一つ目の世界では龍になったので、二つ目の世界では育成ファンタジーを楽しみます。

たゆ

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はじまり

新世界へ

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 千龍皇帝の称号を引き継ぎ不老不滅となった僕は、黄金龍たちの本当の意味での遊び相手になった。彼らは思いっきり暴れたかったのだ。

「こら痛い……痛いって、だから何度も突っ込んで来るな」

 正面から真っ直ぐ突っ込んで来た黄金龍の頭を受け止める。そのまま百メートル近く押し込まれてしまったが、山にぶつかる前になんとか止めることが出来た。

「愉快愉快、コガネとの手合わせほど面白いものはないな」
「うんうん、たのしいよねー、最初の頃は一撃でぐちゃぐちゃになっちゃって味気なかったけど、いまじゃーおいらたちより力が強いんだもん」

 目の前にいる二匹の黄金龍は楽しそうだ。僕は、黄金龍たちの加減を知らない愛情表現で何度も挽肉になった。死なないからって、あんまりだよ。

「僕は全身が塵になっても死なないからいいけど、君たちは死んだら終わりなんだよ」

 何度言っても彼らは聞く耳を持たない。受け止めた黄金龍の顎に膝蹴りを見舞い、そのまま空中に放り投げる。この千年、週の半分はこうして黄金龍たちと拳を突き合わせている。
 不老不滅――老いることも滅びることも無い完全な肉体。今の僕は正真正銘の化け物だ。ただ……不老不滅だからといっても痛覚はある、自然と痛みへの耐性もついたけど、最初の百年は地獄だった。黄金龍たちに銜えられて火山の火口に放り込まれたこともある。
 燃えて皮膚がドロドロになりながらも、炭化して消える前に再生をはじめる。痛みの無限ループ。あの時は、僕を見て笑う黄金龍に向かって〝殺してくれー〟って叫んだもんな。あの時の恨みは未来永劫消えることはないだろう。
 そうそう、僕に称号を託して死んだ初代『千龍皇帝』様についてだが、初代様は千龍皇帝の称号となり僕の中でいまだに生き続けている。龍の力が上手く扱えるようになったのは、初代様のアドバイスがあったからだ。時には、口うるさくて相手が面倒な時もあるけれど、僕にとって最高の相棒でもあり大切な友人だ。

 黄金山脈の中には、ひとつだけ黄金じゃない山がある。他の山に比べてが標高が高過ぎるのが黄金銀杏が育たない原因だ。
 僕が知る、前世で一番高い山の標高は8848メートル。それに比べて、目の前の雪を被る山の標高は10542メートルもある。この山はこの数百年あまりで生まれた新しい山だ。氷で閉ざされた植物ひとつ生えない不思議な山。ここには、黄金龍たちもあまり近付きたがらない、単に寒いからだと思うんだけど……闘気オーラを使えば全身に闘気が行き渡るから、どんなに寒かろうが耐えれるんだけどね。オーラを保つのには集中力が必要だから、黄金龍たちは嫌がる。

(コガネは物好きだな、こんな何もない寒いだけの山に登るんだから)
「この山に挑むのは闘気オーラの訓練にもなるし、あれは僕にとって大切な物なんですよ」

 初代の言葉に、そう答えると、僕の中にいる初代は照れ隠しをするように咳ばらいをした。
 頂上付近に近付くほど吹雪は酷くなり視界も悪くなる。僕は洞窟を探した。
 ここにあるのは、明かりひとつない氷で覆われた直径百メートル越えの巨大洞窟だ。明かりが無くとも龍眼となった僕の目なら、どんな暗闇さえも不自由なく見ることが出来る。
 僕はいまだに龍ではなく人の姿をしている。見た目は人間だが、これでも一応、分類上は黄金龍である。かといって龍のような鋭い牙があるわけでも、強靭な尻尾があるわけでもなく、この体には鱗すらない。前世の僕との違いは、金色の髪と人間の黒目に当たる虹彩が金色である点、その二点だけだ。しかも僕の虹彩は微かに発光している。夜道で出会ったら目だけ光っているので、それなりにあった人は驚くかもしれない。

