一つ目の世界では龍になったので、二つ目の世界では育成ファンタジーを楽しみます。

たゆ

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アーガルクルム

8 犬の顔をした協力者2

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 必死に三人の名前を覚える。豆しばがフィグさんで……パグがカイルさん……ヨークシャーテリアがエメリックさんと……、三人とも常に舌が口から出ているが、あの長い舌は口の中にどう納まるんだろう。前世が無類の犬好きであれば、僕は脇目も振らずに彼らに飛び掛かっていたかもしれない。
 もし、僕が彼らの顔をぎゅっと掴んで頬ずりしたりしたらどう思われるんだろう。フランソワさんとリュカさんと一緒にいることで〝蟲頭愛好家〟なる不名誉な二つ名を付けられているのに、更に〝男色家〟の二つ名まで増えそうだ。彼らは犬ではなく人なのだから。
 考えに耽る僕を、現実に引き戻そうとゼムノさんが咳ばらいをする。

「おい……コガネ。聞いているか」
「すみません。少し考え事を……」

 笑顔で誤魔化してみたが、ゼムノさんの顔はちょっと怖い。彼らにじゃれてみたいと想像した僕の顔は、それほどまでにだらしなかったんだろう。カイルさんなんて引いているようにも見える。
 大事な話をしているんだから、もう少し真面目に取り組まないとな。そうでなくても、彼らにとってはこれからを左右する大事な話なんだ。

「ゼムノさん、僕は彼らのような志願者と一緒にダンジョンに潜ればいんですか?」
「そうしてもらえると助かる。コガネが俺たちに頼まれて他のパーティーと一緒にダンジョンに潜っていると知れば、文句を言っている国のお偉方にも、俺らが未帰還者を減らす努力をしているように映るだろう。本当は週に、二三組別のパーティーも見てもらいたかったんだが、なかなかな」
「彼女たちに対する差別意識があるんですね」
「その通りだ。差別意識を隠してコガネに近付こうとする協力者もいるかもしれないが、それは俺らにも確かめようがないからな、どうしたものか」
「それは僕の方で判断できると思います。僕には簡単な嘘を見抜く目があるんです」

 嘘を見抜く目――そんなものは持っていない。ただ、僕らに対して嫌な感情を持つ相手が目の前にいるのなら初代様が教えてくれるはずだ。『千龍皇帝』の称号を引き継いだだけの僕とは違い、初代様は本物の神に届く力を持った龍なのだ。あまり力を堂々と使い過ぎると、この世界の神様たちに怒られる可能性はあるが、悪意の有無を確認する程度なら問題ないだろう。
 僕は、今回の協力の見返りとして、魔物や獣の解体を教えてもらう約束をした。国に所属せずにフリーで活動していくことを考えると、解体は自分たちで出来た方がいいだろう。

 彼ら三人が僕に求めているのは、狼の倒し方ではなく戦い方全般の教授。それなら武芸訓練に参加すればいいのにと言ってみたのだが、武芸訓練はあくまで純然たる人族のモノで、彼らのような前世が人以外の物からの協力者のためには出来ていない。彼らの特徴を活かした戦い方までは教えてはくれないそうだ。
 ……と言われても、千年以上生きているとはいえ、僕は剣の達人でもなんでもない。優秀な狩り人に見えるのは、不老不滅の特性を前面に押し出したごり押しの何度死んでも諦めないゾンビアタックによるものだ。
 〝僕は剣が得意なわけでも、他の武器が器用に使えるわけでもないんですが……〟と素直に言ってみても、それならどうしてそんなに多くの狼を倒せるんだと言われてしまえば返す言葉も無い。言い訳に困る僕を追い込むほど三人の熱意は凄かった。
 最後は、僕が折れた。
 まずは一緒に狩りをしながら、盗める技術モノはどんどん盗んでください。と、気難しい陶芸作家のようなセリフを吐く。要はノープランなのである。

 暗視能力については、種族ごとに差違があることも分かった。彼らは技能スキルとして〝暗視能力〟を持ってはいるが、月や星の明かりの無い真っ暗な場所では、モノを見ることが出来ないとのことだ。
 その日は、お互いの得意不得意を吐き出しながら、戦いの立ち回りについて話し合った。
 決まり事を決めたとして、上手くいくとは限らない。それでも、こういった話し合いを経験してみたかった。ゼムノさんが離れた後も僕らは話し合いを続ける。
 今回、ゼムノさんの要望に従った理由のひとつが、解体工房の空き部屋の使用権だ。あくまで解体工房が営業している日中だけの約束ではあるが、スキル無でレベル一からスタートとなった異例尽くしの僕と、差別の対象となる蟻の顔をしたフランソワさんとリュカさん、犬の顔をした協力者の中でも、力が弱く役立たずと扱いを受ける、小型犬種のフィグさん、カイルさん、エメリックさんの組み合わせは、ただでさえ目を引く。ダンジョンの中以外でじっくり話しをする場所がほしかったのだ。

 ちなみにパーティー内での〝さん〟付けも禁止になった。これはカイルからの提案だ。〝一緒に狩りをする仲間なのに、さん付けはおかしくないですか〟と、僕以外全員がその意見に賛成した。

 決まった狩りの作戦は、フランソワとリュカが盾を持ち相手の攻撃を防ぎ、残りの四人が隙を見て槍を突き刺すというシンプルなものだ。みんなでお揃いの短槍を揃えダンジョンに潜る。
 狩りの初日。言葉が通じないせいだろう、フランソワたちとフィグたちの連携がどうもうまくいかない。僕はフィグたちにコボルト語が理解出来ることを伝えた。それでも、どうしてもすべての判断が毎回僕を通して行われるため遅れが出てしまうのだ。

(コガネ苦労しているな)
「初代様……みんなといる時に話し掛けてくるのは珍しいですね」
(うむ、我もあの者らが気に入ってしまったようだ。人族というのは、どうも他人を不審がる性質を持っておる。だが、あの者らは元が人以外から生ったからだろう、実に純粋だ。近くにいて気分が良いぞ)
「初代様が人を褒めるのは珍しいですね」
(我はそこまで強情ではないのだがな、それでコガネに提案がある。我があ奴らの司令塔になろう、我のことはぬしの守護霊とでも話せば良かろう。もちろんあ奴らがこの事をばらさないか見張るので安心せい、ま……バレタとて、後ひと月もすればここを出て自由になれるのだ。問題はなかろう)

 あとひと月か……早いな。

「そうですね……お願いします。初代様が言うのなら、彼らは十分信じるに値する者たちなのでしょう。僕も彼らに心を開いてみようと思います」

 僕は、少しだけ自分の秘密を打ち明けることにした。
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