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127話 西の砦の戦い6(2021.08.17改)
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✿将軍ザズカ✿
壊れた家具に埋まりながら、自分が吹き飛ばされたことを、なかなか理解出来ずにいた。
〝俺たちゴブリンジェネラルは、アリツィオ大樹海の中域でさえ生き残る力を持った魔物だ。たかが人間に服従する魔物に吹き飛ばされるなどありえない、あってはならないはずだ〟……葛藤する。
建物の壁に開いた大きな穴、穴の外には二匹の魔物が立っている。黒い鎧の魔物と、一見少女にしかみえない小柄な魔物。二匹とも自分に比べれば小さな魔物だ。
いや……小さいからといって油断をするな、俺を投げたんだ、奴らもまた強者。
部下たちは今も戦っているのだろう、建物の外からは武器と武器が激しくぶつかる金属音と、同胞の悲鳴ばかりが聞こえてくる。こちらが押されているのだろう。
勝利のために、俺はどう動くべきなのか…‥‥後続の部隊が到着するには二日はかかる。俺たちは人間を侮っていたのか……自問する。
黒い鎧の魔物は、俺の攻撃を止めた。少女の姿の魔物はこの俺の体を投げ飛ばした。同等の力を持つ相手と考えて挑むべきだろう。二対一で戦っては勝ち目は薄いかもしれない。だからといって、我らが王のためにもここで諦めるわけにはいかぬのだ。それに俺があの二匹を引きつけることが出来れば、後は雑魚……グルゴとダバン、あの二人なら、俺が時間を稼げば残りの奴を皆殺しにしてくれるはずだ。そうだ、俺があの二匹を止めれば勝利はある。
✿
みんなが戦っているさ中も、僕は一人ゴブリンからせっせと魔石を取り出している。あ……目が合った。ゴブリンの数が減り手が空いたのだろう、レッサースパルトイ数匹が僕を見つめていた。彼らの心の声が聞こえたような気がする!〝あるじ、お仕事ありませんか?〟と、完全に僕の妄想ではあるけど、あながち的外れではないと思う……本当に暇そうなんだもん。
「キミたちは僕と一緒に魔石取り出して、キミとキミはゴブリンの防具を脱がせて、残りのみんなはゴブリンのお墓を作りたいから、この辺りに穴を掘って」
レッサースパルトイたちは、コクコク頭を縦に揺らすと嬉しそうに仕事をはじめた。
作業中気になったことがある。ゴブリンたちが持つ装備の質が良いのだ。ゴブリンたちは新しい鍛冶師を見つけたのかもしれない。ラガンの従魔として鍛冶師技能を持つゴブリンが生まれたと考えるのが一番適当か、これも要報告だ。
中でも防具に使われている【ジャイアントサンドアント】という魔物の殻は優秀だ。硬さも十分、鉄に比べてかなり軽い、これだけ多くの防具に使われていることからも、加工も容易で数が多い魔物なんだろう。
本来背が低い、人間でいう子供サイズに当たるゴブリンの防具は買い手が付きにくい、しかし、後から来たゴブリンは上位種だけあって体が大きく人間が着るのと変わらない大きさの鎧を着ていた。少しの手直しで冒険者にも売れるかも……臨時収入の予感がするよ!僕は思わず頬を緩めた。
✤ ✿ ★
冒険者たちから怪物と呼ばれてもおかしくない、Bランクの魔物三匹の戦いは終盤を迎えていた。
ローズとブランデルホルストの役割分担はいたってシンプル。ザズカの攻撃をブランデルホルストが防いで、ローズが攻める。二匹の連携は、完全にザズカを翻弄している。
「ナゼ貴様らの様に強い魔物が、あんな力を持たない人間の子供に服従している」
この一言で、ローズのスイッチが入る。
(お父様に向かってあんなですって……お父様は我らが王にして最愛の存在。薄汚いゴブリン風情が口を慎みなさいですわ!)
