落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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183話 再会(2021.08.23改)

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 リレイアスト王国第三都市エドックスを囲む四方の壁は、魔物の襲撃から町を守るために作られたカスターニャの防壁と比べても見劣りしない。
 町の規模はカスターニャに比べて遥かに大きく、東西南北すべてに行き来するための巨大な門が築かれていた。
 これだけ大きな町だと出入りする人の数も自然と多くなってしまう様で、門の前には沢山の馬車と人々が列を作り並んでいる。
 僕もその列のひとつに並んだ。幌馬車を牽くトリプルホーンガゼルに興味を持ったんだろう、商人たちが立ち代わり声を掛けてきては、決まって同じ質問をする。ガゼオとガゼゾウをいくら出せば譲ってくれるかというものだ。当然家族を売るつもりは無いと断ると、今度はしつこく、どこでその魔物を手に入れたのかと聞いてきた。
 ペリツィアたちツァガンデギア鎧竜が牽く馬車に乗って来なくてよかったと改めて思った。あの商人たちの目の前に恐竜を見せたらどれだけしつこく追い回されていた事か……。
 そんな商人への対応に飽きはじめた頃、門の方から数名の兵士がやって来た。
 なんでも、冒険者とそれ以外の人で列を分けているらしく、僕は指示に従い冒険者の列へ並び直す。
 町にはいる際に受けるチェックが厳しいのか、隣の列に比べて冒険者の列は、なかなか前に進まない。しかも、自前の馬車で乗り付ける冒険者は珍しい様で、なにかと多くの視線を感じた。
 二時間ほど待っただろうか……ようやく僕の番が来たみたいだ。目の前に立つ兵士に、ラフバールの村とゴロネスの村で押して貰ったハンコと自分のギルドカードを見せる。

「時間が掛かってしまいすみません。ハンコもギルドカードも問題ありませんね、こちらの書類にも記載をお願いします」

 兵士は丁寧にそう言うと一枚の紙を僕に渡した。名前と町に来た理由を書かなければいけない様だ。エドックスに来る冒険者など、大穴に用があって来る以外理由はないと思うのだが、これも決まりなんだろう。
 兵士は、僕が書いた書類に目を通す。

「ありがとうございます確認出来ました。ただ……申し上げにくいのですが、この町への魔物の持ち込みは禁止となっておりまして……」

 兵士の目は、ガゼオとガゼゾウに向けられている。ナイトツーとナイトスリーも魔物なのだが、こっちはバレていないらしい。

「馬車を牽く魔物を仕舞えば町に入れてもらえるでしょうか?」

 という言葉に首を傾げながらも、兵士はそれを肯定した。僕は、周囲の目を気にせず従魔の住処を開き馬車を入れる。

「あの……今何を……」

 目の前で兵士が固まっていた。兵士だけじゃなく後ろに並ぶ冒険者たちもか?

「僕はテイマーなんで、従魔を仕舞いました」

 テイマーを見るのが初めてなんだろうか?明らかに僕を見る視線がオカシイ。
 いま僕の側にいるのは『背景同化』で姿を消したゲコタだけだ。後で魔物だとバレて問題になるのも嫌なのでナイトツーとナイトスリーの二匹も従魔の住処に入れた。
 警戒されてしまったんだろう、僕は数名の兵士に連れられて近くの小屋へと移動した。
 小屋の中で僕は、町での約束事ルールの説明を延々と受けた。ちなみにテイマーとはいえ町の中で魔物を出すことは絶対に禁止です。と釘を刺されてしまった。
 魔物の代わりという言い方は悪いが、ムボたち三人の小人たちに早めに冒険者になってもらって一緒にいてもらった方がいいかもしれない。流石にこれだけ大きな町で、姿を消したゲコタと二人きりというのは正直不安だ。パーティー登録が済んだらナファローネにも一緒にいてもらおう。
 目の前の魔道具にギルドカードを翳すと、ギルドカードにエドックス滞在許可の文字が刻まれる。エドックスで冒険者登録をしたり、パーティー登録をしても同様に滞在許可が下りるらしいので、ナファローネやムボたちも登録が終われば自由に町を歩けそうだ。
 最後にもう一度、町の中で魔物を出すことは無い様にと釘を刺された後、僕はやっと解放してもらえた。

