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08_事の顛末
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それからというもの、火蓋が切られたように告白ラッシュ……もとい、決闘続きだった。
なんなら『小宮を倒せば姫君と付き合えるらしい』と噂に尾ひれがつきまくり、心桜そっちのけで翼にしか話が来ないこともよくあった。
アリアは「ごめーんね!」と舌を出していたが、噂をコントロールするのは難しいので仕方がない。
アリアとしては心桜が最優先なので、あのまま心桜が傷つく未来を待つよりも、即座に手を打ちたかったのも頷ける。
それに決闘騒ぎが大ごとにはならないよう、しっかり裏で手を回してくれていたので責められない。
決闘は告白よりも心理的ハードルが低くなったため、連日申し込まれるまでに至った。なんならただの腕試しの人もいた。
童顔の『護衛』の力量を一目見ようと、こっそりギャラリーがいるなんてことも珍しくなかった……と、まさに乱痴気騒ぎである。
さすがにそういった態度の相手を心桜にやらせたくないため、彼女に有無を言わさず全て翼が応戦する。
そもそもこんなに早いタイミングで告白する相手に手加減する気など起きず、やはり自分が対応してよかったと心底思った。
「で、結局何人倒したんだ?」
入学から時間がたち4月も終わりかかっている日に、凛乃からさらっと聞かれる。
「20人いったかどうか、ぐらいですね」
「毎日、しかも連続告白もあったらしいね。まぁ小宮くんにかかれば~?」
「全員丁重にお帰りいただきました」
「やるぅ~!!信じてましたよ、ええ。やる時はやる子ですから!」
「本職に敵うわけがないだろうに、阿呆ばかりだな」
凛乃が呆れた顔で言う。その反対にアリアは嬉しそうに笑顔を見せる。
ただ当人である心桜は浮かない顔のままだ。
かなりの迷惑をかけてしまったと気に病んでるのをずっと見てきた。
もちろん翼は気にしていないと心桜に伝え続けたが、心桜には何度も謝られ、また申し訳なさそうな顔で翼に話す。
「あの……本当にすみません」
「いえ。お力になれて光栄ですよ」
「余裕だねぇ。さすがプロは違いますな」
「むしろ決闘メインだったお陰であっさり引いてくれる人が多くて楽でしたね。ちゃんとした告白の方がいたたまれないので。どこまで本気だったか分かりませんが」
その冷やかしともとれるような表現に対して、アリアと凛乃は不快感を隠さなかった。
2人同時に溜息をついて、自分にも経験があるのか嫌そうに口を開いた。
「そうだろうと思ったよ。告白するにしては早すぎるからさぁ。そういうのは蹴散らしときたかったんだよね」
「同情の余地は一切ないな。雑に薙ぎ払われて当然だ」
「ただまぁすぐにゴールデンウィークだから一旦落ち着かせるよ。さすがにね」
そう言いながらアリアから少し謝意を込めた視線をもらい、気にしないで欲しいと頷く。
ここまで巻き込んでしまったことに引け目を感じているのだろうが、翼にはできない方法で建前を確立してくれたことに感謝しているまである。
翼がなんとも思っていない事を分かったのか、アリアが嬉しそうに翼を指さした。
「これで大分箔がついたでしょ!小宮くん、学校だとあれだしね」
「うっ」
「ただのガリ勉にしか見えんからな。顔もガキだし」
「うぅっ……」
かなり気にしているところなので反論の余地もない。
実際に自分の容姿のせいで侮られたこともあるだろうし、護衛云々を言っても「このガキ(翼)よりも俺が」と思われるのは想像に難くない。
というか実際に初回の告白であった。
そういった意味で今回の騒動は先行投資として、とても有意義なものだったと思う。
「これでおしまいにしまして……ゴールデンウィークを楽しまなくちゃ!心桜ちゃんはどうするつもりなの?」
「特に何もないですね」
「小宮くんは?」
「おれも特には」
「じゃあ4人で遊ぼう!」
えっ?と翼と心桜の声が重なったが、先を読めていたのか凛乃は同意を示すように首肯した。