ローズにとってルフトへの侮辱は、犯してはいけない禁忌なのだ。
それぞれの手に持ったスコーピオンとクレセントアックスを軽々と振り回しザズカをタコ殴りにしていく、その気になれば一匹でも勝てた相手だった。〝お父様が念の為というから、ブランデルホルストと一緒に戦っただけなのに、このゴブリン風情が……〟ローズは切れた。二つの武器は高速で振られ地面からは砂塵を巻き上げる。
ブランデルホルストが止めに入った時には、四肢を砕かれ動けなくなったザズカが虫の息で転がっていた。
ブランデルホルストが目でやり過ぎだとローズを諫める。
二匹は命じられていたのだ。〝イロイロ聞きたいことがあるから、一番強いゴブリンは絶対殺しちゃダメだよ〟と。
ブランデルホルストは動けなくなったザズカを拾い上げると肩に担ぎ運ぶ、ルフトの前に運ばれたザズカの目の前にはグルゴとダバンの死体が転がっていた。
ザズカはここで初めて、自分の部下が全滅したことを知ったのだ。
「きさまらあああああ」
地面に転がりながらザズカは、憎悪を込めて叫んだ。
「聞きたいことがあります」
僕は憎悪の眼差しを真正面から受け、目の前に転がるザズカに話し掛けた。それにしてもボロボロ過ぎやしないか、上位種で傷の治りが早いから辛うじて生きてはいるけど、ひとつ間違えたら死んでいたんじゃないのかな?
ふと、ローズを見ると……目を合わせないように高速で顔を背ける。犯人はローズか……ローズがやり過ぎない様に、ブランデルホルストと一緒に戦う様に命じたのに。
「何も喋る気はない、さっさと殺せ」
部下を全員殺された挙句、こんな状態で聞きたいことがあると言われても、素直に話す気にはならないよね。と諦めかけたのだが、予想に反してザズカは語りはじめる。
「人間共の中には、俺たちゴブリンに通じている奴もいる。人間はすぐ裏切るからな、もうすぐお前らの町に我らの軍勢が押し寄せるぞ」
怒り過ぎて自制が効かなかったんだろう、人間の中に裏切者がいることと、カスターニャの町にゴブリンが攻め入ることを、僕が質問する前に自ら言い出した。
「同族を捨て駒にしたあなたが、何をそんなに怒っているんですか?自業自得ですよ」
「言っただろう。あんなカスと俺の仲間を一緒にするなと」
命ごいしない姿勢は実に堂々としている。ザズカは、その後完全な沈黙を貫いた。
戦いを終え僕らは西の砦の建物全てに火を放った。このまま残してゴブリンたちに使われるわけにもいかないし……目的を果たした僕らは、カスターニャの町への帰路に就いた。
壊れた家具に埋まりながら、自分が吹き飛ばされたことを、なかなか理解出来ずにいた。
〝俺たちゴブリンジェネラルは、アリツィオ大樹海の中域でさえ生き残る力を持った魔物だ。たかが人間に服従する魔物に吹き飛ばされるなどありえない、あってはならないはずだ〟……葛藤する。
建物の壁に開いた大きな穴、穴の外には二匹の魔物が立っている。黒い鎧の魔物と、一見少女にしかみえない小柄な魔物。二匹とも自分に比べれば小さな魔物だ。
いや……小さいからといって油断をするな、俺を投げたんだ、奴らもまた強者。
部下たちは今も戦っているのだろう、建物の外からは武器と武器が激しくぶつかる金属音と、同胞の悲鳴ばかりが聞こえてくる。こちらが押されているのだろう。
勝利のために、俺はどう動くべきなのか…‥‥後続の部隊が到着するには二日はかかる。俺たちは人間を侮っていたのか……自問する。
黒い鎧の魔物は、俺の攻撃を止めた。少女の姿の魔物はこの俺の体を投げ飛ばした。同等の力を持つ相手と考えて挑むべきだろう。二対一で戦っては勝ち目は薄いかもしれない。だからといって、我らが王のためにもここで諦めるわけにはいかぬのだ。それに俺があの二匹を引きつけることが出来れば、後は雑魚……グルゴとダバン、あの二人なら、俺が時間を稼げば残りの奴を皆殺しにしてくれるはずだ。そうだ、俺があの二匹を止めれば勝利はある。
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みんなが戦っているさ中も、僕は一人ゴブリンからせっせと魔石を取り出している。あ……目が合った。ゴブリンの数が減り手が空いたのだろう、レッサースパルトイ数匹が僕を見つめていた。彼らの心の声が聞こえたような気がする!〝あるじ、お仕事ありませんか?〟と、完全に僕の妄想ではあるけど、あながち的外れではないと思う……本当に暇そうなんだもん。
