せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月

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第6章

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バンっという大きな音と、それに続く急いだ足音。さっきとの違いは足音の軽さだ。

「リディア!」

青い顔で入ってきたエルフリーデ先輩は私を見つけると勢いのままに抱きついた。

「倒れたって聞いて心配したのよ!もう大丈夫なの?」

両手で私の顔や体をペタペタと触り確認する姿は必死で、心から心配してくれているのがまざまざと分かるもので。その姿に私の頬にはまた涙が溢れる。

「リディア!?どこか痛いの?それとも辛い?」

「いえ。違うんです。こんなにも心配してもらえて幸せだなぁって」

「なに言ってるの。そんなの当然でしょう?友達なんだもの」

「ですよね。友達、ですものね」

「そうよ。どうしたの、急に」

不思議そうに首を傾げた先輩の姿に、胸の底に溜まっていたドロリとしたものが溶け出していくのを感じた。
友達だからって全てを伝えるわけじゃない。言えないことも、言いたくないこともあって当然で、私だって前世の記憶持ちの転生者だって誰にも言っていない。それなのに秘密を持たれたと被害者ぶっていたなんて、勝手すぎる話だ。

そう気付いてしまえば、あんなに悩んでいたことが馬鹿らしくなるくらい簡単に答えは見えた。
どんな世界でも、立場でも、何も違いはしないのだ。みんな一生懸命に生きている感情を持った一人一人の人間なのに。勝手にゲームの登場人物だと捉えて『推し』だと認定して、ゲーム通りに、私のエゴで自分の思うルートに物語を進めようとするのは間違っているのだ。

「私、倒れて良かったです」

だからこそ気付けた。

それが嬉しくてにっこりと微笑んだのだけれど、3人は私が倒れた時に頭をぶつけたのだと心配して、医師の診察を受けるはめになった。




診察した医師から大丈夫のお墨付きをもらった私は生徒会室に戻り、ようやっとパーティの目的を聞かせてもらえることになった。
ただ、無理はしないことと、睡眠時間を削らないことは約束させられたけれど。しかも食事をきちんと摂っているかを確認するためにランチは必ずクライブ殿下と取ることを約束させられた。

「いらないと思うんです。そういう監視みたいな食事って栄養も吸収できなそうですし」

「じゃあ、監視じゃなくてデートだと思ったらどうかしら?若い男女が2人で食事をするのですもの」

「雇用主と秘書ですよ?ビジネスランチにしかなりませんよ。場所は学食なのに」

「あら、ものは考えようよ。楽しい方に考えればいいじゃない」

「それにも限度がありますよ。殿下と私がデートなんて、想像だけで不敬罪になりそうです」

「リディアったら頭が硬いのね。若いのに」

前世を含めたら全然若くないんですよ、とは言えずに愚痴を止めると先輩が楽しそうに笑う。その横でロランさんはなんとも言えない顔で向かいの殿下を見つめ、殿下は私の横でむっつりと不機嫌そうに眉を寄せている。
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