落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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179話 第三都市エドックスへ1(2021.08.23改)

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「おはようございます。ルフト様」

 出発の朝、目を覚ますとファジャグル族のムボ、シザ、ミダの三人が家に来ていた。小人の村には鍵をかける文化がない、寝ている間に部屋に小人たちがいるのも日常茶飯事だ。敵意があればみんな従魔も放っておかないしね。

「おはよう、ムボ、シザ、ミダ」
「ルフト様、朝食のサンドイッチを持ってきましたよー」

 シザが笑顔で言った。三人は朝食を運んで来てくれたみたいだ。スライスしたパンの間に、ジャイアントトードの肉で作ったハムを燻したものと、カイランという葉物野菜を挟んでマヨネーズを塗ったシンプルなサンドイッチ。
 シザとミダ二人の少女が、手慣れた様子で部屋のテーブルに布を敷くと木の食器を並べていく。

「ムボ、モーソンを起こしてくれないか」
「モーソン?カワウソのにーちゃんのことか?」
「うん、そこで大きな寝息をあげているカワウソだよ」
「任せてよ!」

 ムボがモーソンの腹の上に乗り何度も飛び跳ねる……腹を押さえながら苦しそうに〝ゴフッ〟と声を出してモーソンが飛び起きた。

「小人っていつもこんなに乱暴なの?」
「にーちゃんが朝寝坊なのが悪いんだろう、それに俺の名前はムボだ」
「僕だってモーソンって名前があるんだ」

 そんな二人の遣り取りは気にせずに、従魔の住処に入って顔を洗うと、サンドイッチに手を伸ばし朝食をはじめる。

「ねぇールフト様、すぐに旅立つんですか?」

 シザが僕が注いだフェアリーウエル妖精の泉の水が入ったコップに手を伸ばしながら聞いてくる。

「うん、すぐに出発するよ。急ぎの届け物があるんだ」
「へぇー、どこに行くんだ?」

 ムボも興味津々に聞いてくる。

「地下世界にある、黒いゴブリンの集落だよ」
「へぇー、すげーなー。地下世界とかロマンじゃん!」

 三人の小人は目を輝かせた。

「ルフト様……あの……お願いがあるんです」

 ミダは恥ずかしそうに、モジモジしながら小さな声で言った。

「なんだい?ミダ」
「私たちも一緒に連れていってもらえませんか……外の世界を見てみたいんです」
「村長のドド爺からは、ちゃんと許可はもらってきたぜ」
「お願いしますルフト様、私たちもいろいろな魔物と会ってみたいんです」

 ミダ、ムボ、シザのが矢継ぎ早に聞いてくる。
 三人は、この村の中で僕と一番仲の良い小人たちだ。
 岩の森にも一緒に行ったしね……元気な男の子のムボと、しっかり者のシザ、大人しいけど好奇心旺盛なミダの仲良し三人組。三人は僕の教え子のテイマーだ。
 僕のクラスがランクアップしたことで、ルフト同盟に加盟する『ファジャグル族』『イシザル族』『アリツィオストーンゴーレム族』『トトルッポ族』の人なら、僕の許可があれば従魔の住処に招待できる。
 町に着いたら、元冒険者のナファローネと一緒に、冒険者ギルドでパーティー登録を申請するつもりだ。もし、パーティーの申請に人数制限があるのなら、ムボ、シザ、ミダがいれば助かるかもしれない。三人が一緒だと賑やかで旅が楽しくなる予感もする。

「一緒に行くのはいいけど、これは遊びじゃないんだ。大きな怪我だってするかもしれない……三人には、その覚悟があるの?」

 決意は固く、三人は首を縦に振る。
 僕は三人を従魔の住処に招待することを決めた。
【ルフト同盟同盟員ムボ、シザ、ミダの入場を許可しますか? はい / いいえ 】
 僕が決めた。許可のための一文が頭に浮かぶ……もちろん〝はい〟を選んだ。手続き完了!
 ちなみに、テイマーを従魔の住処に招待すると、それぞれの従魔の住処に繋がる扉も中に現れる。可愛らしい木の扉で、扉には各々三人の名前が書かれたプレートが吊るされていた。
 これで三人の従魔たちも、僕が入口を開けている時であれば、自由に従魔の住処を行き来できる。
 多くの小人たちに見送られながら、僕らは小人の村を旅立った。

