落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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167話 神木龍の目覚め(2021.08.22改)

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 トトルッポたちを同盟に加えると、彼らを早速従魔の住処へと招待した。

【ルフト同盟トトルッポ族の入場を許可しますか? はい / いいえ 】

 恐らくこれは、僕自身が決めたこの能力の発動手順なんだと思う。何の迷いも無く〝はい〟を選ぶ。
 入口を開くと、四九匹ものトトルッポたちが周りをきょろきょろしながら恐る恐る、従魔の住処の中へと足を踏み入れた。

「凄いポン、ここ魔力がみなぎっているポン」

 一人が口にすると、みんなが騒がしく好き勝手に喋りはじめる。ローズが〝ウルサイですわ〟と一喝、彼らは静かになった。どうやら、彼らが作ったミイラたちも問題なく従魔の住処に入れる様だ。
 ん?なんだろう……?
 動く土人形こと全身苔だらけの魔物モストットが繁殖していたのだ。大人のモストットの身長が八〇~百三十センチ前後なんだけど、三十センチ前後の生まれたての土人形がトテトテとおぼつかない足取りで歩いていた。
 大人十三匹に対して子供が六匹……性別のないモストットがどうやって増えるのかは分からないけど、彼らは植物の魔物で水と光さえあれば生きていける。増えたからといって食糧にも困らない。戦闘は出来ないけど、吐出す泥は栄養満点で優秀な肥料になり、『ラガンの部屋(仮)かっこかり』の畑の開墾にも役立っている。しばらくは様子見かな。

 トトルッポたちには、ラガンの部屋(仮)で暮してもらうつもりだ、小人の村に着いたら石の森に彼らの集落を作れないか相談してみよう。
 この日から僕たちは、砂の滝を登る準備をはじめた。

 数日後――予定よりだいぶ早くデザートアッシュブラウンホエール砂クジラの魔物のミイラが完成した。
 部屋の隅に転がる巨大な包帯の塊がひれをパタパタと動かしながら、地面の上でのんびりユラユラと揺れている。
 包帯でグルグル巻きにされた三匹のクジラのミイラは、モコモコしていて可愛い。
 ミイラは乾燥して薄くなった肉体に、生前の姿になるように包帯を何重にも重ねて巻いて作る。触り心地だけなら弾力もあってぬいぐるみと変わらない。
 中身さえ知らなければ、ミイラは案外子供ウケするかもしれない。カラフルなミイラを作れば町の中で連れていても、ひょっとしたら……ドングリやテリアやボロニーズよりも警戒されないかもしれないな。普通種のゴブリンのミイラなら少し猫背気味だけど、パッと見子供にも見えるし、ラフラー砂漠を脱出したら、トトルッポたちに相談してみようかな。ハーブを煮詰めて包帯に染み込ませて、良い香りがするミイラを作るのもいいな、妄想が広がる。

 この日も、少しずつ洞窟からトトルッポたちの荷物やテントを運んだ。慣れない力仕事をしたせいか……いつの間にか僕はベッドに入り眠ってしまったらしい。
 中途半端な時間に寝たせいだろう、真夜中に不意に目が覚めた。
 従魔の住処は暗く、幾つか残されたランタンの明かりだけがぼんやりと光っている。暗視能力がない従魔は、真っ暗な中では活動できない。そのため、ランタンを幾つか点けたままにしているのだ。

「にくー、にくー」

 テリアが急に喋り出す……寝言か、そっとテリアの口のヨダレを拭き、ズレたシーツを直す。〝寝相が悪いなテリアは〟
 みんなを起こさないように静かにベッドから出ると、ホワイトさんが近付いて来た。僕は指を一本口元に当て〝しー〟と静かにしてねと伝えると、歩き出す。寝過ぎたせいか体が少し重い、ホワイトさんが僕の後ろをついてきた。
 付き合ってくれるのかな。
 フェアリーウエル妖精の泉の冷たい水で顔を洗い、手提げ用の持ち運びが出来るランタンを手に取る。暗い従魔の住処の中を散歩がてらに歩いた。こうして真っ暗な中、散歩するのは久しぶりだ。
 魔道具の時計を見て時間を確認する……日の出までは、まだまだ時間があるようだ。
 進化の際に出る、苦しそうな従魔の唸り声で何度か起きたことはあるけど、この時間に目を覚ますのは久々だ。
 いつの間にか、ホワイトさんの他に、ブルーさんやグリーンさんレッドさんも僕の後をついてきていた。
 こんな時間に何の音だろう、何かが這っているような奇妙な音がする。
 僕は音がする畑の方へと歩いていく、夜行性の植物?らしきものがそこにはいた。植木鉢の下から根を伸ばし動く不思議な植物。
 近寄る僕に気が付いたのか、根を引っ込めて動かない普通の植物を演じている。バッチリ動くのを見ちゃったんだけどな……こんな不思議な植物をいつ植えたんだろう?
 その植物はまだ小さく、樹皮は木というより爬虫類に近い、銀色の鱗の様なもので覆われていた。僕が手に持つランタンの光を反射して銀色の樹皮がキレイに光った。

「キレイな植物……美人さんだね」

 僕が銀の鱗に手を伸ばすと、植木鉢の下から根が伸びて僕の手に絡みついた。それは僕の手を締め付けるようなものではなく、優しく僕の手に触れている。
 敵意はこれっぽっちも感じないしぬくもりも感じる。

「君は誰なの?」

 一瞬僕の頭の中にキレイな銀色の龍の姿が流れ込んでくる。思い出した……【神木龍の種】が育ったのか。
 目の前の植物に『鑑定』魔法を使う。

【神木龍の苗】
説明:???まだ子供……。

 まだ、魔物にすらなっていないのに、僕の背中に吊るされた精霊樹の杖に近い力を感じる。早めに従魔契約をした方がいいかもしれない。早速、神木龍の苗に向かい右手を翳し光の鎖を伸ばす。
 僕と神木龍の苗を光の鎖が繋ぐと、淡い光が僕らを包み従魔契約が成立した。
 ん……魔力が全部……持っていかれ……。

 夢を見た――眠る僕を心配そうに見つめる沢山の銀色の龍。驚いた……大きな大樹の枝の一つ一つが竜の首で、それぞれに頭がある。これ全部で一匹の龍なのか、樹皮は全て銀色に光る鱗で覆われており、根を足のように動かして移動する巨大な龍。
 目の前の龍からは神々しささえも感じた。こんな大変なモノと従魔契約したんだ、子供とはいえ魔力全部を使い切るのも当然だよね。
 
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