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第6章

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それから生徒会は急な忙しさに振り回された。
国王陛下夫妻を招くパーティを立った一ヶ月で用意するのだから慌ただしくて当然。クライブ殿下を始め、ロランさんも私もエルフリーデ先輩も、さまざまな手配に追われていた。
正直、日程的に厳しかったけれど、私は随分とホッとしていた。あの日の口付け以降、殿下と2人きりになる機会がなくなったし、思い悩む時間が少なくなったからだ。

「睡眠時間的には厳しいけど、ね」

立食形式で出される食事と飲み物のリストを再確認しつつ、ほぉっとため息が出た。
急なイベントでも学内のスケジュールは変わらないから、授業もテストも当然のように行われる日常は私にはかなり厳しいのが現実だ。もちろん、殿下を筆頭に他の生徒会役員の方々は元々優秀だから大した負担にならないのだろうが、私はそうはいかない。普段から日々の努力で乗り切ってきた凡人なので、どれだけ忙しくてもテスト勉強の手を抜けば追試の2文字が現実になる。となれば、消去法で削るのは睡眠時間になるのが必然で。当然のこと、思い悩む時間もありはしない。

だからこそ、身体はつらくとも精神的には助かっていると思う。でなければ、自分だけが知らされていない事実達について、つい考えてしまっていただろう。
そして芋づる式にたどり着いてしまうのだ。どれほど自分がちっぽけな存在だったか、と。

せめて、エルフリーデ先輩の本当の立場を教えてもらえれば、殿下達との交流についても聞けたかも知れないのに。

恨めしい気持ちもなくはないが、一介の秘書に打ち明けることでもないのは当然だ。秘密は知る人数が少なければ少ないほど良いのだから。そうでなければ、どこから漏れるかわかったものじゃない。危機管理として当然の対応だと冷静に考えれば考えるほど、凹む自分に気付く。

「友達だって言ってもらってたんだけどなぁ……」

結局、信用されていなかったのだと落ち込むのは、どれだけ睡眠時間を削るタイトなスケジュールでも変わらない。
そしてその度に、自分がどれほど思い上がっていたのかを思い知って凹むのだ。本当に非生産的な繰り返しだけど。

もう一度大きくため息を吐きながら、両手を机について重い体を立ち上がらせた時、くらりと酩酊感が襲った。あの日から食欲がなくてランチを抜いて昼休みに仕事をしてきたのが原因の貧血か、と冷静に分析した私は小さく笑った。

「私の置かれた状況そのものーーー」

一丁前に仕事してる気になって、結局は最後のところまで信頼してもらえてなくて。その疎外感に気付いても誰にも何も言えない。とどの詰まりが、ひとりぼっちの勘違い女だ。
徐々に暗くなる視界すら面白くなった私は笑みを浮かべたまま、意識を失った。



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