せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月

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第6章

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「ここはね、学園内にある王族だけが使用できる部屋なのですよ」

そして聞こえてきたのは意外な内容で。私は思わず頭を上げて、ロランさんをきょとんと見つめた。

「え?」

「いかに学園内では身分は関係ないと言っても、王族の方々は別格です。もちろん安全上の理由もありますが、それよりも彼らの精神衛生を守る上で誰にも見られずに安心して息を抜ける場所が必要だろうと、この部屋が存在します。だから一般の生徒にはこの部屋の存在自体が知らされていません。そんなものがあると知られれば探してしまう好奇心旺盛な者が現れますからね」

「そう、なんですね……あれ?」

苦笑しつつなされた説明に素直に納得したのに、同時に疑問が浮かんだ。王族だって人間なのだから、こういった部屋の必要性は理解出来る。ただ、

「ええ、クライブ殿下はほぼ使用されていません」

私が持った疑問に当然だと頷いたロランさんが説明を続けた。

「もちろん、生徒会長の役職などでお忙しいのはあります。ですが、殿下がこの部屋を使わなかったのはそれが理由ではありません。心必要とされていなかったのです」

「必要ではない?」

王太子であるクライブ殿下に衆目が集まらないわけがない。そして人目のある場所では、殿下は個人の感情を排した立ち居振る舞いをするのだ。表情を消し、個人的な好き嫌いではなく王太子としての価値基準で判断して。
そんな彼が気の休まる場所を使わない理由が私には浮かばない。全く分からないと見上げると、ロランさんが、困ったように表情を崩した。

「生徒会室ですよ。あそこには気を許した人間しかいませんからね。ここで孤独に休むよりずっと安らげるのでしょう。リディアさんだってあの場所で殿下がどれだけ素のままか、ご存じでしょう?本当はあそこ迄気を許してはいけないと思うのですが、殿下の楽しそうな様子を見ていると私も注意出来なくて」

側近失格ですね、と言いながらもロランさんの顔にも口調にも暗いものはなかった。それよりも殿下が寛げる場所を守っていられることを喜んでいるのが伝わる。

「クライブ殿下に許された自由は限られたものしかありませんし、それは学園を卒業すればさらに少なくなる。ですが殿下自身は自分に課せられた義務や責務の重さを知って受け入れて個人の幸せをどこかで諦めている。だからこそ、私だけでも彼自身の幸せを少しでも優先したいのです。ーーー友人ですからね」

「友人……そうですね」

ロランさんの言葉はスゥッと心に染み込んで、私の悩みを溶かしていく。

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