 洞窟の奥には、巨大な龍の亡骸が置かれている。百メートル越えの黄金龍『初代』様のご遺体だ。
 『千龍皇帝』の称号を引き継いだ際に、僕はこの初代様の体も引き継いだ。二十~三十メートルの黄金龍がどうやってこんなに大きく成長したんだろう?とずっと不思議に思っていたのだが、正解は初代様の体は、他の黄金龍たちとは違い神様が創った特別製だったのだ。
 神様も二代目千龍皇帝が誕生するとは考えていなかったようで……僕が千龍皇帝を引き継いだ途端、取って付けたように〝この体もコガネのモノになったから好きにするといい〟と吐き捨てて、僕に丸投げしたのだ。
 その気になれば、僕は人の体を捨てて目の前の龍にもなれる。
 こんなに大きな体を貰っても不便でしかないから魂を移す気はないけど、せっかく貰ったんだし有効活用したいと、この千年で利用法を考えた。
 自分の魂を二つに分けて、同時に二つの体を動かす術式の製作。
 日本には、神様の魂を分けて、同じ神様を複数の神社で祀る習わしがある。分け御霊と呼ばれる方法だ。神様は無限に魂を分けても、その力が衰えることはない。
 僕は、その方法を真似て魂を二つに分けて、人と龍の体を同時に動かす術式を完成させた。元が人間だけに無限とは行かず出来て二つまでだけど、それでも巨大ロボを操縦している感じがして楽しかった。

(コガネは器用だな、魂を二つに分けるなど我には思いも付かなかったぞ)
「たまたま前世の知識が生きただけです。それに慣れると自分が二人いるみたいで、けっこう面白いんですよ」

 巨大生物を自在に操るのには、思った以上に精神的な疲労があり、ここでの特訓を終えると、僕はいつも通りくたくたになりながら山を降りる。
 この日は、山の下で神様が待っていた。神様は三百年前に姿を変えた。白髪の長髪に長い髭、偉大な魔法使いの姿から一転。七~八歳にしか見えない銀髪のカワイイ系ショタっ子に容姿を変えたのだ。〝これは一目惚れなんじゃ〟と、僕の前世の記憶を覗いて叫んだ後、この姿になった。しかも声まで女性声優が演じたショタっ子に瓜二つという力の入れよう。口調も変化している。

「お久しぶりです神様、今日はどうされたのですか?」
「今日はコガネに大切な話があってきたのさ、少し場所を変えるね」

 神様が、そう言った瞬間、僕は趣のある平屋建て日本家屋の玄関の前にいた。相手は世界すら創造してしまう神様だ。このくらい朝メシ前である。

「玄関に上がる際は、きちんとスリッパに履き替えてくれよ」

 脱いだ靴を揃えて家の中に上がる。僕はいまだにこの世界の靴ではなく、神様から貰ったスニーカーを愛用している。服や下着もそうだ。この世界に来てすぐに貰った減った分だけ衣服が自動補充されるタンスを手放せずにいる。その中には、中世の庶民服感がある生成り色のチュニックと同色の緩めのズボン、有名下着メーカーの物にも遜色ない、白無地のTシャツに黒のボクサーパンツ。黒の靴下に青色の謎ブランドのスニーカーと、千年間毎日変わらない格好をしている。中に入れた物の重さが消えるリュックもお気に入りだ。
 僕はリュックを隣に降ろすと、座り心地の良いソファーに体を沈ませて目の前のオレンジジュースに手を伸ばす。

