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2巻
2-3
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✿
夕飯は小人たちと一緒に広場で食べた。
僕らは食べ終わってから小人たちに〝おやすみ、また明日〟と手を振って、従魔の住処に戻った。
あとは報告会だ。
「今日、報告がある人はいませんか」
僕がそう言うと、武器の素材探しをしていたテリアが真っ先に手を挙げる。
「あるじ、ざいりょう、はっけんした」
どうやら、武器作りに使える木材を発見したようだ。その木は、小人たちの村を出てすぐの場所にあったらしい。
ニュトンたちは、拾ってきたという二種類の木の枝を僕に渡した。早速僕はその木の枝に『鑑定』の魔法を使う。
【アイアンウッドの枝】
性質:鉄に近い硬さを持つ木。加工が難しい。
【ブラウンシダーの枝】
性質:丈夫な木。家具作りにもオススメ。
おそらくニュトンたちは、アイアンウッドをクロスボウの動滑車の部品作りに使うつもりなんだろう。鉄のように硬い木材なら、耐久性も問題ないはずだ。
アイアンウッドはもの凄く硬い。そうなると、どうやってこの硬い木を切り倒すかだ……果たして普通の斧で切れるものなのか。
一方、ブラウンシダーはアイアンウッドに比べれば切ることは難しくないと思う。小人たちの武器はできるだけ早く用意したいけど、僕には小人たちの特訓もあるし、いつ採りに行くか迷うな。
「うん、二つとも材料として問題ないね。ただ、アイアンウッドを切るのにはいろいろ準備が必要かな。ブラウンシダーは早めに切りたいところだけど……どうしようか?」
そんな僕の言葉にニュトンたちは、ブラウンシダーだけでも早めに切って、武器の試作に挑戦したいとお願いしてくる。
新しい武器の製作は、彼らにとってやりがいのある仕事なのだろう。今まで主に農具しか作らせてなかったもんな。
「あるじ、あした、おいらが、きりにいく」
テリアがそう言う。
「おいらも、てつだう」
ボロニーズが手伝いを買って出てくれた。
二匹の気持ちは嬉しいけど……外には魔物がいるから心配だ。
すると、レモンと一緒に小人に魔法を教えていたフローラルが言う。
(主様、木の伐採には私も同行しましょう。私の使う魔法と小人たちの相性は悪く、今日魔法を覚えられたのはレモンが教えた一人だけでした。それなら魔法の特訓の参加人数を減らして、私は木の伐採の手伝いにいった方がいいかと)
「ありがとう、フローラル。フローラルが一緒に行ってくれるなら、不意に魔物と遭遇しても安心だね。それじゃあ、木の伐採はお願いしようかな。メンバーは、フローラルとテリアとボロニーズに、アケビとホワイトさんにも一緒に行ってほしい」
しかし、どんどん従魔たちが大人になっていくね。
親離れするみたいで少し寂しいよ。
続いて、魔法の指導を任せているレモンとドングリに声をかける。
「レモンとドングリは大変だと思うけど、明日は二匹だけで魔法の指導をお願いするね。村長のドドさんには、参加人数を減らしてもらうように僕から話しておくよ」
(お任せください、主様)
「ガウッ」
レモンとドングリが元気に返事をする。
最後に、テイマー育成のメンバーに言う。
「レッキス、グリーンさん、ブルーさん、レッドさん、ローズは、明日も僕と一緒にテイマー志望の小人たちのフォローをお願いするよ」
五匹はそれぞれ問題ないとばかりに手を挙げた。
なお、ニュトンたちには従魔の住処で、小人たちやキノコンが使えそうな武器や防具を考えてもらうことにした。
