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第1章 街
第060話 古城
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僕らは馬車を降りて山を登り、遺跡の手前で野営を行った。途中でイノシシを仕留めた事もあり、晩餐は豪華だ。
カヨからは「やっぱり猟師か……」と呟かれ、少しショックを受ける。
僕はイノシシを捌き、軽く調味料をまぶして焼いた。
ちゃんと血抜きして新鮮な肉はコレだけでもかなり美味しい。
切り分けてみんなに肉をくばった。
「ごめんねお兄さん、面白いからちょっとからかい過ぎちゃった」
「いいですよ、別に」
諸悪の根源であるリーナが今更なぜ謝っているのかと言うと、コイツにはスジ肉しか与えていないからだ。
イノシシのスジ肉は非常に硬い。かなりワイルドな噛みごたえがあるだろう。
明日は調査本番なので是非とも英気を養って貰いたい。
「お兄さん、私も柔らかい肉が欲しいんだけど……」
「あるじゃないですか、ほら、自分の胸に二つも大っきいのが」
カヨの手がピタリと止まる。
……しまった、無駄に飛び火した……
彼女は自身の胸とリーナの胸を見比べていた。今日はこの仕草を何回見たか分からない。
何回見比べても変わらないだろう。
残念ながらそれが真理だ。
「ほ、ほら。カヨさんもしっかり食べないと大きくなりませんよ」
何を口走ってるだろう、この天然人妻金髪エロフは。
ちなみにこの人もかなり大っきい。だからタチが悪い。
ダリルはコレにやられてしまったのだろうか?
僕はここで「カヨも大っきい方だから大丈夫だよ」って慰めるのが正解なんだろうか?
……いや、そんな事を言ったらイノシシ肉よりも強めに焼かれてしまうな。間違いなく不正解だ。
「いつもこんな感じなのですか? 楽しそうですね」
傍観していたイケメンエルフのディアスさん。
楽しそう? 貴方は正座でエンジョイできるタイプの人なんですか?
帰りは是非僕の代わりに正座して下さい。
「僕は日々を平和に過ごしたいだけなのですが……」
「それは無理だと思いますよ。特にあなた達は、ね」
「……どういう意味です?」
意味深な事を言ったディアスはニヤっと笑い。僕の質問には答えなかった。
……………………
翌朝、僕らは遺跡の調査を行った。
依頼内容は二つ。
遺跡深部の調査。魔物が強い為、調査が難航しているそうだ。
もう一つは以前調査したパーティーが戻って来なかったから、その捜索、もしくは遺品の回収。
難度の高い調査の為、実力者のディアスとフィーナの二人を付けた上での依頼となった。
リーナ曰く「ギルド職員が同行する依頼は難しいけど失敗は無い、報酬が美味しくて狙い目の依頼」らしい。
歯に挟まったスジ肉と格闘しながら教えてくれた。
いい情報だ。彼女には明日もスジ肉をプレゼントしよう。
遺跡は1000年以上昔の古王国時代の廃城で、外から見ると石造りの非常に大きい建造物だった。
元の世界の西洋の城というよりは、もっと東南アジア風というのか密林の中のアンコールワット的な感じだった。
もっとも、僕はアンコールワットなんて行ったことないけど。
長年の風雨で至る所で天井は崩落し、草木が生い茂っている。
瓦礫と樹木で城内は立体的に入りんでおり、非常に歩きにくく死角が多い。
この廃城内には巨大な蛇の魔物『オオヤミヘビ』と北壁最下層にた『リッチ』がいる。
比較的目立つリッチは兎も角、上から襲ってくるオオヤミヘビに警戒しながらの進行になった。
僕はパーティーを止めて、上を指差す。
木の上でオオヤミヘビがこちらを赤い目で見つめ、狙いを定めている。長く舌がチロチロと動く様は生理的な危機感を煽る。
このまま進めば上から奇襲されていただろう。
「あそこに一匹いますね」
「じゃあジンさんとリーナさんにお任せしましょうか」
フィーナの言葉に僕はコクリと頷き、弓矢を構えた。
上向きで狙いにくいが、この距離なら外さないだろう……。
息を止め、弓を引き絞り、放つ。
放った矢は大蛇の目につき刺さり、鮮血が散った。
「お兄さんナイス~!」
暴れてドサリと木から落ちた来たオオヤミヘビ。リーナは軽口を叩きながら距離を詰め、蛇の頭に槍を深く突き刺し、捻る。
それを素早くトントントンと三回繰り返して距離を取った。
ビタビタと暴れるオオヤミヘビの頭はぐしゃぐしゃに潰されており、程なく絶命した。
