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第7章「旅の終わり」
第2話「空の旅」
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飛竜との戦闘を終え、艦橋を降り部屋まで戻ってきた。
既に飛竜の縄張りを抜けているので、また襲われるという危険は無いらしい。
「……ッ!」
部屋のドアを開けると、アリアが抱きついてきた。
「うわっ、どうしたの?」
「エルク、エルク」
アリアは小刻みに震えていた。
そっか、怖かったんだな。
高所恐怖症だから、連れて行くのは可哀想だと思って置いていったけど、よくよく考えてみれば怖い思いをしているのに誰も居なかったら、もっと怖いに決まっている。
謝罪の言葉をかけながら、アリアの頭に手を置き、優しく撫でる。
「……オシッコ……漏れそう」
トイレかよ!
そうか、外には窓があるからトイレまで行けなくて今までずっと我慢してたのか。
「連れてくから我慢して! 手を引くから目を瞑って付いてきて!」
「うん」
急いでトイレまで連れて行った。なんとか間に合ったようだ。
ふぅ、危ないところだった。
「ところで、あんたら……どこいってたのよ……」
一瞬ギョッとした。サラの目には大きなクマが出来ており、生気が抜けたような青白い顔になっている。
若干涙目だ。
「えっと。説明の前に、酔い止めの薬貰ってきたけど。飲む?」
「うん。お願い」
艦橋で仲間が船酔いしている事を伝えたら、飛竜襲来を伝えてくれたお礼にと、乗務員さんが酔い止めの薬をくれた。
酔い止めの薬をサラに手渡す。船酔いしていると上手く魔法が出せないらしく、フレイヤが水の入ったコップをサラに渡している。
薬を吐き出さないように、吐くのを我慢しているサラの様子が段々と落ち着いてきた。
完全には良くならないみたいだけど、吐き気が収まっただけでも彼女にとっては相当楽になったようだ。
「今の内に何かお腹に入れておく? このままじゃアインに行くまで持たないよ」
「そうね。それじゃあ何か流動食のような物が欲しいわ」
流動食か、何か売ってたっけな?
流石にここで料理を始めるわけにはいかないし。
「それなら果実や野菜を磨り潰して、ドリンクにしようか?」
「ええ、お願い。フレイヤ……ありがとう」
船酔いのせいか、サラがかなり素直だ。
普段の彼女からは想像できないくらい弱気になっている。
「えとね。これは胃がもたれた時に煎じて飲むと良い草で、こっちは頭痛を和らげる効果があってね」
素直にお礼を言うサラに気を良くしたフレイヤが、薬研に果実や野菜以外の物を、早口に説明しながら次々と放り込んでいる。
サラは心ここに在らずと言った様子か。フレイヤに対し「そうなの」「ありがとう」と空返事を繰り返している。
「ご馳走さま」
「美味しかった?」
「ええ。ありがとね」
「どういたしまして」
フレイヤさんの色々な物を混ぜたドリンクは美味しかった。
調子に乗って色々混ぜたおかげでサラ1人では飲みきれない量だったため、僕らも頂いたけど、正直味は期待していなかったから意外だった。
だって早口に説明しながらポンポン色んなもの入れるんだよ? 確実に謎の液体Xが出来上がると思うじゃん?
