ディミオルゴ=プリェダーニエ

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第24話『演技』

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リハーサルを始める時、賀川さんが竹内さんの元へ来た。

「賀川さ…!?」
『…竹内さん、俺たち準備できたんですけど初めていいすか?』
「ああ…始めて」

賀川さんは戻っていって配置につき始め、リハーサルを始めた。

「…あの…竹内さん……賀川さんについてなんですけど…」
「……驚いたか?…未だに多重人格なんじゃ…と思ってる自分がいる………賀川君は役に入り込むのが上手い…演技にとって役に入り込むことは大事だが……あそこまでくるともう天才だ」

『…俺が!…お前らならず者を引っ張ってやる!』



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「お疲れ様でした!」


『…竹内さん、どうすか?』
「いつも通り天才だったよ」
『やめてくださいよ!…俺は天才じゃあねぇ…』
「…マジの多重人格じゃないのか…?」
『トシジ!…少しは心について分かったか?』
「…賀川君、まだ戻ってないよ」
『あ…そうでした…すいません」

すると、目の色が変わり、元の口調に戻った。

「…器用すね…」
「あはは……たまにこういう風に役を抜けられなくなるんだ…」

俺は少し怖かった。あの賀川さんの演技って…こんなんなのか…

「…だけど……少し分かった気がする!」
「……そう!…良かったね!」
「…竹内さん!一回俺にやらせてください!」
「……まぁ…丁度一人休みだから…」


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「…皆聞いて!…この場面では今日休みの浜田君の代わりにトシジ君が出ることになったから!」
「トシジ…?」
「…素人だろ?…大丈夫かよ…」

「…じゃあ…トシジ君の配置はあそこね」
「あ!…ちょっと待ってください!」

確か……こんな感じだったような……

「あ…あーー!……うん…よし!』
「…!」
『あそこですよね!』
「あ…あぁ…うん!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「…竹内さん…」
「ああ…まさか…」

「…俺たちがやるしかねぇんだよ!…俺たちが…」
「ジェフ…」
『…そうだな…ジェフの言う通りだ。俺たちが成し遂げるんだ!!…サイドさんの為にも…!』

「…トシジ君…もう心を掴んだんですかね…」
「……恐らくな…見ろ」
「え?……あ!」

トシジに周りが引き込まれている。役者たちはトシジの演技に魅了されていた。

「…トシジ君の役は主要人物ではない。どちらかというと脇役だ……しかし…喰われている。主要人物よりも目立っちまってんだ………ったく…とんでもない子を弟子にしたらしいな…テオス」
「…ああ」

竹内や賀川の後ろにはテオスが立っていた。様子を見に来たのだ。

「あ!テオスさん」
「久しぶりだな、テオス」
「…トシジはどうだ?」

竹内は深く椅子に座るとテオスにトシジの事を話し始めた。

「……トシジは…台本に共感して読む才も、ましてや役に入り込む演技の才も無い……俳優になどなれない…筈だった」
「…それで?」
「……役者として…トシジのような心を持たない役者はどう足掻いても俳優とは呼べない。呼べるのは一部の天才だけだ」
「トシジが天才とでも?」

竹内は半笑いで答えた。

「天才ではない……では何故あのような演技ができるのか?」
「…トシジ君は…本気でやっているから…ですよね」

賀川は竹内とテオスに解説するように話した。

「…人はよく『本気でやる』と言う。しかし、心の底まではそう思ってはいない。しかし、トシジ君はどうですか?…目の前の事に全神経、全エネルギーを注いで目の前の事に挑戦している…そうですよね?」
「流石だな…賀川…その通りだ。トシジのあの成長速度の正体はそれだ……」
「ただの馬鹿と言えばいいのか…天才と呼べばいいのか…」

『終わりました!!』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「…あれ?テオス来てたの?」
「サボってないか見に来たのだ…それで?…やってみてどうだった?」
「…演技をしてみて分かった。演技は演じるキャラクターになりきる事だ、そして、その世界観に入ること。そして、その場の空気を読むことだ」
「…まぁまぁな答えだな…半分正解だ」

そう言ってテオスは剣渡してきた。

「やってみろ」
「ああ!」

俺は早速ヴァンシャルロット流の剣技をしてみた。

「…俺がテオスになりきるんだ…」



「…おお…」
「凄いですね…」


俺はあの時のテオスになりきるように剣を振るった。そして、何故か上手くできているような感じがした。

「…できてる…」
「やったな」
「…ったく…どこでこんな化け物見つけてきたんだよ…テオス」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「皆さんありがとうございました!」

俺はみんなに礼を言った。

「…演技は簡単に言ったら他人になりきることだ。演じている者はこんな時にどうするか…そして、空気を読んでその場の状態を知る…それを忘れないようにな…トシジ」
「はい!」
「僕たちも応援してるよ!」
「ありがとうございます!」

そして俺はみんなに手を振りながらテオスと共に事務所を後にした。






「…結局の所…天才だったんですかね…トシジ君は」
「…ふん…ただの平凡な高校生だろ」








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