「くつろいでくれたまえ。数百年前に、キミは元々別の世界に呼ばれる予定だったって話をしたんだけど覚えてる?」

 オレンジジュースのストローから口を離す。

「はい、覚えています。確か、アーガルクルムって世界に行く予定だったって……」
「うん、その通り!地球かぶれの神が、自分たちの世界にも迷宮ダンジョンが欲しいなんて騒いで創った迷惑な世界さ。そこに異世界から呼んだ大量の魂を転生させて遊んでいるんだから困ったものだよ。自分たちの手で英雄譚でも創りたいのかね、あの神達は……と私も以前は呆れていたんだ。でも、コガネの記憶を覗いてダンジョンのある世界に興味が湧いた。そこでだ!この世界はまだ若い。是非コガネには私の目となり隣の世界アーガルクルムを見て来てほしいんだよ」
「でも神様、神様は、他の世界に干渉出来ないルールがあるって以前話してませんでした?千龍皇帝の称号を引き継いだ僕は神様の関係者になるんじゃ……」
「そこは大丈夫。元々コガネはアーガルクルムに呼ばれた魂だからね、既にアーガルクルムへの入場許可証を持っているんだ。ただ、アーガルクルムに入るには幾つか条件があってね、強い力の持ち主ほどその力に制限を受ける。制限といっても転生時に貰えるスキルが無くなるだけだから、コガネなら問題ないはずさ。キミの持つ千龍皇帝の称号を消すことは、例え神であっても出来ないのだから、数年経てばキミは無敵になるよ」
「あの神様、数年経てばって……最初は弱いってことなんでしょうか?」

 神様は目を逸らしながら、僕の前に一枚の紙を差し出した。
 なになに……コガネの説明書?――アーガルクルムでの僕はスキル0落ちこぼれという設定になっていて、レベルも1からスタートする。
 スキルは持たないが、秘められた力として『異種族友好体質ハジメノイッポ』、『不老不滅』、『箱舟世界』、『特別な贈り物プレミアムギフト』の四つの特殊技能を持っていると、この四つは相手の力を覗く技能スキルの持ち主でも見抜くことが出来ないので安心してくれ……か。
 『箱舟世界』と『特別な贈り物プレミアムギフト』は、初めて聞く能力だ。詳しい説明が書いてある。『箱舟世界』は、僕の管理する新しい世界で、何も無い小さな島からはじまり、僕の成長に合わせて箱舟世界も成長していく、ある程度成長することで、この世界とアーガルクルムを行き来きする船にもなる。いずれは黄金龍たちをアーガルクルムに連れて行くこともできるみたいだ。
 箱舟世界は、元々神様たちが世界を創造する前に使う練習キットで、今回は、僕が使うのに合わせて条件が追加されている。
 ダンジョンより生まれ落ちる生物限定の住人招待登録機能……魔物使いみたいな能力かな?住人という言葉だけにダンジョンには怪物以外にも人のような生き物がいるのかもしれない。

 もう一つ『特別な贈り物プレミアムギフト』は、仲間と呼べる友人が出来た時に、相手にお友達特典の技能スキルをプレゼントする能力。アーガルクルムでは、新しくスキルを取得するのが難しいようで、僕と一緒に行動することで、その条件が緩和されると、この能力に関しては隠した方が良さそうだ。

「その紙に書かれているのが、キミがアーガルクルムで使える能力だ。メモは持ち込みNGだから頭に叩き込んでくれたまえ。ちなみに他の異世界人は、みんながレベル二十からの一律スタートって話だから、最初のうちは目立たないようにした方がいいかもね。この世界で使っている小屋と中の物はすべて箱舟世界に移してあるから、そのうち使えるようになるはずだよ」

 『箱舟世界』には、最初は僕自身も入ることが出来ないそうだ。当分は自然に育つことを見守るだけってことかな。

「あの……僕がいなくなって、こっちの世界は大丈夫ですか?」
「うん、問題ないよ!私がいるからね。それにコガネなら、数年でこの世界とアーガルクルムを行き来することが出来るはずさ。安心して行っておいで、アーガルクルムではもっと多くの種族と縁を結ぶんだ。コガネにはヒントを上げるよ、力の弱い生き物からの転生者の方が大きな可能性を秘めている。ただ彼らは言葉が喋れないんだ。キミの力ならそんな彼らとも通じ合えるはずさ、彼らは人から虐げられている。是非そんな彼らにコガネは手を差し伸べてほしい」

 こうして僕は、年に一度アーガルクルムで行われる大規模転生に巻き込まれることになった。
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