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第7章
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一旦は話が終わったとはいえ、それから私の頭の中は「いかにしてクライブ殿下にエルフリーデ先輩のエスコートをさせるか」でいっぱいになった。
殿下が拒否できないように、進行にメリットがあるように、先輩の立場が良いように。さまざまな条件を考えて、対案を出しては検討する。それはとても骨の折れる作業だし難しかったけれど、私にはちょうど良かった。
「気を抜いたら変な事に気づいちゃいそうだし……」
例えば個人的な気持ちとか。
小さく声に出してから、もう一度進行表に目を落とす。どうにか説得する理由を見つけられないだろうか。クライブ殿下は自分がそうだからこそ、論理的に詰められると弱い。というより、それでないと翻意させるのは難しい。
「お茶にしましょうか?」
唸りながらページをめくっていると、いつの間にか作業を中断していたロランさんがティーポットを手にしていた。
「あぁっ!すみません」
本来なら官吏たる私の仕事だ。仮にも侯爵家の嗣子にお茶の用意などさせていいわけがないのに、集中しすぎていたせいで気を使わせてしまった。
「大丈夫です。殿下の近習としてずっと仕えて来ましたからね、これでもなかなかの腕前なのです」
慌てる私に微笑んでカップにお茶を注いでくれた彼に礼を言って、勧められるまま席に着く。
今日は殿下も先輩も学園長から呼び出されているので、彼らが帰ってくるまで2人きり。そのタイミングで休憩を言い出してくれたことに少し違和感があった。
「あのーー私、そんなに難しい顔してましたか?」
「そうですね。まぁ、なかなかに」
「やっぱりですか……すみません」
予想が当たっていて、申し訳なさが更に倍増した。視界の広いロランさんは心遣いも細やかだから、これまでも色々こうやって助けられてきたのだ。
「とは言え、このタイミングでお茶を淹れたのは別の理由なんですけどね」
「別、ですか?」
「ええ。最近リディアさんが悩んでいる、パーティでの殿下のエスコートの件です」
カップを机に戻したロランさんの真剣な表情に私も姿勢を正した。
殿下が拒否できないように、進行にメリットがあるように、先輩の立場が良いように。さまざまな条件を考えて、対案を出しては検討する。それはとても骨の折れる作業だし難しかったけれど、私にはちょうど良かった。
「気を抜いたら変な事に気づいちゃいそうだし……」
例えば個人的な気持ちとか。
小さく声に出してから、もう一度進行表に目を落とす。どうにか説得する理由を見つけられないだろうか。クライブ殿下は自分がそうだからこそ、論理的に詰められると弱い。というより、それでないと翻意させるのは難しい。
「お茶にしましょうか?」
唸りながらページをめくっていると、いつの間にか作業を中断していたロランさんがティーポットを手にしていた。
「あぁっ!すみません」
本来なら官吏たる私の仕事だ。仮にも侯爵家の嗣子にお茶の用意などさせていいわけがないのに、集中しすぎていたせいで気を使わせてしまった。
「大丈夫です。殿下の近習としてずっと仕えて来ましたからね、これでもなかなかの腕前なのです」
慌てる私に微笑んでカップにお茶を注いでくれた彼に礼を言って、勧められるまま席に着く。
今日は殿下も先輩も学園長から呼び出されているので、彼らが帰ってくるまで2人きり。そのタイミングで休憩を言い出してくれたことに少し違和感があった。
「あのーー私、そんなに難しい顔してましたか?」
「そうですね。まぁ、なかなかに」
「やっぱりですか……すみません」
予想が当たっていて、申し訳なさが更に倍増した。視界の広いロランさんは心遣いも細やかだから、これまでも色々こうやって助けられてきたのだ。
「とは言え、このタイミングでお茶を淹れたのは別の理由なんですけどね」
「別、ですか?」
「ええ。最近リディアさんが悩んでいる、パーティでの殿下のエスコートの件です」
カップを机に戻したロランさんの真剣な表情に私も姿勢を正した。
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