98 / 149
連載
163話 ミイラ専門の死霊魔術師2(2021.08.21改)
しおりを挟むトトルッポたちは、僕らを前にミイラ製作について熱く語りはじめた。ニュトンたちが鍛冶仕事に多くの情熱と誇りを持つ様に、彼らも沢山の情熱と誇りを持って日々優秀なミイラを作ろうと努力と研鑽を重ねている。
不死の魔物となるミイラ作りに一番重要なものが、土地と水なんだそうだ。ミイラの体に宿る魔力は、その土地の魔力で決まる。
「なかなか、これだけ上質な魔力を含んだ土地と水には出会えませんポン」
彼らは胸を張る。彼らがこんな不便な場所で暮らしている一番の理由は、ここ以上にミイラ製作に適した土地がないからだという。単にあの砂の滝を登れないだけなのでは?と勘ぐってしまうが、滝の登り方を知っているみたいだし、決めつけるのはよくないよね。
強い魔力を持った土地と水か……従魔の住処の存在を知られてしまったら大変なことになりそうだ。
トトルッポたちがミイラ作りに使う水は、この洞窟の壁から染み出す水を毎日少しずつ集めて貯めた水だ。その水の量も一週間に一体の人間サイズのミイラを作り出すのがやとって話だし……使ったら使った分だけ魔力が宿る水が湧き出す泉の話なんてしたら、無理にでも僕についてきそうだ。
フローラルやレモンに〝妖精には、ここは喉から手が出るほど暮らしたい環境ではありませんかポン〟と何匹かのトトルッポたちがやたらと絡んでいるのを見て、二匹が従魔の住処の土と水の自慢をはじめないかと、内心はらはらした。
僕が一番知りたいのは、あの滝を登る方法だ。話を進めるためにも、まずは対価を払おう。
脱出を協力してもらうために僕が差し出したのは、冷凍庫から取り出したゴブリンチーフの死体だった。強過ぎない魔物というリクエストに、この辺りかな?と……出してみたところ〝これくらいがちょうど良いポン〟〝感激だポン、こんなキレイな死体は久々ポン〟と彼らはとても喜んでくれた。
普段は、デザートアッシュブラウンホエールが、食わず嫌いで吐き出した死体を元にミイラ作りをしているだけに、損傷の少ない死体がよほど珍しいのか、ちょっとしたお祭り騒ぎである。
「もし良かったら、ミイラ作りを見学しませんかポン」
そんなトトルッポたちのお誘いに、僕は乗ることにした。
開始五分――その匂いと光景に我慢出来ず、口を両手で押さえたモーソンが飛び出していく。
僕はもう慣れたけれど、魔物の解体作業は、慣れていないと見た目も匂いもキツイんだよね。何度吐いても諦めずに続けることで、いつの間にか平気になっていく、冒険者ギルドの職員は、魔物の解体は船乗りのようなモノだと話していた。
船乗りは、何度船酔いを繰り返しても諦めず船に乗り続け、最終的には血まで吐いて一流の船乗りに成長するんだとか……。こういう機会でもなければミイラ作りなんて見学できないし、僕はノートにメモを取りながら熱心に彼らの話を聞いた。
別の大陸で人間たちが死者を埋葬する際ミイラを作るのだが、埋葬するためのミイラと、不死の魔物にするためのミイラ作りは、まったく別モノとのことだ。埋葬されたミイラが動き出して不死の魔物化することもあるのだが、あれは偶然生まれるだけで、トトルッポが作るミイラは必然なんだという。
表題:トトルッポ族伝統のミイラ作りの極意。
①ミイラにしたい魔物の腹を開き、内臓をキレイに全て取り除きます。(脳みそも含む!)
②内臓がキレイに取れたら、穴という穴から魔力を含んだ水を入れてキレイに洗浄。※ここがポイント!洗い方が雑だったり、洗い残しがあると失敗して命令を効かないゾンビになってしまうこともあるので注意しましょう。
③キレイに洗った死体に『クリエイトミイラ』の魔法をかけます。すると、数十秒で魔物は干乾びていき骨と皮の状態に。
④最後は魔法を唱えた術師自身が吐き出した唾液まみれの特殊な包帯を巻いて一日寝かせれば、命令を聞く素直なミイラ君の出来上がりです。※この包帯の準備の仕方は、トトルッポ族特有の方法ですので、他の種族の方はご自身でミイラ用包帯の作り方を調べてくださいね。
注意)運が良いと生前のスキルを残した特別なミイラが生まれることもあるので、みなさん!カリスマミイラクリエイター目指して頑張ってください。
一応ノートに図解入りで、手順は書いてみたものの『クリエイトミイラ』の魔法が使えない時点で、ミイラ作りは無理だ。
そうそう……このミイラについて一番驚いたのが、百年近く経つ古いミイラからも腐敗臭がほとんどしなかったことだ。これも唾液まみれの包帯の力なんだという。それなら、洞窟に入った際に感じた嫌な臭いの正体はなんだったんだろう?
そう思い聞いてみたところ、臭いの正体はミイラではなく、肥料作りに使っている魔物の内臓が原因だったようで、流れでミイラ作りの後に、肥料作りも見学することになり、今度は僕が、あまりの臭さに開始五分で口を両手で押さえながら逃げ出してしまった。
あんなモノで一体どんな植物を育てるんだろう。
こんなおかしな肥料作りでも、ひとつだけ参考になったことがあった。魔石を長時間土に埋めるとで、魔石の魔力がじわじわと土に溶け出して、相性次第では土地自体が魔力を持つこともあるみたいなんだ『ラガンの部屋(仮)』の土壌改良にも是非活用してみたい。
最後に一番大事なこの場所からの脱出方法について教えてもらった。
方法は単純で【デザートアッシュブラウンホエール】を捕まえてミイラを作り、そのミイラに船を牽かせてあの砂の滝を登る。
この砂漠にいる生物の中で、デザートアッシュブラウンホエールだけが、あの滝を自由に行き来することが出来る生き物なんだそうだ。スライムたちが、あのクジラをどう釣り上げるか考えていたことは、的外れじゃなかったってことだよね。
もう一つ気になったことがある。フローラルたちが悪魔と聞いて顔を顰めた理由についてだ。これについてもフローラルが教えてくれた。
すべての妖精には、同じ言い伝えが残されている。
多くの森を焼き、住人である妖精たちを皆殺した悪魔の伝説が、それが理由で妖精たちは、悪魔の存在自体を憎んでいる。
この話で気になったのが、何故別々の土地で生まれた妖精であるフローラルやレモンやナナホシにハナホシがそのことを知っていたかなんだけど……妖精たちは産まれる際に故人の記憶を受け継ぐ性質を持っており、フローラルのような物知りな妖精が生まれるのは、その性質があるからなんだそうだ。特に大きな事件の記憶ほど、多くの妖精たちに共有される様で……妖精殺しの悪魔の記憶が憎しみと共にあるのはそのせいなんだろう。
(主様、わしらが憎んでいるのはこんな下級悪魔ではありません。彼らの力を借りることには抵抗はありませんので、気にしないでくだされ)
フローラルが、心配する僕の顔を見てそう笑った。
14
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。