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後編
70.城に侵入するため『劇場車』に乗らせてもらったエラ。しかし、それには条件があった(3)
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「!!!」
エラは急いで歌姫に駆け寄った。パッと見た感じ血は出ていない様だった。歌姫の状態を確認しようと、両肩を掴む。だが、エラは歌姫にばかり気を取られていて、気がつかなかった。エラの背後で巨大な鋭い口が牙を向けていた事を____
「____『歩く月』?!」
エラは振り返り、叫ぶので精一杯だった。
エラのすぐ後ろには、魔獣と同化し巨大化した蛇女_『歩く月』の女ギルド長がいた。
___頭がカゴごと、巨大な牙に噛み砕かそうになる
エラは身体中から血の気がひき、歯を食いしばる。
「_____!!」
しかし、その瞬間、誰かの手に服を掴まれて強い力で引っ張られる。宙に浮く感覚。そして、上下から鋭い牙が、ガッ!!と鈍い音を立ててエラのギリギリ横で交差する。エラの体が床に転がる。
「人の女に手ぇ出してんじゃねえよ。」
「ふふ…会いたかったよぉ。_針鼠。」
蛇女はニタッ…と嫌らしく笑った。
エラをすんでのところで助けたのは、針鼠だった。
「魔獣に同化すると鼻が効くようになるんだ。おかげでアンタ達の場所がわかったよ。」
貴族の格好をしたままの針鼠は腰につけた剣を抜く。いつものロングソードではなく、舞台用の偽物のレイピアだ。
「…ちッ、分が悪い。」
エラは、針鼠が見えるように急いで魔法でステージ下の空間が一望できるように大きな光をともす。見ると、蛇女だけでなく、『歩く月』の手下も何人かいて、武器を構えていた。エラも杖を構えて、魔法で氷を精製し手下達にぶつけた。
蛇女は巨大化し手と融合した斧を針鼠目掛けて右上から振り下ろす。蛇女の勢いは凄まじい。だが、スピードで言ったら、針鼠がまさっていた。針鼠は斧を素早くよける。蛇女が体勢を立て直す前に、レイピアを首元に打ち込む。しかし、偽物のレイピアは、蛇女相手では鈍器にすらならない。蛇女は針鼠の片足を大きな手で掴む。蛇女は勝利を確信し、針鼠を高く持ち上げる。その時、__
__くるくると何か黒く小さな物が飛んできて蛇女の肩にのる。それは鋭い刃物__二つのダガーで肩を切り裂いた。傷そのものは浅いようだったが、蛇女は奇声をあげて針鼠を振り回し、投げ飛ばす。針鼠は瞬時に受け身をとり、地面に着地する。蛇女の肩に乗った黒い物体も地面に放り出され着地する。黒い物体の正体は、ダガーを持った翡翠だった。
「_針鼠!!」
声が聞こえ、振り返る。蜘蛛の声だ。ドタドタと足音が聞こえ、他の人たちも武器をもち、やってくる。
「__皆!」
エラはパッと顔を輝かせた。蜘蛛達が助けに来てくれたのだ。
しかし、依然として針鼠の表情は険しい。
仲間が助けに来てくれたはいいものの、ここで乱闘すれば、ステージが壊れかねない。たとえステージが無事でも劇がうまくいかなかったら、劇場車に乗ってロウサ城に侵入する作戦がダメになってしまう。
エラはかすかにステージ上から聞こえてくる王子様の歌声に耳をすました。今はまだ劇は滞りなく進んでいるようだった。
せめて、目の前の巨大化した蛇女だけでもここから離れさせなければ、劇に支障が出るだろう。
「来い!巨大女!俺が狙いなんだろ!」
針鼠は叫び、出口へと走る。蛇女は針鼠の声に反応し、それを追いかける。更に、数人の『歩く月』の手下と、神父と白銀が後を追う。
エラも針鼠達を追いかけようか少し迷った。翡翠や弟ドラ、蜘蛛が現在残って闘っているが、手は足りているようだ。
だが、針鼠達を追いかけず、歌姫役の女性が無事かどうか確認しようと判断した。エラは再び、歌姫に駆け寄る。歌姫は特に目立った外傷がなく、頭を打ちつけて気絶していたようだった。エラが揺らすと、彼女のまぶたがピクピクと動き、うっすらと目が開く。
「!!良かった!無事だったのね!……って、えっ…________」
地面が突然揺れて、エラは地に手をつく。反動でカゴが頭からすっぽ抜ける。驚いて周りを見るが、皆平然としている。エラだけがこの揺れを感じていた。
___違う。地面が揺れているのではない。エラのいる部分だけが上にどんどん上がってきているのだ。エラは今『迫り』に乗っており、今まさにステージに上がろうとしていた。エラは慌てて降りようとするがもう遅い。あっという間に周りは壁になり、そして、______
______あらゆる角度からのスポットライトに照らされてエラの魔法で見える視界は一瞬真っ白になる。続いて見える光景は、
一面、人、
人、
人、
人、人人人人人人!!!