翼としてはこの3人と外を回るのは想像すらしていなかったし、提案されただけでも緊張してしまう。
そんな反応が芳しくない翼を見てか、アリアが唇を尖らせる。
「小宮くんいつも忙しそうだから声かけづらいんだよねぇ~」
「す、すみません」
「だからここらでいっちょ親睦を深めようの会でもどう?」
のらりくらりと言うアリアを見て、翼は戸惑ったように凛乃の様子を伺う。
凛乃からは『味方ではなく監視役』と釘を刺されていたので、念のため自分がいてもいいのか確認したかった。
「おれもいていいのですか?」
「むしろお前がメインだ」
「メイン?」
「お前はどう判断していいか分からん。こそこそ探るのも面倒だから付き合え」
「わ、分かりました」
「凛乃ちゃんほど直球じゃないけど、ワタシはお互いの立場がどっちだとしても、知っといて損はないかなって」
「……なるほど?」
分かってない顔だ~とアリアが翼を見ながらけたけた笑う。
今までちゃんと話したことがなかったため、機会を設けた方が早いってなったのか?となんとなく頷いておいた。
4人でおでかけ、というのがあまりイメージがわかないのか、心桜がアリアに問いかける。
「遊ぶと言ってもどこに行きますか?」
「ん~定番のショッピングモールでいいかなって思ってるけどねぇ」
「いいですね。いろいろと買いたいものがありますし」
「おっ、何買うの?」
「調理器具とか、参考書とかですね」
「花の女子高生、真面目か!」
「へ、変でしょうか?」
「心桜ちゃんらしいっちゃらしいけど……他にないの?」
「他に……ですか」
言い淀んだ心桜がちらっと翼を見て、ぱちりと目が合った瞬間逸らされた。
なんだ?と不思議に思うが特に思いつくこともなく、落ち着かない心桜を見ていると顔を背けられてしまった。
翼と凛乃が首をかしげていると、ただ1人「うんうん」とアリアが満足げに笑いかけている。
「心桜ちゃんならそう言うと思ったよ」
「まだ何も言ってませんが……?」
「ということで小宮くんもよろしくね」
「は、はい?」
アリアが何もかもお見通しといった表情で翼を呼ぶと、心桜がびくりと背を震わせた。
一体なんだろうと翼は気にはなるものの、アリアの鉄壁の笑みを前に困惑するのみだった。
なんなら『小宮を倒せば姫君と付き合えるらしい』と噂に尾ひれがつきまくり、心桜そっちのけで翼にしか話が来ないこともよくあった。
アリアは「ごめーんね!」と舌を出していたが、噂をコントロールするのは難しいので仕方がない。
アリアとしては心桜が最優先なので、あのまま心桜が傷つく未来を待つよりも、即座に手を打ちたかったのも頷ける。
それに決闘騒ぎが大ごとにはならないよう、しっかり裏で手を回してくれていたので責められない。
決闘は告白よりも心理的ハードルが低くなったため、連日申し込まれるまでに至った。なんならただの腕試しの人もいた。
童顔の『護衛』の力量を一目見ようと、こっそりギャラリーがいるなんてことも珍しくなかった……と、まさに乱痴気騒ぎである。
さすがにそういった態度の相手を心桜にやらせたくないため、彼女に有無を言わさず全て翼が応戦する。
そもそもこんなに早いタイミングで告白する相手に手加減する気など起きず、やはり自分が対応してよかったと心底思った。
「で、結局何人倒したんだ?」
入学から時間がたち4月も終わりかかっている日に、凛乃からさらっと聞かれる。
「20人いったかどうか、ぐらいですね」
「毎日、しかも連続告白もあったらしいね。まぁ小宮くんにかかれば~?」
「全員丁重にお帰りいただきました」
「やるぅ~!!信じてましたよ、ええ。やる時はやる子ですから!」
「本職に敵うわけがないだろうに、阿呆ばかりだな」
凛乃が呆れた顔で言う。その反対にアリアは嬉しそうに笑顔を見せる。
ただ当人である心桜は浮かない顔のままだ。
かなりの迷惑をかけてしまったと気に病んでるのをずっと見てきた。
もちろん翼は気にしていないと心桜に伝え続けたが、心桜には何度も謝られ、また申し訳なさそうな顔で翼に話す。
「あの……本当にすみません」
「いえ。お力になれて光栄ですよ」
