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170話 生存確認と英雄の亡霊(2021.08.22改)
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✤リレイアスト王国冒険者ギルド総長ラッゼリア✿
ギルドカードには冒険者たちも知らないヒミツがある。ヒミツというよりは、それを気にする冒険者がいないだけかもしれない。
ギルドカードは、単に冒険者のランクやクエストの受注履歴、ダンジョンの攻略履歴の管理をするための魔道具と思われがちだが、その中には冒険者ギルドが各冒険者に付けた評価や犯罪行為の有無、冒険者の生死等の情報も含まれている。特に個々の生存情報については、リアルタイムで冒険者ギルドへと届けられているのだ。
これを使い冒険者ギルドでは、行方不明者の探索依頼が必要かどうかの判定をしている。
ただし、生存の有無を確認する魔道具は、それぞれの国の一つの冒険者ギルドにしか置かれていない。
リレイアスト王国、王都オリスにある冒険者ギルドの一室。
本棚の様に並んだ複数の棚には、冒険者の名前が刻まれプレートがぎっしりと並べられており、プレートには青く光るプレートと、光が消えたプレートの二種類がある。この巨大な棚全てがひとつの魔道具なのだ。
青い光は冒険者の生存を示し、消えたプレートは持ち主が死んでいるか、または冒険者の首からギルドカードが外れたことを示している。
「総長、見つかりましたか?」
「今探しているよ、カストルさんも人使いが荒いよね。冒険者の生存についてすぐに調べろだなんてさ」
「いつも暇だと思われているんですよ、総長は……」
金髪に碧眼をした貴族と思しき格好の青年。リレイアスト王国の冒険者ギルド総長ラッゼリアは、自分の右腕とも呼べるギルド職員と一緒に、巨大な棚の中から一人の冒険者の名前が書かれたプレートを探していた。
彼の動きが止まる。
「やっと見つけたよ、カストルさんお気に入りのルフト君はまだ生きているようだね」
ラッゼリアが見ていたのは、ここ五年以内に登録した冒険者たちの名前が並べられた棚だった。青く光るルフトの名前を見つめながらラッゼリアは考える。カストルさんの報告だと、ゴブリンの町を偵察した結果。ゴブリン王は死んだ可能性が高いとのことなんだけど……当のルフト君はいまだに戻らずか、色々と規格外の少年とは聞いているけど、どこに行ってしまったんだろうねー。この部屋には、この大陸で活動する全ての冒険者の名前が書かれたプレートが集められている。
『生命の棚』と呼ばれる巨大魔道具が設置された部屋だ。
他人へ偽装を見破るのもギルドカードの仕組みのひとつなのだが、冒険者を呑み込んで成り代わる。この魔道具の判定すらも騙してしまう魔物の存在を、彼らはまだ知らない。
五年以内に登録した新人冒険者たちの棚にも、光が消えたプレートが多くある、それは、冒険者という職業が死と隣り合わせということを物語っている証だった。
ラッゼリアは、消えた名前を見て一瞬悲しい顔をしたが、今回の目的はルフトという名の冒険者の生存確認だと思い出して、そのまま部屋を出ようとした。
違和感を感じて足を止める。
そこは百年以上前に登録した冒険者たちの、しかも、英雄と呼ばれたAランク以上の冒険者のプレートが並べられた棚だった。そのほとんどの光は消え、エルフの様な長命種の種族の冒険者の名前だけが今もそこで光り続けている。
だからこそ、それに気が付いた。
「総長?どうしたんですが、驚いた顔をして」
「可笑しいんだよ……見てよこれ」
数百もの光の消えたプレートの中に、ポツンとひとつ光るプレートがあった。そこは、エルフの冒険者の名前から離れた人間の冒険者の名前が並ぶ場所だ。
「Aランク冒険者『巨斧のナファローネ』……総長、ナファローネってとっくの昔に死んだ英雄の名前ですよね?」
「そうそう、軍事国家ヴォラベル最強の戦士と呼ばれた人物だね。反逆罪だったかな?まーそれもよくわからない罪で追われたって言われているんだけどね。最終的に彼は、ヴォラベルの追っ手を躱しアリツィオ大樹海へ逃げ込み消息を断ったと記録にはある。結局ギルドカードの命の灯りが消えたことでヴォラベルも捜索を打ち切ったワケだけど」
「でも、仮にギルドカードが残っていて、たまたま拾った冒険者が首に吊るしたとしてもプレートは光りませんよね?」
「そうなんだよねー、考えられるとしたら彼自身がアンデッドになって復活した可能性かな……」
ラッゼリアは、頭痛を抑えるように自分の頭に手を置く。
「総長、でもアンデッドは死者ですよね?ギルドカードが反応するんですか」
「前例が無いからわからないよ……でも死者は動かないけどアンデッドは動くんだ!魔物学者の中には別の魔物として新しく命を得ると言う人もいるからね、実際アンデッドは倒すことも殺すことが出来るわけだし……うん、これは見なかったことにしよう、そうしよう!」
ラッゼリアは開き直ったように出口へと向かう。
「えーいんですか?」
「いいも何も……ルフト君の生死の確認にこの部屋に入らなければ気が付かなかったはずさ。これは事故、そう事故なんだ。まーアンデッドになって復活したナファローネが、冒険者ギルドに顔を出すなんてことが起きないかぎり問題ないさ」
