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第7章「旅の終わり」
第30話「旅の終わり、別れ、そして」
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朝、僕らはバールの郊外まで来ていた。
レッドさん達が帰るので、その見送りだ。
目の前には馬車が3台ある。
先頭の馬車はスクール君とダンディさん、そしてケーラさんのパーティが。
その後ろにある馬車にはレッドさん、ビアード君、アクアちゃん、チョロちゃんが。
最後列の馬車にはランベルトさんのパーティがそれぞれ乗りこむ事になっている。
彼らはレッドさん達が帰るための護衛だ。
一度ヴェルを経由し、そこでダンディさんを降ろした後にイリスへ向かう。
その後は飛空船でアインへと送り届ける。
レッドさん達を送り届けるのはスクール君達の仕事だ。
だから、僕たちはここでお別れになる。
「スクール君。キミには何から何までお世話になったよ」
「良いって事よ。俺が困ったときは、逆に助けてくれよ」
「勿論さ」
「それじゃ、またな。親友」
そう言って馬車に乗り込むかと思ったら、今度はアリア達に話しかけに行った。
今更彼の女癖をどうこう言う気はない。サラに殴られてるスクール君を横目に見ていると、今度はダンディさんが近づいて来た。
「エルク。言っておくが、くれぐれもフレイヤを頼む」
「ええっ。分かってますよ」
僕の返事を聞くと、ダンディさんがぬっと顔を近づけて来た。ちょっと勘弁して欲しい。
「本当はお前じゃ頼りないと思って、フレイヤを連れ帰るつもりだった」
「えっ」
顔を近づけたダンディさんは、普段からは想像がつかないくらいの小声で話しかけて来た。
「アイツとはどうしたいかちゃんと話した。お前が望むなら子供だって産んでやるとまで言っていたよ」
「それは飛躍し過ぎじゃないですか……」
「あぁ、本当にアイツは相変わらずだったな。だけど、子供を産むという行為がどれだけ大変か見てきて、その上でのお前が望むなら子供を作って良いと言っていたんだ」
「そう、ですか」
「だから無理やり連れて帰るのはやめた。後は好きにすると良い」
無理やり連れて帰るつもりだったのに、急に投げやりになったな。
「幸せにしろとかは言わないんですか?」
「それはお前たちの問題だ。そして誰を選ぶかはお前次第だ。そこまでは強制しないさ。ただ」
「ただ?」
「出来れば、フレイヤが幸せに笑ってくれる選択をしてくれると嬉しい」
「出来る限り、頑張ります」
ダンディさんは僕の答えに満足したのか、笑顔で頷き、離れた。
「それと、ああはなるなよ」
ダンディさんが指さす先には、首から下を氷漬けにされているスクール君が居た。
また何かやらかしたのか。
「彼のようになるのは、難しいんじゃないかな」
「いや、お前は意外とアイツに近い。せいぜい気を付けるんだな」
ダンディさんが高らかに笑いながら、僕の背中をバンバンと叩く。セーブしてくれているのだろうけど、相変わらずのバカ力だ。
そのままスクール君の元へ行き、氷の塊を小突くと、彼を覆っていた氷がバラバラに砕け散った。
氷から出て来たスクール君を馬車にポイっと投げ込むと、軽く手を振ってから同じ馬車に乗り込んでいった。
入れ替わるように、レッドさんが僕の元へ来た。
ダンディさんとの話が終わるタイミングを待っていてくれたのだろう。
「色々とお世話になったね。ありがとう」
「いえ、僕たちの方こそお世話になりました」
もしアインで彼女たちに会えなければ、僕らは帰る路銀が無くなっていたかもしれない。
もしくはアインで暴れてた連中の仲間と思われ、投獄されていた可能性もある。
だから、彼女には本当に助けられた。
「エルク。もし何か困ったことがあったら頼ってね。ボクに手助けできるか分からないけど、キミの力になるから」
「うん。レッドさんも何か困ったことがあったら相談してね。そうだね。例えば僕の親友がウザイとかでも良いよ」
