7 / 11
7
「ーーー申し訳ありませんでした」
アンジェリーナの勇気を振り絞った謝罪はやっぱり小さな声にしかならなかったけれど、きちんと届いたらしい。ユーティリスが小さく息を吐いて一歩近づいたのが分かった。下を向くアンジェリーナの視界に彼の靴先が入ったからだ。
「分かってくれたならいいんだ」
穏やかな声が聞こえたと同時にそっと髪に触れる気配がした。
「綺麗な髪ですね。素敵な色だ」
きっとこの生き生きとした茶色の髪のせいもあったのだろう。ユーティリスが領地でよく見るウサギは茶色のものが多い。
数年前の記憶を思い出して微笑めば、目の前のアンジェリーナは居心地悪そうな顔で「ありがとうございます」とだけ言った。
この先のことをユーティリスずっと、綿密な計画をすべく考えていた。絶対に逃したりしないと、その為にはどうやって言質を取ってしまおうかと。でも今、目の前で困った様子で立ちすくむアンジェリーナを見ていて、そんな緻密な計画は何処かに飛んでしまった。
心の求めるままに目の前の細い肩に触れ、そっと抱き寄せた。
突然抱き寄せられたアンジェリーナは混乱の極地にいた。みんなの憧れの貴公子が何故自分を抱きしめているのか全く分からない。わからないけれど、こんな密接した触れ合いを誰かに見られたら彼の評判が落ちてしまうことだけは分かった。だから、バクバクとうるさい心臓の音を聞きながら、どうにかできる限りの落ち着いた声を出したのだ。
「あああああの、誰かに見られてしまったらユーティリス様の評判に傷が付きます」
多少吃しはしたが意味は通じただろうと返答を待つと、何故だか返事は聞こえず抱きしめる腕の力だけが強くなった。
「だだだだ誰かが来たら、その、困ると思うのです」
これなら分かるだろうと思ったのに更に腕の力は強くなり、アンジェリーナはユーティリスの腕の中にすっぽりと抱き込まれてしまった。これでは熱烈な恋人同士の抱擁としか見えない。
どうにか注意を引きたくて、彼の胸にぴたりと当たっている自身の手をぺしぺしと動かして、ようやっとユーティリティが口を開いた。
「ここは奥まっているから誰も来ませんよ。それに誰かに見られたとしても私の評判に傷などつきません。勿論、貴女の評判にも」
ユーティリティが声を発するとその胸に密着している耳や手から振動が伝わって、アンジェリーナの体全体で聞いているみたいになる。
「いや、いっそ誰かに見られた方がいいのか。そうすれば、余計な手間が省けるし、貴女の兄君も諦めずをえないでしょうから」
「あ、兄がどうして……いえ、それより、やっぱり誰かに見られるのは良くないと思うのです。何よりこの格好は凄く恥ずかしいですから」
今度はユーティリスの胸に手を置いてぐっと突っ張ってみた。勿論、男性で近衛騎士である彼の力の方が強いから密着する体を離すことは出来なかったが。
それでもアンジェリーナの抵抗する意思が伝わったのか、ようやっと拘束していた腕の力が緩まり少しだけ二人の間に隙間ができる程度には体を離すことができた。とはいえ、相変わらずアンジェリーナの腰にはユーティリスの腕が巻き付き、腕の中にいるのだが。
アンジェリーナの勇気を振り絞った謝罪はやっぱり小さな声にしかならなかったけれど、きちんと届いたらしい。ユーティリスが小さく息を吐いて一歩近づいたのが分かった。下を向くアンジェリーナの視界に彼の靴先が入ったからだ。
「分かってくれたならいいんだ」
穏やかな声が聞こえたと同時にそっと髪に触れる気配がした。
「綺麗な髪ですね。素敵な色だ」
きっとこの生き生きとした茶色の髪のせいもあったのだろう。ユーティリスが領地でよく見るウサギは茶色のものが多い。
数年前の記憶を思い出して微笑めば、目の前のアンジェリーナは居心地悪そうな顔で「ありがとうございます」とだけ言った。
この先のことをユーティリスずっと、綿密な計画をすべく考えていた。絶対に逃したりしないと、その為にはどうやって言質を取ってしまおうかと。でも今、目の前で困った様子で立ちすくむアンジェリーナを見ていて、そんな緻密な計画は何処かに飛んでしまった。
心の求めるままに目の前の細い肩に触れ、そっと抱き寄せた。
突然抱き寄せられたアンジェリーナは混乱の極地にいた。みんなの憧れの貴公子が何故自分を抱きしめているのか全く分からない。わからないけれど、こんな密接した触れ合いを誰かに見られたら彼の評判が落ちてしまうことだけは分かった。だから、バクバクとうるさい心臓の音を聞きながら、どうにかできる限りの落ち着いた声を出したのだ。
「あああああの、誰かに見られてしまったらユーティリス様の評判に傷が付きます」
多少吃しはしたが意味は通じただろうと返答を待つと、何故だか返事は聞こえず抱きしめる腕の力だけが強くなった。
