落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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129話 内通者2(2021.08.18改)

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 ヴォラベル魔導中隊が出て行ったことは、思っていた以上にこの町に暮らす人々に不安を与えた。単純に兵力二百を失ったのだから当然といえば当然だろう。
 僕としては、内通者が町に居座るよりは、出て行った方がずっと良いと思うのだが……彼らが内通者である事実は僕しか知らないわけだし、かといって確たる証拠もないこの話を誰かに言うつもりもない。
 僕の横には、〝三〟の数字が入った盾を持つレッサースパルトイナイトスリーが歩いている。目ざとい人ならレッサースパルトイたちが持つ盾の数字が、毎回変わっていることに気付いているだろう。
 アルトゥールさんが手を振りながら近付いて来た。僕を探して走り回っていたようで、額からは大粒の汗が流れ、立ち止まると同時に両膝に手を当てて大きく息を吐いた。

「ハーハーハー、探したよルフト君、少しいいかな?西の砦のことでイロイロ教えてほしいことがあるんだ」

 周りに聞かれたくはないといった感じで、アルトゥールさんは声を潜めた。僕は〝分かりました〟と二つ返事で了承する。

「場所を変えてもいいかい?今回も銀猫亭を借りていてね」

 銀猫亭は、この町の中心部にある大きな宿屋で、一年前にもアルトゥールさんたちリレイアスト王国の兵士たちが宿泊及び会議用として借りていた宿屋だ。

「はい、大丈夫です」

 僕としても、アルトゥールさんたちに話しておきたいことがあるから、丁度良いタイミングなんだけど……問題は、後から攻めてきたゴブリンたちのことを、どう説明するかだよね。
 僕が銀猫亭に到着すると、中ではすでに大勢の兵士たちがテーブルを囲み話し合いをはじめていた。兵士たちの中には知らない顔も多い。

「みんな、ルフト君を連れて来たぞ」

 アルトゥールさんは笑顔で僕の肩に手を回し大声で到着を告げる。一斉にじろじろ見られるのはやっぱり恥ずかしい……。

「この前は戦闘中でゆっくり話せなかったからな、改めて久しぶりだな、ルフト」

 真っ先に話し合いを投げ出して、僕に駆け寄って来たのはグレドさんだった。

「改めてお久しぶりです。ファルシオン曲剣も愛用してくれているんですね」
「ああ!大事にしてるぜ、妖精様が打った剣だからな、ガハハハハ」

 リレイアスト王国の兵士は冒険者たちと違い、僕が従魔師テイマーであっても気にせず接してくれる。僕にとっても彼らとの時間は、心休まるものがある。
 ナイトスリーは、慣れないのかモジモジしているけどね。

「アルトゥールにグレド、ルフト君に会えて嬉しいのはわかりますが、今は先に話すことがあるでしょう」

 バルテルメさんは、やれやれといった様子で溜め息をついた。相変わらず、みんなに振り回されて苦労してそうだよね。

「ルフトまずは座れ」

 僕はアルトゥールさんとグレドさんの抱擁を解くと、レールダムさんが引いた椅子に座った。ナイトスリーは当然の様に僕の後ろに立つ。
 一部の兵士たちの視線が明らかにナイトスリーに向いている。僕は先にナイトスリーのことを先に紹介した。

「キミがルフト君か、はじめまして!俺は第五兵団兵士長プリョードルだ。噂は聞いている、よろしくな」

 そう言い差し出された手を取り握手を交わした……ゴツゴツした大きな手だ。
 プリョードルさんは、同じ兵士長でもアルトゥールさんやバルテルメさんとは少し違った雰囲気がある。豪快というか厳ついというか、体格がいいせいか少し怖い……。僕と同じ黒髪で、額と頬には大きな刀傷が残っている。年齢は五十前後?アルトゥールさんやバルテルメさんよりも年上に見える。

