落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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168話 レッドさんの視点――マンドラゴラの種植え(2021.08.22改)

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     ✤レッドさん✿

 主が、また倒れた。無茶をするから……と思うのと同時に、考えなしに行動する、そんな無鉄砲な主が私は好きだ。
 いつも、私たち従魔のために動いてくれる主、好きだという感情には物凄く沢山の種類があるんだと主は教えてくれた。私の好きはどんな好きなのかな?
 神木龍の苗を従魔にするために魔力を使い果たした主の体を、グリーンさんが優しく抱えながらベッドまで運んでいく。私たちスライムの中でグリーンさんが、今は一番の力持ちで体が大きい。少し前まではブルーさんが一番の力持ちだったんだけど、グリーンさんはスライムの中で初めてジャイアントスライムに進化した。
 盾を持ち、いつも先頭で相手の攻撃を受け止めるブルーさんは、グリーンさんに先を越されたことが悔しいようだ。
 私も悔しかったはずなのに、今は不思議と悔しくはない。私はどんなスライムになりたいんだろう?
 幸せそうに寝息をたてながらベッドで眠る主の顔を、四匹でぼーっと見ていたら、いつの間にか日が昇り朝になっていた。目を覚ましたみんなが集まってきた。
 私の後ろには神木龍の苗が隠れている。集まってきたみんなを、私の背後からこっそりと覗く。
 ホワイトさんが代表して、昨晩起きたことを黒板を使いみんなに説明する。
 何度か神木龍の苗に強い視線を向ける従魔もいたけれど、なんとか神木龍の苗に罪が無いことは分かってもらえたようだ。良かった……。

(困った主様じゃな、わしらに心配ばかりかけおって、少しは慎重に動いてもらえんものかのう)

 フローラルが顎鬚を触りながらぼやいている。私たちのまとめ役でもあるフローラルの大変さを想うと、頭が下がる思いだ。

(仕方ありませんわ、それがお父様ですから。ただ、神木龍は神獣のようなものですから、苗のうちに従魔にしたとはいえ消耗も大きいでしょう。どれだけ眠り続けるか……)

 ローズも心配そうに目を細める。
 その後、神木龍の苗は、無事みんなに新しい家族として迎えられた。

 ホワイトさんからメッセージが届いた。

(主のことは、ローズが責任を持って見てくれるそうです。添い寝?という良い方法があるみたいで……私たちは主が目覚めるまで、この砂漠からの脱出準備を進めておきましょう)

 私たちスライムには、言葉を発する口も無ければ、妖精たちのような念話も使えない。主やみんなとの意思疎通は、黒板に文字を書いて行なう筆談を使うんだけど、スライム同士ならもっと簡単に意志疎通が可能だ。
 文字を書かない筆談みたいなものかな?思ったことを文字で思い浮かべると、スライム同士でその文字を共有することが出来るのだ。私たちはこれをメッセージと呼んでいる。

(私は、トトルッポたちのお手伝いをします)

 みんなにメッセージを送る。

 ラガンの部屋(仮)かっこかりの畑では、土に魔力を宿らせることが出来ないものかと、試行錯誤が続いていた。
 今回試すのは、土に魔石を埋める方法と、もう一つ、トトルッポたちが持っていた。マンドラゴラと呼ばれる珍しい植物の種を使う方法だ。
 マンドラゴラは、根が人の形になる不思議な植物で、魔物の血肉を染み込ませた土に埋めることで、稀にドルマンドラゴラという変異種が生まれてくる。
 ドルマンドラゴラは魔力を持ち、その根は様々な効能を持つ薬の材料にもなる。ただ……ドルマンドラゴラを無理に引き抜こうとすると魂に影響するほどの叫び声をあげるため、取り扱いが難しい植物でもある。
 しかし、ドルマンドラゴラにはあまり知られていない、もう一つの特徴がある。抜かずにそのまま育てることで、ドルマンドラゴラは自ら土から抜け出し、走り回りながら土地をより豊かにするヒミツの種をばら撒くのだ。
 私は、そんなマンドラゴラの種をトトルッポやミイラたちと一緒に植えている。

「レッドさん、種はこれくらい間隔を開けて植えるポン」

 『分かりました』黒板に文字を書いて答える。
 変異種のドルマンドラゴラを育てるには、魔物の内臓を発酵させた肥料を使うのが一番なんだけど……主をはじめ、仲間たちの中には腐敗臭を嫌う者が多い、今回は腐っていないデザートアッシュブラウンホエール砂クジラの魔物の内臓を木の棒で磨り潰し、フェアリーウエル妖精の泉の水に混ぜて畑に撒いてみることにした。