槍という武器をよく知らない僕でも、リーナが使い慣れてる事はよく分かった。
オオヤミヘビはこの辺でかなり強い部類の魔物になる。
それを相手にしても臆する事なく踏み込み、素早く致命傷を与えて冷静に距離を取る。
間違いなく場慣れもしている。
異世界の美容師は強かった。
「いい動きですね」
「奇襲されなきゃコレくらい楽勝だよ」
肩に槍を担いて胸を張るリーナ。大きな胸が更に強調された。
あ、コレはワザとやってるっぽいな。
1スジ肉だ。
「これだけ強いと……パーティーとか組んで無いのですか?」
「私は基本一人で、別のパーティーに混じる事が多いかな」
「へぇ……何か理由があるんですか?」
「え?……ま、まあ、色々とねぇ」
リーナはバツが悪そうに苦笑いした。
明るい彼女にも、人に話せない過去があるのだろう……詮索は良くない。
少し悪い事を聞い……
「リーナさんは男性関係で少し問題があったみたいですね」
「……」
サラっと即座に暴露する天然エロフ。この人にはあまり慈悲はないようだ。
「あははー」
頭をかいて笑うリーナ。笑うな、反省しろ。
2スジ肉な。
……………………
その後も慎重に探索して地図を埋めていく。
安全第一で行ってる為、奇襲される事もなく全て先制を取っての戦闘になっている。
ディアスもカヨもフィーナも高威力の魔法を扱える贅沢なパーティー構成で、固まっている魔物の群れに対しては交代で魔法攻撃を行なって消耗を抑えている。
今のところ、誰も怪我や消耗をせず本当に順調だと思う。
ちなみに地図を描く係はディアスさんだ。彼の丁寧な性格が現れるような、綺麗な地図が出来上がってる。
何故か画伯エロフが描きたがってたが、ディアスがやんわりと拒否していた。
今、彼女の芸術性は求められていない。だから身の程を弁えて頂きたい。
余りにも順調な為、僕は刀を抜いていない。弓で先制するだけ、切り込むのはリーナ一人で十分だった。
リーナ自身も無理をせず堅実な動きで魔物を排除していく。思った以上に頼りになる。
男性トラブルさえ無ければ……うん、人には欠点の一つや二つあるだろう。
探索を始めて3時間ほどだろうか、僕らは昼前に廃城の深部に到着した。
大きな円卓がある広間の奥に、地下続く階段があった。
「ここからが城の地下になりますね」
フィーナはランタンを全員に配り、地下探索の準備を行う。
「ここに入るの? 何だか薄気味悪いわね……」
カヨの言う通り、荒廃的な廃城の中でさらに地下となれば薄気味悪い。ただ地下となれば草木も生えないし、天井も落ちてないから道は悪く無いだろう。
仮に崩落していれば、そこで探索は終わりとなる。
今のところ前に探索していたであろうパーティーの痕跡は、見つからなかった。
カヨからは「やっぱり猟師か……」と呟かれ、少しショックを受ける。
僕はイノシシを捌き、軽く調味料をまぶして焼いた。
ちゃんと血抜きして新鮮な肉はコレだけでもかなり美味しい。
切り分けてみんなに肉をくばった。
「ごめんねお兄さん、面白いからちょっとからかい過ぎちゃった」
「いいですよ、別に」
諸悪の根源であるリーナが今更なぜ謝っているのかと言うと、コイツにはスジ肉しか与えていないからだ。
イノシシのスジ肉は非常に硬い。かなりワイルドな噛みごたえがあるだろう。
明日は調査本番なので是非とも英気を養って貰いたい。
「お兄さん、私も柔らかい肉が欲しいんだけど……」
「あるじゃないですか、ほら、自分の胸に二つも大っきいのが」
カヨの手がピタリと止まる。
……しまった、無駄に飛び火した……
彼女は自身の胸とリーナの胸を見比べていた。今日はこの仕草を何回見たか分からない。
何回見比べても変わらないだろう。
残念ながらそれが真理だ。
「ほ、ほら。カヨさんもしっかり食べないと大きくなりませんよ」
何を口走ってるだろう、この天然人妻金髪エロフは。
ちなみにこの人もかなり大っきい。だからタチが悪い。
ダリルはコレにやられてしまったのだろうか?
僕はここで「カヨも大っきい方だから大丈夫だよ」って慰めるのが正解なんだろうか?
……いや、そんな事を言ったらイノシシ肉よりも強めに焼かれてしまうな。間違いなく不正解だ。
「いつもこんな感じなのですか? 楽しそうですね」
傍観していたイケメンエルフのディアスさん。
楽しそう? 貴方は正座でエンジョイできるタイプの人なんですか?