「同じく第五兵団のダンブロージオだ。よろしくな」

 ダンブロージオさんは、第五兵団の副長の様な位置にいる人なんだとか、副長の様なというのは、第五兵団には隊長以外の役職がなくその辺りは曖昧なんだとか、自由な軍隊だ。

「悪いねルフト君、積もる話もあるんだけど、今は……西の砦で得た情報を出来る限り詳しく教えてもらえないだろうか?」
「分かりました。これは冒険者ギルドでも話しましたが、遅れてきたゴブリンはその見た目から、全てが上位種や進化種だと思われます。僕は、ゴブリンたちが西の砦に入って来るのを待って砦に火を放ちました。逃げ出すのが遅かったみたいで……すぐに追っ手を放たれちゃって、運悪く四匹のゴブリンに見つかってしまったんです。なんとかそのゴブリンは倒せたんですが、倒した一匹が死ぬ間際に妙なことを言っていたんです」

 後から攻めてきたゴブリンを全て倒したことは伏せて、逃げ遅れて追っ手が放たれたと嘘を付く……その中の一匹が運良く人の言葉を話せたと、出来過ぎだろうか。

「ルフト君は相変わらず無茶をするね、まあそれは諦めるとして、妙なこととは何かな?」

 バルテルメさんは大きく息を吐くと、頭痛がするのか頭の横を指で叩く。それとは正反対に、アルトゥールさんとグレドさんが僕の話を楽しそうに聞いているのが、おかしかった。

「人間の中に内通者がいると、死に際に叫びました」

 嘘をついてゴメンナサイと思いながら、僕は内通者のことを話す。その話を聞いても、兵士たちの顔には一切驚きはない。

「だろうな、あまりにも襲って来るタイミングが良すぎる。内通者もいるだろう」

 アルトゥールさんが漏らす。予想の範囲内だったのだろう、その後も僕はゴブリンについての質問に、ボロがでないように答えた。ゴブリンの特徴を詳しく話し過ぎたせいで、他のゴブリンとも戦ったんじゃないかと疑っている様子はあったものの、そこは深くは突っ込まれなかった。
 バルテルメさんは、諦め顔で胃薬的な何かを飲んでいたけれど……。
 結局、ヴォラベル魔導中隊の中に内通者がいたことは話さなかった。

「ルフト君は、冒険者たちとではなく私たちと一緒に行動することになりました。担当するのは西門の防衛です。もちろん状況によっては東門に向かう可能性もありますが、西門はヴォラベル魔導中隊のレッサーガーゴイルも配置される予定でしたから、戦力的にも西門から離れられないでしょうね」

 西門を守るのは、リレイアスト王国の兵士たちが主で、柱になるのは、第四、第五、第六兵団の中隊規模の三部隊。兵数は合計六百人あまり。ここにカスターニャの町の自警団五十人が加わる予定だという。ヴォラベル魔導中隊の二百体に及ぶレッサーガーゴイルがいなくなったのだ、バルテルメさんたちも作戦の練り直しに追われている。
 ちなみに、東門は冒険者たちを掻き集めた混成部隊が配置される。全部で千人近くいるらしい。
 西門、東門を合わせると戦う人間は千七百人前後。軍隊で言えば連隊規模だし、辺境の町の戦力としては十分なものではないだろうか?
 対してゴブリンの数はおおよそ二千~四千匹前後だと考えられている。一人二匹以上のゴブリンを倒せばいいと考えれば案外なんとかなりそうな気もする。

「それとルフト君には、これを渡しておくよ」

 渡されたのは指輪で、宝石の位置に透明なガラス玉のようなモノが付いている。ガラス玉には細かくルーン魔法文字が刻まれており、魔道具なのは間違いない。

「これは、なんですか?」
「この指輪は、私たち各兵士団の兵士長と副長が持っているモノなんですが、誰か一人が魔力を込めるとこのように光ります」

 バルテルメさんが実際指輪に魔力を流すと、その場にいた兵士たちが付けている指輪が一斉に光った。

「ルフト君は従魔の住処に籠ると連絡がつかなくなるのでコレを渡しておこうかと思いまして、ちなみに!従魔の住処でも光ることは部隊に所属するテイマーで確認済みなので安心してください」

