115 / 157
第6章「宗教都市イリス」
第9話「依頼の手伝い」
しおりを挟むスキールさんが僕らを頼りにきたのは、依頼を終えて帰ってきた翌日の正午だった。思った以上に早かったな。
そろそろ冒険者ギルドに向かうために、宿から出発する準備をしているところで、扉のノックされる音がした。
返事をして扉を開けると、そこにはスキールさんが一人で立っていた。
「エルクはいるか? 早速で悪いんだが手伝って欲しい」
冒険者ギルドは今回見つかったヤドリギウツボ以外に、他の場所にヤドリギウツボがある可能性を懸念し、緊急性の高い依頼として依頼を出したのだが、誰も受けたがらなかったそうだ。
それもそうだ。あるかどうか分からないヤドリギウツボを探し山に入らねばならない上に、ヤドリギウツボがあった場合、モンスターは引く事なくずっと襲いかかって来るのだから、誰も受けたがらないのは当然か。
「もしヤドリギウツボが他にも生えていたら、付近の村や集落は最悪全滅させられる可能性もある」
確かに。
ヤドリギウツボに侵食されているモンスターは、いくら追っ払おうとも引く事はない。
もし大量の侵食されたモンスターの標的にされれば、村や集落じゃひとたまりもないな。
「そうですね。わかりました僕らも手伝います」
一応サラ達の方へ振り返り「良いよね?」と確認をした。
特に反対意見もないようで、うなづいてかえしてくれた。
「ありがとう。ゾフィ達は冒険者ギルドに待たせてある。宿の外で待っているから
準備が出来たら教えてくれ」
そう言ってスキールさんが出て行った。
手早く準備を済まし、外で待っていたスキールさんに声をかけ、僕らは冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドに入ると「おーい、こっちだ」と遠くから声をかけられた。
男性のように短く刈りそろえた短髪の女性。ゾフィさんだ。隣にはケリィさんがおどおどしながら、こちらにちょこんと頭を下げて何か呟いてる。表情から察するに多分「すみません」だろう。
2人はギルドに併設された酒場のテーブルに座っている。テーブルには料理が並べられている。どうやら食事の最中だったようだ。
「思ったより早く来たな。悪い今メシ頼んだところなんだ。悪いけどちょっと待っててもらって良いかい?」
「ゆっくりで大丈夫ですよ。その間に僕らはスキールさんと依頼を受けて起きますので」
依頼を受けに行こうとして、後ろから服をクイっと引かれた。
引っ張った主のアリアは、いつもの無表情で僕を見ている。右手をお腹に当てて。
「……僕とスキールさんで依頼を受けてくるから、アリア達は席に座って料理を注文して待ってて」
「うん。エルクの分は何を頼めば良い?」
「じゃあ、アリアと一緒のでお願い」
「わかった」
僕とスキールさんで依頼を受けて来た。
依頼内容は指定された地域まで行って、周辺のブラウンジャッカルの討伐。及びヤドリギウツボの探索。可能な場合はヤドリギウツボを伐採するように書かれていた。
依頼の報酬はあまり多くない。普通のブラウンジャッカルの討伐報酬に毛が生えた程度で、ヤドリギウツボの発見、伐採した場合にのみ追加報酬が支払われるという感じだ。
「ヤドリギウツボがどの程度発生していて、放置すればどの程度被害が広がるかまだ不明な段階なので、国や近くの村集落からギルドに正式な依頼を出してもらえていないため、今回の依頼はギルドの独断によるものなので……」
報酬を見た僕らに対し、ギルド職員が申し訳なさそうな顔でそう説明してくれた。
国や村が依頼を出さないからと言って放置するわけにもいかない案件だが、依頼者がいなければ報酬は十分に用意できない。
一応ヤドリギウツボを発見したらそれなりに報酬は出るけどって感じか。ますます依頼を受ける冒険者が減るわけだ。
「別に俺は構わないよ。困ってる人を見捨てるわけにも行かないしな」
スキールさんの言葉に、職員さんは嬉しそうに「いつも、ありがとうございます」と頭を下げた。
「それでは出発の時期ですが」
「依頼を受けたらすぐに出るよ。エルク達も一緒に来てくれると言っている、問題はないだろ?」
僕の肩に腕を回して「な?」と問いかけるスキールさんに「はい」と答えた。
「わかりました。それでは、宜しくお願いします」
職員さんに微笑ましいものを見るような目で見られてしまった。
「エルク。依頼が終わった後で良いんだが、ちょっと2人きりで話したい事。と言うか相談があるんだけど良いか?」
肩を組んだ姿勢のまま、小声で耳打ちしてくる。
「僕で良いんですか?」
合わせるように小声で返事をする。
「あぁ、ダメか?」
「いえ。わかりました。それでは依頼が終わって帰ってきたらで宜しければ大丈夫です」
「助かる」
