一つ目の世界では龍になったので、二つ目の世界では育成ファンタジーを楽しみます。

たゆ

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アーガルクルム

3 転送

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 他の協力者を見習い床に座りながら待つことにした。それにしても……異世界人の数が多い、大規模転生といってもせいぜい五十人もいれば多い方かと思ったのだが、パッと見で二百人以上はいそうである。
 人以外の頭をした協力者を探す。虫の頭をした協力者というから某特撮ヒーローな見た目を想像したのだが、人の体に虫の頭がまんま乗っているようにしか見えない。僕の見ているものに初代様も興味を持ったみたいだ。

(先程からお前が注視しているのが、蟻という生き物からの転生者か)
「はい。虫の転生者を仲間にするのなら、蟻の転生者がいいなって思ったんです」
(ほー蟻とは、どんな生き物なのだ)
「小さくて力持ちで働き者なんです。転生者がそうかは分かりませんが、蟻には、まじめで素直な人が多いんじゃないかと思って」
(小さいのか、人よりもちいさいのか)
「ずっと小さいですよ、僕の爪くらいの大きさでしょうか」
(そんなに小さいのか、それがあの大きさになるのだから神は凄いのだな)

 僕と初代様の視点は大きくずれているみたいだ。気になるのは転生前の生き物としての特徴がスキルにも影響するかどうかだろう。どこまで彼らが強くなるのか楽しみだ。

「みんな鍛え甲斐がありそうですね」
(鍛え甲斐か……だが、いまのコガネでは恐らく誰もついて来ないぞ)
「どうしてですか?」
(コガネは弱すぎるのだ。我は見ただけで大まかに相手の強さが分かるのだが、この中でコガネがダントツに弱い!千年前に初めて黄金山脈に訪ねて来た時よりも弱くなっておるぞ、恐らくレベルとかいうもののせいであろうな)

 そこまで弱体化しているのか、彼らに声をかける前にレベル上げをしたほう良いかもしれない。ただでさえダンジョン攻略という力が全ての環境で生きていくのだ。明らかに自分より劣っている相手の話を聞こうとはしないだろう。毎日のように黄金龍たちと殴り合っていたから、少しのんびりしたかったんだけど、早々にダンジョンに籠る準備をしよう。

『みなさま大変お待たせいたしました。これより三分後にアーガルクルムへの転送を開始します』

 ホールにどよめきが走る。イベント感覚なんだろう近くにいた人と〝うぇーい〟と叫び合いハイタッチを交わす人々の姿が見える。正直、少し羨ましい……仲間が出来たら一緒にハイタッチしてみたいなー。
 転送がはじまる――ホール全体が眩い光に包まれた。異世界というよりは宇宙船の中にいるみたいだ。
 一瞬にして景色が変わる。体育館風の場所から上部に客席のついた大広間に移動する。僕らを見下ろすように、客席にいた人々が立ち上がる。僕らをスカウトするために集まった各国のお偉方なのだろう。僕の頭上にA四サイズほどの透明の板が浮かび上がった。手で触ろうとしたが、実体が無いのかすり抜けてしまう。

『名前:センリュウ=コガネ 性別:男性 LV:1 スキル:無』

 自分以外の板に書かれた内容は、名前と性別しか見ることが出来ないようで、それ以外は全て文字化けしていた。
 反応を見る限り、客席の人間たちには全て見えているのだろう。

『お集まりの皆様、彼らが今年アーガルクルムに転生された協力者たちです。未来の英雄たちに盛大な拍手をお送りください。今日はあくまで顔合わせだけでございます』

 ホール全体に司会者の声が響く。それと同時に会場は万雷の拍手に包まれる。この後僕らには、それぞれ部屋の鍵が配られた。鍵には道案内ガイドの魔法が付与されており、握るだけで自分の部屋への道順が頭に浮かぶ。
 朝食は、朝、昼、晩の三食で、朝食は食堂を使い。最初の五日間は、昼食と夕食のみ、今いる大広間で顔合わせを兼ねた立食形式で行われる。そこで優秀な協力者たちへのスカウト合戦が行われるのだろう。
 僕は予想通り、悪い意味で注目を浴びた。救いは、その目が差別というより、珍獣をみているような好奇の目だったことだろう。

