学園の姫君と騎士の青春は御法度です

ROCA

文字の大きさ
8 / 20

08_事の顛末

しおりを挟む
 それからというもの、火蓋が切られたように告白ラッシュ……もとい、決闘続きだった。

 なんなら『小宮を倒せば姫君と付き合えるらしい』と噂に尾ひれがつきまくり、心桜そっちのけで翼にしか話が来ないこともよくあった。

 アリアは「ごめーんね!」と舌を出していたが、噂をコントロールするのは難しいので仕方がない。

 アリアとしては心桜が最優先なので、あのまま心桜が傷つく未来を待つよりも、即座に手を打ちたかったのも頷ける。

 それに決闘騒ぎが大ごとにはならないよう、しっかり裏で手を回してくれていたので責められない。

 決闘は告白よりも心理的ハードルが低くなったため、連日申し込まれるまでに至った。なんならただの腕試しの人もいた。

 童顔の『護衛』の力量を一目見ようと、こっそりギャラリーがいるなんてことも珍しくなかった……と、まさに乱痴気騒ぎである。

 さすがにそういった態度の相手を心桜にやらせたくないため、彼女に有無を言わさず全て翼が応戦する。

 そもそもこんなに早いタイミングで告白する相手に手加減する気など起きず、やはり自分が対応してよかったと心底思った。

「で、結局何人倒したんだ?」

 入学から時間がたち4月も終わりかかっている日に、凛乃からさらっと聞かれる。

「20人いったかどうか、ぐらいですね」
「毎日、しかも連続告白もあったらしいね。まぁ小宮くんにかかれば~?」
「全員丁重にお帰りいただきました」
「やるぅ~!!信じてましたよ、ええ。やる時はやる子ですから!」
「本職に敵うわけがないだろうに、阿呆ばかりだな」

 凛乃が呆れた顔で言う。その反対にアリアは嬉しそうに笑顔を見せる。

 ただ当人である心桜は浮かない顔のままだ。

 かなりの迷惑をかけてしまったと気に病んでるのをずっと見てきた。
 もちろん翼は気にしていないと心桜に伝え続けたが、心桜には何度も謝られ、また申し訳なさそうな顔で翼に話す。

「あの……本当にすみません」
「いえ。お力になれて光栄ですよ」
「余裕だねぇ。さすがプロは違いますな」
「むしろ決闘メインだったお陰であっさり引いてくれる人が多くて楽でしたね。ちゃんとした告白の方がいたたまれないので。どこまで本気だったか分かりませんが」

 その冷やかしともとれるような表現に対して、アリアと凛乃は不快感を隠さなかった。
 2人同時に溜息をついて、自分にも経験があるのか嫌そうに口を開いた。

「そうだろうと思ったよ。告白するにしては早すぎるからさぁ。そういうのは蹴散らしときたかったんだよね」
「同情の余地は一切ないな。雑に薙ぎ払われて当然だ」
「ただまぁすぐにゴールデンウィークだから一旦落ち着かせるよ。さすがにね」

 そう言いながらアリアから少し謝意を込めた視線をもらい、気にしないで欲しいと頷く。

 ここまで巻き込んでしまったことに引け目を感じているのだろうが、翼にはできない方法で建前を確立してくれたことに感謝しているまである。

 翼がなんとも思っていない事を分かったのか、アリアが嬉しそうに翼を指さした。

「これで大分箔がついたでしょ!小宮くん、学校だとあれだしね」
「うっ」
「ただのガリ勉にしか見えんからな。顔もガキだし」
「うぅっ……」

 かなり気にしているところなので反論の余地もない。

 実際に自分の容姿のせいで侮られたこともあるだろうし、護衛云々を言っても「このガキ(翼)よりも俺が」と思われるのは想像に難くない。
 というか実際に初回の告白であった。

