落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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162話 ミイラ専門の死霊魔術師1(2021.08.21改)

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 ミイラの後ろから奇妙な生き物が走って来る。見覚えがある形だ。確か……雨が続いた日に晴れを願い吊るす呪いのまじない人形【てるてる坊主】だ。玉葱を頭に見立てて白い布を被せて首を紐で縛って吊るすんだったかな、目の前にいるのは、まさに大きな痩せたてるてる坊主である。
 頭から白いシーツを被り、首の部分を首飾りの様に縄で縛っている。僕が知るてるてる坊主と違うのは、破けた布から突き出た黄色い嘴と、シーツの下からチラチラと見える細い鳥の足。
 てるてる坊主の恰好に扮した喋る鳥の魔物?
 奇妙な恰好をした生き物は、そのまま僕の前へ進んだ。

「この子たちは悪くないポン、命だけは助けてほしいポン。アンデッドなんで一回死んじゃってるけど……プッククク」

 と、目の前で土下座をする。下を向いた嘴からは微かな笑い声と一緒に呟きが漏れる〝アンデッドなのに命を助けてくださいって……プッ、アンデッドが生きてるのかって…プッ〟なんだろう、このまま頭を踏んでしまいたい気分だ。
 そう思ったのは、僕だけではなかったようで、ローズが怖い顔で、クレセントアックス三日月斧を静かに持ち上げる。る気十分って感じだね。僕も少しイラッとしたので気持ちは分かる。でも、それ以上に、僕は目の前の変な生き物に興味が沸いた。
 そうそう、不思議なことにこの洞窟の中でなら、ローズやフローラルといったラフラー砂漠で動けなかった従魔も問題なく動けるみたいだ。僕としても初不死の魔物アンデッドは怖いので、みんな従魔にも出て来てもらった。
 ローズを手で制して僕自身が前に出る。

「敵意がない相手には、攻撃はしません」
「……」

 相手を安心させるためにも笑顔で話し掛ける。変な生き物は顔を上げてローズを見て〝あれ攻撃しようとしてますよね〟感を出すが、僕も〝まだ攻撃はしていないからセーフでしょ〟という気持ちを込めてひきつった笑顔で返した。僕と痩せたてるてる坊主の間に無言の攻防が続く。
 変な生き物は首をキョロキョロと左右に動かしながら考え込むと、自分の中で落としどころを見つけたのか、テンション高めで喋りはじめる。

「おお―神ポン、あなたは神ポン、いや天使だポン」

 僕は神様に祭り上げられた後、すぐに天使まで降格してしまったようだ。
 変な生き物は、その場で嬉しそうに立ち上がると二匹のミイラたちと輪になって踊りはじめた。

 五分後――踊りはまだ続いていた。そろそろ踊りを止めてくれないだろうか、ローズさんが物凄く怖い顔をしているんだけど……。
 流石にローズのプレッシャーに気付いたのか、変な生き物はもう一度僕の前で何度も頭を下げた。

「調子に乗ってすみませんでしたポン、ようこそ皆さま、我らトトルッポが暮らすトトルッポの村へ、!ポン」

 トトルッポ、初めて聞く名前だ。彼の名前かな、それとも種族名どっちなんだろう。

「村ってことは、他にも同じ魔物がいるの」

 僕の言葉に、トトルッポは少しの間、また考え込む。
 そして……。

「沢山いますポン、いますぐ呼びますポン、でもトトルッポは魔物じゃないんですよ!カー」

 カラスかよ、突っ込みは心の中だけに止めた。ポンとカーどっちを使うのかはっきりしてほしい。
 目の前のトトルッポが叫んだ後、テントの中から、同じようなてるてる坊主の格好をした生き物が〝カーカー〟言いながら這い出して来た。てるてる坊主の後ろには、砂ムカデやサンドワームや砂漠オオダンゴムシ等、様々な生き物のミイラたちが続く。
 魚のミイラまでいるし、地面に横になりながら必死に胸鰭を動かし移動している姿が、色々と気の毒に思えた。魚のミイラって役に立つんだろうか?

「お客様だポン」
「生きている人間なんて久々だポン」
「黒鎧と赤髪はグレーターデーモンポンか、怖いポン」

 等々、僕らを見て思ったことを好き放題に呟いている。
 我慢の限界だったんだろう。本気でローズが動き出そうとした瞬間。もう一度〝カー〟と甲高い鳴き声が響く。今鳴いたのはこの村の中でも地位の高い人なんだろう、騒いでいたてるてる坊主の集団が一斉に口を閉じた。

「ようこそおいでくださいましたポン、我々はレッサーデーモン下級悪魔族に名を連ねる死霊魔術師ネクロマンサーに長けた一族、トトルッポ族でございます。人族の様に個々の名は持たないのでご理解くださいポン、ちなみに悪魔は魔物はありませんポン」

 悪魔という言葉に、フローラルをはじめとした妖精たちが顔を顰める。妖精と悪魔には因縁があるんだろうか。

「妖精の皆さま、そんなに怖い顔はしないでくださいませポン、悪魔を全てあのモノと一緒にしないでもらいたいポン」

 トトルッポに椅子に座る習慣はない様だ〝この場所は毎日ミイラたちに掃除をさせているから綺麗だポン〟と言われたので、彼らに倣い僕らもそのまま地面に腰を下ろす。
 トトルッポは死霊魔術師ネクロマンサーと名乗ったが、彼らが意識をして生み出せる不死の魔物アンデッドはミイラだけで、儀式が失敗するとたまにゾンビも生まれたりするそうだ。

 その後、僕たはトトルッポたちからこの場所と周囲の砂の湖についての話を聞いた。
 外にいる鯨の魔物は【デザートアッシュブラウンホエール】という鯨の魔物で、肉食ではあるものの好き嫌いが多く、口に合わない物はすぐ吐き出すんだそうだ。
 ここにいるミイラのほとんどは、そんな吐き出されてこの島に流れ着いた死体から作られた。
 僕らが食べられずに無事だった理由は、デザートアッシュブラウンホエールが鉄や石や木といったものを嫌い、口に入れない傾向があるからじゃないかとトトルッポたちは話す。昔ここに唯一生きて辿り着いた冒険者も、鉄製の全身鎧を着ていた。
 ちなみに、その冒険者は今もミイラとなり働いている。

「襲ってくれば、我らも抵抗するポン」

 彼らは冒険者を殺したことを否定しなかった。冒険者は、ここに辿り着いた時点で全身の骨が砕けて戦える状態ではなかったんだそうだ。〝普通の冒険者はどんなに自分の怪我が酷かろうとも、魔物を見れば戦おうとしますポン〟と笑いながら戦おうとしない僕が変人でもあるかのように彼らは話す。
 トトルッポたちに、滝の上に行く方法がないか尋ねたところ、彼らの協力があれば行く方法はあるらしい。
 もちろん、タダではなく力を貸す代わりに見返りを要求された……ミイラ製作に使うための素材。そこそこ強い魔物の死体だ。あまり強い魔物だと、この土地が持つ魔力が足りずに、ミイラ製作も失敗してしまうらしい。だからこそ、そこそこ強い魔物がいいんだとトトルッポたちは力説する。
 漂着した冒険者は、なかなかの実力者だったが、人間だったから運良くミイラに出来たと彼らは懐かしみながら語った。

※2020.08.21追加、レッサーデーモン下級悪魔族トトルッポは羽毛が無い鳥の姿をしており、羽毛の代わりに白い布に包まれている。個人に対しては語尾に〝ポン〟を付け、全員への呼び掛けには語尾に〝カー〟を付けるか、そのままカーだけで使う。
 
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