もしかしたら、ちゃんと考えて入れてたのかもしれない。何にせよ美味しかったんだから、それで良いか。
「あの。さっきの薬だけど」
フレイヤ特製ドリンクを飲み終えたサラが、僕に話しかけてきた。
「さっきの1回分しか貰っていないので」
「そう、なんだ……」
おずおずと、上目遣いで僕を見ている。
その仕草にドキッとさせられた。
視線を落としたり、こちらを見たりと忙しない。薬が切れた時のことを考えて、もう一回貰ってきて欲しいと言いたいのだろう。
「船の中で売ってる場所は聞いておいたから、買ってこようか?」
「うん……お願い……」
「じゃあ買ってくるから、サラは薬が聞いてる内に寝てなよ」
「ありがとう」
今まで船酔いであまり寝れなかったのだろう。
サラは弱々しい声でお礼を言うと。すぐ横になってすーすーと寝息を立て始めた。
しかし、調子が狂うな。
しおらしいサラも悪くはないけど、普段の強気なサラの方が良いな。うん。
よし、彼女のために酔い止めの薬を買ってくるかな。
でも、その前に。
「アリア。そろそろ離れてくれる?」
「……いや」
軽く溜息を吐いた。
先程置いて行った事を、根に持ってらっしゃるようだ。
とはいえ、このまま引きずって行くわけにもいかないし。
「すぐ戻ってくるし、リンとフレイヤは部屋に残るから」
「……」
渋々と手を離してくれた。
「それじゃあちょっと行ってくるから……何してるの?」
「えへへ。エルク君の真似」
ドアに手をかけ振り返ると、フレイヤがアリアの頭を撫でていた。
下手くそな撫で方で、アリアの髪がボサボサになっていくが、アリアはそんな事は気にしていないようで、目を細めて為すがままにされている。
えー、頭撫でるのが僕の真似ってどうなのよ?
「大体あってるです」
リン!?
微妙な気分のまま、僕は部屋を出た。
酔い止めの薬は無事に買えた。
☆ ☆ ☆
「間もなく工業国アインへ到着します。お忘れ物がないようご確認ください」
やっと、一週間に及ぶ空の旅が終わる。
サラは薬のおかげで大分安定していた。もし薬が無ければ船酔いでアインに来る前に力尽きていたかもしれない。割と本気で。
忘れ物がないか荷物を確認。よし、問題は無さそうだ。
到着を知らせるアナウンスが響き渡る。
我先にとサラとアリアが駆け出し、僕らはその後を追う。
2人にとって、空の船旅はもうこりごりだろう。
でも、アリアはガルド大陸に帰る場合、また飛空船に乗らないといけないんだけどね。
今水を差す必要はないし、まだこれは言わないでおくか。
こうして僕らは工業国家アインに到着した。
既に飛竜の縄張りを抜けているので、また襲われるという危険は無いらしい。
「……ッ!」
部屋のドアを開けると、アリアが抱きついてきた。
「うわっ、どうしたの?」
「エルク、エルク」
アリアは小刻みに震えていた。
そっか、怖かったんだな。
高所恐怖症だから、連れて行くのは可哀想だと思って置いていったけど、よくよく考えてみれば怖い思いをしているのに誰も居なかったら、もっと怖いに決まっている。
謝罪の言葉をかけながら、アリアの頭に手を置き、優しく撫でる。
「……オシッコ……漏れそう」
トイレかよ!
そうか、外には窓があるからトイレまで行けなくて今までずっと我慢してたのか。
「連れてくから我慢して! 手を引くから目を瞑って付いてきて!」
「うん」
急いでトイレまで連れて行った。なんとか間に合ったようだ。
ふぅ、危ないところだった。
「ところで、あんたら……どこいってたのよ……」
一瞬ギョッとした。サラの目には大きなクマが出来ており、生気が抜けたような青白い顔になっている。
若干涙目だ。
「えっと。説明の前に、酔い止めの薬貰ってきたけど。飲む?」
「うん。お願い」
艦橋で仲間が船酔いしている事を伝えたら、飛竜襲来を伝えてくれたお礼にと、乗務員さんが酔い止めの薬をくれた。
酔い止めの薬をサラに手渡す。船酔いしていると上手く魔法が出せないらしく、フレイヤが水の入ったコップをサラに渡している。
薬を吐き出さないように、吐くのを我慢しているサラの様子が段々と落ち着いてきた。
完全には良くならないみたいだけど、吐き気が収まっただけでも彼女にとっては相当楽になったようだ。
「今の内に何かお腹に入れておく? このままじゃアインに行くまで持たないよ」
「そうね。それじゃあ何か流動食のような物が欲しいわ」
流動食か、何か売ってたっけな?
