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第二章 学園生活
55話 迫り来る魔物達
しおりを挟む遺跡を出て、外の空気を吸い込んだ瞬間、クリスティアたちは異変に気づいた。
「……煙?」
ラインハルトが目を細め、遠くの空を指差す。そこには黒い煙が立ち上り、不穏な気配が辺りを満たしていた。
「まさか……!」
クリスティアは嫌な予感に駆られ、すぐに仲間たちに向き直る。
「急ぎましょう! 集合場所で何かが起きてる!」
仲間たちは即座に頷き、全力で駆け出した。
森を抜け、集合場所として指定されていた開けた広場が見えてきたとき、その光景に誰もが息を呑んだ。
そこには、多数の魔物が押し寄せ、生徒たちと教師が必死に応戦していた。剣を振るう者、魔法を放つ者――それぞれが全力で戦っていたが、次々と現れる魔物の群れに防戦一方となっている。
「こんなに……っ!」
クロエが驚愕の声を上げる。
前線では教師たちが奮闘し、魔法障壁を張って生徒たちを守っていた。だが、その障壁も今にも破れそうになっている。
「やばいぞ、もう持たねぇ!」
エリックが剣を握りしめる。
クリスティアは一瞬だけ周囲を見渡した。魔物の数は優に百を超え、形もさまざまだ。巨大な狼のような獣型、長い爪を持つ異形のもの、空を舞う飛竜のような存在までいる。
(これだけの魔物……普通なら集団で襲ってくることはない。誰かが仕向けた? いや、偶然だとしても――)
思考を巡らせる時間すら惜しい。今は、戦うしかない。
「……我々もいくぞ!」
ラインハルトが強く宣言すると、仲間たちもそれぞれ武器を構えた。
「エリック、アレク! 前線を押さえろ!」
「任せろ!」
「了解だ!」
エリックは巨大な戦斧を振り上げ、アレクは大盾を構えると、一気に突撃した。
迫りくる魔物に向かい、エリックが力強く叫ぶ。
「うおおおおおっ!」
彼の振るう斧が大地を砕き、前方の魔物を吹き飛ばす。土煙が舞い上がる中、アレクが盾を叩きつけるように構えた。
「俺が壁になる! かかってこい!」
魔物たちがアレクに向かって襲いかかるが、彼の鉄壁の防御を突破することはできない。その間にエリックが次々と魔物を薙ぎ倒していく。
「クロエ、後方支援をお願い!」
「ええ、やるわ!」
クロエが両手を広げ、魔力を解き放つ。空気が震え、光が収束し始めた。
「――《雷槍》!」
彼女が詠唱を終えると、上空に無数の雷の槍が生み出された。それらが一直線に魔物たちへと降り注ぐ。轟音とともに魔物が貫かれ、黒焦げになって倒れていった。
しかし、それでも魔物の勢いは止まらない。
「クリスティア!」
フィリップが叫ぶ。
彼女の横に大きな影が迫っていた。巨大な熊のような魔物が、鋭い爪を振り上げている。
クリスティアは剣を抜き、魔力を込めた。
「――《光刃》!」
閃光とともに剣を振るうと、黄金の軌跡が熊型の魔物を切り裂く。
だが、戦場の中央に、異質な気配が現れた。
――ズシン。
地面が揺れ、巨大な影が現れる。
それは、黒く禍々しい甲殻に覆われた、魔物だった。四足で立ち、頭部には無数の目が蠢いている。その姿は、まるで悪夢から抜け出したようだった。
「なんだ、あれ……!?」
フィリップが目を見開く。
魔物が低く唸り声を上げると、その体から黒い瘴気が広がり、周囲の魔物たちを狂暴化させていく。
「まずい……!」
クロエが息を呑む。
クリスティアは剣を構え、その魔物を真っ直ぐに見据えた。
「……私が行くわ」
彼女の決意に、ラインハルトが横に並ぶ。
「俺も手を貸す」
エリックとフィリップもそれに続く。
「なら、俺たちもだ!」
「やるしかねぇだろ!」
魔物が吠え、瘴気を纏った巨大な腕を振り上げる。
それに応えるように、クリスティアは力強く地を蹴った。
「――討つ!」
戦場の空気が、一瞬で張り詰めた。
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