「あー、彼はそこまでウザくないよ。デリカシーが無いだけさ」
それをウザイって言うと思うんだけどね。
二人して笑い合った。
「そうそう。エルクのお礼と、サラへの仕返しが思いついたんだ」
「サラへの仕返し?」
何だろうと思ったが、多分サラの置き手紙の事だろう。
そういえばサラの手紙を読んで、親の罪は子の罪ではないと、彼女は憤っていたな。
「うん。だから、ちょっとここでしゃがんでくれる?」
「こうですか?」
何をするつもりか分からないけど、言われるままにレッドさんの目線に合うくらいまでしゃがみ込む。
レッドさんは左手で僕の頭を掴むと、右手を振ってサラの名前を呼んだ。
「おーい、サラーッ」
「なに?」
レッドさんの呼びかけに、サラが振り向く。
「あまりエルクに酷い態度ばかり取ってると、ボクがエルクを貰っちゃうからね!」
頬に柔らかい感触を感じた。
驚いて振り返ると、レッドさんはニヤニヤと笑っていた。
唇を軽く抑えながら、赤い髪にも負けないくらい顔を真っ赤にして。
「ヘヘッ、サラにガツンと言ってやったよ!」
レッドさんが軽く舌を出して、馬車へ駆けていく。
「なっ、なっ」
口をポカーンと開けて、唖然としていたのは僕だけじゃない。サラやリンもだ。
若干2名ほど「どうしたの?」と言う顔でキョトンとしているけど。
「さぁ出発しよう」
レッドさんの合図で馬車がごろごろと動き出す。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
馬車に向かってサラが叫ぶが、無情にも馬車は走り去っていく。
その姿が見えなくなるまで、僕らは見送った。
☆ ☆ ☆
――ダンディ視点――
全く。あいつは言ったそばから他の女にデレデレと。
もし目の前に居たら一発殴っている所だった。そういう意味ではエルクに当たるサラの事をあまり言えないな。
「エルク君は本当にモテモテだな」
「モテるのは良いが、もう少し節操を持つべきだと思うがな」
「そうだよね。じゃないとダンディちゃんも素直になれないよね」
減らず口を。
殴って黙らせようと思ったが、やめておいた。
それでは図星を刺されたみたいになるからな。
「お前は本当にデリカシーという物が足りないな」
「自分に素直と言って欲しいな。ダンディちゃんも素直になれば慰めてあげるよ?」
とりあえず殴っておいた。
全く。こいつなりに私を気遣ってくれているのだろうな。
私の気を紛らわせるために、わざとバカな発言をして。
殴ったせいで埃が舞ったのだろう。少しだけ、涙が出た。
☆ ☆ ☆
――エルク視点――
屋敷に戻りると、サラが夕飯の手伝いをしたいと申し出た。
昔、ちゃんと食べて貰えなかった手料理を食べて貰いたいからと。
日記を見ているから、本当はその後食べた事を知っているけど、わざわざそんな事を教えるのは野暮ってもんだ。
使用人にわけを話し、手伝わせてもらう事になった。
ティラさんに食べてもらうためにと、サラが張り切って作った野菜炒めは、少し焦げてしまっていた。
昔と違って、失敗してもまだ食べられる物が出来るだけ上達したと見るべきか。
作り直すというサラに対し、ティラさんは「これで良い」と言って、少し焦げた野菜炒めを食べた。
まるで世界一美味しい料理を食べているかのような、幸せそうな顔で。
「おいしかったよ」
野菜のひとかけらも残さず、見事に完食した。
料理を平らげ、満足そうな顔で一息つくと、ティラさんはサラに話しかけた。
「サラ。足の不自由になった私の世話をするためにパーティを抜けて、この屋敷に残るつもりだと言っていたね」
ティラさんの発言に、食事の手が止まる。
「はい……エルク、アリア、フレイヤ。急な申し出で悪いんだけど、私はここでお父様の支えになろうと思うの」
そうなるよね。何となく想像はしていた。
家が嫌で飛び出したサラだけど、誤解は全て解けた。
となると、冒険者を続ける理由が無い。
