婚約破棄されたので幼馴染みの王子のツテで就職しようとしたら、仕事内容が話と違います

嘉月

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就活の難しさは予想外

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王宮の御使者の要件は簡潔だった。

『明日から王宮に上がり、帰国したコンラート殿下の秘書として勤められたし』

簡潔だけど、異例中の異例。
だいたい王子の仕事をサポートするのは老練の官僚か、年の近い貴族だと相場が決まっている。老練な官僚は教師的な役割も担い、年の近い貴族は信頼できる側近として末長くそのそばで仕える為に。
なのになのに、よりにもよって私にその仕事がまわってくるなんて!

「……もしかして、コンラートってば勘違いしたのかしら」

御使者の帰った後、流石に疲れて自室に戻った私はベッドにぼすんっとダイブして呟いた。
いつもなら私付きの侍女のベスに怒られるお行儀の悪さだけど、色んなことがありすぎたせいで今日は見逃してもらえるらしい。
ゴロリと寝返りをうち、仰向けになって考える。

私がコンラートに言ったのは『王宮で働く宮女』のつもりだった。貴族の令嬢が王宮で勤めるならそれが一般的だし、言い換えるとそれ以外の仕事をしている令嬢はほぼいない。例外は学者や医師など一部の専門職くらい。

「だから宮女ってちゃんと言ってないかもだわ」

不意に気付いた。
クラフェス侯爵家で領地経営について学んだ話もしたから、きっとコンラートは勘違いをしたのだろう。

ならば、話は簡単だ。明日登城して、きちんとコンラートに説明すればいい。そうしたら宮女の仕事を紹介してもらえるだろうし、将来の心配もなくなる。

「そうとなったら、早速準備をしなきゃね」

王宮勤めに相応しい服装ってどんなだろう。アルノーに聞いてみたら最新の状況が分かるかしら。

昨日まで私を縛っていた『クラフェス次期侯爵の婚約者』という肩書きは自分で思っていたより、ずっと重くて窮屈なものだったのかもしれない。それがなくなって初めて、こんなにも身軽になったのだと気分も軽くなる。

すっかり浮かれた私は明日への期待しかなくて。
子供時代でさえコンラートが一筋縄ではいかない人物で、私はそれにさんざん振り回されていた事実をすっかり忘れてしまっていた。
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