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第二章 学園生活
54話 未来とは
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そして、クリスティアが力を込めたその瞬間――光が強く輝き、魔物の姿が一瞬で消え去った。遺跡は静寂に包まれ、クリスティア達を遺跡に導いた光が輝いていた。
やがて光は、クリスティアに向かってゆっくりと近づき、聖獣の形をとるとその額に優しく触れた。
「汝の運命が定められし今、道を選ぶべし。」
その言葉が終わると同時に、聖獣の姿は消えた。
クリスティアは胸の奥に、強く拳を握りしめた。
「……行きましょう。この先に、まだ何かが待っている気がするわ」
彼女の言葉に、仲間たちは頷き、再び歩みを進めるのだった
森の奥深くを指し示していた光が消え、遺跡の中には静寂が戻っていた。しかし、それはただの沈黙ではない。何かが変わった。空気が澄み、辺りに漂っていた闇の気配が払われたのがはっきりとわかる。
「……終わったのか?」
エリックが警戒を解かずに辺りを見渡す。フィリップも剣を構えたまま、壁の紋様を見つめていた。
「魔物の気配は感じません。でも……」
クロエが小さく眉をひそめ、壁画の一部を指さした。そこには新たな光の筋が走り、まるで何かが目覚めたかのように淡く輝いていた。
クリスティアは一歩前に出て、慎重にその光を確かめる。先ほどまで封印されていた力が解放され、新たな何かがこの遺跡に宿ったのかもしれない。
「この遺跡……まだ何か隠されている気がするわ」
「さっきの聖獣が言ってたよな。『運命に立ち向かう時が来る』って」
ラインハルトが思案げに呟く。彼の瞳には迷いはなく、むしろ次なる試練を見据えているようだった。
クリスティアは額にそっと手を当てた。聖獣が触れた場所がまだ熱を持っているような気がする。あの光の中で感じたもの、それはただの幻ではない。確かに、自分の中に何かが宿った。
「……先に進みましょう。このまま帰るのは早い気がする」
彼女の言葉に、仲間たちは頷いた。
遺跡の奥へと続く通路は、これまでよりも広く、壁には見たこともない文字が刻まれていた。クロエが慎重にその文字を指でなぞる。
「この文字……古代語のようです。でも、私たちが知っているものとは少し違うみたいで…」
「読めるのか?」
フィリップが興味深げに身を乗り出したが、クロエは首を横に振る。
「一部はわかるのですが、完全には解読できません。でも、ここにあるのは……」
そう言いかけた瞬間、遺跡全体が再び震えた。
「またか!」
エリックが剣を構える。だが、今度は魔物の気配ではなく、何かが動き出す音が響いていた。
壁の奥から、重々しい石の扉がゆっくりと開く。そこには広い空間が広がり、中央には光を放つ水晶が浮かんでいた。
「これは……?」
クリスティアが近づくと、水晶の中に何かが映り込んでいるのが見えた。
それは、一つの国――いや、戦火に包まれた都の姿だった。
炎に包まれる城、人々の叫び、そして黒い影の軍勢がそこに蠢いている。
「これは…」
クロエが震える声で呟く。
その時、水晶の光が強まり、またしても声が響いた。
『運命は定められたものではない。汝が進む道こそ、未来を決める鍵』
クリスティアは無意識に拳を握りしめた。
(聖獣が言っている未来って……?)
「……とりあえずここから出ましょう。もう隠されているものもなさそうだし、集合場所に戻って、ここでの出来事を報告する必要があるわ」
クリスティアの言葉に、仲間たちは頷いた。だが、彼女の胸の奥にはまだ消えない感覚が残っていた。あの水晶に映った未来――それは本当に訪れるものなのか、それとも、自分たち次第で変えられるものなのか。
クリスティアは拳を握りしめ、小さく息を吐く。
「……急ぎましょう」
彼女の決意に応えるように、仲間たちは遺跡を後にした。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!もしよかったら、キャラの行動やストーリーの展開について、皆さんの感想を聞かせていただけるとうれしいです!気軽にコメントしていただけると励みになります!
やがて光は、クリスティアに向かってゆっくりと近づき、聖獣の形をとるとその額に優しく触れた。
「汝の運命が定められし今、道を選ぶべし。」
その言葉が終わると同時に、聖獣の姿は消えた。
クリスティアは胸の奥に、強く拳を握りしめた。
「……行きましょう。この先に、まだ何かが待っている気がするわ」
彼女の言葉に、仲間たちは頷き、再び歩みを進めるのだった
森の奥深くを指し示していた光が消え、遺跡の中には静寂が戻っていた。しかし、それはただの沈黙ではない。何かが変わった。空気が澄み、辺りに漂っていた闇の気配が払われたのがはっきりとわかる。
「……終わったのか?」
エリックが警戒を解かずに辺りを見渡す。フィリップも剣を構えたまま、壁の紋様を見つめていた。
「魔物の気配は感じません。でも……」
クロエが小さく眉をひそめ、壁画の一部を指さした。そこには新たな光の筋が走り、まるで何かが目覚めたかのように淡く輝いていた。
クリスティアは一歩前に出て、慎重にその光を確かめる。先ほどまで封印されていた力が解放され、新たな何かがこの遺跡に宿ったのかもしれない。
「この遺跡……まだ何か隠されている気がするわ」
「さっきの聖獣が言ってたよな。『運命に立ち向かう時が来る』って」
ラインハルトが思案げに呟く。彼の瞳には迷いはなく、むしろ次なる試練を見据えているようだった。
クリスティアは額にそっと手を当てた。聖獣が触れた場所がまだ熱を持っているような気がする。あの光の中で感じたもの、それはただの幻ではない。確かに、自分の中に何かが宿った。
「……先に進みましょう。このまま帰るのは早い気がする」
彼女の言葉に、仲間たちは頷いた。
遺跡の奥へと続く通路は、これまでよりも広く、壁には見たこともない文字が刻まれていた。クロエが慎重にその文字を指でなぞる。
「この文字……古代語のようです。でも、私たちが知っているものとは少し違うみたいで…」
「読めるのか?」
フィリップが興味深げに身を乗り出したが、クロエは首を横に振る。
「一部はわかるのですが、完全には解読できません。でも、ここにあるのは……」
そう言いかけた瞬間、遺跡全体が再び震えた。
「またか!」
エリックが剣を構える。だが、今度は魔物の気配ではなく、何かが動き出す音が響いていた。
壁の奥から、重々しい石の扉がゆっくりと開く。そこには広い空間が広がり、中央には光を放つ水晶が浮かんでいた。
「これは……?」
クリスティアが近づくと、水晶の中に何かが映り込んでいるのが見えた。
それは、一つの国――いや、戦火に包まれた都の姿だった。
炎に包まれる城、人々の叫び、そして黒い影の軍勢がそこに蠢いている。
「これは…」
クロエが震える声で呟く。
その時、水晶の光が強まり、またしても声が響いた。
『運命は定められたものではない。汝が進む道こそ、未来を決める鍵』
クリスティアは無意識に拳を握りしめた。
(聖獣が言っている未来って……?)
「……とりあえずここから出ましょう。もう隠されているものもなさそうだし、集合場所に戻って、ここでの出来事を報告する必要があるわ」
クリスティアの言葉に、仲間たちは頷いた。だが、彼女の胸の奥にはまだ消えない感覚が残っていた。あの水晶に映った未来――それは本当に訪れるものなのか、それとも、自分たち次第で変えられるものなのか。
クリスティアは拳を握りしめ、小さく息を吐く。
「……急ぎましょう」
彼女の決意に応えるように、仲間たちは遺跡を後にした。
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