聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜

文字の大きさ
9 / 57

第9話 馬車の中の会話

しおりを挟む
城を出た後、私とレイファスくんは再び馬車で向かい合って座り、揺られていた。
夜の街は人通りもなく、ゴトゴトと馬車の音だけが聞こえる。
街の中心部では、ときおり居酒屋のようなお店に明かりが灯っていたりもしたけれど、やがてそれらもなくなり、月夜の光の中、静かな街を抜けていく。
彼は相変わらず無口で、馬車の窓枠に肘をついて外の景色を眺めている。

ちょっと、気まずい……。

「……あの、レイファスくん」

「レイ」
「はい?」
「レイだ。、あんたのことをミツキと呼ぶ。だから、あんたもレイでいい」

あ、そこ?
……こだわってたんですね。

「……わ、わかりました」

ようやく彼が、紺青こんじょうをこちらに向けた。
森の中の深い湖の底のような、冴え冴えとしたブルーサファイアの色が、冷たい水を連想させるのか、クールにも見えてしまう。

「あの、レイ。ごめんなさい」
「は?なんで謝る?」
「あ、あの……色々迷惑かけちゃって。勝手に私がこの世界に来ちゃったし、聖女様の邪魔もしちゃったし、二週間もお世話になることになっちゃって……」

なんか言ってて、自分が情けなくて、胸のあたりがぎゅっとなってしまった。
膝に乗せた両手を握りしめる。
ダメだ、声が震えそう……。
スカートに寄ったしわをぼんやり眺めた。
鼻の奥がツンと痛くなるのを飲み込んで、私は顔をあげて笑顔を作った。

「あの、ほんとに私のことはお構いなく。町の宿屋さんで大丈夫ですので!」
「………………」
「あ、お金は持ってないので、少しお貸しいただければ有り難いのですけど…アハ、ハハ……」

「無理して、笑わなくてもいいんじゃないか?」
「……え?」
彼は頬杖をついたまま、綺麗な紺青色ので私をまっすぐに見ていた。

「一番辛いのは、あんただろう」
「あ……」
「いや、いい。……あんたはうちに来るのが嫌なのか?」
「いえ!決してそんなことないです!」
慌てて手を振って、否定した。
「だって、今のところ一番のお知り合いはレイだけだし。……でも、あまりノリ気ではなさそうだったから」
はあ~、レイは深くため息をついた。

「そうではない。あんたが迷惑だから、とかじゃない。その、俺はあんまり愛想よくとかできないから」
「あぁ、それで」
思わず肯定してしまって、慌てて両手で口を塞ぐ。
けれど、彼はしっかり聞いていて、嫌そうな顔をされてしまった。

「ほんとは、ルーセルみたいなヤツがいいのだろうけど、ルーセルはあの顔とあの性格だから、女のトラブルが

わあ~、多いってすごい強調して言った!
でも、納得できる。

「だから、まだ俺の屋敷へ来てもらったほうがマシだと思ったんだ」
「あはは……、私も女性トラブルは嫌かも」

まぁ、私はそんな対照にはならないと思うけど。

「俺は普段、騎士の仕事が多いし、男ばかり相手にしてる。正直、世辞せじを言ったり姫君たちの相手は苦手だ。だから俺と居たってつまらないと思うが、貴族の女同士のトラブルよりはマシだろうから、我慢してくれ」

貴族の?
なんか言い方に引っかかるけど……。
確かにネット小説でも、転生ものや悪役令嬢とか読んでても、貴族の女子コミュニティっていろいろと大変そうだもんね。

「えっと、わかりました」
「それから、そのもなしだ」
「はい」

急に喋るようになったな……、彼。

「俺は、あんたより年下だしな」
「あ!そういえば、そうで……そうだね」

聞けばルーセルは私より5つ上で、あのやんちゃそうなアレクシス様は同い年。
同い年で次期王様って、私には到底無理だなって感心する。
きっとアレクシス様ってすごい出来る人なのだろうな。
性格は……、残念そうだけど。

そして、レイは私より1つ下の19歳で近衛騎士団長として、たくさんの男の人達を上に立って纏めてるんだって思うと、ホントすごいなあ~って尊敬しちゃう。
そのうえ、レイはランドルフ家の当主っていうのだから、私より大人に感じてしまうな。

ていうか、3人とも若いのに、国の中心で国を動かしてるって凄すぎる。

そんな話をしてるうちに、私達を乗せた馬車は街の外れにある、ひときわ広い敷地に立つ、ランドルフ家の屋敷の門を入っていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

令嬢から成り下がったメイドの分際で、侯爵様と目が合ってしまって

真好
恋愛
彼はメイドの私に手を差し出した。「私と、踊っていただけませんか?」 かつては公爵令嬢として、誰もが羨む生活を送っていたエルナ。 しかし、国家反逆罪で家は没落し、今は嫌な貴族の下で働く「身分落ち」のメイド。 二度と表舞台に立つことなどないはずだった。 あの日の豪華絢爛な舞踏会で、彼と目が合うまでは。 アルフォンス・ベルンハルト侯爵。 冷徹な「戦場の英雄」として国中の注目を集める、今もっともホットで、もっとも手が届かない男。 退屈そうに会場を見渡していた彼の視線が、影に徹していた私を捉えて。 彼は真っ直ぐに歩み寄り、埃まみれの私に手を差し出した。 「私と、踊っていただけませんか?」 メイドの分際で、英雄のパートナー!? 前代未聞のスキャンダルから始まる逆転劇。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

処理中です...