 僕は早々に会場を後にした。これだけの数の協力者がいるのだ。用意された部屋は狭く、ベッドと机がやっと入る広さの寝るだけの部屋だ。トイレやシャワー室は共同だが、個々に壁に遮られている。そうそう、この世界の防音技術には驚いた。隣にも協力者がいるはずなのに音は一切聞こえてこない。
 恐らくこの防音技術にも魔法が使われているんだろう。
 
 最初の五日間は、講習も訓練も無く、大半の協力者たちは自由時間を図書館で過ごした。数日しか経っていないのに、協力者の中には幾つかのグループが出来始めている。
 面倒だと思った昼食と夕食も、最初の二日間こそ、僕を珍しく思い声をかけてくる人もいたが、三日目にはそれもほぼ無くなり、一人で食事を摂ることができた。
 虫からの転生者だけでなく、人以外の頭を持った協力者たちは早くも孤立し始めた。レベルが低いといっても、まだ人間の見た目をした僕は、彼らに比べればましな扱いを受けているのかもしれない。

 六日目から、昼食、夕食共に食堂が解放されたが、立食パーティーも交流の場として会場と規模を変えて続いている。参加はすべて予約制となり、大国への仕官を目指す協力者たちが殺到している。物凄い倍率になりそうだ。
 人間の言葉を喋れない協力者たちは、ここでも不利になる。彼らへの救援策として、人間が使う言語とマナーについての講習会も行われるようだが、人間に馴染めないのか、参加率は多いとは言えない。
 講習会への参加も予約が必要だ。定員が割れれば当日飛び入り参加可能だが、人気のある講習会は定員がすぐに埋まる。

 学校にあった、折り畳み式の長机に似たテーブルが並ぶ。担当者が席に着き、看板を出して講習会の予約手続きをしている。これだけ人数がいると、予約ひとつとってもイベント感がある。
 協力者が並ぶ列の長さで、その講習会の人気を推し量ることが出来る。
 僕も目的の場所を探した。明らかに並んでいる人の数が少ない。
 顔合わせの翌日から、練習用とはいえダンジョンに挑む人はほとんどいないようだ。並んでいるのは僕のように前世でゲームやアニメや漫画でダンジョンの知識がある人か、ダンジョンのあった世界から転生して来た協力者たちだろう、勝手知ったるなんとやらだな。
 僕も列の最後尾に並んだ。頭上にあった能力が表示される透明な板は、もう消えているのだが、レベル1という珍しさから顔を覚えられてしまったんだろう〝レベル1に絶望して死にに行く気か〟といった声も同じ協力者たちから洩れる。

 僕の順番が来た。

「あの……本当にお一人で挑戦されるのですか?」
「はい」

 受付の職員が僕を見て気の毒そうな顔をする。この五日間で本当に有名になってしまったみたいだ。

「協力者だからといってダンジョンの最前線で戦う必要はないんですよ。荷物持ちのような仕事もありますし、年に一度ダンジョンに足を踏み入れれば神様から罰せられることもありません」

 僕たち協力者は、ダンジョンを攻略するためにアーガルクルムに集められた。僕たちにとってダンジョン攻略は義務であり、一年間一度もダンジョンに入場しない協力者は、その資格を剥奪されて元の魂の状態に戻されてしまう。
 例外もある。大きな怪我などによりダンジョンに入れない場合には、融通が効くそうだ。
 それとダンジョンを攻略して、宝珠を手に入れたパーティーのメンバーには、ボス討伐の日から三年間ダンジョンに潜らなかったとしても罰せられることはない特例が与えられる。
 更に、五回以上宝珠を入手した協力者には、名誉協力者としてアーガルクルムへの永住権も認められる。それ以降はダンジョンに潜るも潜らないのも個人の自由だ。
 ダンジョンに関するルールについての文章を読み終えた僕は、練習用ダンジョンへの入場希望の欄に名前を書いた。
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