 町に入ると、すぐに案内センターと書かれた看板を見つけた。
 商売上手と言うべきが、銅貨二枚で店の名前が入った町の地図が売られている。これだけ大きな町になると地図でもない限り目的の場所に行くのは、案内人でもいない限り無理なんだろう。迷うことなく、僕は地図を買った。
 この町は東西南北に役割を分けている様だ。僕が潜った南門がある南エリアは、主に居住地区になっている様で、宿屋の他にも病院や教会等の施設も南エリアに集中している。
 メルフィルさんの店はどこにあるんだろう?……通行の邪魔にならない様に道の脇に寄り地図を開く、店などは商業地区である東エリアに集中している様だ。東エリアの店が多く並ぶ通りの中に〝メルフィル雑貨店〟の文字を見つけた。地図を手にその場所へと向かう。
 町は想像以上に大きく、メルフィル雑貨店を見つけるのにかれこれ一時間近く掛かってしまった。小さな道も多く路地が入り組んでいて、地図があっても分かりにくい。
 メルフィルさんの店は、三階建ての木造建築で一階すべてが店になっているようだ、お客さんもそこそこ入っていて賑わっている方だと思う。
 メルフィルさんの姿が見えた。メルフィルさんも僕を見つけた様で近付いて来る。

「お久しぶりですルフト様、お元気そうでなによりでございます」

 メルフィルさんはいつも通りの丁寧な口調で僕に頭を下げた。

「お久しぶりですメルフィルさん、約束通り来ちゃいました」

 僕が頭を下げると、メルフィルさんはにこやかに微笑み、店の二階にある客室へと僕を案内してくれた。椅子に座るとすぐにお茶とお菓子が目の前に置かれた。

「ゴブリンキングを討伐された様ですね。おめでとうございます」

 何故メルフィルさんが、そのことを知っているんだろうと不思議に思ったが、僕は素直に〝ありがとうございます〟と言葉を返した。メルフィルさんとカスターニャの町についてイロイロ話をした後、この町についての情報を一通り教えてもらった。おもに、冒険者の活動についてだけれど……最後には、僕が渡した恐竜の素材のお陰で商売も順調ですと深々と頭を下げてお礼を言われた。恐竜の素材のお陰でメルフィルさんは多くの信用と繋がりを得たんだそうだ。
 商売のことはよくわからないけど、喜んでもらえたのなら何よりだ。
 メルフィルさんは僕の要望通り恐竜の素材を売った金で大量の鉄を集めてくれていた。すぐに馬車を手配すると、倉庫が集まる北エリアへと一緒に向かう。
 北エリアにはメルフィルさんが所有する倉庫もある様で、その中の一つに僕がお願いした鉄のインゴットや道具を保管してくれていた。正直、鉄は想像以上の量で……それでもお金が余ったと、残りは金貨と銀貨がずっしり入った袋を受け取った。
 恐竜の素材の価値に僕はただただ驚いた。
 その他にも、宿屋では従魔は出しにくいだろうと、メルフィルさんは所有する倉庫の中で一番小さな建物を僕に貸してくれた。

「北エリアで場所は不便ですが、それでもルフト様には宿屋よりは使いやすいのではないでしょうか」

 と言われ、僕は遠慮せずにエドックスにいる間、倉庫を借りることにした。
 それとエドックスでは、雑貨店での魔法のスクロールの扱いが禁じられているらしく、魔法のスクロールは準備できなかったと、申し訳なさげに言われてしまった。
 メルフィルさんは、本当に僕に良くしてくれる。
 倉庫の前で店に戻るメルフィルさんと別れた僕は、借りた倉庫の中で従魔の住処を開く、受け取った鉄の整理と大穴ダンジョンへの挑戦の準備をみんなで急ぐことにした。
 
 
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