2度目の人生は、公爵令嬢でした

一色

文字の大きさ
3 / 74
おまけ小話集

バレンタイン小話 もしもの話

しおりを挟む
もしもクリスティアとラインハルトが恋人だったら - バレンタイン編

クリスティアは、目の前の箱を見つめながら、小さく息を吐いた。
――何を緊張しているのだろう。

それは、彼女が昨夜から手作りしたチョコレート。完成度は悪くない。味見もした。でも、問題はそこではない。

「……渡すのが、こんなに難しいなんて」

普段は冷静な自分が、ラインハルトのことになるとどうしてこうも動揺してしまうのか。

そんなことを考えていると、ちょうど彼が廊下の向こうから歩いてくるのが見えた。

「リスティ?」

「……ラント」

言葉をかけられただけで、鼓動が速まる。こんなの、彼に悟られたくないのに。

「どうかしたのか?」

彼の琥珀色の瞳がまっすぐに見つめてくる。クリスティアは意を決して、チョコレートの箱を差し出した。

「……バレンタインの贈り物よ」

ラインハルトの瞳が、一瞬驚いたように見開かれる。

「……俺に?」

「他に誰がいるの?」

少し拗ねたように言うと、彼はくすっと笑った。

「ありがとう、リスティ」

受け取った箱を大切そうに持ちながら、ラインハルトはふと顔を近づける。

「お返しは期待していてくれ。」

「――っ!」

その囁きに、クリスティアは顔を真っ赤に染めた。

———————————————————————————————————————-

もしもクリスティアとアランが恋人だったら - バレンタイン編

「クリスティア~! 今年ももらえるのか?」

朗らかな声とともに、アランが駆け寄ってくる。

「……ええ、一応用意はしているけれど」

「やった! さすが俺のクリスティア!」

「誰があなたのものよ」

呆れたように言いつつも、クリスティアは彼に小さな箱を差し出した。アランは嬉しそうに受け取ると、さっそく包みを開けようとする。

「待って、今開けなくても……」

「いいだろ、早く食べたいし!」

「はぁ……」

クリスティアが呆れている間に、アランはチョコを一つ口に入れた。

「……ん? これ……なんか、いつもと違くない?」

「ええ。今年は少しだけ工夫してみたわ」

「へぇ~……ん? なんか、ちょっと苦――」

「あら? もしかして失敗だったかしら?」

「……いや、美味い! さすがクリスティアだな!」

「本当かしら?」

クリスティアはじっとアランの顔を見つめる。アランは一瞬視線を逸らしたが、すぐに笑って見せた。

「本当だって! でも、来年はもうちょっと甘いのがいいな!」

「……考えておくわ」

そう言いながら、クリスティアは微笑んだ。

それを見て、アランは心の中でほっと息をつく。

――やばい、苦すぎて泣きそうだった、なんて言ったら……来年こそもらえなくなるかもしれないしな。

 ——————————————————————————————————————————————————————————————————

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、
ぜひ投票で応援していただけると、とっても励みになります

本日本編は上がりませんがもう一本バレンタイン小話が上がります!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】やり直そうですって?もちろん……お断りします!

凛 伊緒
恋愛
ラージエルス王国の第二王子、ゼルディア・フォン・ラージエルス。 彼は貴族達が多く集まる舞踏会にて、言い放った。 「エリス・ヘーレイシア。貴様との婚約を破棄する!」 「……え…?」 突然の婚約破棄宣言。 公爵令嬢エリス・ヘーレイシアは驚いたが、少し笑みを浮かべかける──

処理中です...