2人きりで話したい事か。彼も勇者だし、パーティメンバーは全員女性だ。それなりに悩みや愚痴があるのかもしれない。
例えば下着を洗っていて、綺麗になったか確認していたのを変に誤解されて殴られたり。ノックしたにも関わらず返事がないから入ったら着替え中で殴られたり。中々起きないから揺すって起こしたら変なところを触ったと言って殴られたり。
……サラはもうちょっと、おしとやかになって欲しいな。
依頼を受け、席に戻ると、僕が座るために用意された椅子の前に、山盛りの肉料理が置かれていた。次からはちゃんと料理を選ぶか。
☆ ☆ ☆
街を出て数時間、目的地の近くにある集落まで辿り着いた。
夜の森に入るのは危険だ。なので一晩経ってから、早朝に入る方針で決定した。
集落の長に事情を説明すると、僕らが今晩泊まれるようにと空き家を一件貸してくれた。
案内された空き家に入り、荷物を下ろした。
「思ったよりも歓迎されたわね」
「です」
サラが集落の人たちの反応に、少し戸惑っていた。
前回の農村では、僕らが遅刻したと思われ塩対応だったからなぁ。
「歓迎されるのは、別の理由もあるけどね」
「別の理由?」
僕の言った「別の理由」がわからないようで、サラ、リン、アリア、フレイヤさんは答えがわからないようで首を傾げた。
逆に堂々としているスキールさん達はわかっているようだ。
「別の理由ってな」
「こんばんわ。冒険者さん達良ければ何か買っていきませんか!?」
僕に詰め寄ろうとしたサラの言葉をかき消すように、扉が開かれ元気よく男性が何かを抱えて入ってきた。この集落の人だろう。
すると、他の人達も次々と中に入ってきて、次々と物を並べ「何か買って行って貰えませんか?」と声をかけてくる。気がつけば部屋はバザーのようになっている。
僕らが歓迎されているもう一つの理由、それがこれだ。
「農村や集落の人は基本外に出る機会が少ないから、旅人や冒険者は貴重な商売相手なんだ。行商人が来てもお金がないと何も買えないからね」
「へ、へぇ。そうなの」
戸惑っているサラ達にわかるよう、説明をする。と言っても僕も父から昔聞いた事を、そのまま言ってるだけなんだけどね。
並んでいるのは特産物の野菜や果物が中心で、中には古着やよく分からないものもいっぱいある。
一応保存食は持ってきてあるけど、どうせなら温かい料理を食べたい。野菜を幾つかと、今日獲れたという鳥を買った。
「一つの家のものばかり買いすぎると、後で諍いの原因になるから、同じ物が並んでたら平等に買うようにしないとダメだぞ」
そこまでは知らなかったな。スキールさんは調整するように、他の家の農作物を買ったりしてくれた。
「エルクさん。あそこに並んでいるハーブを使えば香辛料などが作れるのですが
買ってきてもよろしいでしょうか?」
「うん。フレイヤさんの作る香辛料があれば料理が美味しく出来るからね」
お金の入った袋を渡すと、フレイヤさんはキョロキョロしながら、ハーブを買ってきた。
仮面姿でハーブの匂いを嗅ぎながら、やや挙動不審な動きではあったけど、集落の人はあまり気にしていない様子だった。買ってもらえるのならどんな相手でも喜んでって感じなのだろうな。
フレイヤさんは早速買ったハーブを薬研ですり潰し、色々と混ぜた入りしながら香辛料を作っている。元はリンが僕に「何もできないとネガネガしないように」と薬を作るために買った薬研だが、今ではフレイヤさんの香辛料を作るための道具になっている。正直僕はあまり使っていなかったから、ただの荷物にならなくて助かっている。
一通り僕らが購入した事に満足したのか、集落の人達は売れ残りを抱え、皆ニコニコとお礼を言いながら出て行った。
商人を経由しない分、安かったので思ったよりも買いすぎてしまった。
とはいえ、うちには大食らいがいるしスキールさん達も一緒に食べてくれるならそこまで問題になる量じゃない。
この日は買った食材でいつもよりも豪勢な食事をした。
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
精霊のお仕事
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】
オレは前世の記憶を思い出した。
あの世で、ダメじゃん。
でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。
まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。
ときどき神様の依頼があったり。
わけのわからん敵が出てきたりする。
たまには人間を蹂躙したりもする。?
まあいいか。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる