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おまけ小話集
バレンタイン小話 大好きな二人に
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バレンタイン当日リュカは見てしまった…!
クリスティアが小さな包みをいくつか机に並べ、真剣な表情でリボンを結んでいるところを!
その瞬間、リュカは察した。
「……まさか、好きな相手ができたのか?」
バレンタインに手作りの菓子を用意する理由など、一つしかないではないか。
急いで来た道を引き返し父の元を尋ねる。
「父上……これは大変です」
「何を慌てている、リュカ」
オルベルティス公爵――彼らの父は優雅に紅茶を飲みながら、ちらりと息子を見た。
「クリスティアが誰かに手作りの菓子を贈ろうとしています」
「――何?」
その瞬間、父の優雅な手が止まる。
「……まさか、想い人が?」
「その可能性が高いかと」
「なにゆえ、私に相談がない」
「私にもありません」
二人は顔を見合わせ、わずかに青ざめる。
「……一体、相手は誰なのだ?」
「まさか、ラインハルトか? いや、アラン……いや、もしかすると……」
父と息子は想像を巡らせながら、しばし沈黙する。
「リュカ、さりげなく聞き出せ」
「無理です。クリスティアを甘く見ないでください」
「ならば、もう直接――」
「それも無理です。邪魔されると思って教えてはくれないでしょう。」
父と息子が密かに作戦会議をしている間に、クリスティアは包装を終え、ある人を探して歩いていた。
—————————————————————————
「……さて、お父様とお兄様はどこかしら」
「クリスティア、ちょっと待て」
「なんですか?」
彼女を呼び止めたリュカは、慎重に口を開いた。
「そのチョコ……誰に渡すつもりなんだ?」
「え?」
クリスティアは小さく首を傾げ、それから微笑んだ。
「もちろん、お父様とお兄様ですよ」
「……『え?』」
父と兄の声が重なる。
「だって、バレンタインでしょう? 大好きな二人に贈るのは当然です」
さらりと言われ、二人は硬直する。
「……本当に、それだけか?」
「ええ。他に誰か渡す相手がいるとでも?」
「……」
父と息子は再び顔を見合わせた。
「……リュカ」
「ええ、父上」
「――疑ってすまなかったな、クリスティア」
「……本当に」
二人は同時に深いため息をつく。
「まったく」
「え?」
「いや、なんでもない」
苦笑しながら、リュカは差し出されたチョコを受け取る。そして、父もまた静かに箱を開けた。
「ふむ、見た目も上品な仕上がりだ」
「お口に合えばよいのですが」
「合うに決まっている。私の可愛い娘が作ったものなのだからな」
「そうだよクリスティア可愛い妹の手作りってだけで美味しいよ」
まだ食べてもいないのに口元にはわずかな笑みを浮かべ、チョコを宝物のように見つめている。
「『ありがとう、クリスティア』」
「ええ、お二人ともいつもありがとう!」
微笑む彼女の顔を見て、父と兄はようやく心から安堵するのだった。
——————————————————————————————————————————————————————————————————
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、
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クリスティアが小さな包みをいくつか机に並べ、真剣な表情でリボンを結んでいるところを!
その瞬間、リュカは察した。
「……まさか、好きな相手ができたのか?」
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「父上……これは大変です」
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オルベルティス公爵――彼らの父は優雅に紅茶を飲みながら、ちらりと息子を見た。
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「リュカ、さりげなく聞き出せ」
「無理です。クリスティアを甘く見ないでください」
「ならば、もう直接――」
「それも無理です。邪魔されると思って教えてはくれないでしょう。」
父と息子が密かに作戦会議をしている間に、クリスティアは包装を終え、ある人を探して歩いていた。
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「……さて、お父様とお兄様はどこかしら」
「クリスティア、ちょっと待て」
「なんですか?」
彼女を呼び止めたリュカは、慎重に口を開いた。
「そのチョコ……誰に渡すつもりなんだ?」
「え?」
クリスティアは小さく首を傾げ、それから微笑んだ。
「もちろん、お父様とお兄様ですよ」
「……『え?』」
父と兄の声が重なる。
「だって、バレンタインでしょう? 大好きな二人に贈るのは当然です」
さらりと言われ、二人は硬直する。
「……本当に、それだけか?」
「ええ。他に誰か渡す相手がいるとでも?」
「……」
父と息子は再び顔を見合わせた。
「……リュカ」
「ええ、父上」
「――疑ってすまなかったな、クリスティア」
「……本当に」
二人は同時に深いため息をつく。
「まったく」
「え?」
「いや、なんでもない」
苦笑しながら、リュカは差し出されたチョコを受け取る。そして、父もまた静かに箱を開けた。
「ふむ、見た目も上品な仕上がりだ」
「お口に合えばよいのですが」
「合うに決まっている。私の可愛い娘が作ったものなのだからな」
「そうだよクリスティア可愛い妹の手作りってだけで美味しいよ」
まだ食べてもいないのに口元にはわずかな笑みを浮かべ、チョコを宝物のように見つめている。
「『ありがとう、クリスティア』」
「ええ、お二人ともいつもありがとう!」
微笑む彼女の顔を見て、父と兄はようやく心から安堵するのだった。
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