「だだだだ誰かが来たら、その、困ると思うのです」
これなら分かるだろうと思ったのに更に腕の力は強くなり、アンジェリーナはユーティリスの腕の中にすっぽりと抱き込まれてしまった。これでは熱烈な恋人同士の抱擁としか見えない。
どうにか注意を引きたくて、彼の胸にぴたりと当たっている自身の手をぺしぺしと動かして、ようやっとユーティリティが口を開いた。
「ここは奥まっているから誰も来ませんよ。それに誰かに見られたとしても私の評判に傷などつきません。勿論、貴女の評判にも」
ユーティリティが声を発するとその胸に密着している耳や手から振動が伝わって、アンジェリーナの体全体で聞いているみたいになる。
「いや、いっそ誰かに見られた方がいいのか。そうすれば、余計な手間が省けるし、貴女の兄君も諦めずをえないでしょうから」
「あ、兄がどうして……いえ、それより、やっぱり誰かに見られるのは良くないと思うのです。何よりこの格好は凄く恥ずかしいですから」
今度はユーティリスの胸に手を置いてぐっと突っ張ってみた。勿論、男性で近衛騎士である彼の力の方が強いから密着する体を離すことは出来なかったが。
それでもアンジェリーナの抵抗する意思が伝わったのか、ようやっと拘束していた腕の力が緩まり少しだけ二人の間に隙間ができる程度には体を離すことができた。とはいえ、相変わらずアンジェリーナの腰にはユーティリスの腕が巻き付き、腕の中にいるのだが。
あなたにおすすめの小説
侯爵令嬢はざまぁ展開より溺愛ルートを選びたい
花月
恋愛
内気なソフィア=ドレスデン侯爵令嬢の婚約者は美貌のナイジェル=エヴァンス公爵閣下だったが、王宮の中庭で美しいセリーヌ嬢を抱きしめているところに遭遇してしまう。
ナイジェル様から婚約破棄を告げられた瞬間、大聖堂の鐘の音と共に身体に異変が――。
あら?目の前にいるのはわたし…?「お前は誰だ!?」叫んだわたしの姿の中身は一体…?
ま、まさかのナイジェル様?何故こんな展開になってしまったの??
そして婚約破棄はどうなるの???
ほんの数時間の魔法――一夜だけの入れ替わりに色々詰め込んだ、ちぐはぐラブコメ。
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
お飾りの私と怖そうな隣国の王子様
mahiro
恋愛
お飾りの婚約者だった。
だって、私とあの人が出会う前からあの人には好きな人がいた。
その人は隣国の王女様で、昔から二人はお互いを思い合っているように見えた。
「エディス、今すぐ婚約を破棄してくれ」
そう言ってきた王子様は真剣そのもので、拒否は許さないと目がそう訴えていた。
いつかこの日が来るとは思っていた。
思い合っている二人が両思いになる日が来ればいつの日か、と。
思いが叶った彼に祝いの言葉と、破棄を受け入れるような発言をしたけれど、もう私には用はないと彼は一切私を見ることなどなく、部屋を出て行ってしまった。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
婚約者が他の令嬢に微笑む時、私は惚れ薬を使った
葵 すみれ
恋愛
ポリーヌはある日、婚約者が見知らぬ令嬢と二人きりでいるところを見てしまう。
しかも、彼は見たことがないような微笑みを令嬢に向けていた。
いつも自分には冷たい彼の柔らかい態度に、ポリーヌは愕然とする。
そして、親が決めた婚約ではあったが、いつの間にか彼に恋心を抱いていたことに気づく。
落ち込むポリーヌに、妹がこれを使えと惚れ薬を渡してきた。
迷ったあげく、婚約者に惚れ薬を使うと、彼の態度は一転して溺愛してくるように。
偽りの愛とは知りながらも、ポリーヌは幸福に酔う。
しかし幸せの狭間で、惚れ薬で彼の心を縛っているのだと罪悪感を抱くポリーヌ。
悩んだ末に、惚れ薬の効果を打ち消す薬をもらうことを決意するが……。
※小説家になろうにも掲載しています
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
替え玉の私に、その愛を注がないで…。~義姉の代わりに嫁いだ辺境伯へ、身を引くはずが……持ちかけられたのは溺愛契約。
翠月 瑠々奈
恋愛
ベルン皇国の辺境伯ソラティスが求めたのは、麗しき皇都の子爵令嬢レイアだった。
しかし、彼の元へ届けられたのは、身代わりに仕立て上げられた妹のラシーヌ。
容姿も性格も全く違う姉妹。
拒絶を覚悟したラシーヌだったが、ソラティスは緋色の瞳を向けて一つの「契約」を持ち掛けた。
その契約とは──?
ソラティスの結婚の理由、街を守る加護の力。そして、芽生える一つの恋。それに怯える拙い拒み。
※一部加筆修正済みです。