一つ目の世界では龍になったので、二つ目の世界では育成ファンタジーを楽しみます。

たゆ

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はじまり

神様と黄金龍3(2021.08.31改)

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 目を開けると僕は黄金山脈の外にある小屋の前で寝ていた。
 敵対的な行動をとらない限り、相手から攻撃を受けることはないはずなんだけど……精神攻撃は別なんだろうか?ふと、そんなことを考えながら違和感に気付く、下半身が気持ち悪い、もしやと思い恐る恐る触った……湿っている。
 黄金龍を前にした僕は恐怖のあまり失禁して、そのまま気絶したのか、顔が熱を帯びる。

「ほーほっほっほ、最強の生物を前にして漏らしたのか情けないのう。小屋の中に洗濯機と替えの下着や服を入れたタンスを置いておいたぞ、感謝するのじゃな」
「神様、ホントに恥ずかしいんですから笑わないでください。それより、どうして何もしていないのに攻撃を受けたんですか」
「あれか?あれは攻撃ではないぞ、ほんの少し敵意を込めて睨んだだけじゃ、あれに耐えられぬようでは黄金龍の長には会えぬぞ、先は長そうじゃな……時間はまだまだある頑張るんじゃ」

 神様はそう言うと、僕の前から消えてしまった。睨むまれただけであんなことになるなんて聞いてないよ、無責任すぎる。でも不思議と殺されないと分かってたからなのか、睨まれるまではそんなに怖くなかったんだよね。
 僕が着ているのは生成り色アイボリーのチュニックに緩めのパンツ、下着はTシャツにボクサーパンツと前世と中世の服がごっちゃ混ぜな感じだ。スニーカーもだけど、下着や小屋の中の家電にしか見えない物は、神様が僕の記憶を覗いて作ったものなんだろう。
 部屋には、昨日まではなかった洗濯機とタンスが置かれていた。風呂場で漏らしたボクサーパンツを一度洗ってから、他の物と一緒に洗濯機に入れる。洗濯機に服を投げ込んでボタンを押すと、水道も繋がっていないのに、洗濯機には水が溜まり動きはじめた。洗剤も投入していないのに泡立っているし、神様は本当に凄い……懐かしいな洗剤の香りだ。
 神様が設置してくれたタンスの中を見た。服や下着は同じ物が沢山入っている。昨日までは、夜風呂で体を洗いながら服や下着も一緒に洗って、そのまま干して、寝るのはいつも裸だったから、予備の下着があるのはありがたい。

 失禁した恥ずかしさはあったが、僕は再び黄金龍に会うため山に登った。僕を小屋まで運んでくれたのは黄金山脈に自生する動く植物たちだった。その日から4回連続で失禁して気絶……5回目から失禁は止まったものの、気絶は続いた。
 元々我慢強く諦めの悪い性格だったんだろう、それから、1年ほど毎日のように山に通い、僕は黄金龍と気絶をせずに話せるようになっていた。

「おう、今日も来たのか〝コガネ〟、お前は本当に諦めが悪いな」

 その場に集まった5匹の黄金龍たちは僕を見て笑った。名前を忘れた僕に、黄金龍たちは新しい名前を付けた。黄金山脈のオウゴンは、コガネとも読むらしい、らしいというか前世の僕の世界もそうだった。コは小でもあり、小さいという意味だ。黄金山脈に迷い込んだ小さな客ということから僕の名前はコガネに決まった。
 コガネという、小さな人間と名乗る生き物が毎日のように訪ねてくる。この噂は黄金山脈に暮らす千匹の黄金龍たちの間で駆け巡ったそうだ。黄金龍は千匹より減ることも増えることもない。黄金山脈で最も高い山『千龍山センリュウヤマ』に新しい卵が湧く時、それは最も年老いた黄金龍の寿命が近いことをあらわす。卵が孵化すると同時に、年老いた黄金龍も死ぬ。
 黄金龍たちには名前はない。彼らは言う、私たちは千匹でひとつの生命体なのだと……。
 僕は、黄金龍たちの目を通し、黄金龍の長と会っていたのだ。彼ら千匹の意志は共有化されており、この山に暮らす全ての黄金龍たちが、最初はじめから僕のことを見ていた。

 その日はじめて僕の前に黄金龍の長『千龍皇帝』が舞い降りた。黄金龍は二十~三十メートル前後の大きさなのだが、千龍皇帝は優に百メートルを超えていた。目の前に一瞬でタワーマンションが建つような不思議な感覚。黄金龍たちと毎日のように会っていたお陰で失禁や気絶はしなかったものの、僕は、その場で腰が抜けて立てなくなった。
 そんな僕を見て、黄金龍たちは一斉に笑い出した。

「小さき者コガネよ、我こそが千匹の黄金龍の長『千龍皇帝』じゃ、お主のことは他の黄金龍たちの目を通し観察していた。我々の姿に何度か恥ずかしい姿は晒したが、見事乗り越え頑張ったものじゃ、褒美に我自らコガネの話を聞いてやろうじゃないか、グハハハハハ」

 千龍皇帝の口から巨大な唾が飛ぶ。四つん這いになりながら、必死に上から降って来るドラム缶サイズの飛沫しぶきを避けた。
 僕は千龍皇帝に、この世界で暮らす人間という種族について話をした。彼らは人間という生き物がいることすら知らなかったのだ、どこに住んでいるのかも知らない。僕ら人間が蟻の巣がどこにあるのか知らないのと同じ感覚だ。僕は人間だけじゃなく、この世界には様々な生き物がいて、それぞれが自分たちの国を持っているのだと説いた。
 僕は願う、そんな小さな生き物たちのことも見てほしい、気にしてほしいと。
 意外にも黄金龍たちは、僕の頼みを素直に聞いてくれた。彼らも故意に他の生き物を傷つけたくなかったんだろう、これからは人間や他の生き物たちにも、気配りすると約束してくれた。
 これで僕は、人間と黄金龍の仲をとりもったことになるんだろうか?

「なっておらんぞ!コガネか……ふむふむ、良い名じゃな。ワシもこれからはコガネと呼ぶことにしよう。話を戻すが、コガネが交流を持ったのは黄金龍とだけじゃ、この世界の人間とはまだ一度も話をしていないだろう。まーワシが神託を出して、黄金龍と人間の間に平和条約を結ぶための場は準備してやろう。一週間後迎えに来るからな、準備しておくんじゃぞ、代表はコガネと千龍皇帝でいいじゃろう、うん」
「おお、誰かと思ったら神ではないか、会うのは久々だな。それにしても、なんだ……神も小さき者になったのか?以前会った時は空飛ぶクジラの姿をしていたはずだが」
「クジラの姿か……懐かしいの、前回会ったのは二百年ほど前じゃったか、あの後二度ほど姿を変えて今はこの姿じゃよ。コガネの記憶を覗きその中に気に入ったものがあってな、また近々変えようと思っとるのじゃ」
「グハハハハハ、神は飽き性だのう」
「そりゃ飽きるじゃろう、ワシらには寿命がないのじゃ。あ……コガネ、ワシは少し旧友に話がある。コガネは先に帰りなさい」
「分かりました。神様、千龍皇帝様、それでは失礼します」

 こうして僕は山を下りた。やはりというか、神様と千龍皇帝様は知り合いだった。それなら僕を使わず自分で話にくればいいのに……風呂にひたりながら、頭に濡れタオルを乗せたままぼやいた。
 
 
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