落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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163話 ミイラ専門の死霊魔術師2(2021.08.21改)

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 トトルッポ下級悪魔たちは、僕らを前にミイラ製作について熱く語りはじめた。ニュトンたちが鍛冶仕事に多くの情熱と誇りを持つ様に、彼らも沢山の情熱と誇りを持って日々優秀なミイラを作ろうと努力と研鑽を重ねている。
 不死の魔物アンデッドとなるミイラ作りに一番重要なものが、土地と水なんだそうだ。ミイラの体に宿る魔力は、その土地の魔力で決まる。

「なかなか、これだけ上質な魔力を含んだ土地と水には出会えませんポン」

 彼らは胸を張る。彼らがこんな不便な場所で暮らしている一番の理由は、ここ以上にミイラ製作に適した土地がないからだという。単にあの砂の滝を登れないだけなのでは?と勘ぐってしまうが、滝の登り方を知っているみたいだし、決めつけるのはよくないよね。
 強い魔力を持った土地と水か……従魔の住処の存在を知られてしまったら大変なことになりそうだ。
 トトルッポたちがミイラ作りに使う水は、この洞窟の壁から染み出す水を毎日少しずつ集めて貯めた水だ。その水の量も一週間に一体の人間サイズのミイラを作り出すのがやとって話だし……使ったら使った分だけ魔力が宿る水が湧き出す泉の話なんてしたら、無理にでも僕についてきそうだ。
 フローラルやレモンに〝妖精には、ここは喉から手が出るほど暮らしたい環境ではありませんかポン〟と何匹かのトトルッポたちがやたらと絡んでいるのを見て、二匹が従魔の住処の土と水の自慢をはじめないかと、内心はらはらした。

 僕が一番知りたいのは、あの滝を登る方法だ。話を進めるためにも、まずは対価を払おう。
 脱出を協力してもらうために僕が差し出したのは、冷凍庫から取り出したゴブリンチーフの死体だった。強過ぎない魔物というリクエストに、この辺りかな?と……出してみたところ〝これくらいがちょうど良いポン〟〝感激だポン、こんなキレイな死体は久々ポン〟と彼らはとても喜んでくれた。
 普段は、デザートアッシュブラウンホエール砂クジラの魔物が、食わず嫌いで吐き出した死体を元にミイラ作りをしているだけに、損傷の少ない死体がよほど珍しいのか、ちょっとしたお祭り騒ぎである。

「もし良かったら、ミイラ作りを見学しませんかポン」

 そんなトトルッポたちのお誘いに、僕は乗ることにした。

 開始五分――その匂いと光景に我慢出来ず、口を両手で押さえたモーソンが飛び出していく。
 僕はもう慣れたけれど、魔物の解体作業は、慣れていないと見た目も匂いもキツイんだよね。何度吐いても諦めずに続けることで、いつの間にか平気になっていく、冒険者ギルドの職員は、魔物の解体は船乗りのようなモノだと話していた。
 船乗りは、何度船酔いを繰り返しても諦めず船に乗り続け、最終的には血まで吐いて一流の船乗りに成長するんだとか……。こういう機会でもなければミイラ作りなんて見学できないし、僕はノートにメモを取りながら熱心に彼らの話を聞いた。
 別の大陸で人間たちが死者を埋葬する際ミイラを作るのだが、埋葬するためのミイラと、不死の魔物アンデッドにするためのミイラ作りは、まったく別モノとのことだ。埋葬されたミイラが動き出して不死の魔物アンデッド化することもあるのだが、あれは偶然生まれるだけで、トトルッポが作るミイラは必然なんだという。

 表題:トトルッポ族伝統のミイラ作りの極意。
①ミイラにしたい魔物の腹を開き、内臓をキレイに全て取り除きます。(脳みそも含む!)
②内臓がキレイに取れたら、穴という穴から魔力を含んだ水を入れてキレイに洗浄。※ここがポイント!洗い方が雑だったり、洗い残しがあると失敗して命令を効かないゾンビになってしまうこともあるので注意しましょう。
③キレイに洗った死体に『クリエイトミイラ』の魔法をかけます。すると、数十秒で魔物は干乾びていき骨と皮の状態に。
④最後は魔法を唱えた術師自身が吐き出した唾液まみれの特殊な包帯を巻いて一日寝かせれば、命令を聞く素直なミイラ君の出来上がりです。※この包帯の準備の仕方は、トトルッポ族特有の方法ですので、他の種族の方はご自身でミイラ用包帯の作り方を調べてくださいね。
注意)運が良いと生前のスキルを残した特別なミイラが生まれることもあるので、みなさん!カリスマミイラクリエイター目指して頑張ってください。

 一応ノートに図解入りで、手順は書いてみたものの『クリエイトミイラ』の魔法が使えない時点で、ミイラ作りは無理だ。
 そうそう……このミイラについて一番驚いたのが、百年近く経つ古いミイラからも腐敗臭がほとんどしなかったことだ。これも唾液まみれの包帯の力なんだという。それなら、洞窟に入った際に感じた嫌な臭いの正体はなんだったんだろう?
 そう思い聞いてみたところ、臭いの正体はミイラではなく、肥料作りに使っている魔物の内臓が原因だったようで、流れでミイラ作りの後に、肥料作りも見学することになり、今度は僕が、あまりの臭さに開始五分で口を両手で押さえながら逃げ出してしまった。
 あんなモノで一体どんな植物を育てるんだろう。
 こんなおかしな肥料作りでも、ひとつだけ参考になったことがあった。魔石を長時間土に埋めるとで、魔石の魔力がじわじわと土に溶け出して、相性次第では土地自体が魔力を持つこともあるみたいなんだ『ラガンの部屋(仮)かっこかり』の土壌改良にも是非活用してみたい。
 最後に一番大事なこの場所からの脱出方法について教えてもらった。
 方法は単純で【デザートアッシュブラウンホエール】を捕まえてミイラを作り、そのミイラに船を牽かせてあの砂の滝を登る。
 この砂漠にいる生物の中で、デザートアッシュブラウンホエールだけが、あの滝を自由に行き来することが出来る生き物なんだそうだ。スライムたちが、あのクジラをどう釣り上げるか考えていたことは、的外れじゃなかったってことだよね。

 もう一つ気になったことがある。フローラルたちが悪魔と聞いて顔を顰めた理由についてだ。これについてもフローラルが教えてくれた。
 すべての妖精には、同じ言い伝えが残されている。
 多くの森を焼き、住人である妖精たちを皆殺した悪魔の伝説が、それが理由で妖精たちは、悪魔の存在自体を憎んでいる。
 この話で気になったのが、何故別々の土地で生まれた妖精であるフローラルやレモンやナナホシにハナホシがそのことを知っていたかなんだけど……妖精たちは産まれる際に故人の記憶を受け継ぐ性質を持っており、フローラルのような物知りな妖精が生まれるのは、その性質があるからなんだそうだ。特に大きな事件の記憶ほど、多くの妖精たちに共有される様で……妖精殺しの悪魔の記憶が憎しみと共にあるのはそのせいなんだろう。

(主様、わしらが憎んでいるのはこんな下級悪魔ではありません。彼らの力を借りることには抵抗はありませんので、気にしないでくだされ)

 フローラルが、心配する僕の顔を見てそう笑った。
 
 
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