✿
明日の予定を決めて寝る準備を始めたとき。
グリーンさんがクッションの上で苦しそうに発光しながら、体の形を変え出した。進化が始まったようだ。
ブルーさん、レッドさん、ホワイトさんが近くのクッションの上で心配そうに体を揺らす。
グリーンさんはみんなの見守る前で形を変える。
何度も膨らんだり縮んだり……
僕はみんなと一緒に〝頑張れ〟と応援する。僕らには見守ることしかできない。
ある程度の大きさまで膨らむと、形が安定して同時に光も収まった。
前回の進化のときのように大きさが二倍になることはなかったけど、前より三十センチほど膨らんだ。最近クロスボウを愛用していたためか、種族名に〝アーチャー〟というクラス名が入った。
【グリーンさん】
種族:ビッググリーンスライムアーチャー
スライムが弓って……なんとなくおかしいよね。
✿
翌日――
広場では、昨日キノコン牧場で特訓をしたムボたち十人、唯一魔法習得に成功した緑タイツの小人ザザ、魔法習得希望者の小人三人が、僕らの到着を待っていた。
昨日と同じように、従魔たちはそれぞれの持ち場に散っていく。
僕はテイマー希望者を連れて、今日も馬車に揺られ、一緒にキノコン牧場へ向かう。
「ルフト様、見てくださいよ。俺のシメジンが進化しましたよ」
馬車を降りてすぐ、興奮したムボが僕の足にしがみついてきた。
ムボは、キノコンにシメジンという名前をつけたようだ。
そのネーミングセンスはどうなんだ……いや、ネーミングセンスに関しては僕も人のことは言えないか。
「私のもです」
「私のも進化しました!」
「俺も」
なんと四人全員のキノコンが進化していた。
ちなみに昨日テイマーになったムボ以外の三人の名前は、二人が女の子でシザとミダ。もう一人の男の子がギイだ。
ムボを含めて四人とも僕より年上だったりする。
ムボ、シザ、ミダ、ギイの従魔のキノコンは、手が生えて〝キノコンコン〟という魔物に進化していた。
僕は進化祝いに、四匹のキノコンコンに余っていた武器の〝ゴブリンハンマー〟とニュトンたちに急いで作ってもらった〝迷宮胡桃の胸当て〟〝迷宮胡桃の丸盾〟をプレゼントした。木を削って仕上げただけの鎧と盾だが、何も着けていないより防御力は上がるはずだ。
武器や防具を貰って喜ぶ四匹の大きなキノコ。
キノコにも感情はあるのか? など言いたいことはたくさんあるけど、これだけ喜んでくれればプレゼントした甲斐があるというものだ。
僕たちが牧場の中に入っていくと、まだテイマーを習得していない六人の小人たちのもとに、昨日一緒に遊んでいたと思われるキノコンたちが自ら進んで寄ってきた。
この分だと、テイマーのクラスを得るのにそう時間はかからないだろう。ファジャグル族はテイマーのクラスを得やすいのかもしれない。
予想通り、昼前には残りの六人全員がキノコンたちと従魔契約を結んだ。
今日も昨日同様、列になったみんなの頭を撫でる。〝昨日も撫でたよね〟というツッコミは呑み込んだ。
キノコって傘を触られると気持ちがいいんだろうか? 撫でた後、体を小刻みに震わせてその場で何度も飛び跳ねているし……あれはきっと喜んでくれているんだろう。
昼は、ホクホクの焼ウシイモを、農道脇の草むらに座りながらみんなで食べた。
焼き立てのウシイモを割ると、その断面から白い蜜が溢れ出し、甘い香りが僕らの食欲を刺激した。
見ているだけで思わずよだれが出てくる……みんなの腹が鳴る音も聞こえてきた。
ハフハフ言いながら熱いウシイモに噛りつく。口の中に蜜が溢れ、口の中いっぱいに幸せが広がる。
これは美味い!
