聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜

文字の大きさ
5 / 57

第5話 落ちたその先は

しおりを挟む
私が眩しさに、目をしばしばさせながら目を開けると、寝転がる私の目の前に、爽やかな青空が広がっていた。

果てしなく突き抜けるように、深く、高く……、
どこまでも澄んだ青空。

わあ~っ、キレイな、あおぞらっ!!

その透き通る水色の中に、ふわふわの綿菓子のような白い小さな雲が2つ。

ふわん、ふわん……

まるで童話に出てきそうな、のどかな空だった。
こんな青空見たの、いつぶりだろ……?

綺麗で、それでいて、なんだかちょっと切ない。

青空を見ていたら、小学生の頃の運動会の練習を思い出した。
よく晴れた秋空の下、組体操の練習で運動場の土の上に寝転びながら、ちょうどこうして空を見上げていたっけ。

そう、こんなふうに……

……ん?

…………あれ??


……ちょっと待って???

そもそも、私はいま、なんで空を見上げてるんだっけ!?

ようやく、いま自分が置かれた状況の疑問に気づく。
なんか、おかしくない?
私は両目を勢いよく、パチパチさせた。
絵本とかでよくいう、目をパチクリさせるって、きっとこんな感じだと思う。

いやいや、そんなこと、呑気のんきに思ってる場合じゃない!
早く起きろ!私の脳ミソっ!!

覚醒すべく脳内をフル活動させる。
確か、イケメン眼鏡男子にお詫びを言おうと思って、ふくろう古書店に私は居たはず。
美少女の背後に黒い穴が急に出来て、私が危ないって言おうとしたら、自分が穴に落ちてしまった。
真っ暗な闇を落ちてくなかで、誰かが、たぶんイケメン眼鏡男子の彼が飛び込んで、私に手を伸ばしてくれた。
だとすると。

「……なんで、キレイな青空?」

この青空を寝転がって見上げてる状況はおかしい、と、私がやっと気がついた、その時……

耳元で吐息混じりの低音ボイスが響いた。

「っふ、……やっと、お目覚めか?」

あとで思ったんだけど、あれは吐息といきなどではなく、あきれ果てた溜息ためいきだったんだと思う。
だけど私はこの時、想像しただけでも恐ろしい状況に、固まるしかなかった。

えっと……これは、夢?

「あのさぁ、いい加減どいてくれないかな。重たいんだけど」

ゆ、夢じゃなかったーーーーーっ!!!

って情けないことに、そこまで言われてようやく気がついた!

私が寝転がる身体の下に、その低音ボイスの持ち主がいるってことにっ!!

うえぇぇえぇぇぇぇぇ~~~っ!!!
なんでぇ~~~っ!!!

「ごご、ごめんなさいっ!!!」

私は慌てて隣の草むらの上にゴロリと転がり降りた。というより、転がり落ちた。

声の主は、女子に対して結構失礼なこと(暴言)を吐きつつも、一応紳士的にも私から退くのを待っていてくれたようだ。彼の名誉のためにも、言っておく。

草むらに転げ落ちたまま、私は肘をついた状態で、つまりワンちゃんの伏せ状態の姿で、おそるおそる隣りの声の主を見た。


「うえぇっ!!!」
やっぱり!!!
可愛げのない悲鳴が思わず口から飛び出してしまった。

信じたくないけれど、どうみても私は顔面偏差値高スペックな銀髪の彼の身体の上に、ぬべっと脱力状態で寝そべり、青い空を眺めて、キレイだな~、なんて呑気に思っていたらしい。

自分の顔面が思い切っり引きってく。

っ……」

ふくろう古書店で出会った顔面偏差値高スペックな銀髪の彼が、腕をつき上体を起こそうとして、右肩を抑えて顔を苦痛に歪めた。
きっと私を抱きしめたまま落下したときに、私を衝突の衝撃から守ってくれたから、彼自身はうまく受け身がとれないまま地面にぶつけてしまったんだ。

どうしよう、どこか怪我しちゃったのかな。

「あ、あの……」

落ちる時に外れたのか、今は黒縁眼鏡をしていない。
涼し気な目元が、ますますよく見える。
彼はきれいな眉間を寄せて、乱れた銀の前髪からチラリと見える苦痛に耐える表情は、男らしく色気があって、かっこいい、と不謹慎にも見とれてしまう。

頬から顎へ滑らかなライン、すべすべの白い肌に切れ長の目、高くスッと整った鼻筋。形の良い唇。伏せられた長い睫毛。
二次元で見慣れているせいか、再び、顔のパーツを瞬時に分析してしまった。
やっぱり、完璧。
けれど、二次元で見慣れているとはいえ、この至近距離でこの色気は心臓に悪い。
それに。
二次元とリアルは、やっぱり違う!