そしてサラがここに残るのなら、リンも残るのだろう。
二人が居ないと、旅がどれだけ厳しくなるのかはバールに来るまでに嫌というほど思い知らされた。
だけど、引き留めるわけにもいかないか。
「えー。せっかくサラちゃんと仲直り出来たのに!?」
「フレイヤ。そう言わないの」
「エルク君はそれで良いの?」
良いわけがないさ。
でも引き留める言葉を言えば、サラが苦しむ。気にしないていを装えば、サラが悲しむ。
……困ったな。フレイヤの言葉に、何も言い返せないや。
僕が黙っていると、ティラさんが一つ咳払いをした。
「すまない。サラ、私から一つ頼みがあるのだが良いか?」
「なんですか?」
「私は昔、冒険者、というか外の世界に憧れていた時期があったんだ。家を飛び出し自由に世界を周ってみたいと」
そう言って視線を自らに足に落とすティラさん。
僕の視線も、同じようにティラさんの足へと向かった。
ティラさんの足は歩けなくはないが、走ったり長時間歩くのはもう無理だろうと言われている。
「だから、代わりにエルク君達についていって、私の代わりに見て来てくれないか?」
「えっ……でも……」
「私の身の回りなら、使用人が沢山いるから大丈夫だ」
「お父様……」
「もう十分すぎる程お前から幸せは貰ったよ。だから、これからは本当の意味で自分の為に生きて欲しい」
でもたまにで良いから、帰ってきて欲しいと言って、ティラさんは笑った。
ちょっと涙ぐんだサラが、元気よく返事をした。
どうやら、まだサラと旅は続けられるようだ。
「エルク。さっきの発言撤回するわ。これからもよろしくね」
「うん。こちらこそ」
さて、となると次はどこに行こうか?
ここからなら獣人の国も近い。魔族の住む大陸に行ってみるのも悪くはないかもしれない。
チャラい職員さんが「緊急依頼があるから受けて欲しい」とかも言っていたっけ。
これからの方針を考えるのは、僕らにも出された、サラお手製の少し焦げた野菜炒めを食べてからにするかな。
一口食べてみる。焦げた部分が少し苦いけど、幸せの味がした。
7章「旅の終わり」 完
次章「ダンジョンウッドの攻略」
レッドさん達が帰るので、その見送りだ。
目の前には馬車が3台ある。
先頭の馬車はスクール君とダンディさん、そしてケーラさんのパーティが。
その後ろにある馬車にはレッドさん、ビアード君、アクアちゃん、チョロちゃんが。
最後列の馬車にはランベルトさんのパーティがそれぞれ乗りこむ事になっている。
彼らはレッドさん達が帰るための護衛だ。
一度ヴェルを経由し、そこでダンディさんを降ろした後にイリスへ向かう。
その後は飛空船でアインへと送り届ける。
レッドさん達を送り届けるのはスクール君達の仕事だ。
だから、僕たちはここでお別れになる。
「スクール君。キミには何から何までお世話になったよ」
「良いって事よ。俺が困ったときは、逆に助けてくれよ」
「勿論さ」
「それじゃ、またな。親友」
そう言って馬車に乗り込むかと思ったら、今度はアリア達に話しかけに行った。
今更彼の女癖をどうこう言う気はない。サラに殴られてるスクール君を横目に見ていると、今度はダンディさんが近づいて来た。
「エルク。言っておくが、くれぐれもフレイヤを頼む」
「ええっ。分かってますよ」
僕の返事を聞くと、ダンディさんがぬっと顔を近づけて来た。ちょっと勘弁して欲しい。
「本当はお前じゃ頼りないと思って、フレイヤを連れ帰るつもりだった」
「えっ」
顔を近づけたダンディさんは、普段からは想像がつかないくらいの小声で話しかけて来た。
「アイツとはどうしたいかちゃんと話した。お前が望むなら子供だって産んでやるとまで言っていたよ」
「それは飛躍し過ぎじゃないですか……」
「あぁ、本当にアイツは相変わらずだったな。だけど、子供を産むという行為がどれだけ大変か見てきて、その上でのお前が望むなら子供を作って良いと言っていたんだ」
「そう、ですか」
「だから無理やり連れて帰るのはやめた。後は好きにすると良い」