流石にここで料理を始めるわけにはいかないし。
「それなら果実や野菜を磨り潰して、ドリンクにしようか?」
「ええ、お願い。フレイヤ……ありがとう」
船酔いのせいか、サラがかなり素直だ。
普段の彼女からは想像できないくらい弱気になっている。
「えとね。これは胃がもたれた時に煎じて飲むと良い草で、こっちは頭痛を和らげる効果があってね」
素直にお礼を言うサラに気を良くしたフレイヤが、薬研に果実や野菜以外の物を、早口に説明しながら次々と放り込んでいる。
サラは心ここに在らずと言った様子か。フレイヤに対し「そうなの」「ありがとう」と空返事を繰り返している。
「ご馳走さま」
「美味しかった?」
「ええ。ありがとね」
「どういたしまして」
フレイヤさんの色々な物を混ぜたドリンクは美味しかった。
調子に乗って色々混ぜたおかげでサラ1人では飲みきれない量だったため、僕らも頂いたけど、正直味は期待していなかったから意外だった。
だって早口に説明しながらポンポン色んなもの入れるんだよ? 確実に謎の液体Xが出来上がると思うじゃん?
もしかしたら、ちゃんと考えて入れてたのかもしれない。何にせよ美味しかったんだから、それで良いか。
「あの。さっきの薬だけど」
フレイヤ特製ドリンクを飲み終えたサラが、僕に話しかけてきた。
「さっきの1回分しか貰っていないので」
「そう、なんだ……」
おずおずと、上目遣いで僕を見ている。
その仕草にドキッとさせられた。
視線を落としたり、こちらを見たりと忙しない。薬が切れた時のことを考えて、もう一回貰ってきて欲しいと言いたいのだろう。
「船の中で売ってる場所は聞いておいたから、買ってこようか?」
「うん……お願い……」
「じゃあ買ってくるから、サラは薬が聞いてる内に寝てなよ」
「ありがとう」
今まで船酔いであまり寝れなかったのだろう。
サラは弱々しい声でお礼を言うと。すぐ横になってすーすーと寝息を立て始めた。
しかし、調子が狂うな。
しおらしいサラも悪くはないけど、普段の強気なサラの方が良いな。うん。
よし、彼女のために酔い止めの薬を買ってくるかな。
でも、その前に。
「アリア。そろそろ離れてくれる?」
「……いや」
軽く溜息を吐いた。
先程置いて行った事を、根に持ってらっしゃるようだ。
とはいえ、このまま引きずって行くわけにもいかないし。
「すぐ戻ってくるし、リンとフレイヤは部屋に残るから」
「……」
渋々と手を離してくれた。
「それじゃあちょっと行ってくるから……何してるの?」
「えへへ。エルク君の真似」
ドアに手をかけ振り返ると、フレイヤがアリアの頭を撫でていた。
下手くそな撫で方で、アリアの髪がボサボサになっていくが、アリアはそんな事は気にしていないようで、目を細めて為すがままにされている。
えー、頭撫でるのが僕の真似ってどうなのよ?
「大体あってるです」
リン!?
微妙な気分のまま、僕は部屋を出た。
酔い止めの薬は無事に買えた。
☆ ☆ ☆
「間もなく工業国アインへ到着します。お忘れ物がないようご確認ください」
やっと、一週間に及ぶ空の旅が終わる。
サラは薬のおかげで大分安定していた。もし薬が無ければ船酔いでアインに来る前に力尽きていたかもしれない。割と本気で。
忘れ物がないか荷物を確認。よし、問題は無さそうだ。
到着を知らせるアナウンスが響き渡る。
我先にとサラとアリアが駆け出し、僕らはその後を追う。
2人にとって、空の船旅はもうこりごりだろう。
でも、アリアはガルド大陸に帰る場合、また飛空船に乗らないといけないんだけどね。
今水を差す必要はないし、まだこれは言わないでおくか。
こうして僕らは工業国家アインに到着した。
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