種ツルを分けてもらって正解だったね。
昼食を終えた僕らは、昨日と同じようにジャイアントトードの縄張りへと向かう。
グリーンさんが進化して弓の命中率が上がったこともあり、昨日より早いペースでジャイアントトードを倒していく。
スライムたちはどんどん器用になっている気がするな。
彼らは体の一部を人の手のように変形させて武器を持つんだけど、人間のように腕の本数に制限がない分、このまま進化を続ければいくらでも武器を持てるようになりそうだ。
三刀流、四刀流、五刀流のスライム。
妄想しただけでにやついてしまう。
キノコンもキノコンコンになって腕が生えたことで、武器を持って十分戦えている。
これならクロスボウは、小人よりキノコンコンに持たせた方がいいかもしれないな。
狩りを終えて小人の村に戻ると、運び込まれたブラウンシダーの大木の枝を取る作業が始まっていた。
木は多くの水を含むため、木材として使うのには乾燥させる必要がある。
小人の村の住居エリアは雨が入ってこないように村全体が植物で包まれているから、そのまま自然乾燥でも問題はない。
でも、木材の自然乾燥には最低半年以上はかかるだろう。ニュトンたちが待っているし、今日切った木は共通魔法の『乾燥』を使って乾かすことにした。
乾燥させすぎてもよくないって聞くし、加減が思ったより難しい。
そうこうしていると、僕の作業を横で見ていたムボが、いつの間にか共通魔法の『乾燥』を覚えたらしく、手伝ってくれる。
テイマーも一応魔法職ではあるから、魔法職なら誰でも覚えられる共通魔法を使えるようになるのは不思議ではないが……物覚えがいいね。
ブラウンシダーの乾燥を終え、作業が一段落したところで、僕らは太古の大湿原に向かうことにした。
村を出る際〝ルフト様、すぐ戻ってきてくださいね〟〝いろいろありがとうございました〟など多くの声をかけてもらった。
まあ、霧の壁が晴れているか確認にいくだけだから、すぐ戻ってくるんだけどね。
小人たちみんながキノコの家から出て、僕たちに手を振る光景は圧巻だった。
(どこの英雄だよ……)
心の中で照れ隠しに呟きながらもニヤニヤが止まらない。
この見送りは大袈裟な気もするけど、従魔のみんなも嬉しそうだし、悪くないか……僕も従魔のみんなと一緒に小人たちに手を振り返した。
太古の大湿原に到着する頃には、日は完全に落ちていた。
今日のところは休むことにして、従魔の住処に入る。
(主様、探索は明日ではなく、次の金曜日に行うのですか?)
フローラルが話しかけてくる。
霧については、以前このあたりを調査した際、金曜に晴れるという仮説を立てていた。
「うん、明日は本当に金曜日に霧が晴れるかを確認するだけにするよ。ついでに小人たちに教えてもらったダンジョンの攻略をしてみよう」
(賛成です。太古の大湿原の探索はしっかり準備をしてから挑むべきかと)
(お父様、任せてください。トカゲごときに後れはとりませんから)
ローズもやる気十分といった感じだ。
他の従魔のみんなも恐竜との再戦を楽しみにしているようだった。
そんなことを話しながら寝る準備をしていると、ブルーさんとレッドさんが苦しそうに発光してブルブル震え始めた。
苦しそうに何度も体の形を変える二匹。
みんなの見守る前で、二匹は無事進化を終えた。
大きさは、この前進化を果たしたグリーンさんとほぼ同じ直径約九十センチのミカン型。二匹も種族名にクラスがついたところまで同じだ。
盾を好んで使うブルーさんは〝ビッグブルースライムガード〟に、槍メインのレッドさんは〝ビッグレッドスライムウォリアー〟に進化した。
✿
スライムたちが進化した次の日のこと。
ここ最近、小人たちのテイマー訓練をして、その後狩り。そして、ブラウンシダーに魔力のある限り『乾燥』魔法の行使と働きづくめだったのが相当体にきいていたらしい。
疲れきっていた僕は朝になっても、まだ起きたくない、もう少しだけ、あと十分だけ、という誘惑に駆られていた。
しかし、布団を被り直して寝ようとする僕から、ドングリとアケビが布団と枕を取り上げる。
(お父様、いい加減諦めてください)
ローズはベッドから離れない僕を軽々とお姫様抱っこして、テーブルの前に置かれた椅子へと運んだ。
普通は逆だよね……
椅子に腰かけた僕は大きく口を開けて欠伸をすると、手を上げて背伸びする。
