一つ目の世界では龍になったので、二つ目の世界では育成ファンタジーを楽しみます。

たゆ

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アーガルクルム

12 パーティープロデュース

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 初代様は人間に染まりつつある。僕らをいい方向に導いていくのが自分の役目であると言い切り〝我がお前たちをプロデュースしてやろう〟と事あるごとに言ってくる。
 一体どこでこんな言葉を覚えたのか……現在いま初代様が力を入れている計画悪だくみが、各国の情勢を調べつつ恩を売れそうな国を探すといったものだ。
 鼻歌交じりの様子から察するに、そういった相手が見つかったのだろう。

(おお、全員揃っておるな。今日はみなに提案があるぞ!主らを追う国も日々減っておる。それでだ、ここいらで味方になる国を作りたいと思う)
「味方になる国ですか……」

 物凄く不安だ。初代様は時々突拍子もないことを言いはじめる。初代様の話だとアーガルクルムにある小国のひとつ、バスターニュ王国への所属が内定していた協力者たちが、ダンジョンに入ったまま予定の期日が過ぎても戻ってこない、その協力者を救うのが初代様の計画のようだ。
 『ハルカゼ』ダンジョンで消息を絶つ協力者は多い。それなのに……なぜ今回に限って、バスターニュという小国の協力者の捜索に首を突っ込もうとしているのか、個人的には、国や貴族といったものには一定の距離を保ちたいと思うのだが、初代様のな様子を見てしまうと、やらないと言うのは難しそうだ。

「初代様、僕らはバスターニュに仕えることが決まっている協力者をダンジョンから探し出して保護すればいいんでしょうか?」
(うむ、そうなるであろうな。ダンジョンの外に出ればすぐにバスターニュ側から声をかけてくると思うぞ、なにせコガネにはフランソワとリュカを探し出した実績があるからな、それに『ハルカゼ』ダンジョンで最も多くの魔物を狩っておる。まー我に任せておけ、バスターニュは小国だが、未攻略のダンジョンを多数抱えておるのだ。恩を売ればダンジョンも攻略し放題、ウハウハだ)
「それは神様の探し物にも繋がるんですか?」
(さあな……だが、コガネの中にある箱舟世界の成長には繋がるはずだ。神が言っていたであろう、箱舟世界が成長すれば二つの世界を行き来する船にもなると)

 確かに、神様はそんな話をしていた。二つの世界を自由に行き来する船……どんなものなんだろう、島が成長して船になるのか?一瞬、星の海を旅する移民船団に所属する人型にも変形する巨大な船が頭に浮かんだ……神様は本当におかしな記憶ばかりを残しておくものだ。
 初代様が言うように、神様の探し物の手掛かりすらない状況では、先に箱舟世界の育成に力を入れたほうがいいのかもしれない。

「コガネ、ついにダンジョンの外に出るのだなフンガー」
「うん、そろそろ肉と山菜とキノコ以外も食べたいしね。それに、初代様の話だと人助けって話だし悪くないよね」
「おお、正義の味方でやんすね!楽しみでやんす」

 エメリックとカイルの二人がはしゃぐ。

「私たちもコガネに助けてもらいました。人助けは歓迎ですピョン」

 フランソワも〝まかせてピョン〟と自分の胸を叩いてみせた。こうして僕たちは、解体を終えた大量の熊の素材を土産に帰還した。

 僕たちの帰還を知り真っ先に出迎えてくれたのは、ゼムノさんたち解体工房のみんなだった。その中に見知らぬ女性と、女性を守るように立つ護衛騎士らしき風貌の男たちがいる。
 紋章の入ったお揃いの甲冑フルプレートがカッコイイ!騎士団や近衛騎士という単語には憧れがある。一番印象深いのは血の十字架を背負う某ロボット漫画に出てくる騎士たちだろう、衣装もバラバラで個性的な個の集団、出てくるキャラ全員がカッコイイのだ。騎士団を主役にした物語がもっと多ければいいのに、と龍に生る前、地球にいた頃の僕は思っていた。
 必死に神様が厳選した記憶を辿る。
 額に皺を寄せ、記憶の金庫に詰め込まれた千年以上昔の記憶と格闘する。顔を上げると僕の前には、女性と護衛騎士と一緒にゼムノさんが立っていた。

「コガネ、帰って来て早々にすまない。少しだけ時間をもらえないだろうか?」

 ゼムノさんにしては珍しく丁寧な物言いである。〝ヒャッハー〟とか叫びが似合いそうな口やかましいおっさん……それでも僕よりはずっと年下である。
 初代様の言葉から推測するに彼女がバスターニュ王国の関係者なのだろう。僕はゼムノさんの提案を了承した。人がいるところでは話しにくい話なのか、彼らと一緒に別の部屋へと移動する。
 僕たちの前には山盛りのパンが盛られ、僕らは我先にと手を伸ばして硬いパンを口の中に放り込んだ。それを見た護衛騎士が何か言いたげな顔をしていたが、女性がそれを手で制す。

「すみません。十日近くダンジョンに籠っていたものでパンが恋しかったんです。小麦って美味しいですよね」

 僕の一言にゼムノさんは呆れ顔で乾いた笑い声を漏らす。一瞬、女性……見た目年齢は二十代前半といったところか、一瞬釣られて笑みを見せたがすぐに表情が引き締まった。

「そろそろ話を進めるぞ、ダンジョンから戻って早々すまないな。こちらはバスターニュ王国第五王女ミマス=フォン=バスターニュ様だ。どうしても、コガネたちと話をしたいと要望があってな、こうなった」

 王女と姫の違いは何だったろう。国の代表者の娘に用いられる身分の名称が王女だったか……そこそこ大きな貴族の娘であれば、王と血縁が無くとも姫という呼称を使ってもいいと聞いた気がする。本当に神様はオカシナ記憶ばかり残しているものだ。
 それよりもだ。ゼムノさんは、この期間だけ解体工房の手伝いをしている、ごく当たり前にある肉屋の店主って設定だったと記憶しているんだが、王女様を前にしても物怖じしてないし、異世界名物、実は身近な人間が権力者だった!みたいなことなんだろうか?
 料理人が王様や政治家から重宝されるのはあるあるだと思うし、ゼムノさんがどんな肉でも仕入れる伝説に肉屋だとしてもおかしくはない。
 フランソワたち五人を、各国の手から守り抜いたんだもんな、よくよく考えれば凄いことだ。
 ゼムノさんは、うろんな僕の視線から逃げるように目を逸らした。

「お疲れのところ申し訳ございません。ゼムノさんの紹介にもありましたが、わたくしはバスターニュ王国第五王女ミマス=フォン=バスターニュ。王女といっても王位継承権を持たないダンジョン管理担当者ですので、そう畏まらないでください」

 第五王女ミマスは、僕たちに親しみのある笑顔を向けた。
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