聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜

文字の大きさ
28 / 57

第28話 オレ様イケメン王子の秘密

しおりを挟む
勢いよく開け放たれた扉の向こうにいたのは、怒りをあらわにしたアレクシス様だった。

寝起きのようで、白いシャツの前は大きくはだけていて、ウェーブがかった前髪はくしゃりと目にかかっている。
はだけた胸元から見える白い肌が眩しくて、思わず目が泳いでしまう。

泳いだ視線が彼の辿たどり着いて、お蔭で一気に凍りついた。
見た目は気だるげなのに、その空色のは映すもの、すべてを射抜きそうだ。
綺麗な顔が怒ると迫力あるって言うけれど……、本当だった。

「お前らっ!!」
「あ、おはよう。意外と早かったな」
「ルーセル!お前、眠り薬盛っただろ!」
えっ!?
「やだな。だよ」

ルーセルはしれっと答えた。
怖っ!……彼に逆らうのはやめよう。

「こんな結界まで張って、何をやっている!」
「別に。ミツキに質問をしていただけだよ」
「この女に何の用だ。こいつは聖女ではなかったのだろう!?」
「アレク、口が悪いよ」
「ああ、そうだな」
レイもそれには同意した。

のうえに呼ばわりは、さすがに少々傷つく。
なんだか私までが悪いことをして、怒られている気分だ。

「なぜ、こいつがここに居て、人払いの結界まで張って、いったい何を聞きたかったのか、説明してもらおうか」



だからここへ来る時、誰にも出会わなかったし、タリアンさんが連れてきてくれたんだ。

アレクシス様は腕を組んで、仁王立ちのままルーセルを睨んでる。
はあぁ~、とルーセルはあからさまに溜息をついた。
「本当はちゃんと彼女に確認してからにしたかったんだけど、出てきちゃったんだから仕方ないか」
まったく動じず、ぶれないルーセルって、ある意味すごいな……
さすが若くして宰相やってるだけある。

「俺に内緒にしようなんて、許さないからな!」
「そうじゃない。彼女が、俺達のになりうる存在かもしれないからさ。お前に再度合わせる前に、彼女の真意を見極めようと思ったんだ」

アレクシス様も驚いた様子だったけど、私も驚いて息をのんだ。

っ、なんで!?

私がって……どうして?
レイも、そう思っていたの?
彼は微動だにせず、目の前の空間を見つめたまま、ルーセルの言葉を静かに聞いていた。

「どういうことだ?……こいつは、ただの向こう側の人間じゃないのか?」
アレクシス様は少しかすれた声で訊いた。
向こう側って、私達の世界のことよね。

「彼女は妖精が見えるんだ。実際、今も闇の精霊が見えていた」
「なんだと!?それは、本当なのか!?」
アレクシス様は目を見開いて、私を見た。
「み、見えるときもありますけど、でも、私は魔法も使えなし、普通の人間です!隠してることとか、能力とか、何もないですっ!本当です!」
私はアレクシス様の鋭い視線に緊張して、慌ててしまって、しどろもどろになった。

「アレク……、彼女が言うことは本当だと思う」
レイがゆっくり立ち上がるとそう言って、アレクシス様に向き合った。
「俺は、彼女が嘘をついて、俺達を騙せるような人間とは思えない。そんな器用じゃないと思う」
そして、彼は私に手を差し出し、私を優しく立たせてくれた。

「アレク、ルーセル……これは、俺からの提案だ」
レイは落ち着いた声で続ける。

「へえ~、レイからの提案とは珍しい」
「なんだ」

ルーセルのいつもと変わらず飄々ひょうひょうとした調子に、アレクシス様の鋭い声音。
そんな二人に、レイは静かに言った。
「ミツキは、古書店で例の本の背表紙を見たとき、『に見えた』と言っていた」

あっ!彼と初めて会った時のことだ。

ふくろう古書店で、ある本の背表紙が、白く綺麗に輝いて見えたのだ。けれど、彼が本棚から取ってくれて、次に私が手にした時は、なぜか古びたに変わっていた。

「聖女に選ばれる者であれば、確かに白ではない。けれど、そう見えたのは、何か意味があってのことで、これも女神の導きなのではないだろうか。そう思わないか?……だから、俺は、ミツキにすべてを話し、協力してもらうのはどうだろう、と思う」

「白ねぇ……」
ルーセルが顎に手をあて呟いた。

「お前、正気か?」
アレクシス様が低い声で静かに問う。
「ああ
レイは頷いて言った。
「……ただし、彼女の同意が必要だけれど」
彼は、静かな紺青こんじょう色の瞳を不安げに、わずかに揺らめかせて、私を見た。

わたしっ!?

三人の視線が私に向けられている。
とにかく、私は敵でもなく、他意たいもないと証明するには……
ここは答えの選択の余地ってないですよね。

「私っ、聖女様でもないし、代わりにもなれませんけど、でも私に出来る限り頑張りますので、お手伝いさせてください!」
私は勢いよく頭を下げた。

正直、お城にもメイドのお仕事であがってるけど、私は新米すぎて、それ程忙しく大変と言うわけでもなく、きっとレイの客人という配慮もされていると思う。
メイドの仕事に比べて、ランドルフ家での貴族のお姫様のような生活が対価以上で、間違って来てしまった私には、まだ申し訳なく感じていた。

「ここにお世話になっている間、美味しいご飯を頂いて、ドレスとかお姫様のような生活をさせていただいてばかりなのは、本当に申し訳ないので、お仕事させてください。お願いします!」
もう一度、勢いよく深々と頭を下げた。