目の前にはグリーンさんが淹れてくれた、眠気が一気に覚める苦めのお茶〝激渋茶〟。
このお茶は、朝起きられなかったときに必ず飲まされる僕への罰ゲームのようなものだ。僕はそれを一気に口の中へと流し込んだ。
「にがひ……」
苦さのあまり口が上手く回らない。
滅茶苦茶苦いけど、体には良いらしいんだよね。
それから僕は、従魔の住処の水源、妖精の泉の冷たい水で顔を洗って頭をすっきりさせると、朝ご飯を作るスライムたちに合流した。
キッチンではスライムのみんながコック帽を被り、朝食の準備に励んでいる。ここ数日、食事は小人たちに任せっきりで、従魔の住処には寝るためだけに戻っていたから気付かなかったんだけど、いつの間にかキッチンの横に石窯ができていた。
どうやら小人たちから教わったレシピを試しているようだ。確か、ピザっていう薄いパンみたいな食べ物だったかな。
小人の村は農業が盛んなので様々な食材がある。スライムたちが使っている食材もその一つらしい。
次のような作業を、僕が寝ているうちに済ませていたらしい。
小麦粉に植物油と、岩塩を入れて少しずつ水を加えながらこねていく。それをまとめると綺麗に磨かれた、大きく平らな石の台に移し、さらにスライムみんなでこねる。
柔らかすぎたら粉を足し、硬くなったら水を加えて生地がなめらかになるまで続ける。
生地が完成したら大きな葉を被せて少し寝かせておく。
僕が起きてからは、準備していた生地を円く伸ばし、その生地に予めトマトを潰して煮詰めたソースを塗る。
そこに、小人の村で育てているヤギの乳から作ったチーズと香草をパラパラ。
最後に石窯に放り込んで、あとは待つのみだ。
従魔の住処に、食欲をそそる匂いが満ちていく。
みんなも、美味しそうに焼けたチーズとトマトの香りに誘われて、部屋の中央に置かれたテーブルに集まってきた。
朝食は〝トマトと香草とヤギのチーズのカリカリピザ〟に〝蒸しジャイアントトードのサラダ〟だ。
ドングリとアケビにはもう一品、牙ウサギの肉に塩コショウを振り、オーブンで焼いたものもついている。
それを見たレッキスが、〝バースニップのオーブン焼きはないのか〟的なリアクションをしていたが、料理担当のスライムたちは華麗にスルーしたようだ。
それにしても、調理器具がどんどん増えているな。
お玉? 的なものだけでも様々なサイズがある。
僕の知らないところで、スライムたちがニュトンたちにいろいろお願いしているのだろう。
今日作ってくれたピザは、発酵させた生地を使えばもっとフワモチのものが作れるという。
リンゴなどの果実を使ったピザもあるらしいから、時間があるときに試してみるのもいいかもしれない。
食後は外に出た。
日の出から少し時間が経ち、太古の大湿原を囲む霧の壁は、ゆっくり晴れ始めていた。金曜日に霧が晴れるのはほぼ決まりだろう。
日の光がゆっくりと差し込む光景は、目を覚まし活動を始める大小様々な恐竜の姿もあって、とても幻想的だ。
従魔のみんなが僕の朝寝坊を許さないのもよくわかる。寝坊してこの光景を見られないのはもったいないもんね。
僕が起きて扉を開かなければ、みんなも従魔の住処の外には出られない。何より従魔たちが僕と一緒にこの光景を見たいと思ってくれていることが嬉しかった。
景色をぼーっと眺めていると、テリアが僕の服を引っ張った。
「あるじ、あれあれ、おおきい、すごい」
テリアが興奮して指さす方角には、首を伸ばして高い木の葉をムシャムシャと食べる、首と尻尾がとても長い恐竜の姿があった。
距離があるのではっきりとはわからないけど、木の大きさから考えて二十メートル以上はあるんじゃないだろうか。
テリアとボロニーズが言う。
「かっこいい、かっこいいね」
「うん、テリにい、あれ、かいたい」
子供に欲しいものをねだられるのってこういう感覚なのだろうな。子供にって……僕もまだ子供だけど、ここではみんなのお父さん的な感じだしね。
以前、カスターニャの町の門番ウーゴさんが、子供にねだられたときは頭ごなしに断るんじゃなく〝頑張ったら買ってあげるぞ〟とか〝もう少し小さいものにしなさい〟とか伝えるといいとか言っていたな。
この場合は――
「テリア、ボロニーズ、あれだと家に入らないよ。もう少し小さいのにしようね」
これだ!