帰りは是非僕の代わりに正座して下さい。
「僕は日々を平和に過ごしたいだけなのですが……」
「それは無理だと思いますよ。特にあなた達は、ね」
「……どういう意味です?」
意味深な事を言ったディアスはニヤっと笑い。僕の質問には答えなかった。
……………………
翌朝、僕らは遺跡の調査を行った。
依頼内容は二つ。
遺跡深部の調査。魔物が強い為、調査が難航しているそうだ。
もう一つは以前調査したパーティーが戻って来なかったから、その捜索、もしくは遺品の回収。
難度の高い調査の為、実力者のディアスとフィーナの二人を付けた上での依頼となった。
リーナ曰く「ギルド職員が同行する依頼は難しいけど失敗は無い、報酬が美味しくて狙い目の依頼」らしい。
歯に挟まったスジ肉と格闘しながら教えてくれた。
いい情報だ。彼女には明日もスジ肉をプレゼントしよう。
遺跡は1000年以上昔の古王国時代の廃城で、外から見ると石造りの非常に大きい建造物だった。
元の世界の西洋の城というよりは、もっと東南アジア風というのか密林の中のアンコールワット的な感じだった。
もっとも、僕はアンコールワットなんて行ったことないけど。
長年の風雨で至る所で天井は崩落し、草木が生い茂っている。
瓦礫と樹木で城内は立体的に入りんでおり、非常に歩きにくく死角が多い。
この廃城内には巨大な蛇の魔物『オオヤミヘビ』と北壁最下層にた『リッチ』がいる。
比較的目立つリッチは兎も角、上から襲ってくるオオヤミヘビに警戒しながらの進行になった。
僕はパーティーを止めて、上を指差す。
木の上でオオヤミヘビがこちらを赤い目で見つめ、狙いを定めている。長く舌がチロチロと動く様は生理的な危機感を煽る。
このまま進めば上から奇襲されていただろう。
「あそこに一匹いますね」
「じゃあジンさんとリーナさんにお任せしましょうか」
フィーナの言葉に僕はコクリと頷き、弓矢を構えた。
上向きで狙いにくいが、この距離なら外さないだろう……。
息を止め、弓を引き絞り、放つ。
放った矢は大蛇の目につき刺さり、鮮血が散った。
「お兄さんナイス~!」
暴れてドサリと木から落ちた来たオオヤミヘビ。リーナは軽口を叩きながら距離を詰め、蛇の頭に槍を深く突き刺し、捻る。
それを素早くトントントンと三回繰り返して距離を取った。
ビタビタと暴れるオオヤミヘビの頭はぐしゃぐしゃに潰されており、程なく絶命した。
槍という武器をよく知らない僕でも、リーナが使い慣れてる事はよく分かった。
オオヤミヘビはこの辺でかなり強い部類の魔物になる。
それを相手にしても臆する事なく踏み込み、素早く致命傷を与えて冷静に距離を取る。
間違いなく場慣れもしている。
異世界の美容師は強かった。
「いい動きですね」
「奇襲されなきゃコレくらい楽勝だよ」
肩に槍を担いて胸を張るリーナ。大きな胸が更に強調された。
あ、コレはワザとやってるっぽいな。
1スジ肉だ。
「これだけ強いと……パーティーとか組んで無いのですか?」
「私は基本一人で、別のパーティーに混じる事が多いかな」
「へぇ……何か理由があるんですか?」
「え?……ま、まあ、色々とねぇ」
リーナはバツが悪そうに苦笑いした。
明るい彼女にも、人に話せない過去があるのだろう……詮索は良くない。
少し悪い事を聞い……
「リーナさんは男性関係で少し問題があったみたいですね」
「……」
サラっと即座に暴露する天然エロフ。この人にはあまり慈悲はないようだ。
「あははー」
頭をかいて笑うリーナ。笑うな、反省しろ。
2スジ肉な。
……………………
その後も慎重に探索して地図を埋めていく。
安全第一で行ってる為、奇襲される事もなく全て先制を取っての戦闘になっている。
ディアスもカヨもフィーナも高威力の魔法を扱える贅沢なパーティー構成で、固まっている魔物の群れに対しては交代で魔法攻撃を行なって消耗を抑えている。
今のところ、誰も怪我や消耗をせず本当に順調だと思う。
ちなみに地図を描く係はディアスさんだ。彼の丁寧な性格が現れるような、綺麗な地図が出来上がってる。
何故か画伯エロフが描きたがってたが、ディアスがやんわりと拒否していた。
今、彼女の芸術性は求められていない。だから身の程を弁えて頂きたい。
余りにも順調な為、僕は刀を抜いていない。弓で先制するだけ、切り込むのはリーナ一人で十分だった。
リーナ自身も無理をせず堅実な動きで魔物を排除していく。思った以上に頼りになる。
男性トラブルさえ無ければ……うん、人には欠点の一つや二つあるだろう。
探索を始めて3時間ほどだろうか、僕らは昼前に廃城の深部に到着した。
大きな円卓がある広間の奥に、地下続く階段があった。
「ここからが城の地下になりますね」
フィーナはランタンを全員に配り、地下探索の準備を行う。
「ここに入るの? 何だか薄気味悪いわね……」
カヨの言う通り、荒廃的な廃城の中でさらに地下となれば薄気味悪い。ただ地下となれば草木も生えないし、天井も落ちてないから道は悪く無いだろう。
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