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第8章
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頭を下げたままのエルフリーデ先輩に近づいて、私はそっと花束を渡す。
「おめでとうございます、先輩」
「まぁリディア。この花束は私宛ではないのでは?」
「いえ、この場では先輩にこそ捧げるべきです。自らご自分の道を切り開かれたのですから」
「ーーーありがとう」
気品溢れた笑顔で花束を受け取った先輩は、妖精の女王でも豊穣の女神でも、もちろんゲームのヒロインでもない。自分の足ですっくと力強く立つ、自立した尊敬すべき女性だった。
「で、どこまで理解できたんだ?」
面白そうに揶揄いを含んだ問いをするクライブ殿下にリードされながらダンスを踊る。
正直言えば運動神経に自信がないのでダンスはご遠慮したいのだが、一曲目はパートナーと踊る決まりなのだから仕方ないと諦めている。殿下となら他の人と踊るよりはずっと上手に踊らせてもらえるし。
「どこまで、とは?」
なんでもない風を装おって問い返せば、堪えきれなかったのか殿下が小さく笑い声を漏らした。
「くくっ。問いに問いで答えるのがリディアらしいな。もちろん、言葉通りの意味だ。さっきのエルフリーデ親子の会話でどこまで事情を理解したのかときいている」
「そうですね。まず、先輩が隣国の王女様だったことを。まぁこれは予想の範疇でもありますが」
当然のように嘯いてみようとしたが、先輩が王女だったのはゲームの設定を知っていたからでちょっとしたズルだ。ごにょごにょと言い訳めいた付け足しをしてしまった。それを不振そうにする殿下を誤魔化すべく、自分の推論を続ける。
「女性や子供がもっと生きやすくなる為には何が必要か、以前から考えていらしたのだと思います。それから、王女として婚姻以外に責務を果たす方法も」
私が以前に女性の就学や就職について自論を述べたときの先輩の食いつき方を思えば、その時にはもう考えていたのだと思う。それに「誰にもエスコートしてもらわない」と決めているという話。きっと隣国では留学中にクライブ殿下を始め沢山の貴公子と出会えば、そこから将来の縁談に繋がる可能性も期待されていたのだろう。だからこそ、あらゆる可能性を断つべくエスコートも断っていたのだ。
「それから神殿に居を移して管理者となる話ですが、あれは素晴らしい案だと思いました」
それがあったから父王も先輩の望みを叶えると言えたのだろう。
「ほう。それも分かったか」
「はい。殿下のお仕事をする過程で隣国での神殿の影響力の大きさは知っていましたから。王女が神職としてではなく、王族のまま神殿の管理者として住むことで、王家の立場が神殿よりも上なことを知らしめることが出来ます。それは神殿の影響力低下を望む王家に取ってはまたとない提案だったのだと思いました」
一気に語ると、殿下は満足そうに目を細めた。
「やはりリディアは聡いな。俺が選んだだけある」
「王太子の秘書ですから。これくらいは理解しないと、です」
手放しで誉められると正直照れる。ふいっと顔を背けて答えた瞬間、屈んだせいで近づいた唇からの囁きが耳朶を打った。
「おめでとうございます、先輩」
「まぁリディア。この花束は私宛ではないのでは?」
「いえ、この場では先輩にこそ捧げるべきです。自らご自分の道を切り開かれたのですから」
「ーーーありがとう」
気品溢れた笑顔で花束を受け取った先輩は、妖精の女王でも豊穣の女神でも、もちろんゲームのヒロインでもない。自分の足ですっくと力強く立つ、自立した尊敬すべき女性だった。
「で、どこまで理解できたんだ?」
面白そうに揶揄いを含んだ問いをするクライブ殿下にリードされながらダンスを踊る。
正直言えば運動神経に自信がないのでダンスはご遠慮したいのだが、一曲目はパートナーと踊る決まりなのだから仕方ないと諦めている。殿下となら他の人と踊るよりはずっと上手に踊らせてもらえるし。
「どこまで、とは?」
なんでもない風を装おって問い返せば、堪えきれなかったのか殿下が小さく笑い声を漏らした。
「くくっ。問いに問いで答えるのがリディアらしいな。もちろん、言葉通りの意味だ。さっきのエルフリーデ親子の会話でどこまで事情を理解したのかときいている」
「そうですね。まず、先輩が隣国の王女様だったことを。まぁこれは予想の範疇でもありますが」
当然のように嘯いてみようとしたが、先輩が王女だったのはゲームの設定を知っていたからでちょっとしたズルだ。ごにょごにょと言い訳めいた付け足しをしてしまった。それを不振そうにする殿下を誤魔化すべく、自分の推論を続ける。
「女性や子供がもっと生きやすくなる為には何が必要か、以前から考えていらしたのだと思います。それから、王女として婚姻以外に責務を果たす方法も」
私が以前に女性の就学や就職について自論を述べたときの先輩の食いつき方を思えば、その時にはもう考えていたのだと思う。それに「誰にもエスコートしてもらわない」と決めているという話。きっと隣国では留学中にクライブ殿下を始め沢山の貴公子と出会えば、そこから将来の縁談に繋がる可能性も期待されていたのだろう。だからこそ、あらゆる可能性を断つべくエスコートも断っていたのだ。
「それから神殿に居を移して管理者となる話ですが、あれは素晴らしい案だと思いました」
それがあったから父王も先輩の望みを叶えると言えたのだろう。
「ほう。それも分かったか」
「はい。殿下のお仕事をする過程で隣国での神殿の影響力の大きさは知っていましたから。王女が神職としてではなく、王族のまま神殿の管理者として住むことで、王家の立場が神殿よりも上なことを知らしめることが出来ます。それは神殿の影響力低下を望む王家に取ってはまたとない提案だったのだと思いました」
一気に語ると、殿下は満足そうに目を細めた。
「やはりリディアは聡いな。俺が選んだだけある」
「王太子の秘書ですから。これくらいは理解しないと、です」
手放しで誉められると正直照れる。ふいっと顔を背けて答えた瞬間、屈んだせいで近づいた唇からの囁きが耳朶を打った。
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