無理やり連れて帰るつもりだったのに、急に投げやりになったな。
「幸せにしろとかは言わないんですか?」
「それはお前たちの問題だ。そして誰を選ぶかはお前次第だ。そこまでは強制しないさ。ただ」
「ただ?」
「出来れば、フレイヤが幸せに笑ってくれる選択をしてくれると嬉しい」
「出来る限り、頑張ります」
ダンディさんは僕の答えに満足したのか、笑顔で頷き、離れた。
「それと、ああはなるなよ」
ダンディさんが指さす先には、首から下を氷漬けにされているスクール君が居た。
また何かやらかしたのか。
「彼のようになるのは、難しいんじゃないかな」
「いや、お前は意外とアイツに近い。せいぜい気を付けるんだな」
ダンディさんが高らかに笑いながら、僕の背中をバンバンと叩く。セーブしてくれているのだろうけど、相変わらずのバカ力だ。
そのままスクール君の元へ行き、氷の塊を小突くと、彼を覆っていた氷がバラバラに砕け散った。
氷から出て来たスクール君を馬車にポイっと投げ込むと、軽く手を振ってから同じ馬車に乗り込んでいった。
入れ替わるように、レッドさんが僕の元へ来た。
ダンディさんとの話が終わるタイミングを待っていてくれたのだろう。
「色々とお世話になったね。ありがとう」
「いえ、僕たちの方こそお世話になりました」
もしアインで彼女たちに会えなければ、僕らは帰る路銀が無くなっていたかもしれない。
もしくはアインで暴れてた連中の仲間と思われ、投獄されていた可能性もある。
だから、彼女には本当に助けられた。
「エルク。もし何か困ったことがあったら頼ってね。ボクに手助けできるか分からないけど、キミの力になるから」
「うん。レッドさんも何か困ったことがあったら相談してね。そうだね。例えば僕の親友がウザイとかでも良いよ」
「あー、彼はそこまでウザくないよ。デリカシーが無いだけさ」
それをウザイって言うと思うんだけどね。
二人して笑い合った。
「そうそう。エルクのお礼と、サラへの仕返しが思いついたんだ」
「サラへの仕返し?」
何だろうと思ったが、多分サラの置き手紙の事だろう。
そういえばサラの手紙を読んで、親の罪は子の罪ではないと、彼女は憤っていたな。
「うん。だから、ちょっとここでしゃがんでくれる?」
「こうですか?」
何をするつもりか分からないけど、言われるままにレッドさんの目線に合うくらいまでしゃがみ込む。
レッドさんは左手で僕の頭を掴むと、右手を振ってサラの名前を呼んだ。
「おーい、サラーッ」
「なに?」
レッドさんの呼びかけに、サラが振り向く。
「あまりエルクに酷い態度ばかり取ってると、ボクがエルクを貰っちゃうからね!」
頬に柔らかい感触を感じた。
驚いて振り返ると、レッドさんはニヤニヤと笑っていた。
唇を軽く抑えながら、赤い髪にも負けないくらい顔を真っ赤にして。
「ヘヘッ、サラにガツンと言ってやったよ!」
レッドさんが軽く舌を出して、馬車へ駆けていく。
「なっ、なっ」
口をポカーンと開けて、唖然としていたのは僕だけじゃない。サラやリンもだ。
若干2名ほど「どうしたの?」と言う顔でキョトンとしているけど。
「さぁ出発しよう」
レッドさんの合図で馬車がごろごろと動き出す。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
馬車に向かってサラが叫ぶが、無情にも馬車は走り去っていく。
その姿が見えなくなるまで、僕らは見送った。
☆ ☆ ☆
――ダンディ視点――
全く。あいつは言ったそばから他の女にデレデレと。
もし目の前に居たら一発殴っている所だった。そういう意味ではエルクに当たるサラの事をあまり言えないな。
「エルク君は本当にモテモテだな」
「モテるのは良いが、もう少し節操を持つべきだと思うがな」
「そうだよね。じゃないとダンディちゃんも素直になれないよね」
減らず口を。
殴って黙らせようと思ったが、やめておいた。
それでは図星を刺されたみたいになるからな。