「わかった、ちいさいの、さがす」
ボロニーズが元気に応える。
(主様、草食恐竜を飼うと食料が足りなくなりますぞ。かといって恐竜をそのあたりの草原に放し飼いにはできませんし)
フローラルが僕を諭した。
確かに……
「テリア、ボロニーズ、あれを飼うためにも、まずは恐竜を飼えるだけの食料探しを頑張ろう」
「うん、がんばる」
テリアがそう言って〝エイエイオー〟とガッツポーズをした。
このパーティの一番の問題は、一般常識を身につけている人がいないことだろう。過去の記憶がないテイマーと、魔物たちの集まりだから仕方がないのかもしれないけど。
夕飯は小人たちと一緒に広場で食べた。
僕らは食べ終わってから小人たちに〝おやすみ、また明日〟と手を振って、従魔の住処に戻った。
あとは報告会だ。
「今日、報告がある人はいませんか」
僕がそう言うと、武器の素材探しをしていたテリアが真っ先に手を挙げる。
「あるじ、ざいりょう、はっけんした」
どうやら、武器作りに使える木材を発見したようだ。その木は、小人たちの村を出てすぐの場所にあったらしい。
ニュトンたちは、拾ってきたという二種類の木の枝を僕に渡した。早速僕はその木の枝に『鑑定』の魔法を使う。
【アイアンウッドの枝】
性質:鉄に近い硬さを持つ木。加工が難しい。
【ブラウンシダーの枝】
性質:丈夫な木。家具作りにもオススメ。
おそらくニュトンたちは、アイアンウッドをクロスボウの動滑車の部品作りに使うつもりなんだろう。鉄のように硬い木材なら、耐久性も問題ないはずだ。
アイアンウッドはもの凄く硬い。そうなると、どうやってこの硬い木を切り倒すかだ……果たして普通の斧で切れるものなのか。
一方、ブラウンシダーはアイアンウッドに比べれば切ることは難しくないと思う。小人たちの武器はできるだけ早く用意したいけど、僕には小人たちの特訓もあるし、いつ採りに行くか迷うな。
「うん、二つとも材料として問題ないね。ただ、アイアンウッドを切るのにはいろいろ準備が必要かな。ブラウンシダーは早めに切りたいところだけど……どうしようか?」
そんな僕の言葉にニュトンたちは、ブラウンシダーだけでも早めに切って、武器の試作に挑戦したいとお願いしてくる。
新しい武器の製作は、彼らにとってやりがいのある仕事なのだろう。今まで主に農具しか作らせてなかったもんな。
「あるじ、あした、おいらが、きりにいく」
テリアがそう言う。
「おいらも、てつだう」
ボロニーズが手伝いを買って出てくれた。
二匹の気持ちは嬉しいけど……外には魔物がいるから心配だ。
すると、レモンと一緒に小人に魔法を教えていたフローラルが言う。
(主様、木の伐採には私も同行しましょう。私の使う魔法と小人たちの相性は悪く、今日魔法を覚えられたのはレモンが教えた一人だけでした。それなら魔法の特訓の参加人数を減らして、私は木の伐採の手伝いにいった方がいいかと)
「ありがとう、フローラル。フローラルが一緒に行ってくれるなら、不意に魔物と遭遇しても安心だね。それじゃあ、木の伐採はお願いしようかな。メンバーは、フローラルとテリアとボロニーズに、アケビとホワイトさんにも一緒に行ってほしい」
しかし、どんどん従魔たちが大人になっていくね。
親離れするみたいで少し寂しいよ。
続いて、魔法の指導を任せているレモンとドングリに声をかける。
「レモンとドングリは大変だと思うけど、明日は二匹だけで魔法の指導をお願いするね。村長のドドさんには、参加人数を減らしてもらうように僕から話しておくよ」
(お任せください、主様)
「ガウッ」
レモンとドングリが元気に返事をする。
最後に、テイマー育成のメンバーに言う。
「レッキス、グリーンさん、ブルーさん、レッドさん、ローズは、明日も僕と一緒にテイマー志望の小人たちのフォローをお願いするよ」