 そういった意味で今回の騒動は先行投資として、とても有意義なものだったと思う。

「これでおしまいにしまして……ゴールデンウィークを楽しまなくちゃ!心桜ちゃんはどうするつもりなの?」
「特に何もないですね」
「小宮くんは?」
「おれも特には」
「じゃあ4人で遊ぼう!」

 えっ?と翼と心桜の声が重なったが、先を読めていたのか凛乃は同意を示すように首肯した。

 翼としてはこの3人と外を回るのは想像すらしていなかったし、提案されただけでも緊張してしまう。

 そんな反応が芳しくない翼を見てか、アリアが唇を尖らせる。

「小宮くんいつも忙しそうだから声かけづらいんだよねぇ~」
「す、すみません」
「だからここらでいっちょ親睦を深めようの会でもどう?」

 のらりくらりと言うアリアを見て、翼は戸惑ったように凛乃の様子を伺う。

 凛乃からは『味方ではなく監視役』と釘を刺されていたので、念のため自分がいてもいいのか確認したかった。

「おれもいていいのですか?」
「むしろお前がメインだ」
「メイン?」
「お前はどう判断していいか分からん。こそこそ探るのも面倒だから付き合え」
「わ、分かりました」
「凛乃ちゃんほど直球じゃないけど、ワタシはお互いの立場がどっちだとしても、知っといて損はないかなって」
「……なるほど?」

 分かってない顔だ~とアリアが翼を見ながらけたけた笑う。

 今までちゃんと話したことがなかったため、機会を設けた方が早いってなったのか?となんとなく頷いておいた。

 4人でおでかけ、というのがあまりイメージがわかないのか、心桜がアリアに問いかける。

「遊ぶと言ってもどこに行きますか?」
「ん~定番のショッピングモールでいいかなって思ってるけどねぇ」
「いいですね。いろいろと買いたいものがありますし」
「おっ、何買うの?」
「調理器具とか、参考書とかですね」
「花の女子高生、真面目か!」
「へ、変でしょうか?」
「心桜ちゃんらしいっちゃらしいけど……他にないの?」
「他に……ですか」

 言い淀んだ心桜がちらっと翼を見て、ぱちりと目が合った瞬間逸らされた。

 なんだ?と不思議に思うが特に思いつくこともなく、落ち着かない心桜を見ていると顔を背けられてしまった。

 翼と凛乃が首をかしげていると、ただ1人「うんうん」とアリアが満足げに笑いかけている。

「心桜ちゃんならそう言うと思ったよ」
「まだ何も言ってませんが……?」
「ということで小宮くんもよろしくね」
「は、はい?」

 アリアが何もかもお見通しといった表情で翼を呼ぶと、心桜がびくりと背を震わせた。

 一体なんだろうと翼は気にはなるものの、アリアの鉄壁の笑みを前に困惑するのみだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

逃げる太陽【完結】

須木 水夏
恋愛
 黒田 陽日が、その人に出会ったのはまだ6歳の時だった。  近所にある湖の畔で、銀色の長い髪の男の人と出会い、ゆっくりと恋に落ちた。  湖へ近づいてはいけない、竜神に攫われてしまうよ。  そんな中、陽日に同い年の婚約者ができてしまう。   ✩°。⋆☆。.:*・゜  つたない文章です。 『身代わりの月』の姉、陽日のお話です。 ⭐️現代日本ぽいですが、似て非なるものになってます。 ⭐️16歳で成人します。 ⭐️古い伝承や言い伝えは、割と信じられている世界の設定です。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

【完結】あなたに恋愛指南します

夏目若葉
恋愛
大手商社の受付で働く舞花(まいか)は、訪問客として週に一度必ず現れる和久井(わくい)という男性に恋心を寄せるようになった。 お近づきになりたいが、どうすればいいかわからない。 少しずつ距離が縮まっていくふたり。しかし和久井には忘れられない女性がいるような気配があって、それも気になり…… 純真女子の片想いストーリー 一途で素直な女 × 本気の恋を知らない男 ムズキュンです♪

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

処理中です...