落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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182話 第三都市エドックスへ4(2021.08.23改)

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 従魔の住処から、木箱に入れて欠陥品の召喚の壺Eランクを運び出す。僕の後ろには、同じ木箱を抱えたモーソンが続く。一人で一度に十本もの壺を持ち切れなかったため、壺からどんな魔物が出てくるのか見学したいとモーソンがついてきた。

「ルフト様、それはなんですか?」

 草原に戻った僕たちを見てシダが言った。そういえば三人の小人たちには召喚の壺はまだ見せたことが無かったんだ。反応を見て思い出す。

「これは、召喚の壺という魔物を呼び出す不思議アイテムなんだ」
「すげーそんな物があるんだ。さすがルフト様だ」

 ムボは、なんにでも驚いてくれる。
 まぁ……どう説明していいか分からないし、実際見てもらうのが一番良いと思う。
 僕が召喚の壺を取りに行っている間にウイルオーウイスプたちは消えてしまっていた。ナナホシの話だと雲が出はじめて月が隠れると、ウイルオーウイスプたちは競う様に泉の中へ飛び込んでしまったらしい〝不思議なんだ、泉の中に飛び込んだのに、水飛沫が一切起きなかったんだぜ〟とナナホシは説明を続ける。泉の中ではなく手前に異界の扉ゲートが出現していたってことなんだろうか?
 ウイルオーウイスプたちの挙動から、月の光が泉に差し込んでいる間だけ異界と泉が繋がる可能性が高い。
 ナナホシは泉のそばに寄ると水の中を覗き込んだ。妖精の目には、僕ら人間の目で見ることが出来ない何かが見えているのかもしれない。ナナホシは何度も泉の水面に手を伸ばしては首を捻った。

(ルフト、この泉不安定みたいだぞ……魔力がたまーに大きく揺いじゃうんだ。ウイルオーウイスプたちも扉が開いたからといって毎回こっちに来られるってわけでもないみたいだ)
「それじゃあ、当分、ウイルオーウイスプはこっちに出てこれないのかな?」

 ナナホシは肯定を示すように首を縦に振る。
 召喚の壺を開けるのならウイルオーウイスプたちがいない方が都合がいい、急に囲まれて次から次へと自爆でもされたら目も当てられないよ。

「ナナホシ、今もあっちと繋がっているかどうかは調べられる」

 ナナホシは、確認する様にもう一度泉に手を翳した。

(うん、大丈夫そうだ。こっちにはない力を感じるから……間違いなく繋がってるよ。俺ら妖精に言わせると、この泉自体が奇跡なんだ。自然と異界の門が開くなんてありえないことなんだぜ)

 ナナホシの隣で、ハナホシもその泉を不思議そうに覗いていた。
 僕は、泉の状態が変わる前に終わらせようと、十本ある召喚の壺の封を次から次へと剥がしていく、煙が消えるのを待たずに開け続けた。その大半はハズレだったが、ようやく魔物が出る気配を感じた。それでも、手を止めずに開け続ける。
 最後の十本目を開けた。
 今、僕のそばには三匹の魔物の気配がある。目の前にいるのが分かるのに三匹の姿はちっとも見えやしない。そんな不思議な状況の中でも、僕は姿の見えない三匹の気配だけを頼りに『従魔契約』を行った。
 恐らく、モーソンとムボたち三人の小人たちには、僕がひとり言でも喋っている様に見えているんだろう。
 ただただ、四人は僕の方を不思議な物を見ている様な、奇妙な顔で見続けていた。

「ルフト様、光の鎖が見えましたが……魔物はどこにいるんですか?」

 シザが不思議そうな顔で言う。
 召喚の壺を開けたから、僕は、三匹の魔物を辛うじて認識出来ているんだと思う。とても希薄な気配のその魔物を……。
 ナナホシとハナホシ、フローラルにレモンは妖精の目でその気配を掴み、ドングリとビセンテは微かな臭いでそれを判別したといったところか。

「目の前に三匹確かにいるよ。でも今は、視ようと思っても見えないと思う」

 朝になればみんなにも新しい仲間の姿が見えるだろう。なんとかモーソンたちを説得して、そのままゴロネスの村の近くまで歩き、その日は休むことにした。

 翌日、みんなに新しい家族を紹介する。
 僕も初めて彼らを見た。人型に空間がくり抜かれている様に見える不思議な姿、人型の部分だけが夜なのだ。【夜人ヨビト】と呼ばれる不思議な魔物、常に夜を纏うその姿は、それだけで人の恐怖を掻き立てる。
 けして、気性の荒い魔物ではないし、攻撃的な魔物でもない。それでも人は正体不明の存在を恐れてしまう。
 僕は従魔契約をして彼らが優しい魔物だと分かっているから、恐れないんだ。
 夜人は、人間にとって身近な魔物である。彼らは度々僕らの世界に紛れてはふらふらと歩き、何もないところで人とぶつかり驚かせる不思議な魔物だ。
 夜人を見てポカンと口を開けるみんなを見て、悪戯が成功したみたいに僕は笑った。みんなのこの驚く顔が見れただけでも、夜人たちを従魔に迎えられて良かった。

 夜人は、恐らく魔法使い系の魔物だと思う。従魔師の勘がそういった。

「フローラルとレモンは、夜人たちが魔法を覚えられないかどうか試してほしいんだ」
(魔法を教えるのか……ふむ、いいじゃろう。主よ、まずは彼らの名前だけでも教えてもらえんかの)

 名前か、顔も背丈も瓜二つなニュトンたちの時もそうだったけど、見分けが付かない魔物に、名前を付けるのは想像以上に難しい。レッサースパルトイたちみたいに数字入りの装備を持たせるってわけにもいかないし……どうしよう。頭を両手で掻きながら必死に考える。
 僕は三匹を順番に指差しながら〝ヨルイチ、ヨルニ、ヨルサンで〟と言い切った……次回どの子がヨルイチか、言い当てる自信はこれっぽっちもないけれど、見た目が同じじゃどうしようもない。
 少しの間、三匹のことはフローラルとレモンに任せることにした。

 朝食を終えて外に出ると、トリプルホーンガゼルのガゼオとガゼゾウが牽く幌馬車に乗ってゴロネスの村へ入る。
 ここでは、足りない食材だけを補充してすぐに村を出発した。娯楽の少ない村だ。当たり前のように、草原の牛の数が減ったことが大きな話題になっていた。
 第三都市エドックスは、ゴロネス村から馬車で三日程の距離にある。
 エドックスまでは道も整備されていて走り易く、順調に進むことは出来たが、アリツィオ大樹海の様な森の中とは違い、従魔の住処へ入るタイミングが難しいというか……街道では人目も行き交う馬車も多く、なかなか休む場所が見つからない。
 今まで人のいない未開の地にばかりいたせいか、魔物の出ない安全な旅にどうしても違和感がある。
 ゴロネスの村を出て三日目の昼、ようやく僕らは第三都市エドックスへと到着した。
 
 
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