五匹はそれぞれ問題ないとばかりに手を挙げた。
なお、ニュトンたちには従魔の住処で、小人たちやキノコンが使えそうな武器や防具を考えてもらうことにした。
✿
明日の予定を決めて寝る準備を始めたとき。
グリーンさんがクッションの上で苦しそうに発光しながら、体の形を変え出した。進化が始まったようだ。
ブルーさん、レッドさん、ホワイトさんが近くのクッションの上で心配そうに体を揺らす。
グリーンさんはみんなの見守る前で形を変える。
何度も膨らんだり縮んだり……
僕はみんなと一緒に〝頑張れ〟と応援する。僕らには見守ることしかできない。
ある程度の大きさまで膨らむと、形が安定して同時に光も収まった。
前回の進化のときのように大きさが二倍になることはなかったけど、前より三十センチほど膨らんだ。最近クロスボウを愛用していたためか、種族名に〝アーチャー〟というクラス名が入った。
【グリーンさん】
種族:ビッググリーンスライムアーチャー
スライムが弓って……なんとなくおかしいよね。
✿
翌日――
広場では、昨日キノコン牧場で特訓をしたムボたち十人、唯一魔法習得に成功した緑タイツの小人ザザ、魔法習得希望者の小人三人が、僕らの到着を待っていた。
昨日と同じように、従魔たちはそれぞれの持ち場に散っていく。
僕はテイマー希望者を連れて、今日も馬車に揺られ、一緒にキノコン牧場へ向かう。
「ルフト様、見てくださいよ。俺のシメジンが進化しましたよ」
馬車を降りてすぐ、興奮したムボが僕の足にしがみついてきた。
ムボは、キノコンにシメジンという名前をつけたようだ。
そのネーミングセンスはどうなんだ……いや、ネーミングセンスに関しては僕も人のことは言えないか。
「私のもです」
「私のも進化しました!」
「俺も」
なんと四人全員のキノコンが進化していた。
ちなみに昨日テイマーになったムボ以外の三人の名前は、二人が女の子でシザとミダ。もう一人の男の子がギイだ。
ムボを含めて四人とも僕より年上だったりする。
ムボ、シザ、ミダ、ギイの従魔のキノコンは、手が生えて〝キノコンコン〟という魔物に進化していた。
僕は進化祝いに、四匹のキノコンコンに余っていた武器の〝ゴブリンハンマー〟とニュトンたちに急いで作ってもらった〝迷宮胡桃の胸当て〟〝迷宮胡桃の丸盾〟をプレゼントした。木を削って仕上げただけの鎧と盾だが、何も着けていないより防御力は上がるはずだ。
武器や防具を貰って喜ぶ四匹の大きなキノコ。
キノコにも感情はあるのか? など言いたいことはたくさんあるけど、これだけ喜んでくれればプレゼントした甲斐があるというものだ。
僕たちが牧場の中に入っていくと、まだテイマーを習得していない六人の小人たちのもとに、昨日一緒に遊んでいたと思われるキノコンたちが自ら進んで寄ってきた。
この分だと、テイマーのクラスを得るのにそう時間はかからないだろう。ファジャグル族はテイマーのクラスを得やすいのかもしれない。
予想通り、昼前には残りの六人全員がキノコンたちと従魔契約を結んだ。
今日も昨日同様、列になったみんなの頭を撫でる。〝昨日も撫でたよね〟というツッコミは呑み込んだ。
キノコって傘を触られると気持ちがいいんだろうか? 撫でた後、体を小刻みに震わせてその場で何度も飛び跳ねているし……あれはきっと喜んでくれているんだろう。
昼は、ホクホクの焼ウシイモを、農道脇の草むらに座りながらみんなで食べた。
焼き立てのウシイモを割ると、その断面から白い蜜が溢れ出し、甘い香りが僕らの食欲を刺激した。
見ているだけで思わずよだれが出てくる……みんなの腹が鳴る音も聞こえてきた。
ハフハフ言いながら熱いウシイモに噛りつく。口の中に蜜が溢れ、口の中いっぱいに幸せが広がる。
これは美味い!