「レッドさんは手際がイイポンね」

 褒められたみたいだ……照れるな、主は土いじりが好きだ。〝従魔は主に似て主は従魔に似るんだよ〟と主が話していた。私たちが土いじりが好きなのは、主の影響なのかなー。

 主が寝込む直前、私は主と一緒にトトルッポたちの要望を聞いて周った。トトルッポたちからの要望と、それに対する主の回答。私はその二つをノートに書き記す。

 トトルッポたちの要望其の一。
 ルフト様の役に立つためにもミイラを作りたいですポン、従魔の住処の土や水は自由に使ってもいいですかポン?出来れば魔物の死体や使わない魔石も使わせてほしいポン。
 主の回答……。
 主は、疲れていたんだろう、眠そうな顔をしながらも全てを許可した。〝でも畑を荒らしたりみんな従魔の迷惑になるようなことはしないでね。それと魔石は一番小さい魔石を使うように〟と答えた。メモメモ。

 トトルッポたちの要望其の二。
 回収したテントを、『ラガンの部屋(仮)かっこかり』に置かせてほしいポン
 主の回答……。
 一瞬スヤスヤ寝息はたてたものの、頑張って目を開き、好きに使っていいよと一言。〝足りないものがあったら遠慮しないで相談してね。材料があるモノに関しては作れるから!小人の村に行けば足りない材料も手に入ると思うし……むにゃむにゃ〟ドングリちゃんの背中に時折顔を埋めながらも、主は寝るのを堪えてそう言った。メモメモ。

 トトルッポたちの要望其の三。
 この土地で数百年守っているものがあるポン。それは大きな棺で、棺は銀の鎖でグルグル巻きにされていて、古代文字が書かれた紙がいっぱい貼ってあるんだポン。どうすればいいポン?
 主の回答……。
 大丈夫かな完全に眠っている。あ……起きた〝他の物と一緒に回収しちゃっていいと思うよ〟と主は言った。凄く不安だけど主の言葉は絶対だ。
 私と同様心配だったんだろう、一匹のトトルッポが不安そうに、もう一度質問を繰り返したが主の回答は変わらない。
 〝大丈夫!大丈夫!棺なんて大きな荷物でもないし、ふぁー……後で目を通すからレッドさんは、ノートをいつもの場所に置いておいてね。それとトトルッポたちに協力してあげて〟主は本気で眠そうだ。メモメモ。

 こうして、トトルッポたちとの話を終えた主は、ドングリちゃんの背中の上でウトウトしながらベッドへと運ばれていった。眠気が限界だったんだと思う。
 主を見送りながらトトルッポたちは凄く感動していた。そして、一生ついていきますポン、少しでもルフト様の役に立つために頑張るポンと全員で誓いを立てていた。主は、本当に多くの者に愛される。

「レッドさん、俺たちがルフト様の役に立つところを見守ってくださいポン」

 こうして私は、主からの依頼通りトトルッポたちの力になろうと、仲良しのナナホシくんとハナホシくんにと一緒に頑張ることにした。

 主は、一週間近く眠るんじゃないかとフローラルが話していたし、その間、私がトトルッポたちの力になろう。
 黒板に『主様が寝込んでしまったため、私が来ました』と書いてトトルッポたちに見せる。

「これはレッドさんありがとうございますポン、我々がルフト様のお役に立つためにも、特別なミイラを作ることが一番だと思うポン!そのためにも魔物の死体を分けてほしいポン」

 私は体を伸ばしクネクネしながら考える。魔物の死体なんてあったかな?

(レッドさん、魔物の死体ならルフトが新しく作った大きな冷凍庫の中に放り込んだはずだぞ)

 ナナホシくんが、私の帽子の上から顔を出して教えてくれた。
 トトルッポたちを連れて地下冷凍庫へと向かう。冷凍庫の蓋を開けて中を覗くとカチカチに凍った大きなゴブリンの死体が無造作に転がっていた。

「おお、大きなゴブリンの死体がいっぱいあるポン、あれと、あれと、あれが良いポン」

 トトルッポたちが選んだのは、緑のゴブリン王ラガンとゴブリンジェネラルの死体だ。
 ブランデルホルストとアルジェントに手を借りて冷凍庫の外へと運び出す。千切れた手足も冷凍庫の中に転がっていたため、パズルを組み上げるように破損した部位に合うものを探し出した。

「ここの土と水なら、どんなに強い魔物のミイラでも作れそうポン」

 トトルッポたちは、嬉しそうだ。
 損傷の酷いものは骨を繋げ皮膚を縫い合わせ、出来るだけ生前に近い状態に修復してからミイラ作りをはじめる。
 四九匹のトトルッポたちが協力した結果。三日後には、ゴブリン王ラガンのミイラと、七匹のゴブリンジェネラルのミイラが完成した。
 トトルッポたちは、次は、ゴブリンチーフの死体を使ってミイラを作ると張り切っていた。
 
 
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