「余裕だねぇ。さすがプロは違いますな」
「むしろ決闘メインだったお陰であっさり引いてくれる人が多くて楽でしたね。ちゃんとした告白の方がいたたまれないので。どこまで本気だったか分かりませんが」
その冷やかしともとれるような表現に対して、アリアと凛乃は不快感を隠さなかった。
2人同時に溜息をついて、自分にも経験があるのか嫌そうに口を開いた。
「そうだろうと思ったよ。告白するにしては早すぎるからさぁ。そういうのは蹴散らしときたかったんだよね」
「同情の余地は一切ないな。雑に薙ぎ払われて当然だ」
「ただまぁすぐにゴールデンウィークだから一旦落ち着かせるよ。さすがにね」
そう言いながらアリアから少し謝意を込めた視線をもらい、気にしないで欲しいと頷く。
ここまで巻き込んでしまったことに引け目を感じているのだろうが、翼にはできない方法で建前を確立してくれたことに感謝しているまである。
翼がなんとも思っていない事を分かったのか、アリアが嬉しそうに翼を指さした。
「これで大分箔がついたでしょ!小宮くん、学校だとあれだしね」
「うっ」
「ただのガリ勉にしか見えんからな。顔もガキだし」
「うぅっ……」
かなり気にしているところなので反論の余地もない。
実際に自分の容姿のせいで侮られたこともあるだろうし、護衛云々を言っても「このガキ(翼)よりも俺が」と思われるのは想像に難くない。
というか実際に初回の告白であった。
そういった意味で今回の騒動は先行投資として、とても有意義なものだったと思う。
「これでおしまいにしまして……ゴールデンウィークを楽しまなくちゃ!心桜ちゃんはどうするつもりなの?」
「特に何もないですね」
「小宮くんは?」
「おれも特には」
「じゃあ4人で遊ぼう!」
えっ?と翼と心桜の声が重なったが、先を読めていたのか凛乃は同意を示すように首肯した。
翼としてはこの3人と外を回るのは想像すらしていなかったし、提案されただけでも緊張してしまう。
そんな反応が芳しくない翼を見てか、アリアが唇を尖らせる。
「小宮くんいつも忙しそうだから声かけづらいんだよねぇ~」
「す、すみません」
「だからここらでいっちょ親睦を深めようの会でもどう?」
のらりくらりと言うアリアを見て、翼は戸惑ったように凛乃の様子を伺う。
凛乃からは『味方ではなく監視役』と釘を刺されていたので、念のため自分がいてもいいのか確認したかった。
「おれもいていいのですか?」
「むしろお前がメインだ」
「メイン?」
「お前はどう判断していいか分からん。こそこそ探るのも面倒だから付き合え」
「わ、分かりました」
「凛乃ちゃんほど直球じゃないけど、ワタシはお互いの立場がどっちだとしても、知っといて損はないかなって」
「……なるほど?」
分かってない顔だ~とアリアが翼を見ながらけたけた笑う。
今までちゃんと話したことがなかったため、機会を設けた方が早いってなったのか?となんとなく頷いておいた。
4人でおでかけ、というのがあまりイメージがわかないのか、心桜がアリアに問いかける。
「遊ぶと言ってもどこに行きますか?」
「ん~定番のショッピングモールでいいかなって思ってるけどねぇ」
「いいですね。いろいろと買いたいものがありますし」
「おっ、何買うの?」
「調理器具とか、参考書とかですね」
「花の女子高生、真面目か!」
「へ、変でしょうか?」
「心桜ちゃんらしいっちゃらしいけど……他にないの?」
「他に……ですか」
言い淀んだ心桜がちらっと翼を見て、ぱちりと目が合った瞬間逸らされた。
なんだ?と不思議に思うが特に思いつくこともなく、落ち着かない心桜を見ていると顔を背けられてしまった。
翼と凛乃が首をかしげていると、ただ1人「うんうん」とアリアが満足げに笑いかけている。
「心桜ちゃんならそう言うと思ったよ」
「まだ何も言ってませんが……?」
「ということで小宮くんもよろしくね」
「は、はい?」
アリアが何もかもお見通しといった表情で翼を呼ぶと、心桜がびくりと背を震わせた。
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