種ツルを分けてもらって正解だったね。
昼食を終えた僕らは、昨日と同じようにジャイアントトードの縄張りへと向かう。
グリーンさんが進化して弓の命中率が上がったこともあり、昨日より早いペースでジャイアントトードを倒していく。
スライムたちはどんどん器用になっている気がするな。
彼らは体の一部を人の手のように変形させて武器を持つんだけど、人間のように腕の本数に制限がない分、このまま進化を続ければいくらでも武器を持てるようになりそうだ。
三刀流、四刀流、五刀流のスライム。
妄想しただけでにやついてしまう。
キノコンもキノコンコンになって腕が生えたことで、武器を持って十分戦えている。
これならクロスボウは、小人よりキノコンコンに持たせた方がいいかもしれないな。
狩りを終えて小人の村に戻ると、運び込まれたブラウンシダーの大木の枝を取る作業が始まっていた。
木は多くの水を含むため、木材として使うのには乾燥させる必要がある。
小人の村の住居エリアは雨が入ってこないように村全体が植物で包まれているから、そのまま自然乾燥でも問題はない。
でも、木材の自然乾燥には最低半年以上はかかるだろう。ニュトンたちが待っているし、今日切った木は共通魔法の『乾燥』を使って乾かすことにした。
乾燥させすぎてもよくないって聞くし、加減が思ったより難しい。
そうこうしていると、僕の作業を横で見ていたムボが、いつの間にか共通魔法の『乾燥』を覚えたらしく、手伝ってくれる。
テイマーも一応魔法職ではあるから、魔法職なら誰でも覚えられる共通魔法を使えるようになるのは不思議ではないが……物覚えがいいね。
ブラウンシダーの乾燥を終え、作業が一段落したところで、僕らは太古の大湿原に向かうことにした。
村を出る際〝ルフト様、すぐ戻ってきてくださいね〟〝いろいろありがとうございました〟など多くの声をかけてもらった。
まあ、霧の壁が晴れているか確認にいくだけだから、すぐ戻ってくるんだけどね。
小人たちみんながキノコの家から出て、僕たちに手を振る光景は圧巻だった。
(どこの英雄だよ……)
心の中で照れ隠しに呟きながらもニヤニヤが止まらない。
この見送りは大袈裟な気もするけど、従魔のみんなも嬉しそうだし、悪くないか……僕も従魔のみんなと一緒に小人たちに手を振り返した。
太古の大湿原に到着する頃には、日は完全に落ちていた。
今日のところは休むことにして、従魔の住処に入る。
(主様、探索は明日ではなく、次の金曜日に行うのですか?)
フローラルが話しかけてくる。
霧については、以前このあたりを調査した際、金曜に晴れるという仮説を立てていた。
「うん、明日は本当に金曜日に霧が晴れるかを確認するだけにするよ。ついでに小人たちに教えてもらったダンジョンの攻略をしてみよう」
(賛成です。太古の大湿原の探索はしっかり準備をしてから挑むべきかと)
(お父様、任せてください。トカゲごときに後れはとりませんから)
ローズもやる気十分といった感じだ。
他の従魔のみんなも恐竜との再戦を楽しみにしているようだった。
そんなことを話しながら寝る準備をしていると、ブルーさんとレッドさんが苦しそうに発光してブルブル震え始めた。
苦しそうに何度も体の形を変える二匹。
みんなの見守る前で、二匹は無事進化を終えた。
大きさは、この前進化を果たしたグリーンさんとほぼ同じ直径約九十センチのミカン型。二匹も種族名にクラスがついたところまで同じだ。
盾を好んで使うブルーさんは〝ビッグブルースライムガード〟に、槍メインのレッドさんは〝ビッグレッドスライムウォリアー〟に進化した。
✿
スライムたちが進化した次の日のこと。
ここ最近、小人たちのテイマー訓練をして、その後狩り。そして、ブラウンシダーに魔力のある限り『乾燥』魔法の行使と働きづくめだったのが相当体にきいていたらしい。
疲れきっていた僕は朝になっても、まだ起きたくない、もう少しだけ、あと十分だけ、という誘惑に駆られていた。
しかし、布団を被り直して寝ようとする僕から、ドングリとアケビが布団と枕を取り上げる。
(お父様、いい加減諦めてください)
ローズはベッドから離れない僕を軽々とお姫様抱っこして、テーブルの前に置かれた椅子へと運んだ。
普通は逆だよね……
椅子に腰かけた僕は大きく口を開けて欠伸をすると、手を上げて背伸びする。
目の前にはグリーンさんが淹れてくれた、眠気が一気に覚める苦めのお茶〝激渋茶〟。
このお茶は、朝起きられなかったときに必ず飲まされる僕への罰ゲームのようなものだ。僕はそれを一気に口の中へと流し込んだ。
「にがひ……」
苦さのあまり口が上手く回らない。
滅茶苦茶苦いけど、体には良いらしいんだよね。