いつも頭につけていたカゴが、カラカラと地を転がる。
エラの醜い姿は、今、大衆にさらされていた。
エラは急いで歌姫に駆け寄った。パッと見た感じ血は出ていない様だった。歌姫の状態を確認しようと、両肩を掴む。だが、エラは歌姫にばかり気を取られていて、気がつかなかった。エラの背後で巨大な鋭い口が牙を向けていた事を____
「____『歩く月』?!」
エラは振り返り、叫ぶので精一杯だった。
エラのすぐ後ろには、魔獣と同化し巨大化した蛇女_『歩く月』の女ギルド長がいた。
___頭がカゴごと、巨大な牙に噛み砕かそうになる
エラは身体中から血の気がひき、歯を食いしばる。
「_____!!」
しかし、その瞬間、誰かの手に服を掴まれて強い力で引っ張られる。宙に浮く感覚。そして、上下から鋭い牙が、ガッ!!と鈍い音を立ててエラのギリギリ横で交差する。エラの体が床に転がる。
「人の女に手ぇ出してんじゃねえよ。」
「ふふ…会いたかったよぉ。_針鼠。」
蛇女はニタッ…と嫌らしく笑った。
エラをすんでのところで助けたのは、針鼠だった。
「魔獣に同化すると鼻が効くようになるんだ。おかげでアンタ達の場所がわかったよ。」
貴族の格好をしたままの針鼠は腰につけた剣を抜く。いつものロングソードではなく、舞台用の偽物のレイピアだ。
「…ちッ、分が悪い。」
エラは、針鼠が見えるように急いで魔法でステージ下の空間が一望できるように大きな光をともす。見ると、蛇女だけでなく、『歩く月』の手下も何人かいて、武器を構えていた。エラも杖を構えて、魔法で氷を精製し手下達にぶつけた。
蛇女は巨大化し手と融合した斧を針鼠目掛けて右上から振り下ろす。蛇女の勢いは凄まじい。だが、スピードで言ったら、針鼠がまさっていた。針鼠は斧を素早くよける。蛇女が体勢を立て直す前に、レイピアを首元に打ち込む。しかし、偽物のレイピアは、蛇女相手では鈍器にすらならない。蛇女は針鼠の片足を大きな手で掴む。蛇女は勝利を確信し、針鼠を高く持ち上げる。その時、__
__くるくると何か黒く小さな物が飛んできて蛇女の肩にのる。それは鋭い刃物__二つのダガーで肩を切り裂いた。傷そのものは浅いようだったが、蛇女は奇声をあげて針鼠を振り回し、投げ飛ばす。針鼠は瞬時に受け身をとり、地面に着地する。蛇女の肩に乗った黒い物体も地面に放り出され着地する。黒い物体の正体は、ダガーを持った翡翠だった。
「_針鼠!!」
声が聞こえ、振り返る。蜘蛛の声だ。ドタドタと足音が聞こえ、他の人たちも武器をもち、やってくる。
「__皆!」
エラはパッと顔を輝かせた。蜘蛛達が助けに来てくれたのだ。
しかし、依然として針鼠の表情は険しい。
仲間が助けに来てくれたはいいものの、ここで乱闘すれば、ステージが壊れかねない。たとえステージが無事でも劇がうまくいかなかったら、劇場車に乗ってロウサ城に侵入する作戦がダメになってしまう。
エラはかすかにステージ上から聞こえてくる王子様の歌声に耳をすました。今はまだ劇は滞りなく進んでいるようだった。
せめて、目の前の巨大化した蛇女だけでもここから離れさせなければ、劇に支障が出るだろう。
「来い!巨大女!俺が狙いなんだろ!」
針鼠は叫び、出口へと走る。蛇女は針鼠の声に反応し、それを追いかける。更に、数人の『歩く月』の手下と、神父と白銀が後を追う。
エラも針鼠達を追いかけようか少し迷った。翡翠や弟ドラ、蜘蛛が現在残って闘っているが、手は足りているようだ。
だが、針鼠達を追いかけず、歌姫役の女性が無事かどうか確認しようと判断した。エラは再び、歌姫に駆け寄る。歌姫は特に目立った外傷がなく、頭を打ちつけて気絶していたようだった。エラが揺らすと、彼女のまぶたがピクピクと動き、うっすらと目が開く。
「!!良かった!無事だったのね!……って、えっ…________」
地面が突然揺れて、エラは地に手をつく。反動でカゴが頭からすっぽ抜ける。驚いて周りを見るが、皆平然としている。エラだけがこの揺れを感じていた。
___違う。地面が揺れているのではない。エラのいる部分だけが上にどんどん上がってきているのだ。エラは今『迫り』に乗っており、今まさにステージに上がろうとしていた。エラは慌てて降りようとするがもう遅い。あっという間に周りは壁になり、そして、______
______あらゆる角度からのスポットライトに照らされてエラの魔法で見える視界は一瞬真っ白になる。続いて見える光景は、
一面、人、
人、
人、
人、人人人人人人!!!
いつも頭につけていたカゴが、カラカラと地を転がる。
エラの醜い姿は、今、大衆にさらされていた。
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