「……変な女」
アレクシス様が低くボソッと呟いた。
ん……?ここは聞き流しておきますね。
そして私を見つめたまま、何か思案しているようだった。

レイが腕を組むと、不敵な笑みを浮かべた。
え?彼って、そんな表情かおも、するんだ。

「それとも、何?怖いのか?」
「は?」
「正体わからないと不安とか?」
あおってるとしか思えない。こんなわかりやすい挑発ちょうはつに乗るわけが……

「んなことあるわけ無いだろ。ふんっ、いいだろう」

……乗る人が、ここにいた。

アレクシス様がつかつかと私の方へ近づくと、私より上にある目線から見下ろして言った。

「おい、お前。少しでもおかしな行動してみろ、その時はすぐに拘束こうそくする。場合によっては、命がないと思え。元の世界へ戻りたくば、おとなしくしていろ。わかったな」
「………………」
「返事は?」
「は、はいっ!わ、わかりましたっ」

ふんっ、とアレクシス様は腕を組んで、私を見下ろしながら納得したようだった。

「ミツキ、アレクの言葉を訳するとね、これは危険な仕事で、場合によっては、命に関わる。キミの身に危険を感じたら、城で保護する。無理はするな。ってことだよ」
ルーセルが微笑んで言った。
アレクシス様は露骨に嫌そうな表情かおをした。
「ルーセル、お前の頭の中はお花畑だな。まあ、いい。おい、おまえ。これから話すことは、他言無用たごんむようだ」
「……わかりました」
コクリと頷く。

それから私は、アレクシス様や他の王族の人たちがの光の加護を受け、光属性の能力を強く持つ一族であること、けれど今はその力が弱まり、この国が強大な力を持った大魔法使いと呼ばれる者の脅威きょういさらされていることを教えてもらった。

「王が病で退位し、第一王子であり、皇太子でもある俺がすぐに即位出来ないのは、俺にかかった呪いのせいだ」
「呪い?」
「そうだ」
アレクシス様は忌々いまいましそうに眉間に皺を寄せて言った。

「俺は、の光を浴びることが出来ない」
「え?」
「半年前、陽の光を受ければ死ぬという呪いを、敵対する魔法使いにかけられたのだ」
吸血鬼ヴァンパイアみたいに、ですか?」

わーっ、めちゃくちゃ嫌そうな顔された。

「俺は陽の光の加護を受けることが出来ず、魔力も弱くなった。お蔭で、今は自分の身すら守れぬ者となってしまった」
あ……だから、この部屋。昼間なのに、厚いカーテンが閉められているんだ。

「このことを知っているのは、ここにいる者と前王、それから執事長のタリアンだけだ。情けない話しだが、この王室内でもいくつかの勢力に分かれていて、どこに敵がいるかわからない状態だ。もし、このことが知られれば、すぐに内争となるだろう。だから俺達は隠しながら、いるかどうかわからない聖女を探し、その力を借りて、大魔法使いを倒すしかないと考えた」

だけど、やっと探し出した聖女かもしれない美少女さんの召喚を、私が邪魔しちゃったんだ……
ここに居る間は、せめて私ができる限り、せいいっぱい協力したい、そう思った。

「ということだ。お前には、これから俺のに任命してやろう。光栄に思え」
「うっ……はい」

目の前の王子さまは、腕を組み不遜ふそんな笑みをたたえて、私を見下ろしている。呪いなど受けてるようには見えないほど、オレ様で元気そうなんだけど、な。

「あと、俺は王子だが、もう解っているだろうが、王子様対応は

……え?今頃ですか?

「お前たちの世界で作られたというやつのせいで、俺も苦労してるんだ」
あー、確か、ここの世界って、私たちの想像から生まれた世界だものね。
童話とか物語に出てくる王子様像って、言われてみれば……

が定番かも!

確かにアレクシス様もゆるくウェーブがかった金髪、空色の瞳だ。
前髪はくしゃりと目にかかるほどで、襟足えりあしは短いから、まるで今流行りのアーティストみたいな髪型だけど。
見た目だけは、白馬の王子様!

「あれは、疲れる」
アレクシス様は顔をしかめて言う。
よっぽど性格が、違うんだろうな。
どちらかと言えば、だもんね

私はちょっと彼が可愛く見えて、クスッと笑って言った。
「大丈夫です!私、白馬の王子様とか希望してないですから」
「当たり前だ。まあ、俺の愛馬はだけどな」

彼はなぜか得意げに言ってから、ハハハと、愉快そうに上から私を見下ろして、笑った。

……やっぱり、可愛くないかも。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

令嬢から成り下がったメイドの分際で、侯爵様と目が合ってしまって

真好
恋愛
彼はメイドの私に手を差し出した。「私と、踊っていただけませんか?」 かつては公爵令嬢として、誰もが羨む生活を送っていたエルナ。 しかし、国家反逆罪で家は没落し、今は嫌な貴族の下で働く「身分落ち」のメイド。 二度と表舞台に立つことなどないはずだった。 あの日の豪華絢爛な舞踏会で、彼と目が合うまでは。 アルフォンス・ベルンハルト侯爵。 冷徹な「戦場の英雄」として国中の注目を集める、今もっともホットで、もっとも手が届かない男。 退屈そうに会場を見渡していた彼の視線が、影に徹していた私を捉えて。 彼は真っ直ぐに歩み寄り、埃まみれの私に手を差し出した。 「私と、踊っていただけませんか?」 メイドの分際で、英雄のパートナー!? 前代未聞のスキャンダルから始まる逆転劇。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

処理中です...