それから僕は、従魔の住処の水源、妖精の泉の冷たい水で顔を洗って頭をすっきりさせると、朝ご飯を作るスライムたちに合流した。
キッチンではスライムのみんながコック帽を被り、朝食の準備に励んでいる。ここ数日、食事は小人たちに任せっきりで、従魔の住処には寝るためだけに戻っていたから気付かなかったんだけど、いつの間にかキッチンの横に石窯ができていた。
どうやら小人たちから教わったレシピを試しているようだ。確か、ピザっていう薄いパンみたいな食べ物だったかな。
小人の村は農業が盛んなので様々な食材がある。スライムたちが使っている食材もその一つらしい。
次のような作業を、僕が寝ているうちに済ませていたらしい。
小麦粉に植物油と、岩塩を入れて少しずつ水を加えながらこねていく。それをまとめると綺麗に磨かれた、大きく平らな石の台に移し、さらにスライムみんなでこねる。
柔らかすぎたら粉を足し、硬くなったら水を加えて生地がなめらかになるまで続ける。
生地が完成したら大きな葉を被せて少し寝かせておく。
僕が起きてからは、準備していた生地を円く伸ばし、その生地に予めトマトを潰して煮詰めたソースを塗る。
そこに、小人の村で育てているヤギの乳から作ったチーズと香草をパラパラ。
最後に石窯に放り込んで、あとは待つのみだ。
従魔の住処に、食欲をそそる匂いが満ちていく。
みんなも、美味しそうに焼けたチーズとトマトの香りに誘われて、部屋の中央に置かれたテーブルに集まってきた。
朝食は〝トマトと香草とヤギのチーズのカリカリピザ〟に〝蒸しジャイアントトードのサラダ〟だ。
ドングリとアケビにはもう一品、牙ウサギの肉に塩コショウを振り、オーブンで焼いたものもついている。
それを見たレッキスが、〝バースニップのオーブン焼きはないのか〟的なリアクションをしていたが、料理担当のスライムたちは華麗にスルーしたようだ。
それにしても、調理器具がどんどん増えているな。
お玉? 的なものだけでも様々なサイズがある。
僕の知らないところで、スライムたちがニュトンたちにいろいろお願いしているのだろう。
今日作ってくれたピザは、発酵させた生地を使えばもっとフワモチのものが作れるという。
リンゴなどの果実を使ったピザもあるらしいから、時間があるときに試してみるのもいいかもしれない。
食後は外に出た。
日の出から少し時間が経ち、太古の大湿原を囲む霧の壁は、ゆっくり晴れ始めていた。金曜日に霧が晴れるのはほぼ決まりだろう。
日の光がゆっくりと差し込む光景は、目を覚まし活動を始める大小様々な恐竜の姿もあって、とても幻想的だ。
従魔のみんなが僕の朝寝坊を許さないのもよくわかる。寝坊してこの光景を見られないのはもったいないもんね。
僕が起きて扉を開かなければ、みんなも従魔の住処の外には出られない。何より従魔たちが僕と一緒にこの光景を見たいと思ってくれていることが嬉しかった。
景色をぼーっと眺めていると、テリアが僕の服を引っ張った。
「あるじ、あれあれ、おおきい、すごい」
テリアが興奮して指さす方角には、首を伸ばして高い木の葉をムシャムシャと食べる、首と尻尾がとても長い恐竜の姿があった。
距離があるのではっきりとはわからないけど、木の大きさから考えて二十メートル以上はあるんじゃないだろうか。
テリアとボロニーズが言う。
「かっこいい、かっこいいね」
「うん、テリにい、あれ、かいたい」
子供に欲しいものをねだられるのってこういう感覚なのだろうな。子供にって……僕もまだ子供だけど、ここではみんなのお父さん的な感じだしね。
以前、カスターニャの町の門番ウーゴさんが、子供にねだられたときは頭ごなしに断るんじゃなく〝頑張ったら買ってあげるぞ〟とか〝もう少し小さいものにしなさい〟とか伝えるといいとか言っていたな。
この場合は――
「テリア、ボロニーズ、あれだと家に入らないよ。もう少し小さいのにしようね」
これだ!
「わかった、ちいさいの、さがす」
ボロニーズが元気に応える。
(主様、草食恐竜を飼うと食料が足りなくなりますぞ。かといって恐竜をそのあたりの草原に放し飼いにはできませんし)
フローラルが僕を諭した。
確かに……
「テリア、ボロニーズ、あれを飼うためにも、まずは恐竜を飼えるだけの食料探しを頑張ろう」
「うん、がんばる」
テリアがそう言って〝エイエイオー〟とガッツポーズをした。
このパーティの一番の問題は、一般常識を身につけている人がいないことだろう。過去の記憶がないテイマーと、魔物たちの集まりだから仕方がないのかもしれないけど。
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