胸がバクバクと鳴った。
「___『白い教会』は犯罪者ギルドじゃない。革命軍だ!!」
「!!」
エラは雷に撃たれたような衝撃が走った。
犯罪者ギルド『白い教会』。
彼らはただ悪事を繰り返すだけの犯罪者集団などではなかった。
彼らは、本気で国をひっくり返そうとしているのだ!
「あ、あなた達は、女王様をこ、殺そうとしているの?」
「ああ、そうだ。」
エラは頭がおかしくなりそうだった。もし、本当に万が一彼らの革命が成功すれば、国は今とは全く違う形に生まれ変わってしまうかもしれない。この国が変わる?ありえない!
「そんな……ありえない……。王家やそれに近しい人々は女神様の血を受け継いでるのよ? そんな方達を弑してあなた達ただの平民が万一政権を握った所で、他の民や貴族は従わないわ。貴族達が政権を巡って争いを起こし、国が崩壊するだけよ…。平民による反乱の可能性だってあるわ。あなた達は今度は同じ平民同士で殺し合う事になるかもしれないのよ?」
「__『白い教会』はただの平民の集まりじゃないさ。いや、私達はそうなんだが……。」
イシの女性は首をふった。そして、ここまでの長い話の中でようやく初めてエラから視線をはずし、顎である方向を指した。エラはその方向を見る。
その先には針鼠がいた。針鼠はやはり、全てがくだらない、という表情でおもちゃの短剣を手の平で回転させていた。
「針鼠はこの国、ローフォードの王子だ。」
「………………………え?」
茶髪に青い瞳の女の子が悲しそうに俯いた。ノドム程ではないが耳が尖っていて、優しそうな顔つきだ。一見子供に見えるが、4頭身のホビットでおそらく見た目程若くないだろう。エラはこの女性だけはまだ話が通じるように感じた。
「ただの『お気に入り』じゃない。フィンドレイ家の次男と言えば、あのマクファーレン校主席で、しかも金髪美青年という女王の好みドンピシャの男だ。おまけに年齢の割に人格者だったらしく、不安定な女王にとって精神的な拠り所になっていたそうだ。それを昨日女王自らの手で殺してしまった!これほど愉快な事があるか!」
針鼠はケラケラ笑っている。ここにいる大半の人間が針鼠と同様に笑った。一方で数人はホビットの女性と同じように微妙な表情でいた。この組織も一枚岩ではないようだ。
「しかも時期が良い! 嫌な事は立て続けに起きた方がダメージが大きいだろ? ここで俺たち『白い教会』が計画を実行すれば、奴は立場だけでなく精神的にも追い込まれるはずだ。それに、あの腰抜けのフィンドレイ公爵も息子が殺されたとあってはさすがに黙ってないだろ。接触を図る価値は十二分にあるはずだ。」
エラは息をのんだ。
_俺たち『白い教会』
針鼠はそう言った。
やはり、エラを拉致した彼らは『白い教会』___つまり、国を揺るがす犯罪者集団だったのだ!
「あ、あなた達『白い教会』なのね?あの、犯罪者ギルドの……」
エラは頭が混乱して咄嗟に思った事を口にしてしまった。
「……『犯罪者ギルド』……?」
さっきまで様々な反応を見せていた全員が一斉にエラを凝視した。
エラは口を抑えて顔を真っ青にした。
「『白い教会』は犯罪者ギルドなんかじゃ……!……ううん……他の人たちから見ればそんなもの、だよね……。」
ホビットの女性が悲しそうに顔を曇らせた。ホビットの女性の肩にもう一人の女性が手を乗せた。
その女性は黒髪黒目の___エラと同じイシ族だった。イシの女性は髪を短く切っていて男の服を着ていた。エラよりも随分背が高く一瞬男かとも思ったが、豊満な胸が彼女の性別を主張していた。
「『白い教会』は正義のギルドだ。犯罪者ギルドなんかじゃないさ。」
(……?)
エラはあれ、と思った。イシの女性の声に聞き覚えがあった。しかし、どこで聞いた声だったかが思い出せない。
「私達は女王の_今の王政府の蛮行を止めたい。」
「……蛮行?」
イシの女性は頷いた。
「6年前女王が王位について以来、増税に増税を重ねて、多くの平民が苦しんできた。特にここロウサでは慢性的に食糧が不足している。とりわけパンの急騰には多くの人々が苦しめられた。しかし2年前の歴史的な小麦の不作に見舞われた時、王政府は構わず民から金を巻き上げた。」
「……」
「どれだけ多くの人間が餓死したか、パン一欠片を手に入れるのにどれだけ苦労したか、お前達貴族は知らないだろう!私は2年前母さんを失った!たった一人の家族だったのに!」
イシの女性は怒りで目をカッと開いてエラを睨んだ。エラは絶句した。周囲の人間も憎々しげにエラを睨んでいる。
エラは平民の暮らしがそんな状況になっている事を知らなかった。気にもしなかった。毎日、如何に貴族の娘として立派に振る舞うか、そればかりを考えて生きてきた。
エラはイシの女性や他の人々の視線が耐えられなかった。
「そして、今、女王は南の国ヒートンと大きな戦争をしようとしている。今までにない、とても大きな戦争を、だ。とんでもない事だ。民はいまだに困窮した生活を強いられている。それもお構いなしに、王政府は自由なギルドを廃し、兵力増強のためにまた新たな税を課した。これ以上は限界だ。私たちは女王を止めなければならない。」
「そ、それって……!」
エラは緊張で胸がバクバクと鳴った。
「___『白い教会』は犯罪者ギルドじゃない。革命軍だ!!」
「!!」
エラは雷に撃たれたような衝撃が走った。
犯罪者ギルド『白い教会』。
彼らはただ悪事を繰り返すだけの犯罪者集団などではなかった。
彼らは、本気で国をひっくり返そうとしているのだ!
「あ、あなた達は、女王様をこ、殺そうとしているの?」
「ああ、そうだ。」
エラは頭がおかしくなりそうだった。もし、本当に万が一彼らの革命が成功すれば、国は今とは全く違う形に生まれ変わってしまうかもしれない。この国が変わる?ありえない!
「そんな……ありえない……。王家やそれに近しい人々は女神様の血を受け継いでるのよ? そんな方達を弑してあなた達ただの平民が万一政権を握った所で、他の民や貴族は従わないわ。貴族達が政権を巡って争いを起こし、国が崩壊するだけよ…。平民による反乱の可能性だってあるわ。あなた達は今度は同じ平民同士で殺し合う事になるかもしれないのよ?」
「__『白い教会』はただの平民の集まりじゃないさ。いや、私達はそうなんだが……。」
イシの女性は首をふった。そして、ここまでの長い話の中でようやく初めてエラから視線をはずし、顎である方向を指した。エラはその方向を見る。
その先には針鼠がいた。針鼠はやはり、全てがくだらない、という表情でおもちゃの短剣を手の平で回転させていた。
「針鼠はこの国、ローフォードの王子だ。」
「………………………え?」
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