一つ目の世界では龍になったので、二つ目の世界では育成ファンタジーを楽しみます。

たゆ

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はじまり

神様と黄金龍4

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     ✿神と千龍皇帝✿

 神と黄金龍の長『千龍皇帝』は向かい合う。神は空を飛び千龍皇帝の顔の位置まで浮き上がる。

「それにしても神よ、随分と小さくなった物だな。その姿はコガネと同じ人間という生き物か?」
「そうじゃよ、コガネに比べるとだいぶ年老いた人間になるがの、別の世界にいる偉大な魔法使いの姿を真似たものじゃ」

 神は白い髭を撫でながら目を細める。神はどんな姿にでもなれた。悠久とも呼べる時の中を過ごすのだ、それくらいの楽しみが無くては退屈もするだろう。

「人間という生き物を神が気に入っているのは分かった。それならナゼ、我の前にコガネを寄こしたのだ。神が直接来た方が早かっただろうに」
「あの者の魂は元々別の世界を彷徨っていたんじゃ。それがひょんなことからワシらの世界の領域に迷い込んでな、消滅寸前にワシが掬い上げてやったのじゃ。もちろん打算もある。ワシが創ったこの世界はまだまだ小さくて若い、随分昔に千龍皇帝とも話したじゃろう、神の目となり他の世界を見に行くための人材を求めていると」
「それがコガネか」
「そうじゃ、本来一つの世界を創るために多くの神が関わっている。コガネの記憶を覗いたが、コガネのいた世界には八百万やおよろずもの神々がいるそうじゃ、だが、この世界にはワシ1人だけ……この世界をより良いものにするためにも、他の世界も見てみたいと思ってな、神は他の世界への干渉を許されておらん。だからコガネの目を借りようと思ったのだ」
「神よ、もしコガネがそれを望まなかったらどうするのだ」
「わしは神じゃぞ、どうとでもなるわ。千龍皇帝もあやつは嫌いではなかろう」
「ああ、気に入っている。木や草共は別として、黄金山脈に足を踏み入れて狂わない生物はコガネが初めてだ。我ら黄金龍が直々に名前を付けるほどに皆からも好かれている。我も丁度千龍皇帝の座に飽き飽きしておったしな、千龍皇帝の魂はその称号に宿る。コガネと一緒に違う世界を見てみるのもいいかもしれん」
「ほー、千龍皇帝のお眼鏡にもかなったか、早速ワシの方でも話を進めておくとしよう」

 千龍皇帝は、魂が世界を渡ることに疑問を抱いた。

「でも、神よ人の魂が世界を渡ることなどあるのか?」
「ないぞ、自力では無理じゃ。あれじゃ……ワシらの世界の隣には、ここよりもずっと大きな世界がある。恐らく、そこの神はコガネと同じ地球人の記憶を覗いたんだろうな、その記憶に神は惹かれた。迷宮ダンジョンを創ったという噂は聞いていた……大方異世界人を集めようと、その魂を拾いにいったのじゃろう。そして、たまたま幾つかの魂が、その手から零れた」
「なるほど、その魂の一つがコガネか。隣の世界アーガルクルムといったか、コガネは無関係ではないのだな」
「そういうことじゃ、ワシら神にとって時間を進むも遡るも自由。千年でコガネに黄金龍の力を馴染ませて、元々転生者として召喚される予定だった場所に送り届けるのも一興じゃろう。正しい世界での輪廻転生を邪魔されたコガネがどう感じるかは検討もつかんよ」

 神と千龍皇帝は、久々の再会に積もる話もあったのだろう。そのあと、夜が明けるまで飲み明かした。
 神と千龍皇帝のはかりごとで、コガネは千年もの長い歳月を黄金山脈で暮らすことになるのだが、それは、まだ少し先の話。