「お前は本当にデリカシーという物が足りないな」
「自分に素直と言って欲しいな。ダンディちゃんも素直になれば慰めてあげるよ?」
とりあえず殴っておいた。
全く。こいつなりに私を気遣ってくれているのだろうな。
私の気を紛らわせるために、わざとバカな発言をして。
殴ったせいで埃が舞ったのだろう。少しだけ、涙が出た。
☆ ☆ ☆
――エルク視点――
屋敷に戻りると、サラが夕飯の手伝いをしたいと申し出た。
昔、ちゃんと食べて貰えなかった手料理を食べて貰いたいからと。
日記を見ているから、本当はその後食べた事を知っているけど、わざわざそんな事を教えるのは野暮ってもんだ。
使用人にわけを話し、手伝わせてもらう事になった。
ティラさんに食べてもらうためにと、サラが張り切って作った野菜炒めは、少し焦げてしまっていた。
昔と違って、失敗してもまだ食べられる物が出来るだけ上達したと見るべきか。
作り直すというサラに対し、ティラさんは「これで良い」と言って、少し焦げた野菜炒めを食べた。
まるで世界一美味しい料理を食べているかのような、幸せそうな顔で。
「おいしかったよ」
野菜のひとかけらも残さず、見事に完食した。
料理を平らげ、満足そうな顔で一息つくと、ティラさんはサラに話しかけた。
「サラ。足の不自由になった私の世話をするためにパーティを抜けて、この屋敷に残るつもりだと言っていたね」
ティラさんの発言に、食事の手が止まる。
「はい……エルク、アリア、フレイヤ。急な申し出で悪いんだけど、私はここでお父様の支えになろうと思うの」
そうなるよね。何となく想像はしていた。
家が嫌で飛び出したサラだけど、誤解は全て解けた。
となると、冒険者を続ける理由が無い。
そしてサラがここに残るのなら、リンも残るのだろう。
二人が居ないと、旅がどれだけ厳しくなるのかはバールに来るまでに嫌というほど思い知らされた。
だけど、引き留めるわけにもいかないか。
「えー。せっかくサラちゃんと仲直り出来たのに!?」
「フレイヤ。そう言わないの」
「エルク君はそれで良いの?」
良いわけがないさ。
でも引き留める言葉を言えば、サラが苦しむ。気にしないていを装えば、サラが悲しむ。
……困ったな。フレイヤの言葉に、何も言い返せないや。
僕が黙っていると、ティラさんが一つ咳払いをした。
「すまない。サラ、私から一つ頼みがあるのだが良いか?」
「なんですか?」
「私は昔、冒険者、というか外の世界に憧れていた時期があったんだ。家を飛び出し自由に世界を周ってみたいと」
そう言って視線を自らに足に落とすティラさん。
僕の視線も、同じようにティラさんの足へと向かった。
ティラさんの足は歩けなくはないが、走ったり長時間歩くのはもう無理だろうと言われている。
「だから、代わりにエルク君達についていって、私の代わりに見て来てくれないか?」
「えっ……でも……」
「私の身の回りなら、使用人が沢山いるから大丈夫だ」
「お父様……」
「もう十分すぎる程お前から幸せは貰ったよ。だから、これからは本当の意味で自分の為に生きて欲しい」
でもたまにで良いから、帰ってきて欲しいと言って、ティラさんは笑った。
ちょっと涙ぐんだサラが、元気よく返事をした。
どうやら、まだサラと旅は続けられるようだ。
「エルク。さっきの発言撤回するわ。これからもよろしくね」
「うん。こちらこそ」
さて、となると次はどこに行こうか?
ここからなら獣人の国も近い。魔族の住む大陸に行ってみるのも悪くはないかもしれない。
チャラい職員さんが「緊急依頼があるから受けて欲しい」とかも言っていたっけ。
これからの方針を考えるのは、僕らにも出された、サラお手製の少し焦げた野菜炒めを食べてからにするかな。
一口食べてみる。焦げた部分が少し苦いけど、幸せの味がした。
7章「旅の終わり」 完
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