     ✿

 ローズとブランデルホルストが一緒にいる時に襲ってくる物好きな魔物は浅瀬にはいない。一匹の魔物とも遭遇することなくアリツィオ大樹海を抜けると、街道へと抜けた。
 前回、ヘリュマントスの山に向かった際には、アルジェントに乗りながら街道に沿って空を飛んだが、今回は、幌馬車を出してノンビリと進む。今もトリプルホーンガゼルのガゼオとガゼゾウの二匹が張り切って馬車を牽いている。ツァガンデギア鎧竜一家は、仕事を取られたと拗ねていたけど、その分ご機嫌取りのブラッシングを頑張った。草食恐竜だからだろうけど、ツァガンデギアたちはあまり戦いたくないと希望を言った。
 それでも、僕のピンチの時には絶対戦うので呼んでほしいとも。

 幌馬車の中に乗る従魔たちも、途中途中で入れ替わった。旅を楽しむのも目的の一つだ。
 旅の目的地。大穴のある第三都市エドックスに向かうためには二つの村を経由する必要がある。エドックスへの道中は一本道で、それぞれの村に検問所があるためだ。
 小人の村を出発して七日目、一つ目の村ラフバールに到着した。
 ラフバールは、カスターニャの町の様にアリツィオ大樹海といった魔物の生息域が近くにないからだろう、村を囲む城壁も低く、見張りの数も少ない。
 幌馬車の御者台には僕の他にレッサースパルトイのナイトツーが座り、幌の中にもナイトスリーと荷物の陰にフローラルが隠れて乗っている。見た目的にレッサースパルトイたちが一番人に近く違和感がないと考えたのだ。
 入口には検問所には、二人の男が立っていた。

「珍しい動物だな、何処から来たんだ」
「カスターニャの町から来ました。馬車を牽いているのはガゼルの仲間です。村に二日程滞在出来ればと思うのですが」
「ほーこれがガゼルか鹿かと思ったよ、代表者の身分証を見せてくれ。それと入場料は銅貨五枚だ」
「身分証はギルドカードでも大丈夫ですか?」
「問題ない」

 御者台から下りると、男にギルドカードを提示して入場料の銅貨を払いハンコを押して貰う。二つの村で押して貰うハンコと身分証ギルドカードが、そのままエドックスへの入場許可証になるのだ。

「若いのにCランク冒険者とは、大したもんだな」
「ありがとうございます。おススメの宿屋はありますか?」

 男は親切に馬車を預けることが出来る馬小屋付きの宿屋を教えてくれた。男にお礼を言うと馬車に乗ったまま村へと入る。恐竜で乗りいれた時ほどではないが、三本角の珍しい生き物が馬車を牽いているせいだろう、それなりの注目を集めてしまった。
 男から教えてもらった宿屋へと到着すると、馬車を預けるフリをして裏口へと一度周り、ナイトツー一匹を残してみんなを従魔の住処の中へと入れた。
 僕がラフバールで選んだのは、村はずれにある宿屋『赤ナマズ亭』だ。なんでも近くの沼で獲れるナマズ料理が売りなんだとか。
 表へ周り宿屋へと入る。外から見た時よりも、中は広く思っていた以上に掃除が行き届いていてキレイな宿屋だった。子供の一人旅だと何かと詮索されそうなので、当面は旅の冒険者で口の聞けないナイトツーと二人旅をしている設定でいこう。
 『赤ナマズ亭』は家族経営で、人の良さそうな夫婦と僕と同い年くらいの息子の三人で切り盛りしている。宿屋の主人に旅の目的を聞かれ、冒険者で大穴を目指していると答えると顔をしかめながら〝下手な揉め事は起こさないでくれよ〟と釘を刺されてしまった。
 魔物の少ない地域では、冒険者は荒くれ者の野蛮人として煙たがられることも多い……宿屋の主人に冒険者ギルドの場所を教えてもらい向かった。
 冒険者ギルドの建物も小さく中には三人ほどしか職員がいない。掲示板を確認するも魔物の討伐依頼は一件も無く、あるのは畑を荒らす害獣退治や迷子の猫探しなど目につく依頼はない……本当に平和な村なんだろう。

 パーティー登録について質問したところ、この村ではパーティーの登録が出来ないそうだ。条件も聞いた。
※最低人数三人以上。
※パーティーランクはリーダーの冒険者ランクに準ずる。
※パーティーリーダーはFランク以上でなければならない。
※パーティーメンバーに種族規定はなく、最低限の意思疎通が出来ればいい。
※パーティー登録申請は、大きな町に限られる。
 
 
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