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第四章
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1人で部屋でもそもそ食べてみるが、誰かと食べることに慣れてしまっている俺としてはちょっと物足りないと言うか、寂しいものがある。
早く北村が帰ってきてくれないかな。
そう言えば吉岡にかまけて北村にメッセージの返事をしていなかったことを思い出し、行儀が悪いが食べながらメッセージを入力した。
腹がいっぱいになったところでベッドに横になった。
頭はグツグツと何かが煮えきらずにいたが久しぶりの運動は体には心地いいものだったから眠気はすぐに来た。
生徒会の仕事よりも、やはり俺は体を動かしているほうが合っている。きっと俺なんかよりも書記に向いているやつがいることも分かっている。でも俺だってそれなりにやっているし、きっと俺にしか出来ないことだってあるだろう。多分。前書記の花菱さんが俺を選んでくれたんだ。あまり自分を卑下していると花菱さんにも失礼だし。
俺だって吉岡がこんなことを考えていたら嫌だしな、と思ったけど吉岡はきっとこんなくだらないことなど考えないだろう。
こんなことに頭を費やすならもっと違う何かに目を向けたほうが健全だ。
考えすぎはいかんのだ。
睡魔に襲われた俺は途中で落ちてしまい、目覚めたときには1時間ほど経っていた。
2~30分の軽い昼寝のつもりが本気で寝ていたのに驚いたが、それほど疲れたんだということにして起き上がった。
ありがたいことに寝る前にアレだけグダグダと吉岡のことや、そこから派生したネガティブな発想は随分と遠く彼方へ消えていた。
やはり俺は単純に出来ているようだ。ありがたい。
結局起きていてもやることがないため、買っては生徒会が急がしくて放置していたゲームをしてダラダラと時間を過ごした。
北村は明日の朝に帰ってくるらしいし、俺は暇だ。
一度ゲームをキリのいいところまで進ませてセーブをした。
炭酸が飲みたくなって小銭を持って自販に向かう。ずっと同じ姿勢でいたため体がギシギシと痛む。肩をぐるぐると回しながら廊下を歩いた。会長部屋から少し行ったところの右にある休憩室へ入ろうとしたとき、その中、ソファに優雅に座っている人物を見つけて立ち止まる。
いつも無造作にセットされたゆるいパーマを掛けた茶髪の男はペットボトルを片手に眼を閉じていた。眠っている姿もイケメンで憎らしい。
この生徒会専用の寮棟の廊下は絨毯が敷かれているため足音は小さいものだし、もしかしたら南は俺に気がついていないかもしれない。こんなところで2人でいるのは身の危険を感じるため見つかる前に退散だ。この部屋に来た時よりも静かに、足音をまったく立てないよう後ろにさがる。
南の体が見切れたところで安堵のため息を漏らす。悩みの種、とまではいかないが、こいつのせいでいやな目にあったことを考えると体が拒否してしまうのは仕方ないことだろう。
体を反転し、そしてドキドキと心臓を鳴らしながら部屋に帰った。カードキーを取り出してドアに近づいたとき後ろから伸びてきた手が俺の手を掴んだ。
「ヒッ!?」
始めから煩いほどの心臓だったが、予期もせぬ事態に一瞬止まったのではないかと思うほど驚いた。人の気配など何も感じなかった。
だが今は体を密着するほど近い距離に人がいる。
さっきまでなかった、南の匂いが後ろから甘く俺を包んでいた。
「あけましておめでと。今年もよろしくね~佐野」
こいつは忍者か殺し屋か。気配を消して近づくなと言いたいが驚きと妙な恐怖で後ろを振り向けないし、つかまれた手も振りほどけない。
俺が動かないものだから、南はカードキーを持つ俺の手を掴んだままカードリーダーへと通す。咄嗟に力を入れて抵抗したが力で勝てるはずもなく。
「立ち話もなんだし、部屋に入れてよ」
後ろで南が笑った気がした。
早く北村が帰ってきてくれないかな。
そう言えば吉岡にかまけて北村にメッセージの返事をしていなかったことを思い出し、行儀が悪いが食べながらメッセージを入力した。
腹がいっぱいになったところでベッドに横になった。
頭はグツグツと何かが煮えきらずにいたが久しぶりの運動は体には心地いいものだったから眠気はすぐに来た。
生徒会の仕事よりも、やはり俺は体を動かしているほうが合っている。きっと俺なんかよりも書記に向いているやつがいることも分かっている。でも俺だってそれなりにやっているし、きっと俺にしか出来ないことだってあるだろう。多分。前書記の花菱さんが俺を選んでくれたんだ。あまり自分を卑下していると花菱さんにも失礼だし。
俺だって吉岡がこんなことを考えていたら嫌だしな、と思ったけど吉岡はきっとこんなくだらないことなど考えないだろう。
こんなことに頭を費やすならもっと違う何かに目を向けたほうが健全だ。
考えすぎはいかんのだ。
睡魔に襲われた俺は途中で落ちてしまい、目覚めたときには1時間ほど経っていた。
2~30分の軽い昼寝のつもりが本気で寝ていたのに驚いたが、それほど疲れたんだということにして起き上がった。
ありがたいことに寝る前にアレだけグダグダと吉岡のことや、そこから派生したネガティブな発想は随分と遠く彼方へ消えていた。
やはり俺は単純に出来ているようだ。ありがたい。
結局起きていてもやることがないため、買っては生徒会が急がしくて放置していたゲームをしてダラダラと時間を過ごした。
北村は明日の朝に帰ってくるらしいし、俺は暇だ。
一度ゲームをキリのいいところまで進ませてセーブをした。
炭酸が飲みたくなって小銭を持って自販に向かう。ずっと同じ姿勢でいたため体がギシギシと痛む。肩をぐるぐると回しながら廊下を歩いた。会長部屋から少し行ったところの右にある休憩室へ入ろうとしたとき、その中、ソファに優雅に座っている人物を見つけて立ち止まる。
いつも無造作にセットされたゆるいパーマを掛けた茶髪の男はペットボトルを片手に眼を閉じていた。眠っている姿もイケメンで憎らしい。
この生徒会専用の寮棟の廊下は絨毯が敷かれているため足音は小さいものだし、もしかしたら南は俺に気がついていないかもしれない。こんなところで2人でいるのは身の危険を感じるため見つかる前に退散だ。この部屋に来た時よりも静かに、足音をまったく立てないよう後ろにさがる。
南の体が見切れたところで安堵のため息を漏らす。悩みの種、とまではいかないが、こいつのせいでいやな目にあったことを考えると体が拒否してしまうのは仕方ないことだろう。
体を反転し、そしてドキドキと心臓を鳴らしながら部屋に帰った。カードキーを取り出してドアに近づいたとき後ろから伸びてきた手が俺の手を掴んだ。
「ヒッ!?」
始めから煩いほどの心臓だったが、予期もせぬ事態に一瞬止まったのではないかと思うほど驚いた。人の気配など何も感じなかった。
だが今は体を密着するほど近い距離に人がいる。
さっきまでなかった、南の匂いが後ろから甘く俺を包んでいた。
「あけましておめでと。今年もよろしくね~佐野」
こいつは忍者か殺し屋か。気配を消して近づくなと言いたいが驚きと妙な恐怖で後ろを振り向けないし、つかまれた手も振りほどけない。
俺が動かないものだから、南はカードキーを持つ俺の手を掴んだままカードリーダーへと通す。咄嗟に力を入れて抵抗したが力で勝てるはずもなく。
「立ち話もなんだし、部屋に入れてよ」
後ろで南が笑った気がした。
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