 連絡といっても言葉や文字が乗せられるワケではなく、あくまでこの指輪は光るだけとのことで〝指輪が光ったら銀猫亭に来てくださいね〟とバルテルメさんは微笑んだ。

「あ!僕からも見てもらいたいモノがあるんです」

 従魔の住処に入ると、先日、完成したばかりの魔法生物【カカシ案山子】一体を連れて出る。
 木の棒を十字に組み、そこに藁で出来た頭と体が付けられた。麦わら帽子と従魔たちが好き勝手に描いた顔が特徴の魔法生物。

「なんだそりゃ……」

 誰かが言葉を漏らす。兵士たちの表情はみな一様に?マークが浮かんでいる。

「ほーカカシじゃねーか、珍しいな」

 プリョードルさんはカカシを知っていた。早速兵士たちがプリョードルさんに説明を求める。

「ここよりずっと北の大陸に魔法生物造りが盛んな国があってな、その国では畑の農作物を荒らす害獣や害鳥避けとして、このカカシを置いておくのさ。勝手に動いて面倒な奴らを追っ払ってくれるから便利なんだよな、まさかこの国でカカシを見るとは思わなかったぜ」

 プリョードルさんの話を聞いて、兵士たちもカカシのことが理解できたようだ。

「で、ルフト君は、これを何に使うつもりなんですか」

 急に農作業用の魔法生物を見せられても混乱するだろう……バルテルメさんは不思議そうな顔で聞いてきた。

「はい、今回のゴブリンとの戦いに役立てられないかと思って」
「でも少し軽くねーか」

 グレドさんが、カカシの両脇に手を添えて体全体をグイっと持ち上げる。

「ハイ、重さは無いんですが身軽さと……魔法生物なので疲れることも睡眠もいらないので見張りに置くのもありかと」

 カカシは元々農作物を獣や鳥から守るための魔法生物だ。体に音がなる物を付けておけば、敵が攻めて来た時にそれを鳴らすことだって出来る。
 何より人間と違って裏切る心配がない。

「それにゴブリンの首に攻撃が当たれば、重さのないカカシでもゴブリンは十分倒せるはずです」

 アルトゥールさんにバルテルメさん、この部屋の兵士たちは立ち上がり、再度カカシを興味深そうに見つめた。『鑑定』魔法が得意な兵士がいたんだろう、ボソッと〝このナイフ……【レッサーワイバーンのペティナイフ】て名前が付いてますよ〟と呟く。みんなの視線が当たり前のように僕に突き刺さる。

「ルフト……お前、この一年間どんな暮らしをしていたんだ。馬車を牽いていた恐竜だけでも驚いたのに、レッサーワイバーンまで仕留めたなんて」

 そんなグレドさんの呆れた視線を受けて僕は苦笑い。
 言葉を失う僕に、アルトゥールさんが助け舟を出してくれた。

「グレド、あまりルフト君を困らせるな、レッサーワイバーンも恐竜も気になるが、今は目の前のゴブリンにだけ集中するんだ。旅の話は後のお楽しみにとっておこうじゃないか。で、ルフト君!このカカシは何体準備できているんだ?」
「全部で五四体あります」

 助け舟じゃなく後回しになっただけか……胃が痛いかも。バルテルメさんにおススメの薬を聞いてみようかな。

「五四体とは心強いな、ルフト君が良ければだが、この戦いが終わった後、カカシ一体と設計図の写しを譲ってもらえないだろうか、もちろん謝礼は払うよ」

 アルトゥールさんは、僕と出会ったことをキッカケにテイマーを兵士として雇用することを思い付いたみたいだし、カカシの使い方も閃いたんだろう。弱くても囮ぐらいにはなるもんね。
 設計図の出所を追及されないかと心配したんだけど、それについても上手くやるとアルトゥールさんは約束してくれた。信用はしているけどメルフィルさんから貰ったことについては黙っておこう。
 
 
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