婚約破棄されたので幼馴染みの王子のツテで就職しようとしたら、仕事内容が話と違います

嘉月

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就活の難しさは予想外

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「……ちょっとびっくりしちゃった」

一緒に部屋に残ったアルノーに顔を向けると彼は、いつものおっとりした私の弟の顔でふわりと笑った。

「怖がらせちゃったかな?」

「ううん、怖かったってより驚いた。お母様も凄く驚いてて、何回もアルノーの顔見てたよ」

「うん、それ気付いてた」

ふふっと笑って、私の隣に座ったアルノーはソファの背に身体を預けるように沈み込む。

「疲れてる?そういえば、昨日も帰りがとても遅かったわ。やっぱりお仕事忙しいのね」

労るように肩を撫でると、閉じていた瞳を片方だけ開けて不満そうな声を漏らす。

「確かに仕事は忙しいよ。王太子の側近としてやることは山ほどあるし。でも国の為になると思えばやり甲斐もあるから、別にそれは良いんだ。でも昨日忙しかったのはそれとは別の件。腹は立つし、何だか妙な相談もされるし、ホントもう、疲れたよ」

「そう、なの?何だか……大変そうなのね。あの、ごめんね。そんな時にこんな話で」

機密情報があるのか、いつも仕事内容も愚痴もちっとも言わないアルノーがこんなことを言うとは凄く珍しい。そんな疲れてる大変な時だったから、さっきは苛立っていたのだろうと思うと本当に申し訳なくて、小さく謝ると勢いよくアルノーがソファから起き上がった。

「言っとくけど、俺が怒ってたのは疲れてるからじゃないよ。大事な自慢の姉さんを侮辱されたのが許されなかったからだし、あれでも抑えてたくらいだ」

「そ、そう、なんだ……」

あまりに勢いこんで言われたせいで、上半身が後ろに下がる。けれど、アルノーは気にしなかった。

「だいたいね、姉さんはもっと怒って良いんだ。それなのにあっさり受け入れて、挙句に誰にも迷惑かけないように王宮勤めを考えるとか、お人好しすぎる」

「別にお人好しってわけじゃないわ。婚約破棄を言われるか結婚前から愛人を作られるか、どっちかだって覚悟してただけよ。正直、孤独な結婚生活を送るくらいなら婚約破棄してもらった方が良いかもって思ったこともあったし……ね、私はまだ家族に王宮で働こうかって思ってるって言ってないわ」

両親も弟も優しいから、家を出て王宮で働くなんて言ったら「気を使うな」って反対すると思ってコンラート以外には話してなかったのに。

「コンラートに聞いたの?」

「ーーーうん」

「そっか。コンラートにも心配かけちゃったな」

だからアルノーに話したんだろう。アディール様の過去の行状も打ち明けたから、もしかしたら私が思い詰めてると思ったのかも。

「心配……うん、まぁ心配もしてはいたけどね。でもそれよりあいつは、」

アルノーが私に身体を向けて真剣な顔で話しだした時、大きな音を立てて扉が開いた。

「ラーラ!あなたに王宮から御使者がいらしたわ!!」


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