「アンデッドが冒険者ギルドになんて……ありえないですね」
ラッゼリアとギルド職員は、お互い笑いながらその部屋を後にした。
ギルドカードには冒険者たちも知らないヒミツがある。ヒミツというよりは、それを気にする冒険者がいないだけかもしれない。
ギルドカードは、単に冒険者のランクやクエストの受注履歴、ダンジョンの攻略履歴の管理をするための魔道具と思われがちだが、その中には冒険者ギルドが各冒険者に付けた評価や犯罪行為の有無、冒険者の生死等の情報も含まれている。特に個々の生存情報については、リアルタイムで冒険者ギルドへと届けられているのだ。
これを使い冒険者ギルドでは、行方不明者の探索依頼が必要かどうかの判定をしている。
ただし、生存の有無を確認する魔道具は、それぞれの国の一つの冒険者ギルドにしか置かれていない。
リレイアスト王国、王都オリスにある冒険者ギルドの一室。
本棚の様に並んだ複数の棚には、冒険者の名前が刻まれプレートがぎっしりと並べられており、プレートには青く光るプレートと、光が消えたプレートの二種類がある。この巨大な棚全てがひとつの魔道具なのだ。
青い光は冒険者の生存を示し、消えたプレートは持ち主が死んでいるか、または冒険者の首からギルドカードが外れたことを示している。
「総長、見つかりましたか?」
「今探しているよ、カストルさんも人使いが荒いよね。冒険者の生存についてすぐに調べろだなんてさ」
「いつも暇だと思われているんですよ、総長は……」
金髪に碧眼をした貴族と思しき格好の青年。リレイアスト王国の冒険者ギルド総長ラッゼリアは、自分の右腕とも呼べるギルド職員と一緒に、巨大な棚の中から一人の冒険者の名前が書かれたプレートを探していた。
彼の動きが止まる。
「やっと見つけたよ、カストルさんお気に入りのルフト君はまだ生きているようだね」
ラッゼリアが見ていたのは、ここ五年以内に登録した冒険者たちの名前が並べられた棚だった。青く光るルフトの名前を見つめながらラッゼリアは考える。カストルさんの報告だと、ゴブリンの町を偵察した結果。ゴブリン王は死んだ可能性が高いとのことなんだけど……当のルフト君はいまだに戻らずか、色々と規格外の少年とは聞いているけど、どこに行ってしまったんだろうねー。この部屋には、この大陸で活動する全ての冒険者の名前が書かれたプレートが集められている。
『生命の棚』と呼ばれる巨大魔道具が設置された部屋だ。
他人へ偽装を見破るのもギルドカードの仕組みのひとつなのだが、冒険者を呑み込んで成り代わる。この魔道具の判定すらも騙してしまう魔物の存在を、彼らはまだ知らない。
五年以内に登録した新人冒険者たちの棚にも、光が消えたプレートが多くある、それは、冒険者という職業が死と隣り合わせということを物語っている証だった。
ラッゼリアは、消えた名前を見て一瞬悲しい顔をしたが、今回の目的はルフトという名の冒険者の生存確認だと思い出して、そのまま部屋を出ようとした。
違和感を感じて足を止める。
そこは百年以上前に登録した冒険者たちの、しかも、英雄と呼ばれたAランク以上の冒険者のプレートが並べられた棚だった。そのほとんどの光は消え、エルフの様な長命種の種族の冒険者の名前だけが今もそこで光り続けている。
だからこそ、それに気が付いた。
「総長?どうしたんですが、驚いた顔をして」
「可笑しいんだよ……見てよこれ」
数百もの光の消えたプレートの中に、ポツンとひとつ光るプレートがあった。そこは、エルフの冒険者の名前から離れた人間の冒険者の名前が並ぶ場所だ。
「Aランク冒険者『巨斧のナファローネ』……総長、ナファローネってとっくの昔に死んだ英雄の名前ですよね?」
「そうそう、軍事国家ヴォラベル最強の戦士と呼ばれた人物だね。反逆罪だったかな?まーそれもよくわからない罪で追われたって言われているんだけどね。最終的に彼は、ヴォラベルの追っ手を躱しアリツィオ大樹海へ逃げ込み消息を断ったと記録にはある。結局ギルドカードの命の灯りが消えたことでヴォラベルも捜索を打ち切ったワケだけど」
「でも、仮にギルドカードが残っていて、たまたま拾った冒険者が首に吊るしたとしてもプレートは光りませんよね?」
「そうなんだよねー、考えられるとしたら彼自身がアンデッドになって復活した可能性かな……」
ラッゼリアは、頭痛を抑えるように自分の頭に手を置く。
「総長、でもアンデッドは死者ですよね?ギルドカードが反応するんですか」
「前例が無いからわからないよ……でも死者は動かないけどアンデッドは動くんだ!魔物学者の中には別の魔物として新しく命を得ると言う人もいるからね、実際アンデッドは倒すことも殺すことが出来るわけだし……うん、これは見なかったことにしよう、そうしよう!」
ラッゼリアは開き直ったように出口へと向かう。
「えーいんですか?」
「いいも何も……ルフト君の生死の確認にこの部屋に入らなければ気が付かなかったはずさ。これは事故、そう事故なんだ。まーアンデッドになって復活したナファローネが、冒険者ギルドに顔を出すなんてことが起きないかぎり問題ないさ」
「アンデッドが冒険者ギルドになんて……ありえないですね」
ラッゼリアとギルド職員は、お互い笑いながらその部屋を後にした。
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