     ✿

 大きな地響きがした。
 慌てて裸足で外に出る。あんなに大きな音がしたのに、小屋は少しも揺れないんだもんな、神様お手製の小屋の凄さを改めて感じるよ。例えここら一帯が吹き飛んだとしても、小屋だけは残る気がするんだよね。
 大きな地響きを起こしたは犯人は、気にした様子もなく、小屋の前に横になっていた。百メートルを優に超える蛇のように長い体をした、月明かりに煌めく黄金色の龍。千龍皇帝様が地面に寝ころがっていた。
 夜明けまで、まだ時間があるんだろう。空には月と沢山の星が煌めいていた。

「コガネ朝早くからすまんな。今日行われる人族との会合は、ここより遥か南の地で行われるそうなのだ。コガネはまだ小さい、速くは飛べんだろう。少し早いが迎えに来たぞ」

 飛ぶ?人間が空を飛べないことを千龍皇帝様は知らないんだろうか……知らないんだろうな。人間というより、つい最近まで自分たち以外の生物に興味がなかったみたいだし、全ての生物が龍のように空を飛ぶと誤解してそうだ。

「あの、千龍皇帝様。僕……空を飛べませんよ」
「なんだと、コガネは空も飛べないのか?もしや、コガネだけじゃなく人間たちは空も飛べないのか?」
「人間というか、飛べない生き物の方がこの世界には多いと思います」

 僕の話を聞いて千龍皇帝様は、しばし口を開けたままじっとしていた。龍でも開いた口が塞がらないことがあるんだろう。

「飛べないのか……うーん、じゃー我の背に乗るが良い」
「無理です。雷がばちばち言ってるじゃないですか、絶対感電死しちゃいますよ。それに千龍皇帝様の上に乗るなんて礼儀知らずな振る舞いなんて出来ませんよ」
「ふむ、でわ黄金龍も一人連れて行くか」
「だから、人間は雷に当たったら死んじゃうんです!」
「それは大丈夫だ。コガネは毎日黄金山脈に来ていただろう、コガネは既に黄金龍に近い存在に変わっている。その証拠に初めて会った時は黒かった頭が、今や我と同じ色をしている」

 えっ……髪の毛?同じ色って金髪?小屋で暮らすようになって、風呂場にも鏡がないから自分の姿なんて見てなかったし、気付かなかった。頬を触る。髭も生えていない……僕は一体何歳なんだ。
 今度は、急に目の前が真っ暗になる。ぬるぬるしてる、どうやら黄金龍に頭から銜えられてしまったみたいだ。そのまま別の黄金龍の頭の上に吐き出された。
 頭がヨダレでベタベタだ。でも、獣のヨダレって臭いイメージがあったんだけど、黄金龍のヨダレは無味無臭だった。味がしないと分かったのは、唇に付いたヨダレを、おもわず舐めてしまったからだ。
 体を黄金龍の纏う雷が包む。〝死ぬ〟と叫びたくなったが、少しだけびりっとしただけで痛いとか辛いとか、そういった感じはまるでない。むしろ少し気持ちがいいかもしれない。

「コガネ振り落とされるなよ、その小さき体では落ちれば死ぬぞ」
「わああああーーーー、待って!!!」

 次から次へと襲い掛かる現実。ジェットコースターどころじゃない。頭に生えた無数の角?刺に必死に掴まっているけど、命綱もシートベルトも無で、飛行機に乗るようなものだ。まずいよ……また漏らしちゃうよ。〝出ないで〟とグッと股関節に力をこめる。
 千龍皇帝と僕を乗せた黄金龍は、空へと一気に駆けあがった。一瞬で雲の上に出る。いやいやいや、飛行機の外ってマイナス四十度前後になるって聞いたことがある。ふつう死ぬよね……実はもう死んでいる?
 一人、龍の頭の上でパニックになった。月や星が一段と近くなった気がする。息が苦しくないことに気が付いた。風も冷たいのに痛くないし、僕は気が付かないうちに人間を辞めていたのかもしれない。今は、この不思議な空の旅を楽しもう。

 
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