きっと、口をぽかんと開けたまま、彼に声を掛けられるまで、私は見とれてたと思う。

「怪我は?」
「……え?」
「どっか痛むとことか、ない?」

我に返った私は、驚いた。
だって。
あなたのほうが痛そうなのに、私の心配してくれるの?
泣きそうになる。

「ない、です」
「なら、いい」

古書店で聞いてたより、低めの少しぶっきらぼうな声。
薄い長袖のシャツの下に、なんとなくわかってしまう筋肉質の腕で、支えるとやっぱり痛そうに身体を起こす彼に、慌てて訊く。

「あの、大丈夫ですか?」

控えめに言った私に、彼はチラリと私に視線を移した。
今は黒縁眼鏡もかけてないから、レンズ越しではなくて、初めて彼と本当に視線があったような気がする。
静かなコバルトブルーの瞳。
きらりと日の光が反射する。
私は口を開けてほうけた顔のまま、硬直してしまった。

はいっ!石になりましたぁ。

自分自身、内心バカなツッコミをする。

「……大丈夫、じゃない」
彼がボソッと言った。

ええーっ!?どど、どうしようっ!?
大丈夫じゃないって言われても。

「え、えっと……」

慌てふためく私とは対照に、彼は立ち上がり冷静に言った。

「悪いけど、状況はかなりマズい。俺と一緒に来てもらえるかな」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

追放聖女35歳、拾われ王妃になりました

真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。 自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。 ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。 とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。 彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。 聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて?? 大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。 ●他作品とは特に世界観のつながりはありません。 ●『小説家になろう』に先行して掲載しております。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

お妃候補を辞退したら、初恋の相手に溺愛されました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のフランソアは、王太子殿下でもあるジェーンの為、お妃候補に名乗りを上げ、5年もの間、親元を離れ王宮で生活してきた。同じくお妃候補の令嬢からは嫌味を言われ、厳しい王妃教育にも耐えてきた。他のお妃候補と楽しく過ごすジェーンを見て、胸を痛める事も日常茶飯事だ。 それでもフランソアは “僕が愛しているのはフランソアただ1人だ。だからどうか今は耐えてくれ” というジェーンの言葉を糧に、必死に日々を過ごしていた。婚約者が正式に決まれば、ジェーン様は私だけを愛してくれる!そう信じて。 そんな中、急遽一夫多妻制にするとの発表があったのだ。 聞けばジェーンの強い希望で実現されたらしい。自分だけを愛してくれていると信じていたフランソアは、その言葉に絶望し、お妃候補を辞退する事を決意。 父親に連れられ、5年ぶりに戻った懐かしい我が家。そこで待っていたのは、初恋の相手でもある侯爵令息のデイズだった。 聞けば1年ほど前に、フランソアの家の養子になったとの事。戸惑うフランソアに対し、デイズは…

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~

バナナマヨネーズ
恋愛
メローズ王国の姫として生まれたミリアリアだったが、国王がメイドに手を出した末に誕生したこともあり、冷遇されて育った。そんなある時、テンペランス帝国から花嫁候補として王家の娘を差し出すように要求されたのだ。弱小国家であるメローズ王国が、大陸一の国力を持つテンペランス帝国に逆らえる訳もなく、国王は娘を差し出すことを決めた。 しかし、テンペランス帝国の皇帝は、銀狼と恐れられる存在だった。そんな恐ろしい男の元に可愛い娘を差し出すことに抵抗があったメローズ王国は、何かあったときの予備として手元に置いていたミリアリアを差し出すことにしたのだ。 ミリアリアは、テンペランス帝国で花嫁候補の一人として暮らすことに中、一人の騎士と出会うのだった。 これは、残酷な運命に翻弄されるミリアリアが幸せを掴むまでの物語。 本編74話 番外編15話 ※番外編は、『ジークフリートとシューニャ』以外ノリと思い付きで書いているところがあるので時系列がバラバラになっています。

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

処理中です...