聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜

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第48話 ドラゴン再来!

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華やかな舞踏会も終わった。
結局、北の大魔法使いは姿を現さず、その仲間らしきものたちの動きも感じられなかった。

私は、城内に与えられた自分の部屋に戻り、パーティードレスから部屋着に着替えていた。舞踏会用に結い上げて貰った髪を解くと、パサリという音とともに開放されて、いつもの自分に戻ったような気がする。
鏡にはいつもより念入りに化粧をされた私が、ぼんやりとした顔で映っている。

レイに付けてもらったピアスが、灯りを受けてキラリと光った。そっと指先で触れる。

まだ外したくないな……

もうすぐこの世界へ来て、二週間ほど経つ。私が本来いるべき元の世界へ帰る日も、きっと近い。
そうしたら、もうレイともお別れになる。
わかっていたことだし、覚悟もしていたのに……

彼と会えなくなるのはイヤだ。寂しすぎる……
そう思ってしまう自分に、もう驚かない。この気持ち、誤魔化すことは出来ない。

私、レイのことが……

「……好き」

言葉にしてしまったら、切なくて喉の奥が痛くなる。
二度と会うこともないし、住む世界すら違うから追いかけることも出来ない。
どんなに想ったって、叶うことがない恋なんだ……

鏡に映る私の顔が歪んでいく。
ダメ……寂しすぎるよ。

唇を噛む。鼻の奥がツンと痛くなって、床に視線を落とした。
お別れの日まで、私は今までどおりの顔して彼に会えるかな……
そもそもこのまま彼に会えずに期限が来たとき、私はいきなり帰ることになるかも知れない。
そんなのイヤだ……床が滲んでいく。

そのとき、床に落ちた月明かりが一瞬暗く消えた。
……ん?

すぐに月明かりが床に戻る。
大きな何かが遮った!?
私は、急いで窓辺に走り寄る。

夜空を見上げて、月明かりを消した理由が一目瞭然で解った。

「ドラゴン!?」

月で明るい夜空をドラゴンが飛んでいた。そして、そのシルエットの違和感にすぐに気づく。
前脚に人を掴んでいる。
手と足をだらりと垂らし、脱力して意識がない。嫌な予感がする。
月明かりにその姿が映し出されたのは、アレク様だった。

「アレク様っ!!」

私は窓を押し開けてバルコニーに飛び出すと、手すりにしがみついた。
ドラゴンの背に跨るミレイユがこちらに気付いたようだったけれど、そのまま止めることなく街の向こうへと向かって飛んでゆく。

急がないと!!アレク様を見失ってしまうっ!
ここは二階だ。誰かを呼びに行ったり、部屋に戻って階下に下りている暇はない。
誰かいないかと手すりから階下を覗き込んだとき、建物の向こうの方から馬が一頭、駆けてくるのが見えた。

どうなるかわからないけど、咄嗟に右手首を持ち叫ぶ。
「お願い!白銀の姫っ、私に力を貸して!!」
瞬間、右手首に出現したブレスレットから真っ白な閃光を放つ。

私は邪魔になるドレスの裾を急いで破り裂くと、白銀の姫の力を信じてバルコニーの手すりによじ登り立ちあがった。太ももが顕になるけど、そんなことは構っていられない。

「こっちよ!!」
こちらへ走ってくる馬に向かって叫び、馬の背をめがけて飛び降りる。
私は無事に馬の背に跨ることが出来た。

私にそんな運動神経の良さがあったなんて思えないので、白銀のブレスレットの力だと思うけれど、とにかく手綱を握り、振り落とされないように必死に乗る。
先日、乗馬の基礎だけでもレイに教えて貰って、馬に乗れるようにしてもらっておいて良かった。
こんな形で役に立つとは夢にも思わなかったけれど。

ところで、連れ去られるアレク様を追いかけるように建物の向こうから駆けてきたこの馬は、つややかな黒い馬だけれど、もしかしてアレク様が最初に言っていた彼の愛馬の黒馬だろうか

すごいスピードで走るので、話しかけることは出来ないけれど、「お前もアレク様が心配なんだね。彼を絶対助けよう」と心の中で話しかけた。
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