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第二章 学園生活
51話 守りたいあなたと私のきもち
しおりを挟む翌朝、陽が昇ると同時に、討伐訓練の各班はそれぞれ森の奥絵と進み始めていた。
クリスティア達の班は順調に行動し、昨夜の魔物襲撃も問題なく対処できたため、士気は高かった。フィリップが焚き火の残りを片付けながら、明るく言った。
「昨夜のクリスティアさんすごかったですね!まるで御伽話の聖女様みたいでしたよ!」
「褒めすぎよ。ただ、ラインハルトがうまく合わせてくれていただけよ。」
クリスティアは軽く首を振りながらも、微笑を浮かべる。その横でクロエが頷いた。
「でも、本当にすごかったです。あの魔物も強そうでしたし…」
一方、リリアの班は険悪な雰囲気から向け出せていなかった。昨夜の見張りの不手際と、連携の取れなさが影響していたのか、朝からまともな会話がない。
「……まったく、誰かさんのせいで魔物に気づくのが遅れたのよ」
リリアがムッとしながら呟き、班の一人が苛立ち混じりに反論した…
「俺だけのせいじゃない! そもそもあなたたちも――」
「はいはい、言い合ってる時間がもったいないぞ」
リーダー格の男が溜息混じりに仲裁しようとするが、根本的な不満は解消されていない。彼らの討伐訓練は、この先もうまくいくとは言い難かった。
——-
クリスティアたちが進む道の途中、ラインハルトがふと彼女の横に並んだ。
「昨夜もありがとうクリスティア」
「こちらこそ、私に合わせてくれるからとても戦いやすかったわ」
「当然だ。……君はなんでもそつなくこなしてしまう」
ラインハルトは彼女をじっと見つめる。昨夜の月明かりの下、弓を構えるクリスティアの姿が脳裏に蘇る。彼女は強い。だが、だからこそ、無理をしてしまうのではないか——そんな考えが離れなかった。
ラインハルトは懐から小さな布袋を取り出した。淡い布地には、控えめな魔法の紋様が刺繍されている。
「クリスティア、これを」
「これは?」
「護符だ。元々はただの布切れだが王家に伝わる守護の紋様を刺繍してある。さらに俺が魔法を込めた。」
クリスティアは少し驚いたように目を瞬かせた。
「ラインハルト、刺繍もあなたが?」
「俺も多少はできる。微弱な防御の効果がある。……討伐訓練の間、持っていてほしい」
「……どうして私に?」
「……昨夜、渡そうとしたが、タイミングを逃した」
言いながら、ラインハルトは一瞬だけ視線をそらす。
「クリスティアは強いけど、だからといって傷つかないわけじゃない。……せめて、少しでも安全でいてほしい」
クリスティアは護符を見つめ、それからラインハルトの顔を見上げる。その言葉の奥にある真意を探るように。
「……ありがとう。大切にするわ」
護符をそっと握りしめると、ラインハルトは満足そうに目を細めた。
「……ああ。頼むぞ」
そう言って、何事もなかったかのように前を向く。
クリスティアはそんな彼の背中を見つめ、小さく息をついた。
(ラインハルトって、時々こういうことをするのよね……)
心のどこかがくすぐられるような、落ち着かない感覚。
けれど、それが何なのかは、まだ彼女自身もよく分かっていなかった。
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