「キミたちは僕と一緒に魔石取り出して、キミとキミはゴブリンの防具を脱がせて、残りのみんなはゴブリンのお墓を作りたいから、この辺りに穴を掘って」
レッサースパルトイたちは、コクコク頭を縦に揺らすと嬉しそうに仕事をはじめた。
作業中気になったことがある。ゴブリンたちが持つ装備の質が良いのだ。ゴブリンたちは新しい鍛冶師を見つけたのかもしれない。ラガンの従魔として鍛冶師技能を持つゴブリンが生まれたと考えるのが一番適当か、これも要報告だ。
中でも防具に使われている【ジャイアントサンドアント】という魔物の殻は優秀だ。硬さも十分、鉄に比べてかなり軽い、これだけ多くの防具に使われていることからも、加工も容易で数が多い魔物なんだろう。
本来背が低い、人間でいう子供サイズに当たるゴブリンの防具は買い手が付きにくい、しかし、後から来たゴブリンは上位種だけあって体が大きく人間が着るのと変わらない大きさの鎧を着ていた。少しの手直しで冒険者にも売れるかも……臨時収入の予感がするよ!僕は思わず頬を緩めた。
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冒険者たちから怪物と呼ばれてもおかしくない、Bランクの魔物三匹の戦いは終盤を迎えていた。
ローズとブランデルホルストの役割分担はいたってシンプル。ザズカの攻撃をブランデルホルストが防いで、ローズが攻める。二匹の連携は、完全にザズカを翻弄している。
「ナゼ貴様らの様に強い魔物が、あんな力を持たない人間の子供に服従している」
この一言で、ローズのスイッチが入る。
(お父様に向かってあんなですって……お父様は我らが王にして最愛の存在。薄汚いゴブリン風情が口を慎みなさいですわ!)
ローズにとってルフトへの侮辱は、犯してはいけない禁忌なのだ。
それぞれの手に持ったスコーピオンとクレセントアックスを軽々と振り回しザズカをタコ殴りにしていく、その気になれば一匹でも勝てた相手だった。〝お父様が念の為というから、ブランデルホルストと一緒に戦っただけなのに、このゴブリン風情が……〟ローズは切れた。二つの武器は高速で振られ地面からは砂塵を巻き上げる。
ブランデルホルストが止めに入った時には、四肢を砕かれ動けなくなったザズカが虫の息で転がっていた。
ブランデルホルストが目でやり過ぎだとローズを諫める。
二匹は命じられていたのだ。〝イロイロ聞きたいことがあるから、一番強いゴブリンは絶対殺しちゃダメだよ〟と。
ブランデルホルストは動けなくなったザズカを拾い上げると肩に担ぎ運ぶ、ルフトの前に運ばれたザズカの目の前にはグルゴとダバンの死体が転がっていた。
ザズカはここで初めて、自分の部下が全滅したことを知ったのだ。
「きさまらあああああ」
地面に転がりながらザズカは、憎悪を込めて叫んだ。
「聞きたいことがあります」
僕は憎悪の眼差しを真正面から受け、目の前に転がるザズカに話し掛けた。それにしてもボロボロ過ぎやしないか、上位種で傷の治りが早いから辛うじて生きてはいるけど、ひとつ間違えたら死んでいたんじゃないのかな?
ふと、ローズを見ると……目を合わせないように高速で顔を背ける。犯人はローズか……ローズがやり過ぎない様に、ブランデルホルストと一緒に戦う様に命じたのに。
「何も喋る気はない、さっさと殺せ」
部下を全員殺された挙句、こんな状態で聞きたいことがあると言われても、素直に話す気にはならないよね。と諦めかけたのだが、予想に反してザズカは語りはじめる。
「人間共の中には、俺たちゴブリンに通じている奴もいる。人間はすぐ裏切るからな、もうすぐお前らの町に我らの軍勢が押し寄せるぞ」
怒り過ぎて自制が効かなかったんだろう、人間の中に裏切者がいることと、カスターニャの町にゴブリンが攻め入ることを、僕が質問する前に自ら言い出した。
「同族を捨て駒にしたあなたが、何をそんなに怒っているんですか?自業自得ですよ」
「言っただろう。あんなカスと俺の仲間を一緒にするなと」
命ごいしない姿勢は実に堂々としている。ザズカは、その後完全な沈黙を貫いた。
戦いを終え僕らは西の砦の建物全てに火を放った。このまま残してゴブリンたちに使われるわけにもいかないし……目的を果たした僕らは、カスターニャの町への帰路に就いた。
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